私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
ボロボロになった旧校舎の中、妖気の濃い場所を頼りに私達は呪いの発信源を求めて探し回る。
「どっちから来てるか分かる?それとも、まだ上?」
「いや、上からはもう何も感じないよ」
「う〜ん、上は違う――かな。この階だ」
カナの質問に、神経を集中させつつ感じる妖気の方向を示す私と椿。
「じゃあ、この階の教室を片っ端から――」
「そんな事しなくても方向が分かるから大丈夫だよ、カナ」
「んっ、こっちだよ」
そうして進んでいく内に、感じる妖気の中からより深いものが混じっているのを認識する。どうやら重く苦しく感じていた妖気は、実際には妖気に"想い"が様々な混ざり合いを起こしている事によるもののようだ。
妖気を感じて私達が難しい顔をする度にカナは心配そうに声をかけてくるが、彼女は私と椿ほど強い力を持っている事もなければ妖気の感知すら厳しい半妖の子なのだ。ここは多少無理してでも私達が前に出るべきだろう。
――妖気が一番濃い場所へと辿り着く。
此処に妖怪が居るのは間違いないはずなのだが、どうしてか妖気の漂い方からしてまだ断定する事が出来ない。目の前が煙ばかりの部屋の中でそれを出してる物体を探しているような感覚だ。
「ねぇ、2人とも。何か聞こえない?」
「何かって・・・ん?聞こえるね」
「えっ?あ、ほんとだ!」
カナの言葉で耳を澄ませてみると、確かに人の声とは違う――機械の音のようなものが廊下の先から聞こえてくるのが分かった。ホラー映画ならばこの先にはよくある恐怖演出が待ち構えているのだろうが、生憎私達が追っているのは正体の掴めない幽霊などではなくれっきとした妖怪だ。
私達がその音に向かって辿り着いた先の教室では、大量に感じられる妖気と大音量でノイズを垂れ流すラジオの姿があった。
「どうやら、ここが「1人かくれんぼ」が行われた教室で間違いなさそうだね。2人とも、準備は?」
「いくよ?」
「OK」
椿と私で教室の扉をこじ開けようとするも、鍵がかかっていて開かなかった。こんな土壇場で私達は随分情けない姿を晒してしまったものだ。
「――っ!か、固った!!」
「うぐぐぐぐ・・・あ、開かない」
「椿ちゃんに綾さん、教室の廊下側から窓開いてるよ?」
「嘘!?」
「マジかよ!?って・・・これは」
「うん、内側から割られているし何より教室の中が異常なんだけど」
「カナちゃん待って、妖怪がいたら危ないよ」
廊下の窓から椿と共に教室の中を除くと――
そこには水を張った桶を囲うようにして大量のテレビやラジオが並べられ、ノイズや砂嵐だけを延々と垂れ流し続けているのが目に入ってきた。
「何これぇ!?」
「こりゃ、あれだけぬいぐるみも出てくる訳だよ・・・呼んだの絶対1人じゃないってコレ」
「カナちゃん・・・これって、ここで「1人かくれんぼ」してたのは間違いないよね?」
椿がカナに呼びかけるが、返答がない。慌てて振り返るとそこには顔を真っ青にして足を震わせているカナがいた。一瞬、妖怪に連れ去られたのではと不安になったが彼女の姿を見てホッと胸を撫で下ろす。
「カナちゃん、大丈夫?」
「こんなテレビやラジオのザーザー音程度、適当なチャンネルに回されてるだけでなんて事ないよ!」
カナを安心させようと考えられる最もらしい理由を話すが、彼女から返ってきたのは思わず脳が思考を放棄しかねない程に衝撃的でおぞましい事実だった。
「2人とも・・・分かんないの?テレビはともかくとして、ラジオはちゃんと受信出来るチャンネルに合わせてあるよ。それなのに――なんでずっと受信出来ない時の、あの砂嵐の音なの?」
