私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第玖話 妖魔と椿の「もう1人の人格」の謎

 

私と椿は白狐さんと黒狐さんに連れられて、再び旧校舎にあった問題の教室――テレビとラジオが大量にあったあの教室へとやって来た。

 

『確かに間違いないようだな。奴はこの部屋からやって来た人間を妖界にある自分のテリトリーに誘い込み、遊び相手にしているようじゃ』

 

白狐さんがスマホでAランクの手配書を見せながら言う。彼が言うにあの時に手配書アプリが該当する妖怪を示さなかったのは、そもそもが挑戦してはいけないAランク級の相手だった為に私達が登録されている級ではライセンスの関係上表示されなかったというだけの事らしい。

 

何ともはた迷惑な話だ。

それで敵に油断や困惑している時に襲われたのだから此方はたまったものではない。

 

「ごめんなさい・・・」

 

「まさか学校にそんなランクの奴が潜んでるなんて、もっと早く判れば・・・」

 

『いや、妖魔が相手ではしょうがないぞ2人とも。それでもお前達は充分過ぎる成果を出しているんだ。胸を張れ』

 

黒狐さんが私達を慰めてくれた。そして白狐さんと一緒に自身の勾玉を取り出し、妖界への扉を開く。

 

『よし。では行くぞ椿、綾』

 

「う、うん」

 

「何としてでも、あの妖魔を見つけなくちゃね」

 

一応白狐さんと黒狐さんが妖魔を捕まえてくれる事にはなっているが、敵から椿に"鬼"という役割が与えられた影響もあって感知能力の高い彼女と私で敵の居場所を探す必要がある。

 

そして妖界へと移動した瞬間、私達のすぐ目の前に小さな女の子のぬいぐるみが出迎えた。これも例の妖魔が操っているのだろう。

 

「もウ・・・勝手にこコから出ルなんて。そンな事する人間、初めテだよ。セめて私達と同ジ事になッてもラわなイとね」

 

『つ、椿!お主、体が!?』

 

「なっ、椿どうしたの!その姿!?」

 

「へ?わぁっ!何これぇ!!」

 

白狐さんと黒狐さんが驚いた声に椿の方へ振り返ると、そこには椿の声をした狐のぬいぐるみと再び"あの黒い姿"となった椿の身体を借りた何者かが邪悪そうな顔を浮かべていた。

 

「えぇ!ぼ、僕の体どうなったの!?」

 

【あ〜あ。魂を抜き取られて、そのぬいぐるみに変えられたようね】

 

『お主は・・・以前校舎前で出てきた、邪気に満ちた椿』

 

すると、ぬいぐるみに変えられた方の椿――しばらく此方を椿と呼んで、「もう1人の人格」が動かしている方を黒い椿と呼ぶ事にする――がピョンピョン跳ねてそこに居る自身が本来の自分ではない事を伝えてくる。

 

「待って白狐さん!今の僕は、僕とは違う人が操っているの!もし同じ人物だったら、一緒に意識もぬいぐるみに移されてるはずでしょ!?」

 

「とすると、やっぱりそこにいる椿は――」

 

別な魂が入っていて同一人物ではない。

そう言おうとした時、話がややこしく感じたのか白狐さんが私を遮って話を進める。

 

『椿、とにかくお前は鬼にされたようだな。鬼となったら、ぬいぐるみになって妖魔を見つけなければならないのか?かなり厳しいゲームではないか』

 

「2人とも!あのぬいぐるみが逃げるよ!」

 

『おい白狐、例の妖魔を捕まえに行くぞ!』

 

逃げ始めたぬいぐるみに私は叫んだ。だが、白狐さんは振り返って不安そうな顔で黒い椿を見た。

 

『ぬっ・・・しかし』

 

【クスクス、安心しなさいよ。今彼女の魂が抜けた状態で使ってみてるけど、"私の体じゃない"から半日と持たずに私は弾き出されるわ。あ〜、そうなると私も彼女も死んじゃうわね】

 

「それだったら僕達に協力してよ!僕の体だから妖気を感知しやすいでしょ!」

 

「おいおい!椿の言う通り、それは幾ら何でもマズいって!椿の体が使えるんだったら、何か手伝ったりとかしてくれ!」

 

