私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第伍話 いつも誰かが

 

――皆さんごきげんよう、烏森 綾です。

 

あれから、たった1人でピンチだった所を皆に助けられた私は、それから里子の作ってくれた妖怪食を食べて妖気を回復したけれど、今は美亜にコッテリと家出の事で絞られています。

 

「さ〜て、綾〜?椿と一緒に出ていった事、な〜んで私達の誰にも言わなかったのかしら〜?」

 

「いひゃい!いひゃい!あででで……再会するなりほっぺ引っ張るなよ、美亜〜!」

 

「これが抓らずにいられる訳ないでしょ、普通。どうせアンタらの事だから、これ以上は誰も戦いに巻き込まないようにって考えで家出したんでしょうけれどね〜」

 

「うぐっ」

 

『やはりか……やれやれ、2人共どこまでも他人想いとはのぅ』

 

そして、動機もドンピシャでバレました。

うせやろ美亜!私、まだ何も言ってないんですが!?

あと白狐さんも溜め息つかないで!割りと本気で、私も椿も2人でやるつもりだったんだから!

 

「全く、あの旧校舎の事をそんなに引きずってるのか何か知らないけれど、私達はチームで仲間でしょう?前に助けられたのもあるんだし、困った時は抱え込まないで相談してちょうだい」

 

「はい、美亜サン……そう言われたら、何も返す言葉がございません……」

 

『こ、この感覚……初めてのハズなのに、どこか恐怖を感じるぞ……』

 

あ〜もう、やっぱり私や椿を前からライバル視していただけあって、美亜は勘が鋭いというか何というか……。

 

気のせいか、普段より猫の耳や尻尾の動きが激しいようにも感じるよ。

記憶が戻ってないハズの黒狐さんも、妲己さんの尻に敷かれてた事を身体で思い出しちゃってるし。

 

「そ・れ・と、雪の方は私以上に怒っているみたいだから、ちゃ〜んと真面目に謝るのよ?いいわね?」

 

「ヒェッ……アッハイ……」

 

それはそうと、雪の方は見ただけでも一瞬で凍りつかされそうな、そんなヤバい感じの眼差しを私に向けてきているんですが。

 

「えっと、あの〜……雪、さん?」

 

「綾、私言ったよね?カナの為にも、綾にも椿にも幸せになって欲しいって。それなのに、こんな事して……バカなの?」

 

さ、流石は雪女の半妖さん……というか、もはや本家の雪女に近づいてるんじゃないですかね?

 

まだ残暑がキツい妖界の夕方なのに、身体全体から放っている冷気で秋の終わり並みに寒いぞ……。

 

「うっ、ごめん……大切な皆の事ばかり考えちゃって、自分の事は後先も何も考えてなくって……」

 

「じゃあ、椿を連れ出したのは――」

 

「そっちに関しては椿が先に出ていこうとしたので私が相乗りしました、本当に申し訳ございません」

 

なので椿、悪いけど後で私と一緒に怒られてくれ!こんな雪の説教、私1人で受けたら多分おそらく絶対に凍え死ぬ!

 

しかも冷気の扱いに長けてる"雀躍天・青龍"の儀礼衣装なのに、それでも寒く感じるのは色んな意味でヤバい!

 

「はぁ、全く椿も何で……というか、綾。その腕の直剣から、私がプレゼントした氷霰剱の妖気を感じるのは……どうして?」

 

あっ、やべぇ……結局、どう言い訳してもダメなやつだコレ。

 

私的には氷霰剱を儀礼衣装に融合させたら戦いやすくて良い感じだったんだけど、雪からしたら一族秘伝の武器なんだから当然ブチ切れ案件ですよね……。

 

◇◇◇

 

「さて、と……じゃあ皆、椿の援護に向かおう。綾、妖気の感知能力で道案内をお願い出来る?」

 

「イエスマム!アッー!」

 

それから雪にミッチリ説教された私は、もはや彼女に言い訳する気力すら無くして、現在は素直に指示に従っております。

 

でも、そんな現在の私の様子を美亜はドン引きした目で見てきたよ。

 

「だいぶ反省したっぽいけど……ねぇコレ大丈夫なの、雪?綾、こんな変な感じになっちゃってるけど……」

 

「モーマンタイ。私の調きょ――もとい、愛情のお陰」

 

