私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第肆話 意外過ぎるレイちゃんの活躍

 

旧校舎の前へと到着した私達は、思わず唾を飲んだ。

 

雰囲気がまるで違っていて、普段の物静かな空気から中に猛獣でも隠れているような空気へと変化していた。

 

とりあえずカナは捕獲用の妖具を持っていて多少は戦えるという話だったので、私と椿をメインとした後方でのフォローに回ってもらう事にした。

 

しかし、初めての実戦からか椿は緊張して固まっているようだ。カナが彼女をしっかりさせようと声をかけてくる。

 

「椿ちゃん、何やってるの?ほら見て、扉にしっかりと打ち付けてあった木の板が外されてるよ」

 

「やれやれ、どうやって旧校舎へ入ったのかと思ったら――まさかの力づく?こんな事を思いつくのなんて、私くらいしかいないのかって考えてたけど」

 

「アハハ、綾さんも男子と同じかそれ以上に、力が強いって有名だもんね〜」

 

「なんか褒められてる気がしない・・・」

 

私とカナで先に旧校舎の出入口扉を調べていると、そこに椿もやって来て妖気アプリを使って一緒に調査する。私が突入しようと思って扉に片足をかけると、そこへ椿が待ったをかける。

 

「待って綾ちゃん。先にこれで調べてみるよ」

 

「あぁ、妖怪用のスマホを貰ってたっけか。私達」

 

妖怪スマホを取り出すと、カナが目をキラキラとさせて私達のスマホを見てくる。

 

「あっ、妖怪スマホ!貰ったんだね〜!そういえば、椿ちゃんと綾さんは何級になったの?聞いてなかったよ」

 

「うん、五級だよ」

 

「私も同じく」

 

そう答えると、更にカナの目の輝きが増した。

 

「えっ!すごい!それじゃ、白狐さんと黒狐さんの助け要らないかもね。この学校を襲う奴って、大体Cランクまでの妖怪が多いからね〜」

 

「今はまだまだだけどね、私達。それと、そうやって油断してると強い奴が来たって時に万全な状態で戦えないかもしれないから、どんな時でも全力で取り組むべきだと思うかな。・・・ごめん、説教みたくなっちゃった」

 

「こっちこそごめんね綾さん、本当にその通りだね。今度から気をつけるよ・・・あ、椿ちゃん終わった?」

 

「ん〜っと、これで良いのかな?」

 

少しカナと話し込んでしまったので、慌てて椿のスマホへ視線を移して操作が正常に動いているのを確認する。

 

「ん?」

 

「どうしたの?椿ちゃん?」

 

「ちょっと待って、「妖気を取り込んでください」って・・・どういう事?これは妖気によるものじゃないの!?じゃあ私と椿が感じてるのは一体何?」

 

「僕も分かんない。これは妖気じゃないの?でも、これは妖怪の発してる気だってば!」

 

私達はこのスマホによる異常事態に取り乱した。すると、その後ろから聞き覚えのある鳴き声と共にモフンッと何かが私達へ飛びかかってくる。

 

「うひゃぁ!?」

 

「のわぁ!?・・・って、レイちゃんか」

 

「ムキュ、ムキュゥ!」

 

「レイちゃん、驚かさないでよ・・・毛玉の状態のまま寝てたじゃん」

 

どうやらレイちゃんは、椿に校長室へ鞄ごと置いていかれた事で不安になって探しにここまで来たのだろう。あれだけ騒然としている校内を抜けて来れるとは、正直私は別な意味で再びビックリしている。

 

カナにもレイちゃんの姿が見えるのか、不思議そうに尋ねてきた。

 

「椿ちゃん、綾さん。それ何?」

 

「あっ・・・もしかしてカナちゃん、この子がハッキリ見えるの?霊狐っていう妖怪の愛玩動物らしいけど」

 

「あ〜聞いた事ある!1つ目が気持ち悪いって不評だったって・・・。ハッキリというか、妖怪よりは見やすいかなって状態だよ。その子、まだ幼体でしょ?だから私でも見えるんだと思うよ」

 

「そうなんだ。それにしても、このクリクリとしてキュートな1つ目が気持ち悪いって・・・世間の目は節穴なの?私はレイちゃん以上に可愛い動物なんて、多分今まで見たことないよ」

 

ウリ〜っとレイちゃんへ頬ずりしながらモフモフの身体を堪能していると、カナがふと思い出して前方を見る。

 

「あっ、そんな事よりも。椿ちゃん、綾さん。とりあえず中に入ってみよ。そうしないと解決しないしね」

 

「それもそうだね。じゃあ、私が先に――あぼぉ!?」

 

「きゃっ!?」

 

「へぶっ!」

 

「ち、ちょちょちょ!おも、重い!!」

 

先頭に立って扉へ体当たりして開けようとした所、いきなり透明な壁みたいなものへとぶつかってしまい後ろから来た2人に押しつぶされてしまう。

 

「何これ!?見えない壁?結界!?」

 

「ず、随分とガードが固い事で・・・あ痛っ」

 

「いてて・・・嘘でしょ?あっ、でもそれなら警察官もここを調べられないはずだよね。何でこんな怪しい場所を調べないのか、それが不思議だったんだけど・・・その壁のせいだったんだ」

 

「マジですか。じゃあ、これどうやって突破すれば良いの?詰み?チェスで言うチェックメイトって奴にハマってしまったって訳!?」

 

結界に手も足も出ずに狼狽えていると、そこへレイちゃんがフヨフヨと扉へ向かおうとしていた。

もちろん慌てて私と椿で止めにかかる。

 

「レイちゃん、危ないからこっちに居て」

 

「そうだぞ、見えない壁がドーンとあるから・・・って、レイちゃん!?」

 

私達がレイちゃんを扉の前からどかそうとした時、何とレイちゃんは身体を回転させ始めたのだ。徐々に早くなっていく回転から私と椿が手を離すと、レイちゃんは回しゴマのようにしてその凄まじい回転速度のまま尻尾をハンマーみたく扉の結界に向けて叩きつけた!