「――なんだって?そんなバカな事があるは、ず・・・」
「えっ、嘘でしょ?何これ・・・」
有り得ない。そう思って何度も目を擦ったり、スマホのカメラ機能の望遠レンズで確かめたりしたものの、確かにカナの言う通りラジオのチャンネルはFMAMと受信出来るチャンネルに合わせてあるのだ。これには椿だけでなく、流石に私もゾクッとしたものを感じた。
しかし今更ここで足を止める訳には行かないと思い、椿の真似をして頬を両手で叩いてこれくらい何ともないと気合いを入れ直した。
「つ、椿ちゃん、綾さん。気合いを入れるのは良いけれど、足まだ震えてるよ・・・」
「うぐっ、怖いのは怖いんですよ・・・」
「こ、これくらいなんぼのもんじゃい!ここで引いたら男が廃るわぁ!」
「綾さんは元から女の子でしょ、もう・・・」
カナにツッコまれながらも、窓から教室に入ってラジオやテレビを止められないか椿とあれこれ触ってみる。だけどホラー物の定番のように電源ボタンを押しても、コンセントを引っこ抜いても依然として機材は動いたままだ。ずっとノイズや砂嵐を垂れ流している。
「まぁ、当然といえば当然だね」
「やっぱり駄目か・・・」
「・・・ムゥゥゥ」
するとレイちゃんが1つのテレビに向かって可愛い鳴き声のまま威嚇し始めたので、私達は警戒してそのテレビへ近づいた。
「そこがヤバいって言いたいのかな、レイちゃんは?」
「レイちゃん、そのテレビ気になるの?」
「2人とも、その子どうしたの?」
「この子が、このテレビを気にしてるんだよね」
カナも後から入ってきてレイちゃんが注目しているテレビをよく確認するが、やはり何も感じられる事がなかったのか難しい顔をする。
「それにしても、やっぱり桶の中にぬいぐるみは浮いてないね。それどころかお酒も塩水もないよ」
「・・・儀式を終わらせようとして失敗したのか、それとも始めから終わらせる気は無かったかのどちらかかな?」
「ムキュゥ!」
「ん?レイちゃんどうしたの?」
テレビに向かって吠え出したレイちゃんに椿が振り向くと、信じられない事にそのテレビから某日本で最も有名な幽霊のように黒い影の姿をした子供の形が上半身を乗り出していた。
そして、それは椿を指差し――
「見ィつけた」
「えっ?うわぁ!」
その言葉が発せられたと同時に、なんと椿がテレビの中に吸い込まれて始めたのだ!すぐに助けるべくカナと共に手を伸ばすも、あと少しの所で掴む事は叶わず椿に巻きついたレイちゃんと一緒にテレビへ吸い込まれてしまった。
「椿!」
「椿ちゃん!」
すぐに助けるべくテレビへ蹴りを入れようとするが、後ろから抱きつかれてカナに止められる。
「テレビ自体を破壊すれば――!」
「駄目だよ綾さん!それじゃ中にいる椿ちゃんも危ない!」
「クソッ!一体どうしたら良いんだ・・・」
「分からない、私と綾さんで出来る事は何か・・・とにかく呼びかけ続けよう!椿ちゃん!椿ちゃん!返事して、お願い!」
取り残された私とカナで椿を助ける方法を考えようとした時、後ろから椿が何ともないように姿を現して声をかけてきたのだ。
「2人とも、僕は大丈夫だよ」
「どわぇ!?え、ちょ、今吸い込まれたんじゃ?」
「ふぇ!?あっ、えっ、あぇ?」
混乱する私達に椿は勾玉を取り出す。それを見て私はようやく、どうやって椿がテレビの中から脱出したのかを理解した。
「あっ・・・ご、ごめん。そのテレビの中は妖界に繋がってたの。だけど僕が持ってるこの勾玉があれば、妖界と人間界を自由に出入り出来るから上手い事使って出てきただけだよ。っていうか、綾ちゃんも白狐さんや黒狐さんから話されてたよね?」
「・・・やっべぇ、完全に忘れてましたわ」
椿の親友を自称する私、一生の不覚である。