私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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幕間 番外編 その拾 もう1人の親友

 

私、如月 雪……って、そんな事やってる場合じゃない。

 

『椿~!!何処じゃあ!!』

 

『何処に居る!椿!!』

 

今、家の妖怪達は白狐や黒狐、それに私のお母さんも含めて大パニック中。理由?そんなの、綾と椿が居なくなったから……。

 

目が覚めてから、2人が翁の家の何処にも居ない。

 

うーん、おかしい……昨日の夜は、ちゃんと2人とも布団で寝ていたのを見てる。

綾は私に正面から抱きついてグッスリしていたし、椿も里子の尻尾を抱いて泣きそうな顔で寝てた。

 

「……!!」ドタドタドタ("綾!椿!何処にいる!?"と描かれた看板持って爆走)

 

「綾ちゃ〜ん!椿ちゃ〜ん!出てらっしゃ〜い!!」

 

ちなみに私は、デカく描かれた看板を持った綾のオジサンと、自称綾のオカあさんこと丘魔阿さんと一緒に庭を隅々まで捜索してる。

……たまに丘魔阿さんが「出てこいやァ!!」ってブチ切れてうるさいけれど。

 

「はぁ……どこ行ったんだろう、2人とも」

 

「あっ、雪さん……その、大丈夫ですか?」

 

後ろから声を掛けられて振り返ると、そこには幼い猫の女の子が心配そうな表情で私を見ていた。

 

「貴方は確か、美亜の妹の……美弥子、だったっけ。身体の方は、もう大丈夫なの?あの時、暴走した綾から力を吸収してから大変だったと聞いているけれど……」

 

「はい、あの時は皆さんのお陰で何とかなりました。それで、今は美瑠や酒呑童子さんと一緒に、綾さんと椿さんを探しているのですが……そちらも、見つかりませんか?」

 

「うん、全然。5分おきにSNSのグループにメッセージは送ってるんだけど、既読すら付かないの」

 

「私も同じです……やっぱり、あの旧校舎で何かあったんでしょうか」

 

そうなると、2人で翁の家から出ていったと考えるべきだと思う。

 

何せ、旧校舎で綾と椿は奥まった部屋に閉じ込められていて、何とか開いた時には失踪した人達と一緒にグッタリと倒れていたから。

それから半年も眠っていたかと思ったら、私達へ何も言わないまま何処かに行ってしまった。

 

「はぁ……綾と椿のバカ。何処に行くのかくらい、せめて書き置きとかくらいしておいて欲しいのに」

 

「もしくは、誰にも迷惑をかけたくなかったのかもしれませんね……」

 

「それなら、尚更。ファンクラ――じゃなくて私がどれだけ心配してるのか、分かっているのかな」

 

「……だからこそ、だと思います」

 

それなら、2人が行きそうな場所を片っ端からあたるしかなさそうだけど……何処に良く行っていたのか、全く見当もつかない。

 

そんな中、庭の池の方から必死に2人を探す声が聞こえてきた。

 

「椿姉さ〜ん!!綾姉さ〜ん!!何処に居るんすかぁ!!」

 

「楓……流石に池の中とか軒下とか、そんな所に隠れてはいないと思う」

 

「うぅ〜……くノ一の自分だったら、絶対そこなら見つからないと思うっすけど……」

 

翁の家は忍者屋敷じゃないんだから、それはいくら何でも有り得ない。というか、そこなら私もさっき散々探したから間違いない。

 

問題は翁を含めた大人数で捜索しても、家の地下にあるセンターにも何処にも2人が見つからないという事。

 

だから、今は翁が他の所にも連絡をとっていて、外に出ていった2人を近くで見かけなかったかとかを聞き込んでいる状況になってる。

 

はぁ……全く綾も椿も、本当に身勝手。

 

貴方達は2人とも、こんなにも色々な人から愛されているのに。

急に居なくなったら、こんなにも必死で心配で探してくれるのに……そんな事も分かっていなかったの?

 

そんな事を考えながら溜め息を吐いていると、翁の家に星熊童子こと伊吹がやって来ていたのが見えた。

 

「久しぶりだね。椿と綾は、もう起きているかい?」

 

「伊吹さん、酒呑童子から連絡受けていないの?今、あの2人は家の何処にも居ないって話」

 

「ふ〜ん、そうかそうか……で、今は酒呑は何処に?」

 

「そういえばさっき、確認したい事があるって翁の方に向かっていったと思うけれど……」

 

「なら、僕達も向かおうか。彼の推測が正しければ、きっと最後に椿や綾と共に行動した者を集めている頃だと思うよ」

 

そう語った伊吹の表情は、普段の飄々とした態度が嘘のように真剣そのものといった様子になっていた。

そんな顔から只事じゃないと直感し、私は酒呑童子から話を受けた里子と同じく、皆を集める為に足を急がせた。

 

◇◇◇

 

それから皆を地下の妖怪センターに集めてきた後、尋常じゃない様子で黙り込んでいる酒呑童子と伊吹は、皆の質問に対して真面目に1つ1つ答えていく。

 

そして今、酒呑童子は翁と何かを話し込んでいる様子だ。

 

「あ~なるほどな。ったく、八坂の野郎か……」

 

「酒呑童子よ。お前さんと星熊童子は、八坂の事を最初から怪しんどったのか?」

 

「いいや……その正体は俺達でも知らねぇし、奴がやろうとしていた事も知らなかったぜ。ただ奴が、ある脱神を匿っていたというのを、耳に挟んだ。だが……」

 

「うむ……あれはもう、存在していないはずなんじゃ。あの儀式をやらなくなってからは……な」

 

「それ以前に発生していた脱神は、妖界の伏見稲荷で起こった事件以来、その姿を見ていなかっただろう? だからよぉ、どういう事かと思ってな、ちょいとその確認をし直そうとしていた所で……」

 

「うむ……椿と綾が消えたんじゃ」

 

脱神?妖界の伏見稲荷で起こった事件……?いったい、何がどういう事なの?

