私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「最初に説明しときなさ〜い!」
「あぅっ!?ご、ごめんなさい!」
「あだァ!ちょっとカナ、椿はとにかく私は忘れてたでしょうが!」
「そういう問題じゃないよ!」
あの後、私達は説明を聞いたカナからお仕置きとばかりに脳天へチョップをくらう。そして涙目になりながら彼女がギュッと椿の身体を抱きしめた。
「もう・・・心配したんだから」
「悪い、すっかり勾玉の事を忘れてたばっかりに」
「さっ、椿ちゃん。向こうに何がいたのか話してよね」
「あっ、うん。分かったよ」
すぐに切り替わったカナへ椿がテレビの中で見た世界について説明する。その説明から要するに椿は、ボロボロになった旧校舎の教室の中で「戦時中の子供の格好をした妖怪」を見たとの事だ。
それを聞いたカナの顔から不安が消え、例のテレビへ向かおうとすると椿が呼び止める。
「なんだ、あんまり大した妖怪じゃなさそうだね。だったら、そいつを見つけだして連れていった女子の居場所を聞き出そうか」
「お?カチコミ?それなら私にいい考えがあるよ〜」
「待って2人とも。女子生徒が行方不明になった原因は、その妖怪じゃないかもしれないんだよ」
「え、椿。お前は一体何を言っているんだ?」
「どういう事なの?」
椿の言いたい事が理解出来ずに思考がフリーズする私とカナ。すると、椿はその理由を分かりやすく解説し始める。
「僕にはあの妖怪が、ただ構って欲しいだけに見えたよ。それと僕を見つけて鬼にしたという事は、それまであの妖怪はずっと鬼だった。もし行方不明の女子がその妖怪に捕まったのなら、その女子生徒が鬼にされてるから妖怪はずっと隠れていて、僕達の前に姿を現す事はないはずだよね」
「なるほど、それなら確かに辻褄が合うよ」
「そうだね綾さん。それに椿ちゃんの言う通りなら、その妖怪がぬいぐるみを使って生徒達を襲う理由もないよね」
ひとまず一度この教室から出て女子生徒を探しに行こうとすると、いつの間にか教室の扉の前に同じ中学の制服を着た女の子が居た。カナが驚きの声をあげ、私もその女子から出ている妖気を感じてすぐに小次郎を呼び出せるよう臨戦態勢へ入る。
「だ、誰!?」
「・・・良いね、どれも良い器になりそうだよ。その体、欲しい。もしその体をくれるなら、どんな願いでも叶えてやるからさ――」
その女子がゆっくりと近づいてくる中で、椿が手配書アプリで照合した妖怪を見て私はすぐに叫んだ。
「――その体、交換しよう!!」
「駄目だ!カナちゃん逃げて!」
「そいつから離れろ、カナ!」
女子から黒い霧が出たとほぼ同時。私が動くよりも早い動きで咄嗟に椿がカナを突き飛ばして助けるも、黒い霧は椿を包み込んで身動きを取れなくされてしまったのだ。
「くっ!」
「そんな、椿!」
「椿ちゃん!もう・・・またそんな事して!」
「今助ける!小次郎――」
小次郎を呼び出そうとするも、黒い霧が椿を盾にするように後ろへ隠れてしまい私達に対する人質とされてしまう。
「ククク、友達を傷つけたくなきゃお前ら動くなよ。――おぉ、妖狐だったか。これは良いな、良い器だ。お前はあの女子の体でも使っとけ」
「この・・・ゲス野郎が!」
そう私が怒りで叫んだ瞬間、突如として椿の方から謎の"想い"の声が聞こえてきた。いや、これは"想い"というよりも・・・まるで「誰かの魂」が椿に宿っているようにも感じる。
【フフフ、その通り。これはあなたと私の体よ。下級妖怪が勝手に使って良い体じゃないわ】
「えっ?ヒ、ヒィィィィ!なんだお前は、何者なんだぁ!」
その声を感じた瞬間、椿へ取り憑こうとしていた黒い霧が恐怖に怯えた声で彼女から離れて逃げ惑うかのようにグルグルとあちらこちらを行ったり来たりしだした。そして――
【フフ、あなたの魂が体から離れかけたから何とか私が出てこられたわ。だけど、ちょっと不愉快な事をされていたわね。・・・代わりに私が罰してあげる】
「つ・・・椿、なのか?」
「椿ちゃん・・・な、なにそれは?」
完全に別人になったような黒い椿の姿を見て、私とカナは異様な恐怖で足が竦んで動けなくなってしまう。
なんだ、アレは?
私が知ってる椿はあんな、殺意を持った目をした事もなければ妖怪に対して舌なめずりする程度胸もないはずだ。以前、学校で似たような事が起こった事を思い出す。確かあの時も、椿はこんな感じになって強力な妖術を放ってはいなかったか。
【さぁて、どんなお仕置きが良いかなぁ?】
くつくつと笑う椿の姿をした何者かを警戒しながら、私はようやく敵の妖怪「器」がどうして先程まで使っていた体に戻れないのかを突き止めた。
この妖怪、どうやら「負の願い」を触媒として一方的な体の交換を成立させているおかげで、今のように失敗してしまうと一度成立してしまった「負の願い」のせいで前に使っていた体へは戻れなくなってしまうそうなのだ。それすら知らずに狼狽えているのを見るに、どうやら奴自身も自覚していなかったらしい。
「く、くそ。なんで・・・なんで入れない!」
【ふ〜ん。そんな程度の雑魚が、私の身体を使おうとするなんてね。良い度胸ね】
椿が妖怪の本体に手をかけようとした瞬間、ふと立ち止まってため息をついた。
【はぁ、分かったわよ。そんなに返せ返せって言うなら返すわよ。それに、私はあなたの体を借りてるだけだしね。正確には閉じ込められてる――かな】
そう言った途端、椿の体の色が元の色へ戻り元の意識を取り戻したようだった。すぐに彼女は封印する為の巻物を広げて、狼狽えたままの妖怪へ妖術を使う。
「椿、元に戻ったの!?」
「と、とりあえずはね!――妖異顕現、巻鎖封印!」
巻物の力によって妖怪を無事に封印した私達は一安心して振り返ると、カナとレイちゃんが怯えているのを見て彼女達には今回椿のアレを見たのが初めてだったと思い出す。
「つ、椿ちゃん?さっきのは何?」
「キュ、キュゥゥゥ・・・」
今更隠していても仕方がないので、私と椿は彼女達に本当の事を話す事にしたのであった。