私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第捌話 普通これで終わると思うって!

 

私達が校長室へ辿り着くと、そこには1体1体縄で縛られたぬいぐるみが全校生徒を襲えるくらいの量で山積みにされていた。いまだにピクピクと動いており、その呪いの強力さを物語っている。

 

そこに居る白狐さんと黒狐さん、校長先生に半妖の警察2人がひと仕事終えたかのように立っている事から、どうやら校舎のぬいぐるみは捕まえてあるこれらで全てのようだ。

 

『椿、その姿は?おぉ・・・我の力を!?』

 

「う、うん。流石にこの子を運ぶには、僕の本来の力じゃ無理だったからね」

 

白い椿の姿に、白狐さんは驚きと感激の混じった声をあげる。すると彼女へ、すっかり何かを忘れていたのかカナが振り返って驚いた顔で謝ってきた。

 

「ご、ごめん!ずっと椿ちゃんに背負わせてたね!」

 

「私も普通に椿が背負っていってるから何とも思わなかったけど・・・ごめん、忘れてた」

 

私もそれを思い出して謝る。

 

『さて、何があったか説明してくれよ。2人とも』

 

「悪いけど黒狐さん、今は話してられる状況じゃないの!」

 

「うん、ちょっと待ってて。時間が無いから先にこの子の魂を探しちゃうね。――レイちゃん、この中からあの子の魂を探してくれる?」

 

「ムキュゥ!」

 

『ところで、綾の使い魔はあの霊狐のような真似は出来ないのか?』

 

「聞いてみる。小次郎、あの中からこの子の魂を見つける方法って持ってる?」

 

「すまんな主殿、私にはこれといって魂を探す手段を持ち合わせてはおらぬのだ」

 

「そっか・・・」

 

呼び出した小次郎を戻して、ため息をついた。とりあえず、椿とレイちゃんが探している間に2人へ事の顛末を話しておこう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

『――なるほど。器がそいつの体を交換してしまい、あのぬいぐるみのどれかにされてしまったのか』

 

「平たく言うとね。全く、学校の人皆に呪いをかけるなんて色んな意味でとんでもない事をしてくれたよ」

 

黒狐さんは納得した様子を見せたが、白狐さんはまだ何処か引っかかるものがあるらしく質問をしてくる。だが、これによってずっと晴れなかった「何か」の違和感に私が気づく事ができたのは皮肉だった。

 

『しかし、それなら何故一緒になって生徒達を襲うかの?ぬいぐるみにされてしまったのなら、普通はパニックになってまず助けを求めんか?』

 

「・・・え?」

 

「あっ・・・」

 

カナもどうやらその事に気づいていなかったようで「そうだった!」といった風に気まずい顔を浮かべた。それを見た校長先生はやんわりとしながらも彼女のミスをしっかり責める。

 

「辻中君。2人はまだこれが初めてなんだし、色々と考察や行動をフォローして欲しくて君を付けたんだよ?君は行動力が有り余る程にあるし、考察力も悪くないと思ったけれど・・・買い被り過ぎたかな?」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

「まぁ私達も、彼女がいなかったら気づけなかった事が結構あったんで。だから、あまり責めないであげてください校長先生」

 

「すまないね、烏森君。君達に迷惑をかけるつもりはなかったのだけれども」

 

すると、レイちゃんがどこか申し訳なさそうにして椿の手元へ戻ってきた。どうやら、あのぬいぐるみ達の中からは見つけられなかったのだろうか。

 

「ムキュゥ・・・」

 

「そっか、レイちゃんごめんね」

 

『椿、そうガッカリするな。多分これじゃないか?』

 

「へ?」

 

落ち込みかけた椿に、黒狐さんが倒れる女子生徒へと指を指す。そこには、なんと犬のぬいぐるみが必死にその子の体にしがみついて揺すっているようだった。

 

『ついさっき慌てて入ってきたぞ。多分、椿が自分の元の体を運んでいるのを見たのだろう』

 

「その体で何処かに閉じ込められてたのかな・・・とにかく、レイちゃんに確認させてみて」

 

「うん。レイちゃん、このぬいぐるみで間違いない?」

 

