私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐話 1人かくれんぼをする意味が私には分からない

昼休み――

 

私と椿は妖怪関連かもしれない事件からか、校長室へと呼ばれる。

 

今日はクラス中が学校前に何台も停まっているパトカーの件で話題になっており、どうやら行方不明になっている女子がいるらしい事が判った。

 

「これは学校にパトカーも来るわな〜」

 

「白狐さん、やっぱり妖怪の仕業?」

 

『どうだろうな。我もこの重い妖気を感じておるが、椿と綾が言っている旧校舎から出ているかどうかまでは分からんからの』

 

とにかく面倒な事になりそうなのは間違いなさそうだ。私達は校長室という場所特有の緊張感を感じつつ、扉をノックした。「どうぞ」という返事が返ってきたので中に入ると、そこには八坂校長先生とカナの他に2人の警察官も居た。

 

「やっぱり来てくれたね。正直、槻本君は怖がって来ないかと思ったけれど・・・よっぽどあの天狗の翁が怖いんだね」

 

「その通りですけど、校長先生」

 

「もうちょっとこう、オブラートに包んだ言い方出来ないですかね?」

 

私達が非常時でもいつも通りな校長先生にため息をつくと、警察官の2人が近づいてきて挨拶をしてきた。片方は男の人で20歳くらいの若さにしては眉が太く、何故か帽子を深く被っていて不自然に感じる。もう片方は女の人で栗色の長い髪を綺麗に流した美人だが、顔が幼いせいかイマイチ歳上といった感じがしない。ひょっとしたら3年の先輩に居るのではないだろうか、とすら感じる。

 

「おぉ、君が噂の感知能力に長けた妖狐の椿さんと人間の綾さんですか。私は池中と言います」

 

「いきなり呼び出すような事をしてごめんなさい。警察の方で貴方達の力を借りたくてやって来ました、犬吠崎(いぬぼうざき)と言います。」

 

私が女の人の警察官に握手されると、ふと手のひらにフニフニと柔らかいものを感じたような気がした。2人から警察手帳を見せられたが身体の位置で男の人の方の名前は見えず、女の人の方で「犬吠崎 涼子」という名前だけしか読めなかった。

 

椿が自身の事を知っているのに困惑して尋ねる。

 

「えっと、何で僕が妖狐って事を?」

 

「椿ちゃん、実はその人達も半妖なのよ」

 

「カナ、本当!?どこも妖怪っぽくは見えないんだけど・・・」

 

私が驚くのを他所に半妖の警察2人は話を進め始める。どちらもあまり気にしてはいない様子だ。

 

「さて、それでは八坂さん。先程の続きですが、行方不明になった女子生徒の事件があったと思われる日の行動を調べました所――」

 

そうやって私達も警察の話を聞こうとすると、カナが私と椿の耳元でそっと2人の警察官の正体について明かしてくれた。

 

「河童と狼女なの」

 

「えっ?」

 

「どういう事?」

 

「男の人は河童の半妖で、女の人は狼女の半妖なの」

 

「あぁ〜なるほど・・・って、止めてよカナ。そんな事思ったら、あの男の人の帽子の中を想像して・・・クク」

 

「ちょ、ふふ・・・変な事言わないで、綾ちゃん」

 

なんて事を言っていると、いきなり私達へ警察から話が振られる。

 

「さて――という訳で椿さんに綾さん。私達は完全に手詰まりでしてね。その君達の感知能力を頼りたい。何か感じた事があれば、小さな事でも良いから教えて欲しい」

 

「へぁっ!?」

 

「槻本君に烏森君。もしかして、この警察官の人の帽子の中を想像していたのかな?申し訳ないけれど今はそんな事をしている場合じゃないんだよ」

 

「す、すいませんでした・・・」

 

完全に面食らった私達は話を聞いていなかった事を校長先生に悟られて注意を受けてしまった。

いつもとは違う校長先生の真面目な様子に身体が強ばってしまう。

 

