私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
第壱話 学校にパトカーってヤバそう
夏手前のやや暑さがある今朝。
私は頬に感じる冷たさで目を覚ますと、そこにはペロペロと頬を舐めてくるレイちゃんと起きている椿の姿があった。
「ムキュッ!ムキュゥ」
「んえ?おぉ〜レイちゃん、椿おはよ〜」
「ふふ、僕と同じ起こされ方してるね。綾ちゃん」
昨晩は椿の尻尾でかなり気持ちよく眠れたからか、身体に感じていた疲れが嘘のようにサッパリして起きる事が出来た。そして私と一緒に散々椿を弄り倒していた2人の姿はもう無く、既に起きているのだと認識する。
そこへ里子が私達へ朝の挨拶をしにやって来た。
「椿ちゃ〜ん、綾ちゃ〜ん!起きてますか〜?」
「里子ちゃん、おはよう」
「朝から元気だね」
その後、椿へ毎度の如くブラを付けようとする里子と一悶着ありながらも着替え終えた私達は朝食の為に大広間へと向かった。その道中で里子にある事を質問される。
「そういえば2人とも。今日はどうやって学校に行くのですか?浮遊丸さんは折檻を受けて軟禁中ですよ」
「・・・忘れてたよ。どうしよ、椿?」
「うん、それならこの子に乗っていくよ」
椿がレイちゃんの頭を撫でる。
「そうだった。私達にはレイちゃんが居たね」
「あぁ、昨日その子に乗る練習をしていたのは、その為だったんだね」
「そうだよ。後この子丸い毛玉みたいにもなれるから、キーホルダーみたく鞄に付けておけば学校の中も安心して連れて行けるんだ」
「へぇ〜考えたね、椿」
「ムキュゥゥゥ!」
レイちゃんが嬉しそうに私達の周りをグルグル回っているのを見ながら歩いていると大広間に到着し、そこで既に食卓に着いている皆の姿があった。昨日、1日外へ出ていったきりだった椿の祖父も戻ってきていたようだ。椿が妖怪に慣れてきたのもあってか、最近は天狗としての姿で生活しているらしい。
『おぉ、起きたか2人とも。さっ、座れ』
「おはよ〜白狐さん」
席に着いて朝ご飯を見ると、今日は焼き魚を主体とした和食のようだ。焼かれていても元気に跳ねるそれは、骨になってまでも動くので注意しながら食べないといけないのが難しい。その分、身は文字通り口の中で「跳ねる」程に美味しいので私としては結構好みなのだが。
「椿に綾よ。今日は学校で半妖達をしっかりと守ってやるんだぞ。決して逃げたり、腰が引けたりしないようにな」
「大丈夫だよ、おじいちゃん。しっかりとやってみるから」
「ひとまず私と椿に任せておいてください!って、うわわわ・・・」
焼き魚に皿から逃げられそうになりながらも元気に返答する。椿も暴れる魚を相手に集中を切らさないまま、落ち着いた返事をした。
「椿よ、何だか雰囲気が違わないか?」
「へっ?な、何が?」
「ま、自分では意外と気づかないものだよね。こういうのはさ・・・」
少し頼りがいのある雰囲気になってきた椿へ私は苦笑いしながら答える。どうやら彼女は祖父の言葉を別な意味に捉えて困惑してしまっているみたいだった。
「2人とも〜、早くしないと学校に遅れますよ!」
「えぇ!?し、しまった!苦戦し過ぎた!こうなったら、一気にカタをつける!!」
「い、急がないと――いだァ!骨が刺さった〜!!」
まだまだ私達が妖怪の世界で生きていくのには苦労しそうだな、と手の甲に刺さった魚の骨を抜きながらそう思った。
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「ひゅ〜!良い眺め〜!」
「よしよしレイちゃん。その調子だよ」
急いで朝食を食べ終えた私達は、大きくなったレイちゃんの背中に乗って上空から学校へとフワフワ飛んで向かっている。フワフワと書いたが実際には浮遊丸よりも速いスピードのようで、これなら余裕を持って登校出来そうな感じだ。
『これは便利だの、椿よ。良い奴に懐かれたもんだな』
『しかし白狐よ、姿を隠しながら移動も出来るからと言って――我々がキーホルダーに変化し、椿や綾の鞄にひっつくのはどうかと思うが・・・』
「仕方ないよ、レイちゃんは2人しか乗せられないんだもん」
椿へそう言ったのは私と椿の鞄に付いている白と黒の狐のキーホルダー・・・つまる所、小さく変化した白狐さんと黒狐さんである。まさかこんな形に変化が出来るなんて、2人の力には毎度の事驚かされてばかりだ。
そんな感じで無事に学校近くの公園へ降り立ち学校へ歩いていくと、校門前に何台もパトカーが止まっていた。
「ん?なんだろう・・・パトカーが止まってる?何かあったのかな?」
「朝からなんか大変そうだね、こりゃ」
すると担任の先生から慌てて呼ばれたのでとりあえず私達は学校へと入ろうとした時、椿の鞄に付いている白狐さんがヒソヒソと話しかけてくる。
『何かあったのか?』
「う〜ん、ここの生徒が事件を起こしたか巻き込まれたかのどちらかかな?」
「わ、私は何も知らないぞ〜」
「正直忘れてたけど、綾ちゃんも大概問題児だったよね。癇癪(かんしゃく)で物壊す癖、早く直した方が良いと思うよ?」
「善処します・・・って、何か妙に学校が変な雰囲気してない?」
怪しげな重い妖気を感じて椿を見ると、どうやら彼女も同じように感じたらしく耳と尻尾を逆立てていた。
『おい、椿。耳と尻尾がまた逆立ってるぞ!?どうした!』
『黒狐、静かにせい!担任が怪しむだろう!』
「ちょっと2人とも黙れ」
その様子に黒狐さんが叫んで白狐さんに止められるが、これではキーホルダーに化けた意味が無くなってしまいそうで困る。
ふと見ると椿が妖気のプレッシャーに圧倒されていたようなので、私と白狐さんは心配して声をかけた。
『腰が引けとるぞ?椿』
「椿、すぐに無理をする必要は――」
瞬間、椿は自身の両頬を叩いて活を入れ直す。
それに私は少し驚きながらも、彼女が自身の意思で前を向いてくれた事に心で喜んだ。
「んっ!」
「お、おぉ・・・ごめん、椿。気にする程じゃなかったよね」
学校へと踏み入ると、例の重い妖気は何処か1箇所にまとまっているのではなく、まるでガスのように学校全体へと広がっているのを感じる。
この学校は学年等で分けられている2つの校舎で構成されている。
だが、それとは別に旧校舎という物がグラウンドを挟んだ学校の反対側に存在していたのを、廊下の窓の外を見て思い出した。
そして窓から旧校舎を見た瞬間、その場所から学校に向けてあの妖気が流れ込んでいるのが感じ取れたのだ。
ひょっとしたら、あの場所で何か起こってしまったのだろうか。じんわりと、嫌な汗が背中をつたった。