私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾参章 雷霆天撃 〜それぞれの戦い〜
第壱話 私と椿の2人旅


 

幼い頃に自分が犯した罪の記憶を思い出した椿は、皆に迷惑をかけない為に全てを1人で終わらせる道を選んだ。

 

私は過去に何も出来なかった分、どこまでも彼女の隣に立って支える。嫌だと言われても、今度こそは絶対に離れるもんか。

 

それに……きっと椿ほど強力じゃないにしろ、私の力も放置は出来ないぐらいに危険な代物だ。

 

そんな自分が椿と一緒に居たい理由を事実で自分に言い聞かせつつ、妖界に辿り着いた私達は鉄車輪烏のスピードを上げ続ける。

 

「しっかし、こんな状況じゃなきゃツーリングと洒落込みたい眺めだな……」

 

「すごいですね、綾ちゃんは……これだけ不味い状況なのに、そんな事も考えられるなんて」

 

――燃えるように真っ赤な夕焼けが、旧妖怪センターに向かう途中の景色を鮮やかに彩っている。

 

半ば本心から出た言葉ではあったものの、それを聞いた椿の表情は、バックミラー越しからでも分かるくらいに落ち込んでいた。

 

「あのさ、椿……嫌になる程の後悔ってのは、誰にだって多分ある。私は、それを乗り越えろとか言うつもりは無いけどさ……それでも、今は自分がやるべき事に集中して全力で取り組むべきだと思う」

 

「そう、ですね……うん、綾ちゃんの言う通りです。いつまで引きずっていても、良くありませんよね」

 

そうして旧妖怪センターが遠くから見える所までやって来ると、まだまだ距離があるのにも関わらず、大量の鬼達が妖界にいる妖怪達と戦っていた。

 

「ヤバいな……数の差で妖怪の人達が鬼どもに負けてるぞ!」

 

「地獄から次々と呼び出されているようですからね……あんな数がいたら、押し込まれて当然ですよ」

 

「だけど、地獄の侵食は聞いてた話よりも進んでないっぽいね。これも、椿の爺さんや皆のお陰かな。もしくは、茨木童子の方も限界が近づいてきてるって事か……?」

 

「とにかく、考える前に戦って――わぷっ!?」

 

すると、そう考え込んでいた私を叱咤しようとした椿の顔に、聞き慣れた鳴き声と一緒に白いものがピトッとくっついてきた。

 

「ムキュゥゥ!!」

 

「うわっ!レ、レイちゃん?!」

 

「つ、着いてきてたのか!?――って、あだだだ!私のポニテにしがみつくなっての〜!」

 

「ムキュゥ!!ムキュッムキュッ!」

 

どうやら私と椿が二度と家に戻らない事を察したレイちゃんは、小さな霊狐の体でありながらも必死に後を着けてきてしまったらしい。

 

「もう……レイちゃん。君も危険な目に合わせたくないから、心を鬼にして出て来たのに……何で着いてくるんですか……」

 

「ムキュッ?」

 

「あ〜もう……そんなに可愛い顔向けないでくれ。だけどレイちゃん、ここから先は本気で危険なんだからな。出来たら、椿の爺さん家に……」

 

「ムキュッ!」

 

参ったな、こりゃ……一つ目のクリクリした目を輝かせながら、ピッタリ椿の髪にしがみついちゃったぞ。

 

「うぅ〜、しょうが無いなぁ……一緒に連れていきますよ。だけど、良いですか?危なくなったらすぐに逃げてね。それと、僕達を助けた半年前みたいな無茶は絶対に駄目!」

 

「ムキュ!」

 

「すごく元気良く返事をしたけど……これ、本当に分かっているのかぁ?椿、やっぱりレイちゃんは何とかして帰ってもらった方が……」

 

「どっちにしても、難しいですね……レイちゃんが僕から離れてくれないし、このまま行くしかないです」

 

そうして仕方なくレイちゃんを連れていく事になって2人で溜め息をついていると、近くの茂みからガサガサガサッと激しく木々の揺れる音が聞こえてくる。

すると、真っ赤な体色をした鬼が突然現れ、丸太くらいの大きさがある金棒を握り締めて私達を睨みつけてきた。

 

