私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾弐章 繋縁想起 〜閉じられていた記憶〜
第壱話 記憶の扉


 

――ふと目が覚めると、私は以前に見た真っ白な空間に立っていた。

 

私は、確か……そうだ、椿と一緒に脱神の復活を阻止しようとしていたんだ。だけど、失敗してしまった。

 

しかも、その後に突然現れた綾花が暴走しそうになったから、小次郎が人間界との空間の裂け目を作って……私はそこに突き飛ばされたハズ。

 

「まーた、お面の子達のお出ましって訳ですか……」

 

とにかく、こうして私が真っ白な空間に居るという事は……きっと前の時と同じように、何か思い出さなくてはいけない状況になっているんだろうな。

 

「遂に、来ちゃったね」

 

「本当は、来て欲しくなかったかな」

 

「君と椿ちゃんには、平穏に過ごして欲しかった」

 

「それは、あの子の両親と……綾ちゃん、君の"オジサン"の願いでもある」

 

その子達は少し落ち込んだ様子で、私の周囲から声をかけてきた。だけど、ここまできたからには私も引く訳にはいかないよ。

 

――椿の両親の話が出たという事は恐らく、椿の方も私と同じように、この"真っ白な空間"に居るだろうからね。

 

「オジサンには悪いけど、私はここで止まりたくないよ。椿の両親には戻ってきて欲しいし、それが私のワガママで贅沢な話であっても、あの子には必要な事だと思っているんだ」

 

だが、その覚悟を固めた私の言葉に対して、お面の子供達は淡々とした様子で返してくる。

 

「贅沢?ワガママ?それは、誰もが望む幸せじゃないかな?」

 

「それなら、幸せを願わないで君はどうやって生きるのかな?絶望して生きていくの?」

 

「はぁ……とにかく、私の記憶が戻るんなら早く戻して欲しいんだけど。今は急がないと、八坂と天津甕星が何をしでかすか分からないんだ」

 

しかし、それでもお面の子供達は平然としたまま、内心穏やかではない私との会話を続けてくる。

 

「それなら大丈夫だよ。君と椿ちゃんの記憶が戻るまでは、アイツらも行動はしない」

 

「だけど、君ら2人の記憶が戻らないと分かれば、また行動を起こすよ。そうだね……そう考えたら、これはある意味では完全に詰んでいるかもね」

 

「詰んでるって……どういう事だよ、そりゃ?」

 

「それだけ、君らの本来の力は扱いずらいもの。それなのに、そこへ相反する力を加えられようとしたから、綾ちゃんも椿ちゃんも……君ら2人の力はかなり異質なものに変化してしまったんだ」

 

「その時の記憶を封じる事で、暴走していた君達の力を抑える事には成功した。だけど、白狐と黒狐によって椿ちゃんが妖狐に戻った事を切っ掛けに、君らの記憶の封が緩くなってしまった」

 

「ほら、ご覧――」

 

そして、お面の子供達が指差す方へと振り返ると、そこには1枚の巨大な札が四方から伸びた鎖によって空中に固定されているのが見えた。

 

ここが私の心の中であるという認識からビックリはしなかったけれど、その光景の異質さには思わず目を丸くしてしまった。

 

「これは……鎖が外れかかってて、札も消えかかってる……!?」

 

「君と椿ちゃんに施されたこの記憶封印の術、かなりのものでね。発動から61年経つと、封印した記憶が消えるようになっているんだ。それによって消えた記憶は、もう元に戻る事はない」

 

「そして丁度、明日がその61年目になる所だったんだよ。もちろん、椿ちゃんと同じくね」

 

「いやギリギリってレベルじゃねーぞ!というか椿と同じ時期に使われたって事は、私も割とおばあちゃんなの!?」

 

そんなショックのあまりにお面の子供達へ振り返ると、その子達は難しいと言いたげに首を傾げながら腕を組んで答える。

 

「う〜ん、それは捉え方にもよるかもね」

 

「何せ、君は術が発動してからの殆どの時間を、時を凍結させる術によって当時の姿のまま過ごしてきたからね」

 

「時を凍結させる……つまり、コールドスリープって感じか?」

 

「まぁ、今の時代で例えるならそれが1番近いかな」

 

なるほど、それなら肉体的には椿よりかなり歳下って事に……って、それならそれで気になる事が増えてるんだけど?