 

「ムキュゥゥゥ!」

 

すると、あれ程固かった結界が嘘のように窓ガラスが割れるかの如く砕け散ってしまった。

 

「嘘・・・」

 

「な、なんてとんでもパワー・・・」

 

「ムキュッムキュゥ!」

 

「わぷぷ!す、すごいぞレイちゃん!まさかあんな結界を割れるなんて、私はレイちゃんのような子を持てて幸せ!」

 

「ちょっと・・・舐めないで!レイちゃん分かったから!助かったよ、ありがとね」

 

呆然とする私達へレイちゃんが褒めて褒めてと言わんばかりに顔を舐めてくる。カナも驚きながら、私達へ甘えるレイちゃんの事を褒める。

 

「その子、凄いね・・・。それに貴方達が困ってる要因を的確に見抜いて、主人を助ける為にその手助けをしてるなんて。よっぽど懐かれてるんだね、2人とも」

 

「ふふ〜もっとレイちゃんを褒めても良いんだよ?私と椿の可愛い自慢のペットなんだから〜」

 

「ん〜そうみたい」

 

レイちゃんの気が済むまでひたすら褒めに褒めてあげた後、椿が未知の恐怖から立ち直って声をあげる。

 

「うん、行こう!綾ちゃん、カナちゃん!」

 

「おっ!やっと立ち直ったね、椿!」

 

「あっ、うん。って、急にどうしたの?そんな張り切っちゃって」

 

「僕はもう・・・怖がってばかりじゃいられないのです!」

 

「そうだね!ここは五級の私達がドンと前に出て進まないと!」

 

そう言って、私と椿が先に旧校舎へと足を踏み入れた途端――鼻へ一気に埃やら何やらの匂いが来て少しだけ吐き気を催す。

 

「うぇ、ゲホッ!なん・・・何じゃこりゃ!」

 

「うっ・・・流石に何十年も閉ざされていたら、埃っぽいしカビ臭いね」

 

「そうだね。――でも、床を見て」

 

カナが指差す廊下へ目を向けると、そこには確かに最近誰かが踏み入れたような足跡が埃の上にしっかりと残っていた。そしてそれは、正面の階段から上に続いている。

 

「しっかし、旧校舎へ初めて来たけど。どこもかしこも木造だと、まるで昭和か何かの時代にタイムスリップしたように感じるね」

 

「僕もそう思うよ、綾ちゃん。もし妖怪とか居なかったら、今こうして見える夕陽の光もとても綺麗に見えるのにな〜」

 

「何それ?私への告白の言葉にしちゃ随分とロマンチック過ぎるし、いきなり過ぎない?」

 

「そんなつもりで言った訳じゃないもん、もう綾ちゃんったら!」

 

そんな事を喋っていると、見かねたカナに不貞腐れながら次の道順を聞かれた。

 

「椿ちゃんも綾さんも!次はどっちか分かる?今は2人が頼りなんだからね!」

 

「あっ、えっと・・・やっぱり上からかな?何だかそっちの方が濃いから」

 

「はいカナさん、すいませんでした。真面目にやります・・・私も同じく上からヤバい感じの空気を感じるよ。今なら多分――」

 

私達はスマホを取り出して、妖気感知アプリで階段から出ている濃い部分の妖気を取り込んで手配書アプリへとそのデータを転送した。

 

そして返ってきたのは――「妖気確認、手配書を確認しております」の文字であった。

 

「よし!やっと入ってきたか〜!」

 

「あっ、やっぱり妖気だったんだ。今確認してるって出たよ」

 

「ほんとに?それじゃあ、さっきは何で反応しなかったの?」

 

「う〜ん、分かんない」

 

「私はきっとアプリ側で不具合があったか、私と椿の感知能力が高すぎてアプリじゃまだ検知出来ない状態だったんだと思うけど」

 

だから問題ない、そう続けて言おうとした私の目に飛び込んできたのは――「この妖気の持ち主は、手配書が存在しません」という謎過ぎる文面だった。

 

「・・・え?」

 

「最悪・・・」

 

「嘘でしょ?それじゃ、どんな妖怪か分からないの?」

 

敵について何も解らず絶望に暮れそうになった時、椿が意を決したように再び口を開く。

 

「綾ちゃん、カナちゃん。とにかく呪術の儀式を止めに行こう。その「1人かくれんぼ」を終わらせたら良いんだよね?」

 

「そっか。儀式さえ終わらせちゃえば、学校で暴れてるぬいぐるみ達は皆元通りに動かなくなるはずだもんね」

 

「その通りだけど椿ちゃん・・・でもそれは、呪術をした本人がやらないとダメなの」

 

「だったら、まずは行方不明の子を見つけよう!」

 

「何としてでも、急いで学校の皆を助けるぞ!」

 

私達は正面の階段を駆け上がった。

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