私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
黒い椿による色々と衝撃的な話で動揺しながらも、とりあえず大量のぬいぐるみを操っている妖魔を倒すべく妖界の旧校舎を探し回る私達。
彼女の後を追っていった先の、ある教室の手前で黒い椿は立ち止まっていた。
【ん〜ここだと思うかな。良い?椿がその妖魔を見つけて「見ぃつけた」って言うのよ。そしたら、今度はそいつが鬼になって探そうとするはずよ】
「そこで取り押さえろって事ね。やれやれ、何だか嫌な予感がするよ」
『それで本当に上手くいくのか?』
黒い椿の言葉に白狐さんは不審げな眼差しを向ける。私も正直半信半疑なのだが、他に手の打ちようがない以上は四の五の言っていられない。
椿も2人へ彼女に従うように声をかけた。
「白狐さん。こいつに何を言っても今はそれしか対処がないんだから、一度その通りにしてみようよ。もし騙されていても、白狐さんと黒狐さんがいるし大丈夫でしょ?」
「わ、私はその頭数には入らないんだね・・・」
『むっ、椿が言うならしょうがない。おいお主、変な動きをしたらどうなるか分かっておるな?』
【はいは〜い、分かってますよ。私もこのままじゃ死んじゃうからね、ちゃんと協力してあ・げ・る。それに、終わったら後でこの子の身体で――】
「やっぱコイツ信用ならねぇな!」
「それ以上は言わないでぇ!」
危うく何かヤバそうな発言をしそうになった黒い椿へ、私と椿はツッコミを入れるが駄狐2人の時とは違って簡単に避けられてしまう。
【あらっ。人間の子はともかく、椿はその体で飛び蹴り出来るまで動けたら上等ね】
「その呼び方いい加減にしてよ、私には「烏森 綾」って名前があるんだから!」
【烏森?あぁ、ふ〜ん・・・。まぁとりあえず、ほら。あそこのボロボロの机が山積みにされている所、あの中に居るから】
私の言葉に意味深な反応を示した黒い椿は、その方向へと指を差す。どうせ何か知っていても答えてはくれなさそうなので、今は妖魔を捕まえる事に集中しよう。
『椿、綾。危なくなったらすぐにこっちへ引き返せよ。良いな?』
「分かった。もし妖魔が出てきた時は、お願いね2人とも」
「うん、大丈夫だよ白狐さん黒狐さん。あの妖魔は、遊んで欲しいだけに見えたからね」
机の山へ向かおうとする私と椿に黒狐さんが心配の言葉をかけてくる。私達は大丈夫だ、とは言ったものの敵の妖魔がどう出るかまでは予想出来ない、慎重にいこう。
そして椿は机の山に潜む、妖魔の姿を見つけて叫んだ。
「見ぃつけた!!」
その瞬間、机の山を崩しながら子供の姿をした妖魔がついに現れる。ニタニタと笑いながらそいつが椿を襲おうとすると――
「見つカっちゃッた〜!ジゃぁ、次は僕ガおーー」
『妖異顕現、過重力!』
「二ぃっ!?」
『白狐!早く巻物に封じるんだ!』
『分かっとる!』
「――っ、ちょっと待って!白狐さん黒狐さん、それに綾ちゃん!一旦冷静になってよ!何かおかしくない!?」
黒狐さんの妖術によって重力を操られた妖魔は地面へとへばりつけられる。そして巻物を取り出した白狐さんが術を唱えようとすると、何故か椿が咄嗟に叫んだのだ。
「椿、どういう事?その妖魔におかしな所があるって、一体?」
【勘が良いわね、椿。大正解よ。この子はね、この妖界のエリアに居る大量の子供達の悪霊に体を乗っ取られているのよ】
「・・・なんだって!?つまり、このまま封じたとしても――」
【そうね、椿の体は元には戻らないわ】
『なんと・・・それはいかんな。我々は除霊などは門外漢だぞ。どうする?』
白狐さんが悩ましげな顔をした。
黒い椿の説明で、やっとずっと感じていた頭の霧が晴れた。――そうだ、妖魔は「言葉を理解しない」のが普通だったのだ。それが意味までも理解して喋ったというならば、必ずそうなる為の"要因"が何処かにあったからなのだろう。
自分の軽率さを酷く恥じた。危うく椿の命を落としかねない状況へと持っていきそうになっていた、と。
『しかし椿よ。お前は妖気だけじゃなく、そういう勘の良さや人の気を感じる能力にも長けているな。ある意味、その力はお前の強力な武器になりそうだな』
「黒狐さん。僕を誉めてる暇があったら、この子達の除霊の方法を考えてください」
「除霊って言ってもね・・・何か有効そうな物があればいいんだけど」
【ふ〜ん、良い感じね。ふふ】
「何がですか?」
妖魔へ取り憑いている子供達の除霊に悩む私達を見て、黒い椿は怪しげな笑みを浮かべる。