「妖怪かぁ?死ねぇ!!」

 

「うわっ!ちょっ、いきなり金棒振り下ろすとか礼儀もクソもない奴だな!!」

 

「あっぶないなぁ……狐火!」

 

「ぐぇぇああああ!!」

 

――と思ったけど、椿が狐火でアッサリ3秒丸焼きクッキングにして倒しちゃったわ。

 

う〜ん、残念……新しく身につけた私の力を椿に披露したかったんだけどな。

 

「レイちゃん……こうなったらもうしょうが無いけれど、本当に危なくなったら逃げてよね?」

 

「ムキュッ!」

 

すると、また元気な返事をしたレイちゃんは体を膨らませ、私と椿を背中に乗せる体勢をとってきた。しかも、既に私の鉄車輪烏をモヒカンみたいな感じで、器用に頭の上に乗っけているし。

 

どうやら、これから私達が行こうとしている所が分かる上に、そこへ連れていってくれるみたいだけど……心なしか、レイちゃんの雰囲気が普段よりも穏やかで優しいように感じるよ。

 

「レイ……ちゃん?――うわわっ!?」

 

「あわわわ!乗ったそばから一気に急上昇するなよ〜!というかレイちゃん、何か今回やけにテンション高くないか!?」

 

そんなレイちゃんの移動スピードに私も椿もアタフタしていると、気付けば五条通りの上空近くまで飛んでいたみたいだ。

 

ふと街を見下ろしてみれば、その京都でも一番大きな道路では妖界の妖怪達が、地獄から呼び出された鬼達と真正面からぶつかり合う激戦状態となっている。

 

――かつて茨木童子が十極地獄を呼び出した直後、椿の爺さんからは「地獄の鬼は妖怪ではなく、そもそもの生まれが全く違う"正真正銘の鬼"だ」という話を聞かされた事を思い出した。

 

それ故に、妖怪センターでも地獄の鬼は妖魔以上に危険な存在として、「遭遇したら戦ってはいけない相手」に定義付けられているそうだ。

 

だけど……!

 

「黒焔狐火、大炎火(だいえんか)!!」

 

「妖異変化、烏鳩!からの――凍華繚乱、豪氷雪(ごうひょうせつ)!!」

 

私も椿も、下で戦っている人達を放っておける訳がない。

 

だから私達はレイちゃんの上から、何もかも燃やし尽くす黒焔と、何もかも凍てつかせる凍華を降らせて、大量に蔓延っている地獄の鬼達を一網打尽に倒しておいたよ。

……とはいえ、ここで一気に減らした所で茨木童子の妖気を元に、地獄のトップである閻魔大王が復活させるから焼け石に水かもしれないけれどね。

 

「うぉ?!おぉ……こ、これはいったい?」

 

「おい、あそこを見ろ!空中に誰か居るぞ!」

 

「あっ、あれは!」

 

すると、空を見上げた妖怪達がレイちゃんに乗っている私達を見つけたみたいだ。

まぁ、仕方ないな……あれだけ派手にやれば嫌でも目立つだろうけど、流石に誰も私や椿の事を詳しくは知ら――

 

『妖怪&霊能力アイドルコンビの、椿ちゃんと綾ちゃんだぁぁああ!!』

 

――ないと思ったらコレだよ!!

 

雪ったら、なんて恐ろしい子……まさかカナから受け継いだファンクラブの活動で、ここまで沢山のファンがいたなんて……!

 

あ〜もう!こうなったら腹括るしかないか!

椿も何か諦め気味に溜め息つきながら深呼吸してるし!

 

「どうも〜!皆のアイドル、椿です!」

 

「烏森 綾の現着だ!野郎ども、元気にやってっかー!」

 

『うぉぉぉおお!!!!』

 

それにしても歓声ヤバいですね、うん。

私と椿が戦いの場にいると知っただけで、なんて士気の上がり方だよ……だけど、この状況はひょっとしたら上手い具合に使えるかも?

