私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾弐話 救われる子供達の魂

 

私と椿が子供達のぬいぐるみに説得を試みようとすると、そのぬいぐるみ達はすぐにある一点へ手を伸ばした。

 

子供達の骨が山積みにされている場所、彼らの骨の中にきっとその妖魔の本体がある。

 

「白狐さん黒狐さん!その骨の山の中に、こいつの本体があるよ!!」

 

椿が叫ぶ。

すると、それに勘づいたのか骨の山を崩しながら本体である巨大な魚の顔をして妖魔が姿を現した。まるでチョウチンアンコウのようなそいつは壊れたバイオリンのような鳴き声を上げる。

 

「ギィィィィイイ!!」

 

【ふふ、そこに居たんだね。ずっと隠れんぼするのかと思ったけれど、案外簡単に出てきたわね「魂喰」!】

 

妲己がご馳走を前にしたような顔をしながら妖魔へ近づく。妖魔は触覚だったサナギ形のそれを振り回して彼女を潰そうとした。

 

【あらあら。それは捕まえた子供の魂を、そこに閉じ込めてゆっくりと吸っていく為に使う物でしょう?そんなに粗末にしちゃ駄目よ】

 

それすら避けた妲己が手を狐の形にして妖術を発動する。

 

【――妖異顕現、黒焔狐火】

 

黒い炎が妖魔を包み込むが、すぐにそれは体の粘液で消火されてしまい効果が無いように動いている。

 

「ウソ!?あの炎が通用しないなんて・・・」

 

【うん。という訳で、押さえるのお願いね。白狐、黒狐】

 

わざとらしくテヘッ☆と妲己が舌を出して笑ったのに私は激昴する。

 

「ひょっとして絶対効かないって分かってて撃ちましたアンタ!?あ〜もう!小次郎も2人を手伝って!」

 

「御意!――って、こんな時に拙者かよ!?」

 

『はぁ、仕方ない。だが良いか?椿を助ける為であり、お主の為ではないからな!』

 

『とりあえず白狐、こいつをどう押さえる?綾の使い魔が来てくれたとはいえ、俺はさっきから過重力しているのに全く堪えていないぞ?』

 

そう言って黒狐さんも先程の妲己のように手を狐の形にして妖術を放つが、相も変わらず効果が無い。触手を未だに余裕で躱す妲己が煽った。

 

【もう、ほらぁ。早く足止めしてよ。椿の体じゃ押さえられないのに〜】

 

「余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で避けながら言う言葉ですか、貴方は・・・もう。とりあえず小次郎、突っ込んできて!」

 

「何か今回の私、扱い雑過ぎないか主殿よ!?」

 

『全く、仕方がない。少し下がっていろ』

 

白狐さんと小次郎が魂喰に突撃して、卵形の触覚先端へ斬ったり刺したりの攻撃を加える。しかし、予想以上の強度を持っているらしいそれに目立つ傷は一つもついていなかった。

 

『むっ?参ったの、こいつは硬いのぅ・・・』

 

「確かに、なんと手強い巻藁よの。この"物干し竿"でも普通に斬れんとは!」

 

攻めあぐねる2人へ、今度は魂喰が不気味に笑いながら触覚を振り下ろして叩き潰そうとする。

 

『流石はSランクといったところ。だがな――』

 

その瞬間――

 

『これでも、我は二級ながらに緊急時にはSランクとの交戦を特別に認められているの――だ!!』

 

白狐さんが全身に力を入れて踏みしめ、その振り下ろされた触覚を掌底で弾いたのだ!

 

「中々の腕前、拝見させてもらった!ならば私も――飛剣"燕打ち"!!」

 

そこへ小次郎も追撃の一撃を加える。

刀を上腕で構えた状態から、以前の"燕払い"とは違う、一息に切り裂くような烈風を纏った斬撃だ。

 

「どうだ、主殿!これは「燕が獲る動き」を真似た――」

 

「そんな説明はいいから!」

 

私の怒号に凹む小次郎の傍で、2人が何かしようとしている。

 

『黒狐。炎や重力、斬撃が効かんのであれば、雷はどうじゃ?』

 

『今やっとるわ!なんなら別に下がらんでも良いぞ、白狐!』

 

「って、そっちもそっちで何を」

 

『――妖異顕現!黒雷電狐!』

 

「グギィィィイイ!!」

 

「あばばばばばば!!」

 

黒狐さんが狐の形の手を突き出した瞬間、黒い狐の雷が"小次郎ごと"妖魔を激しく感電させた。

 

・・・皆さん、もうお分かり頂けただろうか。

 

『ふん、油断したな!ただの雷の攻撃だと思ったろう?いや、そもそもこいつには――と、綾どうした?』

 

「ど・・・どうじだじゃねえよ・・・ごじろうごどやりやがっで・・・びびび」

 