『椿に綾よ、今のはお主らが悪い』

 

キーホルダーから狐の姿になった白狐さんからも注意を受けてしまったが、二度も言われるまでもない事だ。とても反省している。

 

すると、警察の池中さんが袋に入った靴を取り出した。私達はそれを見て嫌な予感を感じ取る。

 

「生徒が騒ぐといけないので、行方不明になった女子生徒の靴は靴箱から回収しておきました」

 

「ちょっと待って。まさか、その行方不明になった女の子って――」

 

「そう、この学校内で行方不明になっているんだ」

 

椿が言おうとした言葉を、校長先生が続けた。

シン、と静まり返る中で私は話を進めようと声をあげる。少なくともこんな話で何もせず時間を取るより、女子生徒の為にも早めに何か行動を起こした方が良いと直感したからだ。

 

「それってつまり・・・妖怪の仕業である可能性が高いって事?」

 

「だから2人を呼んだんだよ。私じゃハッキリと妖気を捉えられないし、戦闘能力はあまり無いからね」

 

「カナちゃん、そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。白狐さんと黒狐さんも、僕と綾ちゃんが感じている妖気をハッキリとは捉えられてないからね」

 

「まぁ、ガスっぽい感じだから分かりずらいのも頷けるけどさ」

 

申し訳なさそうにするカナへ椿が慰めの言葉をかける。確かに私達が感じている妖気は普通じゃない雰囲気をしており、黒狐さんによるアプリでの調査も時間がかかりそうなのだ。

 

「やっぱり、君達は何かを感じているのか!?」

 

「もし良ければ、簡単にでも構わないから教えて貰える?」

 

私と椿の反応を見て、警察の2人がズイと顔を寄せてきた。危うく池中さんの帽子の中を覗きそうになって吹き出しかけたのを抑える。

 

「えっと・・・重い妖気が、旧校舎からこっちに流れてきてるくらい・・・かな」

 

「うん、私も同じ所から感じて――」

 

「旧校舎だって!?」

 

私達の言葉に、今度は校長先生が驚きの表情を浮かべた。何か知っているかのような素振りをしていて、あの場所に何か潜んでいるのではという疑念を強くさせる。隣に座っているカナも顔を真っ青にしている事から、きっと同じように何かしらの情報を持っているのだろう。

 

「旧校舎はしっかりと入り口を錠で固めて封鎖していたはず。誰か破ったのか?」

 

「椿、あの場所って確か昔に何かあったよね?」

 

「うん、皆が噂してる学校の七不思議で旧校舎がどうのってあったけど、まさか・・・」

 

校長先生の封鎖という言葉で、20年前にかの有名な「こっくりさん」を旧校舎で行って失踪した生徒の話を思い出した。椿と伏見稲荷神社でだべっていた時にそんな話をされた気がしたのだ。

 

「当時ここの校長は別の人だったけれど、事件が明るみに出る事を恐れるあまり現場検証もろくにしない状態で旧校舎を封鎖しただけでなく、警察や行方不明になった女子生徒の家族にも「学校で行方不明になった」事を伏せたのさ。」

 

「そうなると、あれ本当にあった事だったんですか!?てっきり七不思議で良くある作り話だったのかと・・・」

 

するとカナが会話にようやく入ってくる。だが口調は重く、まるで怪談話でもしているかのようにおどろおどろしい。

 

「校長先生、今回は別の遊びで行方不明になったと思います」

 

「そ、それはどういう意味なの、カナ?」

 

「私、今回行方不明になった――その2年の女子生徒のクラスに行って、クラスの半妖の子に何か知っているか聞いてみたの。そしたら、その行方不明になった子はイジメにあってたみたいで、その日も無理やり度胸試しをさせられるんだって言ってたの・・・」

 

「おいおい、電磁鬼は私と椿が捕まえたはずでしょ?イジメなんてもう――」

 