「ムキュッ!」

 

レイちゃんの頷きに私達はようやく本当の意味で一安心する事が・・・いや、少し待て。

 

「ん?ところでここからどうやるんだ?「1人かくれんぼ」のやり方じゃ、もう戻らない気がするんだけど・・・」

 

「し、しまった。この子の魂って、どうやって戻したら良いの!?」

 

慌てかけた私と椿の頭を撫でて、後ろから現れたのは白狐さんだった。

 

『よくぞここまでお主らでやってのけたな。最初に会った頃に比べて、大分マシになってるぞ椿に綾よ』

 

「ここから元に戻せるの?」

 

「その通りじゃ、綾。――それと安心せぇ、お主の魂を戻してやる。だからジッとしておれ、時間もないしの」

 

姿が見えるのか白狐さんに怯えるぬいぐるみの頭へ彼が手を置く。そして白狐さんは目を閉じて妖術を発動する言葉を唱えた。

 

『妖異顕現、魂魄帰還』

 

ぬいぐるみが光りだし、中から光の塊が現れて玉の無くなっていた女子生徒の体へと入り込んでいくと、静かに呼吸を始めて息を吹き返したようだった。

 

妖術で体力を消耗した白狐さんに椿が声をかける。

 

「今のも、まさか治癒の妖術で?」

 

『むっ・・・椿。さっきのが不思議に思うのか?だが我は治癒妖術が得意なだけで、あれも治癒の一種に過ぎん』

 

「マジか白狐さん。怪我とかそういうのを治すだけが治癒の力じゃないっていうの?」

 

私も不思議そうに質問をすると、白狐さんはそこでとんでもない答えを返してきたのである。

 

『2人よ。あの妖術はな、河童に尻子玉を抜かれた者に使う、治癒妖術の応用じゃ』

 

途端に私達は半妖の警察、池中さんの視線が怖くなり振り返って目で訴えてみた。犬吠崎さんも何処か彼へ哀れみの目を向けている。

 

「くっ、何故俺に確認を取る」

 

「貴方が河童の半妖だからじゃないの、池中さん?そりゃ、彼女達だって怖がるわよ」

 

「気にしてるんだから止めてくれよ、涼子さん。あぁ、そうだよ。白狐さんの言う通りだ」

 

「「・・・」」

 

「尻に手をやるな!無闇やたらに抜く訳ないだろう!」

 

「信用されてないわね、全く」

 

今の話で分かったが、どうやら見た目に反して犬吠崎さんの方が池中さんよりも立場は上らしく上司のようなジョークを交えた厳しい言葉をかけていた。

 

そうこうしている内に、女子生徒の意識も戻ってくる。それにカナが後輩として喜びの声をあげた。

 

「ん、んぅ――はっ!あっ、わ、私・・・」

 

「良かったぁ、気がついたんですね!大丈夫ですか、先輩?」

 

「あっ、は、はい。あ、ありがとう」

 

なんとか会話も出来そうな状態だと判断した私と椿は、互いに頷き合ってその先輩の前へ立った。

 

「やっと元の体に戻ってきた所すいません、先輩」

 

「先輩、まだ先輩にはやってもらいたい事があるの。――「1人かくれんぼ」、終わらせてくれませんか?」

 

「えっ?あっ・・・」

 

先輩が気がついたように校長室で寝かされてるイジメの主犯だった2人を見ると、憎しみを込めた顔をして俯く。

 

「私、止めたくない。こんな2人、どうなったって――っ!?」

 

瞬間、椿が先輩の頬を叩いた。

 

それに私も驚く。

 

「そんな事言ったら、君はこの人達"以下"になっちゃうよ」

 

凶悪な妖怪のせいだったとはいえイジメを受け続けてきた椿の事だ。先輩の気持ちは痛い程なんてものじゃ計り知れないくらいに良く分かっているのだろう。それでも――それでも、人としての一線を越えさせまいとする椿の姿は、今の私にとっては悪を断罪する女神そのものにすら見えた。

 

「どんなに辛くても・・・人を殺してしまったら、それだけで"イジメをしていた人達以下"になっちゃうよ。人間以下に、なっちゃうんだよ」

 

