私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾壱話 妖魔と妲己

 

椿の体を操っている人物の正体が、SSランクの大妖怪「妲己」であると判明してから移動する私達の間の空気が緊張していて落ち着かない。

 

そんな中でも椿は顔をしかめて必死に考えを巡らせられる事に尊敬する。

 

『椿、先程から黙っておるが大丈夫か?』

 

「ん・・・大丈夫だよ白狐さん。無闇に探しても見つからないだろうから、ちょっと推理してました。でも、僕の頭じゃ無理かも・・・」

 

「私もだよ、椿。何処に子供達が隠れたりしそうかなんて、いくら考えてもゴミ箱とかロッカーの中とかしか思いつかないし・・・」

 

「『『・・・』』」

 

「何、その可哀想なものを見るような目は!?」

 

【ん〜確かに・・・片っ端から教室を調べても意味が無いわね。だからって、他に何処かあるかしら?】

 

妲己が悩ましげに頭を傾げた瞬間――

 

突然廊下の窓を突き破って、緑と水色の身体をした細身のロボットが此方へ宝石のように透き通って輝く弓を向けてきた!

 

白狐さんと黒狐さんが私達を庇いながら叫ぶ。

 

『な!此奴は一体!?』

 

『綾、アレもお前の使い魔か!?』

 

「知らないよ!何なんだアイツ、こっちに――?」

 

もちろん私も驚いていたが、そのロボットはすぐに此方へ向けていた弓を反対側の廊下へ向けて数度、矢を床に放った。それはまるで「そっちに進め」と言われているかのように感じる。

 

【あら、親切な使い魔じゃない。何処の誰が呼んだのかは知らないけど、確かにそっちから邪悪な妖気を感じるわね〜】

 

「妲己さん、コイツの事を信用する気?ワナの可能性もゼロじゃないんですよ?」

 

【それだったら、今こうして出てきてる方がおかしい話よね。呼ばれれば姿を消したり出来る使い魔なら、私達が迷っている不意を幾らでも突ける訳だし。それに――そうして欲しいって人が居るから出てる可能性もあるわよね?例えば、悪霊の子供達とか】

 

「使い魔って、幽霊でも呼べるの!?」

 

『我も聞いた事がある。強い"想い"を持つ霊体が誰にも使役されていない「使い魔」を自身の周辺に作り上げる。そんな話をな』

 

【そうそう。だからきっと子供達が助けて欲しいって呼んでるんじゃないの、って事よ】

 

私は少し悩んでから、それに対しての答えを出した。一か八かだ、他に手段を選んでいる余裕など無い。

 

「・・・分かった。そいつの示す方向に進んでみましょう。ワナだった場合は、ワナごと叩き潰す」

 

「あ、綾ちゃんらしいね・・・僕も、綾ちゃんと同じかな。そうしなきゃ間に合わなくなりそう」

 

【じゃ、答えは決まりね。あの使い魔の後を追いましょうか。それにしても、この妖気は成熟している妖魔ね。中々良いわねぇ・・・】

 

妲己が舌なめずりして微笑む。椿の体でそんな顔をされると、どうにも他人のはずなのに他人に見えないようで、複雑な気分にさせられて困る。

 

白狐さんの後ろに隠れるように、黒狐さんが妲己へと質問する。

 

『おい、妲己。"成熟"とか"子"とか、さっきから何を言っているんだ』

 

【ふふ、気になる?黒狐。簡単な事よ。貴方達は危険度でランク付けしているけれど、そもそも私が生み出した妖魔は「未熟型」と「成熟型」があるのよ。もちろんそれによって強さも変わり、危険度にも関わってくるから、貴方達のランク付けもあながち間違いではないけどね】

 

「えっと・・・つまり妲己さんの言葉から察するに、Aランクの妖魔は「未熟型」でSランクの妖魔は「成熟型」?」

 

【あら、賢いわねぇ椿〜】

 

