私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
放課後――
数々の証言から、例のイジメをしていたと思われる2年の女子生徒達をカナが半ば無理やり校長室へと連れてきた。
私と椿はそれまでの間にも、他に何か手がかりとなりそうな情報や妖気の出処となりそうな場所を探してみたのだが・・・どういう訳か大した情報を得る事が出来ず、体力を余計に浪費しただけに終わってしまった。
校長先生が怒りを込めた口調で問いただす。
しかし、当の本人達は自身は関係ないと言わんばかりに知らんぷりを決めているようだった。
「さて、他の人達からも色々と話は出ていてね。君達が行方不明になった子に、強制的に「1人かくれんぼ」をさせていたと。間違いないね」
「何の事ですか?私達知りません」
「そうそう、その子が寂しくて勝手にやったんでしょ?」
そう言ってしらばっくれているが、校長先生が最初に言っていた通り――行方不明になった女子生徒を連れて旧校舎の前で何かを命令して扉を開けさせようとした事は紛れもない事実だ。
自分勝手に人を巻き込んで捨て置く様へ、殴りたくなる衝動を必死に抑え私は強く拳を握り締める。
「ねぇ、警察の人。私達、無実の罪で責められているんですけど?証拠もないのに、これって冤罪ですよね〜?」
「部活の人が見たって?誰が?何時何分何秒にですか?言えないのですか〜?これ怪しいじゃないですか、ってか捏造?」
どうやら私だけでなく、その場にいるほとんどの人が2人に対してフツフツと怒りを貯めているのが見える。
ああ、駄目だ。もう殴ろう。
――そんな事を考えた瞬間。
校長室のすぐ近くに、ゾッと身の毛がよだつ程の吐瀉物よりも酷い感覚を起こさせる妖気がやって来ている事に気づいた。今の目の見開きようからして椿も同じく今のを感じたはずだ。
「「――っ!?」」
『椿に綾よ、どうした?』
更に妖気から感じ取れたものがある。
それは・・・とてつもない怒りだ。
「駄目、駄目!謝って!今すぐ!君達がいじめていた証拠や証言は沢山あるんだから!」
「っていうか、本当にすぐ謝ってよ!流石に今のはヤバい!例えるなら地雷原でタップダンスしてるくらいにヤバい!」
私と椿で必死に説得しようと試みるも、もう校長室に居るほとんどの人が何かマズいと感じているくらいにそれは迫ってきていた。だが、やはり普通の人間であるイジメの主犯達には何も分からないようだった。
「はい?何を?」
「謝るのはそちらでしょ?」
「ああ、もう!小次郎、とにかくそこの2人を助けて!」
感じていた怒りの"想い"が頂点に達したと同時。
「――小次郎、只今参上仕った!」
彼女達を狙い窓を割って飛び込んで来た影よりも早く、呼び出した小次郎が2人を突き飛ばして立っていた場所から逃がした。椿が飛んできた彼女達を抱きとめ、すぐに校長先生の所へ避難する。
「ぬぐぉっ!?」
「こじ――あぐっ!」
だがその瞬間に小次郎が入ってきた影に体当たりされて吹っ飛び、私も同じような衝撃を身体に感じてよろめく。
そして2人を狙い影が飛びかかろうとし、間一髪人型へ変身した白狐さんと黒狐さんの妖術によって後ろの壁まで吹っ飛ばされた。
『本当は翁から手出しはするなとそう言われとったが、これは緊急事態だからの』
『白狐よ。2人の命が危ない時だけは例外と、そう言われなかったか?』
「いったた・・・サンキュー、白狐さんに黒狐さん。何とか間に合ってくれたみたいだね」
節々が痛む身体を起こして、壁際に倒れる小さな2つの影の正体を確かめる。・・・そこにあったのは、腹に刺傷のあるクマとウサギのぬいぐるみだった。その手には包丁がしっかりと握られ、刺傷からは乾燥した米が零れている。
再びそのぬいぐるみ達がのっそりと起き上がってきたが、椿が影の妖術を使って動きを止めてくれた。
「カナちゃん・・・い、今の内に妖具で捕まえて・・・!」
「綾さんも椿ちゃんもすごい・・・」
「感心してないで、早く!」
今の一瞬の攻防から我に返ったカナの火車輪によって、ようやくぬいぐるみは完全にその動きを止める。
「ふぅ・・・すごい力、よっぽど怒りの念が強いんだね」
『よくやったぞ、椿』
「全くだね。それにしても、なんつー馬鹿力だよ?小次郎、そっちは大丈夫?」
「平気だ、主殿。しばし予想外の力に押されてしまっただけの事よ」
何とかこの場を切り抜け、一安心した所で例のイジメの主犯である彼女達へと私達は声をかけた。
「さて、これでも君達は何もしてないと――そう言い切れるのかな?」
「正直に答えとけ。さもなきゃ・・・奴らの前に放り出す」
「ひっ、ひぃぃ・・・」
「あ、あぅ、あぁぁ・・・」
しかし恐怖で完全に放心状態となってしまった彼女達は何も答えられず、校長先生が落ち着かせる為に保健室へ連れていく事となった。
とりあえずは何とかなったか――
そう思った途端、突然学年主任の先生が慌ただしく駆け込んで来てとんでもない事を口に出してきたのだ。
「ま、まだ警察の方、居ましたか!はぁ、はぁ・・・ゲホッ。こ、校内で・・・校内で変なぬいぐるみが暴れまわっていて、生徒達を次々と襲っているんです!な、何とかしてください!!」
「「「なんですって!?」」」
校長先生と警察の2人が驚きの声をあげる。
これは一体どういう事なのだろうか?「1人かくれんぼ」で使用するぬいぐるみは1体までと、そういう話ではなかったのか?