「それじゃ、どうしたら良いの!?耐えるのは、もう無理なのに、何で誰も――う、うぅぅ・・・」

 

そう言って先輩は泣き崩れ、ボロボロと涙をこぼし始めてしまう。カナもそれを理解しながら、優しく彼女の肩に手を置いて説得の言葉をかけた。

 

「先輩・・・どんなに理由があっても、こんな方法では悔いしか残らないですよ。呪術解いてくれます?」

 

「もし終わったら・・・すぐでなくてもいいですから、私達と一緒にカフェでコーヒーでも飲みながら色々落ち着くのにゆっくり話しましょう。そうすりゃ、多少は"今を生きる事"について前向きになれますから」

 

「え?私、コーヒーは嫌だよ綾さん。だって、どうせなら定食屋で白いご飯が食べたいもん!」

 

「・・・あ、うん。私の意見は認めてくれなさそうだね」

 

そんな会話に少し勇気付いてくれたのか、先輩もちょっと泣き笑いになって私達の質問に答えてくれた。

 

「うっ、ぐす・・・ふぐ。で、でも私、いきなり現れた変なぬいぐるみに「体を交換したら願いを叶えてやる」って言われて、そのぬいぐるみの中に入れてある「この髪の毛の持ち主を殺して」って・・・そう頼んだだけだよ」

 

「それは「1人かくれんぼ」の最中って事ですか?」

 

「そうだよ。だ、だから・・・私が使ったぬいぐるみは"2つだけ"だし、そのぬいぐるみが私の体を乗っ取ってから動かしたのも"その2つだけ"。こんなに大量のぬいぐるみなんて知らないよぉ・・・!!」

 

「――なんだって?」

 

瞬間、校長室の空気が凍りつく。

 

すぐに我に返った校長先生が先輩へ問いかける。

 

「ちょっと待ってくれないか。この大量のぬいぐるみに、君は呪術をかけていないというのかい!?」

 

無言で彼女は縦に首を振った。

 

凍っていた思考に意識が戻ってくる。

 

私は、私はてっきり先輩の体を操った妖怪が自身の欲望を満たす為にぬいぐるみをかき集めて手駒にしていると――そう思い込んでいた。

 

じゃあ・・・この大量のぬいぐるみは誰が?

 

そう思った瞬間――縛られたぬいぐるみ達の首だけが椿の方向を一斉に向いて、目を赤く光らせて言葉を発する。

 

 

「「「見ィつケた」」」

 

 

「うひぁあ!な、何これ!?」

 

「椿!」

 

『だから、我の顔に引っ付くな椿よ。怖いのは分かったから』

 

私は危機感から椿を白狐さんの方へ突き飛ばし、すぐに小次郎を呼び出してぬいぐるみ達が何か仕掛けてくるのに備える。

 

「「「ねぇ、何デ鬼が逃げチゃうノ?探しテよ、見ツけテよ。・・・ソうしなイと、他の人ヲ鬼にシちゃうかラね?」」」

 

しかし、ぬいぐるみ達はそれを言った後に再び沈黙し元の無言で暴れようとする状態へと戻ってしまった。

 

呼び出した小次郎が訝しげに1つ目を光らせて私達へ振り向く。

 

「今の人形共の言葉、意味深であったな。主殿よ」

 

「あの言葉、何処かで・・・」

 

「椿ちゃん、綾さん。さっきの台詞・・・」

 

「う、うん。あのテレビの中に居た奴だよね。嘘でしょ、アイツが原因だったなんて・・・」

 

思い出してみれば不可思議な点は幾つもあった。

妖怪の妖気にしては不自然な感知状況、私と椿の感じた妖気に混じる様々な感情の数々。――そしてさっきまで先輩のものとして感じていた"想い"と比べると今は更に、悲しみ、怒り、寂しさが強く感じられるのである。

 

『椿、綾。話せ、何があった』

 

黒狐さんが険しい表情で私達に問い詰め、白狐さんも同じように深刻そうな顔でぬいぐるみを調べていた。

 

「分からない・・・何が一体どうなっているの?」

 

私はその質問に、こう答える事しか出来なかった。

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