『椿よ。やはり悪霊となった子供達の、一番の"願い"を叶えるしかないようじゃな』
「子供達の"願い"っていうと・・・遊んでやるんじゃなくて、その子達を「本当の意味でここから解放する」事なのか」
「やっぱり、そうするしか除霊する方法はないようですね。この子達の遺体を見つけて、この妖界から出してあげないと。それから供養するしかない――よね?」
【ご名答〜☆椿と綾って頭良いね〜】
「・・・この野郎」
黒い椿が唯一の除霊方法を見つけた私達を誉める言葉をかける。
口ではああ言ってしまったが、こうして頭が良い事で誉められたのなんて、小学校の学力テストで良い点を取った時くらいだろうか。今ではブラブラほっつき歩いてすっかり不良な悪ガキとなってしまったので、大体の教科が赤点で誉められる事は全くない。
「まあいい。それよりもどうやって子供達の遺体を探すか、だね」
「そうだね綾ちゃん。多少は危険でも、レイちゃんを連れてくればよかったかな・・・」
『椿。霊狐は霊体を見つけられても、その遺体までは見つけられんぞ』
「あっ、そうか」
「こりゃ〜中々しんどくなるな」
レイちゃんでは見つけられないと黒狐さんに言われ、これからかかるであろう苦労を想像して、私は大きなため息をつく。
『それよりも――じゃ。先程椿の体を動かしている貴様の、その邪悪な妖気をアプリで調べさせてもらったが――我の手配書アプリでも表示されんかったわ。つまり貴様の手配書があるとしたら、それはSランク以上』
「白狐さん、まさかその黒い椿の正体について何か分かったの?」
『その通りじゃ、綾。そこで緊急の為という事で、センター長に調べてくれと妖気を添付させてメールをしておいたのだ。すると、とんでもない回答が返ってきたわ』
私達は息を飲む。
『手配書ランクはSS。椿の封じられている記憶とも関係しているようで、箝口令がどうのと口うるさかったが"緊急事態でもあり、椿の命も懸かっている"と言ったら渋々手配書を送ってくれたわ』
【・・・】
『のう――"妲己"よ』
白狐さんから放たれた、その名前に私は思わず叫んでしまう。有り得ない、そんなまさか。
「"妲己"だって!?昔、中国の歴史で「殷」を滅亡させた、あの?まさか・・・アレは「封神演義」の作り話じゃないっていうの!?」
【ふふ、ご名答・・・よく調べたわね。妖怪の中でもこのSSランクにされているのは私だけだし、そりゃすぐに見つかるわよね。どう?凄いでしょう?それと綾、あまり乙女の過去は詮索する物ではなくてよ?】
「うぐ・・・じゃあ、全部本当に?」
【まあ、そんな所かしらね〜】
呆気にとられる私を自慢げにからかう黒い椿――いや、妲己。こんな所で予想外にも、とんだ有名人と出会ってしまったものだ。
「ねぇ、白狐さん。僕達って今、何気に凄い情報を得ているのですか?」
『う、うむ・・・その通りじゃな。正直、我も予想外だわ』
「まさか世界三大悪女の1人が椿の中に閉じ込められてたなんて・・・って、黒狐さん?」
『う、ぐぅ。妲己・・・だと?よ、嫁。くっ、お、鬼・・・嫁。き、九尾。うぅ』
「ねぇ、ちょっと!いきなりどうしたっていうのさ!黒狐さん!!」
突然黒狐さんが、何かを思い出しそうになっているのか頭を抱えて苦しみだした。それはすぐに収まったようで、どうやら記憶の一部を思い出せたらしかった。
『はぁ・・・はぁ。そ、そうか。俺はお前から逃げる為に、稲荷山に隠れたんだ』
【あ〜ら、そんな所に隠れていたんだ】
「黒狐さんから、なんかさっき思いっきり「鬼嫁」とか聞こえてきたのも何か関係が――」
【ふふ、何か言ったかしら?】
「・・・いや、何も」
不気味な笑みを浮かべる妲己の視線が鋭くなり、より詳しく探ろうとした私は命の危険を感じてすぐに口を閉じた。あの目はヤバい、猛禽類が小動物を狙うような目だ。
『しかし解せんな。何故それくらいで、俺の記憶にまで封をされるんだ?』
【あら残念。そこまでの記憶しか戻らなかったか。しょうがないわね、ゆっくりいくしかなさそうね。――さっ、今度は子供達の遺体を探すんでしょ?手分けして探さないと、半日なんてあっという間よ】
「そうだ――そうですね。椿の為にも、早い所見つけに行きましょう!」
【あらあら、相手が目上だと思った途端に言葉遣いを変えるなんて。そういう思いやりが出来る子って私は意外と好きよ〜】
「単に死にたくないだけですから!」
私達は縛った妖魔を連れて、子供達の体を探す為に教室から出た。