そう。「使い魔」への攻撃は術者である私にも反映されるせいで、思いっきり身体が痺れて動けなくなってしまったのである。因みに小次郎は今の攻撃に巻き込まれた事で、姿を消して一旦退散している。

 

【あはぁ、良くやったわ黒狐】

 

「僕の体ではしたない事しないでよぉ!」

 

妲己が涎まで出すくらいの舌なめずりをして、椿が彼女に向かって怒った。いや、それも重大なのだが私の容態について一言は欲しかった。

 

【それじゃあ、成熟した貴方の力――頂くわね】

 

「ギ、ギィィ、ギィィィィイイ!!」

 

すると、妲己は狐の手の口から発生させた黒い球体へ痺れている魂喰を吸い込んでいき、屋上が狭く感じた程の巨体が嘘のように消え去ってしまった。

 

【ふふ、良い感じに成熟していたわね。100年?200年?どれだけの数の子供達の魂を、それだけの年月消滅させずに吸っていたのかな?】

 

「にひゃ、200年だって?なんて奴だったんだ、あの妖魔・・・」

 

満足げに語る妲己の言葉に私は耳を疑った。

あれだけの年月、一体何時から魂喰は子供達を誘い込んで餌食にしてきたのだろうか・・・そう考えただけで胸糞が悪くなってくる。

 

『ふぅ、助かったわ。いくら交戦が出来るとはいえ、捕獲までは許可されとらんかったからの』

 

『全くだ、こいつは捕獲出来てもな』

 

「その巻物、既にあの隠れんぼ妖魔を封じてたんかい!」

 

【あら、いつの間にさっきの子を捕まえたの?逃がそうと思っていたのに、油断したわね】

 

「おい今なんつったアンタ」

 

やはり未熟な妖魔とはいえ逃がそうとしていた妲己は信用出来る相手じゃない。何を企んでいるかは知らないけれど、妖魔を一応は倒してくれただけ一先ず良しとしよう。彼女が味方かどうか、それは雫の時と同様に私は様子を見ながら決めていく事にする。

 

子供達のぬいぐるみが体を光らせ、私達へ話しかけてくる。どうやら、これでこの子達も本当の意味で救われたのだろう。

 

「やっと隠れんぼ、終わったね」

 

「ごめんね、巻き込んで。でも、どうしても見つけて欲しかったの。あの鬼を倒して欲しかったの」

 

そして後ろを振り返ると同じように椿の身体も光り、魂が元通りになっていこうとしていた。

 

「あ、あは。あはは。やった、も、戻れたぁ」

 

『良かった良かった!椿!』

 

「うひゃあ!抱き上げないでください、白狐さん!」

 

元に戻った椿を見て白狐さんがとても嬉しそうに抱き上げた。黒狐さんもホッと一安心した顔をしているが、普段とは違い白狐さんに突っかかろうとする様子はなかった。多分、椿の中に妲己という"鬼嫁"が居た事を知ったからだろうか。うっ、少し寒気を感じた。まさか彼女に考えている事まで読まれたりはしていないはずなのに。

 

「――それじゃ。僕達の体、よろしくね。学校を襲っていた子達にも伝えたし、もう大丈夫だよ」

 

「あっ、もう行くの?」

 

すると消えゆこうとする子供達のぬいぐるみへ、椿が白狐さんの腕から抜け出して駆け寄った。

私も彼らを見送る為に椿の傍に行く。

 

「ねぇ、君達はずっとここに居たの?」

 

「そうだよ。ずっとずっとここに居たよ。だから見つけて欲しかったの。・・・だけど見つけてくれなかった。でも、僕達も前の子達を見つけられなかったから、こうなってもしょうがないよね。お姉ちゃん達みたいに、怖がらずに見つける事が出来れば、死ななくて良かったんだよね」

 

「いや、そんな事はないよ。あの悪い奴が皆をこうした張本人なんだ。それに――椿」

 

椿へ視線を送る。

 

「残念だけど、僕も怖かったよ。でもそれ以上に"この3人の力になりたい"って、その"想い"だけで動いていたの。だから僕はそんなにすごくないよ。最後だって――」

 

「だけど、僕達を助けてくれたのはお姉ちゃんだよ。お姉ちゃんが一生懸命動いてくれたから、ようやくここから解放されるんだよ。・・・ありがとう」

 

子供達の魂が光の玉となって空へ浮かんでいく。

 

「ありがとう」

 

「ありがとうね」

 

「ごめんね、ありがとう」

 

「ありがとうございます」

 

たくさんの子供達の感謝の言葉が、屋上に居る私達へと聞こえてくる。私も「またいつか」と昇りゆく彼らに手を振った。そして、

 

――その日、初めて感謝された椿が人の為に涙を流したのであった。

 

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