カナが何か気づいたのか、暴れていたぬいぐるみから「ある物」を取り出して見せてきた。そしてそれでも、ぬいぐるみは依然として動き続けている。
「ねぇ・・・も、もしかしてその子「1人かくれんぼ」で呪いをかける時に、自分だけじゃなくてこのクラスの人・・・もしくは学校のほぼ全員を対象にしたんじゃないの?だってこれ――」
「えっ・・・まさか、それは――」
カナの手に握られていたのは、毛虫のようにビクビクと動く人の毛の束であった。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ーーッ!!!」
・・・失礼。
何故私がこんな普段では絶対に有り得ないであろう野太い悲鳴を上げたかについて説明しよう。
私は小学校の頃にオジサンとキノコ狩りをしていた際、ふとした好奇心から毛虫を触ってしまって全身に湿疹が出て死にかけた思い出があるのだ。
それ以来から私は毛虫だけでなく、芋虫や青虫といった「ウネウネ動く3〜4センチ程の物体」に対して異様なまでの嫌悪感を示すようになってしまった。
つまりは――まあ、そういう事である。
「多分これ、そこのいじめてた2人の女子のじゃない?2つのぬいぐるみに1つずつ入ってたし、このぬいぐるみはその子達しか襲わなかったもん!」
「わ、わわわ分かったから持ってくるな!早くそのウネウネしてる髪の毛を何とかしてぇぇええ!!」
カナの言葉を聞いて、校長先生が扇子を広げて部屋から出ようとする。
「とにかく!この呪いは他の生徒達にもかかっているという事だね?そうだとしたら、急いで対処しなければならない。私と池中と犬吠崎、白狐さん黒狐さんの5人でその大量のぬいぐるみを押さえておく!辻中君と槻本君、烏森君は呪いの元を断ち切ってくれ!これは妖気をハッキリと感知出来る槻本君と烏森君!君達にしか頼めない!良いかい?頼んだよ!」
「ええっ!?ちょっ・・・」
「あぅぅ、毛虫怖い・・・あ、頑張ります」
校長先生と警察の人達が飛び出していき、それに続こうとした白狐さんと黒狐さんは私達へ優しい言葉をかけていってくれた。
『椿に綾よ、無理はするなよ。いつでも椿のその勾玉に話しかければ、我らに声を届ける事が出来るからな』
『しかしこれは2人にしか出来ない事だな。このぬいぐるみは所詮、呪術の媒体。学校に来ていた妖気はこれで間違いはないが、結局の所は呪術の元を何とかしなくてはならない。隠密力の高い奴が関わっていそうだから、俺達がゾロゾロとついて行っても足手まといだ。呼ぶとしても俺か白狐、どちらかにしておいた方が力になりやすいな』
「・・・うん、分かった。ありがとう、白狐さん黒狐さん。そうだね・・・僕、頑張ってみるよ!」
椿が2人の姿を見送ると、まだぬいぐるみを固定しているカナの方へと振り返る。因みに私は依然としてカナの手にある髪の毛に怯えたままだ。
だって、ウネウネ動いて気持ち悪くて怖いのだから仕方ないだろう。
「さてと。この2人を保健室に――って、気絶してるからここでいい?」
「このぬいぐるみ、大丈夫かな?」
「あぅあぅ、その髪の毛も早く〜」
「・・・そうだね。とりあえず、ぬいぐるみは燃やしておこっか」
そしてカナは火車輪へ意識を集めて、締め付けたままぬいぐるみを燃やした。そこへ手に持っていた髪の毛も放って激しく燃やしていく。そう、あのウネウネ動く髪の毛も。
「よし!これだけ燃やして灰にしてしまえば、もう大丈夫だよね」
「うん、そうだね。それじゃ僕達も行こうか――旧校舎へ」
「よっしゃ復活〜!って、2人とも待ってよ〜!」
苦手な物が燃えた事で私も復活し、2人に先へ行かれそうになりながらも一緒に旧校舎へ急いで向かった。