私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
『さて、お主らの教室に着いたぞ。ここから、あちこちへ発せられている妖気を逆探知して「電磁鬼」の居場所を見つける』
「そんな機能まであるんだ!?」
『そうそう!先程の妖気アプリは逆探知も出来るのだぞ!』
「黒狐さん、自慢気に言ってくるけど別に貴方が作ったんじゃないでしょ?」
翼、正論だけど張り切ってる人に言うのは止めてあげて・・・あ、黒狐さんちょっと尻尾下がった。確か犬は憂鬱な気分になったりすると尻尾が下がるんだっけね。・・・いいぞ翼、もっとやれ。
『む、こっちじゃ!』
白狐さんが屋上への階段へ走る。
もし敵がこの先で皆を操っているのだとしたら、逃げ場が無い袋小路に隠れてる事になる。ずっと翼への嫌がらせをしてきたってのなら慢心してても不思議は無いだろうけど、それにしてはなんか引っかかる気がする・・・まるで無意識の内に操られているような、そんな背筋に雫を垂らされてるような気分だ。
『これこれ!我の尻尾を掴むでない、痛いぞ!』
「あっ、ご・・・ごめんなさい黒狐さん。」
翼をいじめていた黒幕への怒りに燃える私とは違い、翼はあくまで自身へ降りかかる不幸を何とかしたいだけだ。今みたく誰かにしがみついてしまうのは仕方ないよ。
『これ、何を考えとるんじゃ!』
「わぷ!」
「ぷぇ!?」
2人して黒狐さんに尻尾で顔をポフポフ叩かれ注意されてしまった。・・・っていうか、尻尾が顔から離れてくれないんだけど!そしてそのままくすぐらないで〜!
「わぶ、ぶ!分かった!分かったから〜!」
「うぶぶ〜ご、ごめんなさい、ごめんなさい〜!くすぐったいしクシャミ出そうだし止めて〜」
『3人して何遊んどるんじゃ』
やっと顔から黒狐さんの尻尾が離れると、白狐さんが呆れた様子で私達を見ていたよ。どうやら先に屋上への扉を開けてくれていたようだ。
『おぉ、すまんすまん!・・・で、居たか?白狐よ』
『それが・・・誰もおらんかったわ。妖怪の「よ」の字すらなくな』
「むしろあっても困・・・りはしないけど。じゃあ「電磁鬼」は一体何処に?」
白狐さんが苦虫を噛み潰したような顔をした。
『やはり「電磁鬼」相手には、普通の逆探知では効果無しか』
それを聞いてか翼がいよいよ恐怖で腰で抜けてしまい、その場にへたりこんでしまった。
「そんな奴相手に勝てる訳無いじゃん!」
「落ち着いて翼!野球で言ったらまだ試合は一回裏みたいなもんだって!」
『そうじゃぞ!お主には我らがついとるんじゃ、心配するな!』
『白狐の言う通りじゃ!我らがお前を全てのものから守ってやる。惚れた者を守るのは当たり前じゃからな!』
な、ナイスフォローだよ、お2人!
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それからしばらくの時間、私と翼は白狐さんと黒狐さんが逆探知しているのを眺めていた。
すると翼がふと気づいた様子で自身の身体を見回してから顔を赤らめて言った。
「・・・ねぇ、僕さ。一生懸命尻尾とか耳とか隠していたけれど、ここにいる3人はひょっとしなくても見えてる?」
『『「・・・」』』
はい、白狐さんと黒狐さんがそれ聞いてあからさまにニヤニヤしだしたのでハッキリ言わせてもらいます。
「ごめん、翼。めっちゃ見えてた・・・」
『そうじゃな、全くもって隠す必要はなかったぞ。その勾玉で気づかれないようにしているからな』
『必死に隠している姿は可愛かったなぁ、白狐よ』
ホッコリした様子で互いに笑い合う2人・・・いや2匹。これ私だけ見えてるもんかって思ってたから、いかんせん言い出しにくかったんですよ!?