白狐と黒狐以外の皆も、まるでチンプンカンプンといった感じだし……。

 

「ということはだ。あの2人……十中八九、その時の記憶が戻ったんだな」

 

「何じゃと?!」

 

えっ!綾と椿の、記憶が……!?

私は昔の2人を良く知らないけれど、その驚きは彼女達を知っている皆と同じくらいに大きかった。

 

「俺はな、八坂から力ずくで一部始終を聞き出し、裏稲荷山で何があったかは知っていたんだ。……だが、こんなものは教えるもんじゃねぇと思っていた。それに、だ……そもそも蘇るとも思っていなかったぜ。アイツの様子からしてな。だが、あの記憶の封印を解く程の刺激を受けた、となると……」

 

「その、消え去ったと思われていた脱神を見た……のじゃな」

 

そう翁が呟いた瞬間、呆然としている皆の中から、白狐と黒狐が慌てて前のめりに出てくる。

 

『そんな事よりも、椿は何処にいるんじゃ?!』

 

『それにだ……記憶が蘇ったとしても、アイツと綾は何で俺達の下から居なくなったんだ?!』

 

すると、そんな2人を宥める……というより、「お前ら少しは落ち着け」と言いたげな様子で伊吹が口を開いた。

 

「はぁ……あのさぁ、それくらい分からないかい?愛しい人達を殺した記憶なんて思い出したら、それをやった当人は傍に居たくないと思うのが普通だよ。……それに綾の方は大方、そんな彼女を支えたい一心で着いていったんだと思うけれどね」

 

『むぅ……しかし、愛しい者達じゃと?』

 

「白狐、黒狐……君らの他に誰が居るんだい?」

 

『なっ……ぬ?』

 

『俺達が、椿に?』

 

その伊吹の言葉には私だけじゃなく、その場に居た皆が目を見開いて驚いている。

 

あの優しい椿が……かつて2人を殺した?

いや、そんなハズない……きっと、あの力が暴走したせいだ。だけど、それを椿は自分のせいだと……多分、思っているかもしれない。

 

それなら、尚更……綾だけじゃなく、私達にも相談の1つはして欲しかった。だって……あの2人だけだと、自分達だけで抱え込もうとしちゃう所があるから。

私だって、綾と椿の親友なのに……。

 

『くそっ……!』

 

『椿……!』

 

「おい、待てや。2人とも、何しに行くんだぁ?」

 

『何って酒呑童子、貴様……椿を連れ戻しにじゃ!それに、綾も――』

 

「それを拒否されたらどうするぅ?"気にするな"って、そぉんなお優し~いお言葉でもかけてやるのかよぉ?綾ほど切り替えが上手いならともかく、椿はそんなタマじゃねぇだろうがよぉ?」

 

『くっ、貴様……!』

 

白狐と黒狐が慌てて外に出ようとするのを、酒呑童子が厳しい言葉で引き止める。確かに、それは向こうの言う通りかもしれない……ただ迎えに行くんじゃ、きっとダメなんだって。

 

「言っただろう。お前達はな、椿に甘すぎるんだよ。良い~機会だ、アイツが何を思って出て行ったのか……それを良ぉ~く考えてみな。誰よりも優しいのは、いったい誰なんだ?」

 

『椿……』

 

『お主というやつは……』

 

そして、その酒呑童子の言葉で白狐も黒狐も何も言い返せなくなって黙り込んでしまった。

すると、その2人と入れ替わる形で、今度は翁が鬼の2人に話しかける。

 

「して、酒呑童子に星熊童子よ。お前さん達は、椿と綾の行く先に目星がついとるのか?」

 

「まぁ、なぁ……予測で、恐らくだけどな。記憶が蘇ったのなら、2人とも自身の神妖の力が扱える様になっているかも知れねぇ。もしそうだとしたら、俺の得た情報が正しければ、アイツ1人であの組織を潰す事くらい、可能だろうな」

 

「「そんな!2人に、そんな力が?!」」

 

しまった……つい酒呑童子の発言が衝撃的すぎて、ついウッカリ里子とハモってビックリしちゃった。

だけど、あんなに他人想いな2人が組織1つを潰せる程の力があるなんて……やっぱり少し信じがたいかな。

 

「まさかじゃが、椿の向かった先というのは……」

 

「そう、翁の予想通り……今の亰嗟の本拠地、今や地獄と化した旧妖怪センターだよ。何を考えているか分からないが、きっと2人で決着を着けようとしているんだろう。この僕と酒呑を差し置いてね……全く、先に楽しもうとするなんて、箱入り娘達にも程があるよ」

 

その伊吹の言葉を聞いた瞬間、集まっていた皆は息を飲んでスッカリ静まり返ってしまった。

 

綾や椿の考えている事は、半妖の私なんかじゃ多分だけど分からない……でも、皆の為を想って出ていったのなら、きっと無事に帰ってきてくれるハズ。

 

だけど……もう、待っているだけじゃいられない。

あんなに2人に助けられてきたのなら、今度は私も皆も2人の為に何か、出来る事をやれるだけやらなくっちゃいけないんだ。

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