「やれやれ、勘弁して欲しいな・・・全く」

 

【さて、向こうも招待してくれているみたいだから、そろそろ行きましょうか。この上、屋上の辺りから強い妖気を感じるわ】

 

そう言って妲己は教室の隣にある、ボロボロで崩れそうな階段へ向かう。私達も踏み外さないように彼女へ続いて後を追うと、屋上へ通じる鉄の扉の前に辿り着いた。木造には似合わない、とてつもない違和感から椿が震えて白狐さんが頭を撫でる。

 

「使い魔が消えた・・・。この先に妖魔が――」

 

『この妖気・・・俺の手配書アプリでも出てこない。白狐。こいつはSランクだぞ、どうする?』

 

『参ったの、こんな事になるとはの』

 

「ええ!?ここまで来たのに!」

 

スマホで扉の向こうを調べていた黒狐さんが険しい顔をした。その言葉に白狐さんも悩ましげに頭をかく。

 

「センターに問い合わせは出来ないの?それでSランクを倒せる、ライセンスの級を持っている妖怪さんを応援に呼んだりさ・・・」

 

『とっくにしておる。だが、今手の空いている者が居らず早くても半日以上はかかるそうだ』

 

「ふざけんな!このまま椿が死ぬのを黙って見てろっていうのかよ!」

 

すると妲己が扉にそっと手を当てて私達の方へ振り向いた。

 

【何ボサッとしているの?貴方達は押さえてくれるだけでいいわよ。――後は私が食べるから】

 

「ちょっと!僕の体で何を――」

 

【大丈夫よ。養分として私の中に蓄えるだけだから、あなたの体には何の影響もないわよ】

 

妲己は椿の言葉を遮って言うと、そのまま鉄の扉をいとも簡単にボーン、と軽々しく吹き飛ばす。

 

その先に広がっていたのは――100人から200人くらいの子供達の骨で囲われて山積みにされた、中央に不可解な物体が鎮座していた。子供達の骨の中には妖怪のものと思われる骨も混じっている。多分長い年月があったとはいえ、恐ろしい程の犠牲者の数だ。

 

【集めに集めたり。そして、ようやくここまで成長したのね。偉いわね〜】

 

「えっ、ちょっと妲己さん!?」

 

妲己が骨の山の中央にある物体へ歩いていくと、その巨大な卵みたいな何かはあちこちに生えた触手で彼女を攻撃しようとする。

 

【あら、親を狙うなんて最低ね】

 

妲己はその攻撃を難なく躱し、続けて放たれていく攻撃にもまるで余裕と言わんばかりに避け続ける。

 

すると――

 

「やっと、見つけてくれたんだね。それじゃあ、早くその鬼を倒して」

 

「怖い鬼を倒して」

 

「僕達を――」

 

「私達を――」

 

「「「怖い鬼から解放して」」」

 

後ろから数体のぬいぐるみが、子供達の声でそう懇願してくるのが聞こえた。どうやら椿にもその声は聞こえたようで、白狐さんへ降ろしてもらうように頼んでいた。

 

「あっ、白狐さん。ちょっと降ろして!」

 

『椿、綾。あんまり感情移入はするなよ。連れていかれるからな』

 

黒狐さんがそう言い残して、白狐さんと共にサナギのような妖魔を押さえに向かう。妲己が避けているだけで戦おうとしない以上、放っておいても意味がないと判断したのだろう。

 

椿がぬいぐるみへ話しかける。

 

「ねぇ、あの妖魔の本体はどこ?君達はずっとこの校舎を駆け回っているんだよね?それだったら、おかしな物を見つけてない?」

 

「私達だけじゃアレに勝つのは難しいの、お願い」

 

妲己の不審な行動から察するに、彼女はあの妖魔について"何かをするのを待っている"。

 

その彼女の謎の企みを未然に防ぐ為にも、私達は必死で子供達のぬいぐるみへお願いする。

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