私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第陀話 惨劇は止まらない

 

9本の白金に輝く尻尾を振り回し、幼い椿は小さく微笑みながら凄まじい浄化の波で周囲を薙ぎ払っていく。

 

ほんの一瞬で放たれた衝撃波は、椿の両親である金狐さんや銀狐さん、狐2人やオジサンどころか天狐様をも吹き飛ばす。

そして、華陽や妲己さんも同じように尻尾の攻撃で飛ばされ、その場に居たほぼ全員を行動不能に追い込んでしまった。

 

しかし、そんな中でも八坂は占い用の水晶ほどの大きさの黒い玉を守るように、必死で抱え続けている。

 

『くっ……!脱神となってしまったが、この方だけは……!』

 

感じる力の質から察するに、あれは私と椿が目撃した天津甕星とかいう神様の脱神と同じものだ。

 

だけど、八坂は天狐様に仕えていたような感じでもあったし……そんな人物が、どうしてこんなに多くの神様を脱神として従えていたのかが謎だな。

 

そんな事を考えている間に、幼い椿は宙に浮いた状態で八坂の方へと向かっていく。

 

『さて、そこの守り人。名前は確か、八坂……八坂……?あぁ、貴方まさか“八阪”ですか?ふむ、なるほど……』

 

『くっ……“姫”、正気に戻るのです。我々の使命は、今はまだ果たすべき時ではありません。烏森の娘も、完全な覚醒にはいまだ……!』

 

『そう言いますが、八阪。貴方のその行動も、本来の使命とは違いますよね』

 

『ええ……その通り。これは、私個人の私情だ』

 

『それは使命とは関係無い。そして私達に、そんな不確定なものは必要無いでしょう。付き人とあろう貴方が、そんな失態を犯します?八坂、消えますか?それとも、あの場に戻りますか?』

 

それにしても、幼い椿と八坂は一体なんの話をしているんだ?

 

あれだけ椿が冷たい眼差しで見下ろしているのに、八坂は全く動じずに返事をしているけれど……その本来の使命って何なんだ?それにあの椿の言いよう、八坂は以前に何をやらかしたんだ?

 

そんな事を考えていると、八坂と向かい合う椿の後ろで金狐さんと銀狐さん、そして幼い私がヨロヨロと立ち上がるのが見える。

その眼差しには諦めの色は無く、むしろ何としてでも椿を止めようと考えているようにすら見えた。

 

ついでに華陽も何とか立ち上がってフラフラになりながらも逃げる隙を伺っていたが、倒れたまま睨みつけてくる妲己さんに気圧されて、それ以上は動けないでいるようだ。

 

『ふふ……我が子ながら、中々の力だな』

 

『えぇ、あなた。これなら、いずれは私達を越す事も可能かもしれないわね』

 

それにしても、こんなヤバい状況なのに金狐さんと銀狐さんは誇らしげに喜んでいられるな〜……。

 

すると、そんな2人の後ろで華陽が恨めしげに椿を見上げていた。

 

『くっ……まさか、こんな事態になるとは思わなかったわ。更にとんでもない事になる前に、ここから逃げさせて貰うわね!』

 

『そうはさせないわよ、華陽!妖異顕現――なっ?!いつの間に、逃げる準備を!?』

 

だけど、もう戦闘に加わるつもりは無かったらしく、殺生石を持ったまま自身の後ろに人間界と妖界を繋ぐ空間を展開していた。

 

『こうなったらダメ元よ!妖異顕現、影糸縛(えいしばく)!』

 

それでも妲己さんは相手を捕まえるべく、自身の影から黒い縄のようなものを妖術で操る。

しかし、それは華陽に向かう途中でUターンして、逆に妲己さんを縛り上げてしまった。

 

『くっ……な、何で……!!』

 

『うふふふ……妲己ぃ~?私とアンタは元々、同じ妖狐だったのよ?妖術も当然、同じものが使えるのは当たり前じゃない。それにアンタは、九尾の意志の分身である私には逆らえない。丁度良いから、このまま一緒に逃げるわよ〜』

 

そう言って華陽が妲己を影の縄で引っ張って空間に引き込もうとした時、その華陽の後ろには幼い椿がいつの間にか立っていたのだ。

 

『なっ……! いつの間に?!』

 

『あなたは完全に、薄汚い私欲にまみれていますね。そういう我欲に囚われた者達がいるから、この世界は酷く汚れていくのです。今後が更にいっそう汚れていくのなら、今この場で私が消してあげます。――はぁっ!』

 

幼い椿が華陽に向けて手を広げたかと思うと、その瞬間に相手の足元から青白い柱のような炎が吹き上がり、影の縄で繋がっている妲己さん諸共に上へと吹き飛ばしてしまった。

 

『きゃぁぁあ!!』

 

『うっ……!?くぅ……っ!』

 

『妲己!!』

 