あ、プクーってほっぺ膨らまして怒ってる。でも残念な事に狐っ娘な美少女がそれやっても、ねぇ・・・
『ふふ、怒っているつもりだろうがその顔も可愛いの。余計にいじりたくなってくるから、止めた方が良いのではないか?』
やっぱり可愛いよね〜あー癒される・・・
『ふむ、しかしそうこうしている内に大分時間が経ってしまったの』
スマホで時計を確認してみると、時刻はもうとっくに放課後を切ってしまっていた。
「僕、そろそろ帰らないと・・・」
「翼は門限があるから、早く帰らないといけないんだったね・・・クソ、ここまでして見つからないなんて!」
白狐さんと黒狐さんも諦めた様子で狐の姿に変身する。
『そうじゃな、また明日にして帰るとするかの』
『こういうのは根気じゃな』
2人の話を聞いてから改めて情報社会の恐ろしさを再認識したものの、どうしてあの時に私は操られなかったのか・・・そして「電磁鬼」はどうして翼を狙って学校の人間を操っているのかが謎だった。
どうしてかつては男子共に追っかけられてた私じゃないんだ、どうしておっとりとして心優しい翼が狙われなくちゃいけないんだ、って。
そんな事を考えて屋上から立ち去ろうとして瞬間――
耳元に生暖かいそよ風が吹いたような、そんな全身を強ばらせるような気持ち悪い感覚が身体を通り抜けて振り返った。
どうやら今のを翼も感じとる事が出来たらしく、同じ方向をビクビクした様子で見ていた。
『んん?どうした、椿に綾』
「だから翼の事を変な名前で呼ぶのは止めて!・・・なんか居るのを感じた。」
「う〜・・・なにかいるの?変な視線みたいな、そんな気持ち悪いのが漂ってる感じがするんだけど・・・」
『お主ら、まさか・・・』
『おぉ、自力で妖気を感じられるのか?』
え?この今感じてるゾワゾワした空気みたいなのが妖気?しかも自力って、これなんか嫌な予感がするんだけど。
『普通は生まれたて、成り立ての妖怪は妖気を自力で感じる事が出来ないのじゃ。妖気を感じ取る様になるには相当な訓練が必要でな。他の妖怪達もそういった面倒臭さからやる奴は少ない。スマホで調べられるからな。』
『しかし、お前達は身体の全てから妖気を感じるようだな。さっきは耳を隠していたから分からんかったのか、しかし綾は・・・』
「そんな事はどうでもいいでしょ!?じゃあ近くに「電磁鬼」が居るって事だよね?」
『あ〜・・・ちょっと待て、どれどれ』
白狐さんが人の姿へ戻って妖気アプリで辺りを調べる。
「そういえば、2人も自力で妖気を感じられるんだったら、そんなの使う必要は無いんじゃ・・・」
『いや、一応分かるんじゃがな。ただ、どんな妖怪のものか、何処に居るのかも分からんからアプリで調べておるんじゃ』
「えぇ?ウソでしょ?私は結構ハッキリ感じてるからてっきり・・・」
『しかし、操っている妖気の糸が混線しとるの。これだけの妖気の糸が束みたくなっとるから、それを察知したんじゃろう』
白狐さんが首を横に振ってスマホを仕舞おうとすると、翼が慌ててその手を引き止めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。そんなんじゃなくて、すっごく見られているんだけど?」
「やっぱり翼も感じるんだ・・・」
その言葉を聞いて白狐さんと黒狐さんは顔を見合わせた。
『白狐よ、これはもしかすると――』
『うむ、とんでもない能力かもしれんぞ。椿よ、その視線とやら何処から感じるんじゃ?』
「え?えっと・・・」
「右の空き教室!」
私達の言葉を信じた白狐さんが妖気アプリでそこを調べる。もし、ここに潜んでいるんだとしたら――額にじんわりと脂汗が滲む。
『ふむ、やはり混線しとるの。椿と綾よ、中に入ってもう少し詳しく調べられんか?』
「えぇぇ!!無理無理!」
「白狐さん、そこまでやって丸投げは酷くないですか・・・」
絶対入らない!と拒否していたが、突然後ろから狐のままの黒狐さんに体当たりされ思わず2人してその場に尻もちをついてしまった。
「うわっ!?えっ?うぷっ!」
「ちょ!鼻に尻尾が、鼻に尻尾がぁあ!!」
黒狐さんは鼻で器用に翼を背に乗せ、私をマフラーで包むように尻尾で掴んだ。
『こうすれば、我も一緒にいるから怖くないだろう?』
「いや、その前に私、私の運びかた・・・」
『まぁ、どんな妖怪かは見れば分かる。自分が理解出来ないものだから、極端に怖がるのはしょうがないが、そのせいで余計に妖気が大きく感じられてしまうんじゃ』
は、はあ。つまりはアレか、人の恐怖心でどんな姿にでも化けられる洋物ホラーの怪物か。そう思うと何だか無性に腹が立ってきた、散々翼を怖がらせてきておいて自分が追い詰められたらビックリ箱のように脅かしてくる感じでイライラする!
待ってなよ「電磁鬼」!翼へ与えてきた数々の仕打ち、倍返しにしてやる!
・・・あ、私どうやって妖怪と戦えばいいのか教えてもらってなかったや。ちょっと黒狐さんストッププリーズ!まだ武器とかそういう準備が出来てな〜い!!