 

「じゃあ……それがどうして、今になって色々思い出したりする事に?」

 

「うん、刺激が強過ぎた。君のオジサンは、記憶封印の術で完全に敵から逃れられると踏んで、現代で君を凍結の術から解放したようだけれど……」

 

「それでも、過去と関係のある者やそれらに関する物との接触。そういった数々の刺激が、椿ちゃんと同様に記憶封印の術に影響を与えてしまったのさ」

 

なるほど……そう言われてみれば、確かに私も椿と同じような形で、少しずつ記憶が戻っていた事について納得がいくな。

 

「だけど、さっきも言ったように記憶を戻す事で幸せになるとは限らないよ。むしろ華陽も茨木童子も、そして八坂や雫も、君ら2人を更に容赦なく付け狙うだろうね」

 

「私達の持つ力を求めて……って訳か。だけど、それならそれで何で皆、最初から私達を本気で狙ってこなかったんだ?今までの戦いからしてみると、まるで小手調べでもされてるような感じがしたぞ?」

 

そう連中の行動の矛盾を追及する私とは対称的に、お面の子供達は全く変わらず淡々と話を続ける。

 

「君と椿ちゃんの力はね、使いようによっては妖怪と人間のどちらを救う事も、そして滅ぼす事も出来るのさ」

 

「なっ!?そこまでの力が、私達に……?」

 

「だけど、君らは力を扱えずに、記憶と共に永遠に封じられようとしていた。きっと、彼らは焦ったんじゃないかな。このままでは自身の計画を進められなくなる……ってね」

 

「だからこそ、誰もが君らの記憶を蘇らせようと様々な策を61年間の中で巡らせた。でも……」

 

「……私も椿も、記憶が戻らないままタイムアップ間近になっちゃったって事だな。それで、殆どの敵の勢力は予め立てていた、私達の力が無くても進められる計画の方にシフトしていった訳か」

 

その私の言葉にお面の子供達は頷きながらも、片手を狐の形にして私の方に向けてくる。

 

「そんな中でも、華陽だけは君ら2人を狙っていたけれどね。何故なら彼女の目的は君ら2人の力じゃなく、妲己の身体の在処を見つける事だから。だから、それが中々達成出来ない事に焦ってか、あんなにも妖魔人を送り込んでいたようだね」

 

「そして亰嗟の方、茨木童子は苦肉の策に打って出た。諸刃の剣ともなる、十極地獄の召喚。本当なら君らの力を奪って、反転させた世界で召喚させたかったみたい。そうしないと地獄の侵食によって、妖界から力を得ている亰嗟にとって大打撃で都合が悪いからね」

 

「それなら、わざわざ無理して召喚する必要なんて無かったんじゃ……」

 

「そっちも、どうやら時間が無かったみたいだよ。茨木童子の、命の時間がね」

 

「えっ!?」

 

その言葉には、思わずビックリした声を上げてしまったぞ。

あんなに強い奴が何かの病気……いや、だけど妖怪は病気を起こさないって聞いているから、他の理由で命が尽きかけているのか……?

 

「その理由とかは分からないのか?」

 

「うん、それは僕達も知らない。でもね、茨木童子も焦っているんだ。だからこその、この苦肉の策。妖界を先に地獄へ変えていき、全てが地獄に置き換わる、その直前に自らの全妖気を使って反転鏡を発動する。そして、人間界と妖界が反転すれば――」

 

「人間界を、地獄に……ってか。はぁ〜……全く、アンタらは誰の野望とか計画とか何でも知ってるんだな」

 

半分皮肉混じりに、そう私は子供達に言ってみた。

少しは彼らの正体も掴めるかと思ったけれど、それでも子供達は態度を変えないまま答えてくる。

 

「だって、僕達は常に見ているから」

 

「この世界の上から、神の一部としてね」

 

なるほど、神様の一部ですか……あれだけ色々と知ってる様子から、何となく妙な予感はしていたけどね。

 

「さぁ……次は、君の過去の事。その記憶は、その札の中に封じられている。だから、それに触れば君の記憶は蘇る……だけど、これが最後の警告だよ。君の記憶は、蘇らせない方が良い」

 

「蘇らせない方が良い記憶、か……」

 

それを聞いてから、私は深く息を吸い込んでゆっくりと吐き出して、今までの事を思い浮かべる。

 

――華陽との事や亰嗟との事、そして八坂との事など、敵対してきた全ての相手の事。

 

――色々な妖怪と触れ合い、遊んだりキツい修行をしてきた事。私を支えてくれている、全ての人達の事。そして……何があっても椿を守ると決めた、約束の事。

 

そういった経験してきた全ての事を、私は思い返す。

その中で得た私の考えや想いは、もう迷う事なく1つの道に決まっていた。

 

「私は、立ち止まらないよ。例えどんな過去の記憶だろうと、皆を……椿を守る為に、それを糧にして進み続けてやる。華陽も茨木童子も、そして八坂も、敵対する奴を全て止める為にも!」

 

「なるほど……僕達が聞くまでもなく、とっくに決まっていたみたいだね」

 

「ああ、そうだよ。きっと椿も、過去から目を背けたりなんてしないハズだ。だから私も隣に並び立てるように、自分の事は自分で向き合ってみせるよ」

 

そう決意の言葉を吐き出し、私は目の前にある巨大な札へと手を差し伸べた。

 

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