【ふふ、良いわよ。だけど"可愛い我が子"を捕まえるのは忍びないから、見つけてあげるだけね。それと1つだけ私の要求も飲んでもらうわね】

 

妖魔の事を"我が子"と呼んだ、その意味深な発言に私達は驚きで目を丸くした。

 

「なんだって?妖魔について何か知ってるって言うの?」

 

『我が子だと?一体どういう事じゃ!』

 

【ふふふ・・・そんなに怒らないでよ、白狐に黒狐。折角久しぶりに一緒に行動するんだから、仲良くしましょうよ。――それより、椿の魂をぬいぐるみにした妖魔「はぐれ鬼」を早く見つけないと、でしょ?】

 

いまだ黒い椿への疑念が晴れない中、白狐さんが椿を抱き上げて『安心しろ』と元気付ける。黒い椿はそれを見て、面白そうな顔でそっちを見た。

 

【さて、それじゃ椿には元の体に戻ってから色々としてもらおうかな〜?】

 

「余計な事を話してないで、奴の気を探してくれよ!」

 

【はいはい、どうせ私しか感知出来ないから仕方ないのは分かるけどね。・・・こっちね、着いてきなさい】

 

示した方向へ歩き出した黒い椿の後をついて行きながら、椿がふるふると白狐さんの腕で震えている。

 

「うぅ、僕一体何をされるんだろう・・・」

 

「何かヤバい事されそうだったら、命懸けで止めるから大丈夫だよ。椿」

 

『安心しろ。危険な事や悪事だった場合は我と黒狐で止めてやる』

 

『そうだ、2人の言う通り安心しろ椿。未来の嫁には指一本触れさせん』

 

すると黒狐さんがそう宣言した瞬間、前を歩いてきた黒い椿が振り返って彼の前まで戻ってくる。

その表情には何処か怒りが浮かんでいるようにも見えた。

 

『な、何だ!』

 

【へぇ・・・未来の嫁は私じゃなかったんだっけ?あの時逃げたのは、そういう事だったんだ?】

 

「おい、黒狐さんよ・・・まさか椿とは浮気だったのか?」

 

『なっ!?』

 

ジトーっと見る私と黒い椿の視線に顔を赤くする黒狐さんへ、なぜかムキになって椿も怒る。

 

「黒狐さん!そいつは僕じゃないってば!」

 

『わ、分かっている椿。悪いが、俺にも何の事だか――』

 

【あぁ、私との事だよね。3人の封じられている記憶は、全部私に関係してるから覚えてないのも無理はないわ】

 

「「『『――っな!?』』」」

 

その黒い椿の衝撃的発言に、私達は絶句した。

まさか、椿とあの2人に関連するであろう人物の魂が彼女の中にあるとは想像すらしていなかった。

 

「ねぇ、それなら・・・僕達の失った記憶を、あなたは全部知っているの?」

 

【それを言っちゃうと、いくら私ですら罰せられるわ。それだけ強力な妖術で妖怪全員に箝口令をかけられてるからね。――だから椿。あなたの記憶をちょっとずつ解いていってあげるわね、それなら言った事にはならないから】

 

椿が慌てて質問を続けるも、黒い椿は肝心な所をはぐらかしてしまう。そして怪しげな瞳を輝かせると、腕にいる椿を守るように白狐さんが抱く力を強めた。

 

『椿、大丈夫じゃ。何があっても我が守るわ』

 

『ふん。俺も得体の知れない奴を嫁にするくらいなら、椿の方が良いわ』

 

「白狐さん、黒狐さん。ありがとう・・・」

 

「さて。惚れ気話はそこまでにして、とっとと妖魔を見つけるよ!」

 

【その人間の子の言う通り、今は可愛い坊やを探さないとね】

 

そんな風に調子良さげな黒い椿を見て、私はまだ彼女を信用していない事を告げる。

 

「言っとくけど、まだ私は貴方の事を完全には信用出来ないからね。あの妖魔を生み出したのかなんなのかは知らないけど、椿の姿をしてるからって騙されないよ」

 

【ふふ、中々言うわね〜あなたも。でもね、あなたの言ってる事は半分ハズレよ。正解は「全ての妖魔は私が生み出した」で〜す☆】

 

「はぁ!?おいおい、勘弁してくれよ・・・」

 

この黒い椿の言う事には驚かされてばかりだ。

いい加減、私の気が滅入ってきそうで困る。

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