 

なら――

 

「野郎ども!敵さんは、まだまだやる気満々だ!ここで一番の意地ぃ見せた奴には、私と椿からご褒美をプレゼントするぞ〜!!」

 

「えっ!?あっ……はい!そうすれば、僕達も地獄の鬼達を何とか出来ます!だから皆、頑張ってくださ〜い!!ファイト〜!!」

 

「うぉぉお!!ご褒美きたぁ!!」

「勝てる、100%勝てるぞぉ!!」

「反撃開始じゃぁぁああ!!」

 

そう私と椿が呼びかけた途端、妖怪達の士気は完全に地獄の鬼と戦っていた時より、希望や活気に満ち溢れたものへとなっていた。

 

「椿ちゃんのファーストキスぅぅ!!」

「いや、キスは俺のもんだぁ!」

「椿ちゃんのファーストキスを、お前みたいなキモい妖怪に捧げさせるかぁ!」

「なら、俺は綾ちゃんの膝枕ぁぁあ!!」

「おっ、待てぃ!膝枕には耳かきが付き物だろうがぁぁ!」

「うぉぉあ!綾ちゃんの膝枕に耳かき……ここで死ぬ訳にはいかねぇぇええ!!」

 

でも、あまりに士気が上がり過ぎて何か変な事になってもいるけどな!ご褒美内容とか、そこまで言ってねぇぞ!!

 

それと、おい誰だ椿のファーストキス狙うやつ……心の中で言っとくけど、あの子はとっくにファーストキスを誰かさんに捧げてるからな。

 

あと、ついでに私の膝枕と耳かきを言い出した人。それは真面目に色々と心配だから、この戦いが終わったら出来れば自分から名乗り出て欲しいわ。

見た目が歳下の子に甘えたいという欲求に対する相談はしてやるから、マジで。

 

……何はともあれ、私と椿をアイドルにしてくれた雪には今回ばかりは感謝しかないね。

 

「ちっ……余計な事を……!」

 

すると、そんな中で私達の真下の方で聞き覚えのある声が舌打ちをしながら、生き残った地獄の鬼を雷の妖術で倒していたよ。

 

「げっ!?雷獣さん、生きてたんですか……」

 

「当たり前だ!"げっ!?"とは何だ、"げっ!?"とは!!」

 

そんな私の言葉にブチ切れてるのを見るに、まだ生きてられる元気は残ってるみたいだな。

 

まぁ……あんな無様を晒した手前じゃ、私達に応援をお願いしに来たりしないとは思ってたけど……まさか、こんな所で戦い続けてたなんてね。

 

「雷獣さん!大丈夫ですか?!」

 

でも、心優しい椿は全身ボロボロの相手を放っておけなかったからか、レイちゃんに指示を出して雷獣の近くに降り立たせた。

 

「何だ……たった2人で来たのか?アイツらはどうした、いつも近くに狐2人が居ただろう?」

 

「僕と綾ちゃんだけで来ました。それより、貴方の怪我を……」

 

「触るな!なんでテメェら2人で来てるんだ?あぁ?!」

 

だけど、そんな彼女の手を雷獣は乱雑に振り払った。頑固なのは相変わらずだけど、こうも人の好意を蹴っ飛ばすのはいけ好かないな。

 

「そりゃ今は危ないからね……私達の力が、皆を巻き込んじゃうかもしれない」

 

「ふん……さっきみたいに、か。フン、確かに……お前ら自身の妖気も変わってやがるな」

 

「ううん……違います。さっきのは僕も綾ちゃんも、寄ってくる蚊を手で追い払っている感じで、殆ど妖気を込めていないよ」

 

「なに?!」

 

わお、めちゃくちゃ雷獣が狼狽えてるわ。

だけど実際、アレでも私達は大した妖気を使ってなかったからね……"神妖の妖気"を解放したら、どこまで大変な事になるか分からない。

 

とはいえ、ここからは身につけた新しい力も使わないと、きっと苦戦は免れないだろうな……。

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