有り得ない――そう言おうとすると、椿が言葉を遮る。その目はかつて自身がされた事が、再びこの学校で起こった事態に怒っているようだった。

 

「綾ちゃん。今回それが起こったって事は多分、僕達の事件の後に起きた正真正銘のイジメだと思うよ」

 

「・・・マジでか、胸糞悪い話だね。それで、居なくなった女子にやらせた「度胸試し」ってのは?」

 

「うん、その子に無理やりやらされた「度胸試し」というのが――「1人かくれんぼ」らしいの」

 

その言葉に都市伝説で知っている私は思わず眉間にシワを寄せるが、どうやら椿や校長先生、白狐さん黒狐さんは知らなかったらしく何の事かと首を傾げていた。

 

「なぁ、これどうすんだよ。皆全然知らないっぽいみたいなんだけど」

 

「・・・皆、ネット見てないの?」

 

「僕・・・ずっと携帯持ってなかったし、家にもパソコンなんて無かったからネットなんて使った事ないよ・・・」

 

「あ〜・・・それなら椿ちゃんはしょうがないね。大丈夫、説明してあげるよ」

 

そう言ってカナが椿の頭を優しく撫でると、椿は無意識なのかフワリ、フワリと尻尾を気持ち良さげに振っていた。

 

「可愛いな〜椿ちゃんは。えっとね「1人かくれんぼ」っていうのは、少し怖い話になるんだけど――って、怖い話って聞いただけで咄嗟に白狐さんの陰に隠れないでね?椿ちゃん・・・」

 

「本当に椿はこの手の話に弱いよね〜。私なんか全然信用してないから、グロテスクな物以外はあまり怖いとも思わないよ」

 

『ほれ椿、情報収集の為だ。観念せぇ』

 

「わ〜ん!怖い話は嫌です〜!」

 

見かねた白狐さんが椿の首根っこを掴んで前へ引っ張り出した。そこへ追い討ちをかけるかの如く、黒狐さんまでもが無慈悲な言葉を放る。

 

『椿、残念ながら妖怪の話なんか全部怖い話に直結してるからな。慣れないと妖怪退治なんてやっていけないぞ』

 

「黒狐さんは相変わらずドSだなおい。・・・カナ、続けて続けて。最悪この2人が理解出来れば何とかなりそうだから」

 

「あ、うん。じゃ、良いかな?実際は怖いというか、絶対にやっちゃいけないという事で都市伝説として話が広まったんだけどね。この「1人かくれんぼ」にはやり方があって、簡単に言うと「呪術」を行うらしいの。――でも、その相手は自分だけど」

 

「それなら私も怪談本で読んだから知ってるよ。でも、それからどうするかは忘れちゃったんだよね」

 

「用意する物はぬいぐるみとお酒、または塩水。後はお米、そして刃物。大道具もあって、テレビかラジオと水を張った風呂桶が要るね」

 

「思い出した!そこから・・・って、椿。カナが実際にやったりした訳じゃない、ただのやり方を説明してるだけなんだからガタガタ震えて怖がらないの」

 

私とカナの怪談トークが盛り上がってきた所で椿を見ると、完全に駄目なタイプの話だったのか白狐さんにしがみついて震えてしまっている。

 

「でも、怖がってる椿ちゃんが可愛いし、このまま続けるね」

 

「ま〜そういう事だよ椿、我慢して最後まで聞こうか。それで、そこからの流れだったね。私から話しても良いんだけど、折角カナがここまで話してくれたんだから、一応ちゃんと説明して欲しいかな」

 

「分かったよ、綾さん。ここからはやり方なんだけど、まずぬいぐるみの綿を取り出して代わりにお米を詰めるの。それと一緒に自分の髪や爪も入れて縫うよ。・・・あっ、それなら裁縫道具も要るね。そしたら何の名前でも良いから、ぬいぐるみに名前をつける。更に部屋を暗くしてテレビやラジオを点けるよ。」