そして、妲己さんは人間界と妖界を繋ぐ空間の裂け目へと落ちていくが、間一髪の所で黒狐さんが半身を乗り出して彼女の腕を掴む。

 

華陽の方も同じく空間の裂け目に落ちはしたものの、その尻尾の何本かを近くの木々や鳥居に巻き付け、ぶら下がる形で何とか持ちこたえているようだ。

 

『冗談じゃないわよ、この私が……くっ!あっぶないわねぇ!』

 

華陽は受けたダメージが余程に大きかったからか、よじ登ろうとしても上手く動けていないみたいだ。

 

しかし、それは妲己さんも同じ状態だったらしく、黒狐さんに引き上げてもらっていなければ、今にも落ちてしまいそうな程、フラフラになってしまっている。

 

『はぁ、はぁ……間一髪だったな。妲己、大丈夫か?』

 

『なによ……なんで、私なんか助けるの?』

 

『フン、何を言っている。妻だからに決まっているだろう』

 

『く、黒狐……』

 

それにしても、この2人が互いに照れ臭そうにしているのを見ると、何か複雑な気持ちになるな。

 

それが一体どうして、妲己さんの魂が椿の中に入る事になっちゃったのかが分からないけど、きっとこの先の思い出す記憶に答えがあるハズだ。

 

『うっ……くっ!はぁ、はぁ……あっぶないわねぇ!この吹き抜けの底は人間界と妖界の狭間になっているのよ。こんな所に落ちたら最後、どんな大妖でも脱する事は不可能なのよ!』

 

『ふむ……そのつもりで落としたのですが、しぶといですね』

 

何とか這い上がってきた華陽に向かって、幼い椿は今度こそトドメを刺そうと片手をかざす。

 

すると、その瞬間に椿の方へ狐の形をした金色の炎が2つ飛びかかって激しい爆発を起こす。

 

よく見れば、椿の後ろには白狐さんが瞬間移動の如くスピードで移動してきていたようだ。

しかし、椿は白い膜のようなバリアーを張って今の攻撃を防いだらしく、その身体には全くといって良い程にダメージは見当たらない。

 

『ふむ……一体、何のつもりですか?』

 

『椿!いい加減、元に戻れ!妖異顕現ーー』

 

『邪魔をするのなら、その存在ごと消しますよ』

 

その攻撃に対して椿が白狐さんに向けて九尾の尻尾をもたげた時、今度は銀色の雷が彼女の手足を縛って動きを封じる。

この術から感じる妖気からして、どうやら銀狐さんが発動した拘束用の妖術みたいだ。

 

『そうはさせないぞ、椿!少し準備に時間がかかったが……これよりお前の、その忌まわしき力を封印する!』

 

そう言いながら銀狐さんは金狐さんと共に椿を前後から挟む形で取り押さえる。

 

『ふふ……私達にも元々、神妖の妖気が備わっているのよ。椿、この『封印』と『解印』の力を元に、白狐の力を使えば貴方を元に――っ!?』

 

そして金狐さんが銀狐さんと一緒に椿の頭を片手で押さえて何か大きな封印術を発動しようと白狐さんの方を振り返る。

 

『が、は……っ!あ、や……!?』

 

――だけど……そこにあったのは、私の貫手に身体を貫かれた白狐さんの姿だった。

 

そうだ、私は……あの時、『椿の意思に従え』という"神妖の力"の誘導によって、不意打ちの形で白狐さんに致命的な傷を負わてしまったんだ!!

 

『そんな……嘘でしょう!?綾ちゃんが完全ではない九尾の力に屈するなんて……』

 

『あら……誰が九本だなんて言いました?そもそも、もう私は九尾ではありませんよ。だから、ほら……尻尾の数なんていくらでも増やせます。先程の不完全な九本でも苦戦していた貴方達が、これだけの数を防げますか?』

 

――だけど、惨劇は止まらない。

 

驚愕と絶望の表情を浮かべた両親や黒狐さん……そして私のオジサンに向かって、幼い椿は数えきれないだけの数の尻尾を展開して、嬲るように彼らを傷つけていく。

 

嘘だ……違う、椿はこんな事をするような人じゃない……!

 

――そう思った時、そんな恐ろしい記憶を目の当たりにしている私に向かって、例の狐面を付けた子供達が再び姿を現した。

 

『だから、言ったでしょ?君と椿ちゃんの封じられた記憶は、今まで以上にキツいよって。それでも、選んだのは君だ』

 

「あぁ、分かってるよ……だけど、こんなのって……椿が、あんまりじゃないか……!」

 

『だからこそ、君は見なければならない。それこそが君の選んだ道で、君の為すべき事を封じている記憶なんだから』

 

その狐面の子供達の言葉で、流れ込んでくる記憶に苦痛を感じていた私は目を覚ます。

 

そうだ……私は何があっても椿を守ると、初めて出来た親友を守ると決めたんじゃないか。

 

過去の妖界の伏見稲荷で起こしてしまった、椿の罪……それを見届け、彼女の助けになる事を!

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