私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐話 "喜び"の力、"青龍"

 

ひとまず椿の治癒の妖術で一応の応急処置を受けてくれた雷獣は、バツが悪そうな表情をしながら私と椿を睨みつけてくる。

 

だけど、それ以上に椿は彼がボロボロになるまで戦い続けていた事に対して怒っているようだった。

 

「雷獣さん……何で、こんな無茶をしているんですか?」

 

「チッ……そんなのは決まっている。俺のせいで、こんな事態を招いたも同然だからな。自分で起こした失態は、自分で何とかする。それくらいしないと、妖怪達のトップは出来ないんだよ」

 

その雷獣の言葉に、椿は少し眉間をしかめて黙り込んでしまう。きっと、相手が思っていた以上に責任感を強く持っていた事が意外だったのかもしれない。

 

すると、そんな2人の後ろから復活した鬼が現れ、不意をつく形で金棒を振り下ろしてきた。

 

「危ない!――妖異変化、"雀躍天・青龍(じゃくやくてん・せいりゅう)!!」

 

「ぐがぁぁあ!!」

 

すかさず私は新たな儀礼衣装を展開し、自らの腕に生えた3枚の直刀で鬼を袈裟斬りにして倒した。

だけど、まだ一撃で殺してはいないよ。

 

「はーい、鬼さん。ちょっと聞きたいんだけど……テメェらのボスって、閻魔大王だよな?」

 

「がっ……ぐぅ……そ、そうだ……」

 

「なら、この妖界の侵食をやってるのも閻魔大王って事でいいのか?」

 

「ち、がう……別の者が、閻魔大王に掛け合ったのだ……十地獄を呼び出した事で、その権限を得やがった。あの妖怪……あの鬼、茨木童子だ」

 

「ほーん、やっぱりね……そんじゃ、お前は地獄で休暇とってて良いぞ〜――そら!」

 

「ぐぎゃあ!!」

 

そうして聞きたい事を聞いてからバッサリ鬼を斬り倒すと、椿は玩具の傘を巨大化させて返り血を防ぎながらも驚いた顔を私に向けていた。

 

「綾ちゃん、その姿は……?何だか、さっきのバイクに似ているような……」

 

「うん、これが"雀躍天(じゃくやくてん)・青龍"……私の中にある"喜びの感情"を、氷霰剱と鉄車輪烏と融合させて身に纏った姿だよ。今までずっと黙っていたけれど……正直に言うと、私は椿と一緒に戦える事が嬉しいんだ」

 

「そうだったんですね……ふふ、綾ちゃんらしいや」

 

「それはそうと、椿の今の力も……私と同じように、新しく?」

 

「えぇ、これが記憶が戻った事で使えるようになった、僕の本来の妖術――"妖具生成"です。ただ、綾ちゃんと違ってまだまだ使いこなせてはいませんけれどね」

 

なるほど……椿が出した物の形から推測するなら、玩具をメインに生成出来る感じっぽいな。

 

例えば今さっき出した和傘は、私が倒した鬼の大量の返り血を浴びてもビクともしなかったし、高い防御性能と弱い妖怪や妖魔を寄せ付けない妖気を持っているみたいだ。

 

すると、そんな中で雷獣が少し感心したような顔をしながら私に近付いてきた。

 

「雷獣さん、まだジッとしていないと……お腹の傷から血が出ていますよ」

 

それを椿は気遣って肩を貸そうとするけど、またしても相手はそれを片手で振り払う。

 

「フン……この程度、問題ない。それにしても、やっぱりな……甘さが無くなったか、綾」

 

「甘さ、ねぇ……うーん、元から甘さなんて投げ捨ててたつもりだったけどね」

 

「お前は、人間のクセに何処か妖怪臭さを感じていたからな。まぁそれは、悪さをしていた人間の奴等全員にも言えるがな……全く、妖怪よりも妖怪らしい人間とはな」

 

「妖怪らしい人間、ね……」

 

その雷獣の言葉に、私を想ってか椿は怒った表情で私と彼の前に出る。

 

「綾ちゃんを、僕の親友を悪人と同じように言わないでください。あの子の力は、誰かを救っているんです」

 

「チッ……テメェも気に入らないな、椿。その人間臭い妖怪が、俺は嫌いだったんだよ。だが、今のお前は違うみたいだな。その眼差し……あの時みたいに、ナヨナヨしてねぇ」

 

「だから……さっき、僕達に自分の本心を話したのですか?自分も人間の姿をしているのに?」

 

「けっ……人間の姿をしていても、妖怪だって事を忘れちゃいけねぇんだよ。外見や文化は構わないが、心まで人間に染まっちゃあ妖怪として終わりだろうが!!妖怪はな、人間を怖がらせてなんぼだ!それをしないと、妖界も消えちまうだろうが!それこそ、アイツらのせいでな!」