 

「ヤ〇チャやらハ〇坊でも良い訳だね」

 

「よくそんな男の子の作品まで知ってるね、綾さん・・・。そしてぬいぐるみを浴槽に浮べて、刃物を持ってしばらくうろつくの。家でやるなら――風呂場でやって、自分の部屋に向かってうろつけばいいのかな?その後にぬいぐるみの所に戻って、ぬいぐるみに付けた名前で「〇〇、見〜つけた」と言って刃物を刺すの。それからは「次は〇〇の鬼ね」と言って、刃物を置いてからお酒や塩水を持って何処かに隠れるの」

 

「すると、一時的に動けるようになったぬいぐるみが此方を見つけようと動き回るって事さ」

 

「それはあくまで推測だけどね。これを終わらせるのには、自分が満足した所で浴槽に浮かんでいるであろうぬいぐるみの元まで行ってから口に含んだお酒か塩水を吹きかけるの。・・・この時飲んだらダメだよ?そして「私の勝ち」、「私の勝ち」「私の勝ち」って3回言って残った液体もぬいぐるみにかけてオシマイだね」

 

「ここまでが「1人かくれんぼ」の一連の流れだね。椿、私やカナに何か質問とかある?」

 

すると椿はガクガクと未だに震えながら、絶対答えが分かってるであろう質問をしてきた。私とカナは面白くなってきてニィ〜ッとした怪しげな笑みをわざとらしく浮かべて見せた。

 

「ねぇ、カナちゃんと綾ちゃん。もしかしてさ、その終わらせる時に――」

 

「うん、噂では隠れてる時に「誰かに肩を叩かれたり」「テレビやラジオのノイズが酷かったり、違うチャンネルに回ってたり」「浮いているはずのぬいぐるみが居なくなってたり」って話があるね〜」

 

「っていうか「1人で」かくれんぼしてるんだから、探しに来る相手が来ないのはおかしい話でしょ?」

 

「ひぃぃぃいい!!」

 

正直、ちょっと怖がらせるつもりがやり過ぎてしまった。

 

腰を抜かしてしまった椿は悲鳴を上げながら慌てて白狐さんの首元へ強くしがみつき、彼が苦しそうにしているのを見て再びちょこんと座り直した。それでもまだ身体は震えたままだ。

 

『しかし、それは紛う事なき「呪術」だな。だが・・・それと妖気と、どう関係があるんだ?まさか・・・呪術に反応して、他の妖怪がちょっかいを出したのか?』

 

難しい顔をして黒狐さんがアプリで妖気を確認しながら言う。

 

「ふぅ・・・子供というのは度胸試しでよく怪談話で出てくる事を平気でやるが、呪術系のはやるべきではないんだよ。そうだ、そのぬいぐるみを浮かべるのには浴槽じゃなくても良いのかな?」

 

「ん〜・・・それは書いてないですけれど、厳密にキッチリとやるんじゃなくて「その行為をやらせる事」自体に意味があったんでしょうね」

 

「私はどちらにせよ「事件のトリガー」になった事には変わりがないと思いますがね、校長先生」

 

校長先生の確認の言葉にカナは探偵のように推理して答え、私は結果としては「度胸試し」をしている過程はあまり関係ない事を答えた。

 

「とにかく放課後にイジメをしていた生徒を呼んで、事情を聞く事にしよう。同じクラスの半妖の子と協力して、その子達を連れて来てくれるかな?辻中君」

 

「分かりました!」

 

校長先生の頼みで、すぐにカナは携帯を取り出しSNSで誰かと連絡を取り始めた。

 

――椿が自身を変えようとしている矢先にこんな因縁を感じさせる事件が起こるとは、運命とやらは彼女を試しているとでもいうのだろうか。

 

そんな人を弄ぶような運命に、私は少し腹が立った。

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