そりゃあ説教中、雪の発してる冷気で2回くらい凍え殺されそうになったら、こうもなろうですよ……うぅ、まだ寒気がするような。

 

「それで綾、いま椿は何処にいるの?」

 

「あっはい……何かちょっと感知が難しいな――って、あれ?おかしいな……椿の近くにもう1人、懐かしいような妖気が……まさか」

 

皆と妖怪センターの階段を降りながら、私は椿とは別に感じた妖気に考えを巡らせる。

 

いや、そんなハズはない。あの子は私と椿を庇って、妖魔人となってしまった湯口先輩に――

 

『やっほー!久しぶり、綾ちゃ〜ん!』

 

「どわぁぁぁあ!?カ、カナ!!」

 

な〜んて悲しい事を思い出しかけてたら、床からカナがニョキって壁から出てきたんですが!

……というか、よくよく見たらカナが現れた壁の後ろに椿も隠れてるみたいなんですけど?

 

『椿!!』

 

あ〜ほら、やっぱり皆も気づいてるよ……全く、椿は椿で何で私達が来る事に気づかなかったかな?

 

もしかすると、今の旧妖怪センター内って妖気を感知しずらくなってるんだろうか?

だとするなら、感知能力の高い私が椿の妖気を見つけるのに時間がかかるのも分かるし、先に突入した椿が皆の妖気に気付けなかった事にも説明がつくな。

 

「香苗?!えっ、嘘……何で此処に?」

 

それはそうと、幽霊となったカナの姿を見た雪も目を丸くして驚いている。

でも、そんな隙に椿はコソコソと逃げ出そうとしているけれど、やっぱりというか狐2人に見つかっちゃったよ。

 

『椿よ!それは隠れているつもりか?!』

 

『まさか、こう何度も逃げるとはな……いや、それだけじゃない!こんな危ない事を、綾も巻き込んで2人でやろうとしているなんてな!』

 

そう白狐さんも黒狐さんも問いただした途端、壁の後ろから出ようとしていた椿はその場でビタッと止まり、そのまま身動きを止めてしまった。

 

まさか、美亜の家の時みたいに何かの罠が――

 

「僕は人形、僕は人形……」

 

「って、人形のフリしとっただけかい!!」

 

――ありませんでした!罠ですらなかったわ!!

 

というか、単に椿が皆から逃げる為の苦肉の策かよコレ!?いくら何でも無茶が過ぎるぞ!

 

『何をしとるんじゃ、椿!聞いているのか?!』

 

『というより、人形が喋るか……たわけ。まぁ、可愛いから良しとするが』

 

「わぁぁあ!!声に出てたぁ!黒狐さん離してぇ!」

 

あ、やっぱり狐2人にもバレてた……つーか、皆も視線を逸らして笑いを堪えているから、多分どうやってても普通にバレバレでしたね。

 

すると、いつの間にやら黒狐さんに続いて白狐さんも椿に抱きついていたよ。だけど、その様子を良く見ると、2人とも本気で椿を心配していたみたいだ。

 

「ふえっ?!ちょっ、白狐さんに黒狐さん……?」

 

『どれだけ……一体、どれだけ心配したと思っているんだ』

 

「うっ……」

 

『たった1人でこんな所に乗り込むなんて、何かあったらどうしていたんじゃ……』

 

そんな2人に椿は涙目になって、その抱きしめられている温もりで動揺している様子だ。

 

だけど……誰にも迷惑をかけないようにって決めたハズなのに、実際は愛する人からこんなにも心配されてるのを目の当たりにしたんだから、当然っちゃ当然な反応だよな。

 

でも、な〜んか椿の顔色が悪くなっていってるような……。

 

「嫌……白狐さん、離して……」

 

『むっ……離すものか』

 

『もう二度と、お前をこの手から逃さないぞ……白狐以上にな』

 

「――って、タンマタンマ!2人とも全力で抱きしめ過ぎだ!!」

 

『絞めてる絞めてる!このままじゃ、椿ちゃんが窒息しちゃうよ〜!』

 

「きゅぅ……」

 

『ぬぁっ!?椿!!』

 

『しまった!すまん!!』

 

これはひどい夫婦愛を見た。

敵陣ド真ん中に突入してるのに、私らは一体な〜にコント染みた事やってんだろうね……。

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