 

しかし、そんな雷獣の妖怪としての有り様を聞かされて、逆に椿の方が黙らされてしまった。

 

無理もないね……あの子は、妖怪と人間が共存出来る社会を目指している。

だけど、今の妖怪のヒッソリと隠れる過ごし方じゃあダメな事も分かっているから、雷獣に何も言い返す事が出来ないんだ。

 

だけど、その程度で椿も私も理想を諦めるつもりは無いよ。

 

「だから、俺は歓迎しているのさ、今のお前らをな。アイツらはアレでも戦力になるから、連れて来てくれたら盾に出来たんだがな。それでもまぁ、2人で来たということは、アイツらと決別してきたという事だろう?つまり、お前ら2人はーーぐぉ?!いきなり顔面を殴るやつがあるか!!」

 

「OK、やっぱりテメーとは考えが合わないっつーのは良〜く分かったわ」

 

「違いますよ、雷獣さん。僕と綾ちゃんは、皆と決別はしていません。だけどもう、戻る気も無いです。だって――」

 

「無理に言わなくていいよ、椿。だって今、誰よりも危険な力を持ってるのは……私と椿なんだから」

 

必死に涙をこらえながら喋ろうとする椿の代わりに言葉を紡いだ後、私は両肘にある直刀合計6枚を展開して腕を振り抜く体勢に入る。

そして、それを見た椿も無言で私に向かって頷いた。

 

「全員、その場に伏せろ!!凍華繚乱、残影龍舞(ざんえいりゅうぶ)!!」

 

「皆、綾ちゃんに従ってください!!黒焔狐火、業火狐神(ごうかこしん)!!」

 

本気で妖術を発動した瞬間、私の中には椿と同じぐらいの妖気が一気に溢れてくる。

そして、私の振りぬいた直刀から現れた6体の氷の龍と共に椿が放った巨大な狐の焔は、動いている鬼も逃げる鬼も分け隔てなく消し去っていった。

 

――気付けば、あっという間に五条通りに蔓延っていた地獄の鬼達は全滅していたよ。

 

「なぁ……バ、バカな!!俺達が1ヶ月近く戦っても、全く押し返せなかったのに……それを押し返すどころか、この辺り一帯の鬼を全滅させるなんて……」

 

その光景には、あの雷獣でも目を丸くしてビックリしている。

 

――どうやら、オジサンや金狐さんが封じてくれていたのは、過去の記憶だけじゃなかったみたいだ。

 

だけど……これでも恐らく、本来の椿が持っていた力の半分くらいしか発揮出来ていないと思う。

それは、人間が妖気を術として使う事が難しいのもあるけれど、やっぱり椿自身のポテンシャルがあまりに破格なのが一番の理由だと思う。

 

でも、それでも……私は、もっと椿の傍に居れるだけ強くなりたい。

 

まぁ、それは兎も角として――

 

「ふーん、このくらいで苦戦してたんですね〜雷獣さんって〜」

 

「ぬぐっ……!綾……きさ、ま……!」

 

とりあえず、今までデカい態度をして威張られてた分のお返しで相手を煽っといたわ。

 

だけど、雷獣も完全に力量が私と椿の方が上回っているのを目の当たりにしたからか、それ以上は何も言わずに黙っちゃったぞ。

 

「全く、綾ちゃんも程々にしてあげてくださいね……という事なんで、僕と綾ちゃんはこれから今の亰嗟の本拠地、旧妖怪センターに行って来ます。でも……だからって、増援は要らないですよ。僕達2人で、カタを付けますから」

 

「まぁ、下手に犠牲が出ても困るからね。それと、もしファンクラブ関係の人達が来たらよろしく頼むよ、雷獣先輩〜」

 

「は?おい待て何だファンクラブって、ちょ……何も言わずに飛んでいくなぁ!」

 

これから面倒臭くなりそうな方は雷獣に丸投げしたから良いとして、旧妖怪センターの方はドンドン邪気が濃くなっていって本当の地獄のように混沌としてきているな。

 

「行くよ、レイちゃん!!」

 

「ムキュゥ!」

 

「それじゃあ、旧妖怪センターまで頼むね。一番、邪気の濃い所だよ」

 

「ムキュッ!」

 

そうして私と椿は再びレイちゃんに飛び乗り、雷や竜巻の荒れ狂う空へと向かった。

 

それにしても、いよいよ私も椿も普通に暴走一歩手前な状態まで力を引き出せるようになってきたな。もし、あれだけの力を加減もなく振るってしまったら……考えるだけでもゾッとする話だ。

でも、それはきっと椿も同じように怖がっているかもしれない。

 

だから……この力をフルパワーで振るうなら、十極地獄や茨木童子を相手にした時が最初で最後になると思う。

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