私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
旧校舎で起こった事件の全てを解決し、校長室へと戻ってきた私達を待っていたのは――レイちゃんによる顔のペロペロであった。
「わひゃ!ひひっひ!やめてレイちゃん〜!」
「レイちゃん、くすぐったいよぉ!」
そういえば、戻る途中に白狐さんから聞かされたのは"やはりレイちゃんも連れてきた方が良かったかもしらない"という事だった。何でも旧校舎に潜んでいた1体目の妖魔「はぐれ鬼」に最初に椿が引き込まれた際、どうやらレイちゃんが無意識で彼女に結界を張ってくれていたのだという。可愛い私達のペットがすごい主人想いなのが嬉しかった。
子供達の遺体は、一連の事情を聞いた校長先生が知り合いの住職にお願いして供養してもらう事になったそうだ。ついでに、先輩をいじめていた連中も土下座して謝り、あのテレビやラジオ達も行方不明になっていた先輩が用意した物ではなかったのだが・・・結局旧校舎は学校の黒歴史が詰め込まれた場所というのが判明してしまった。この事件自体は解決出来たから良いものの、後味の悪い話である。
「校長先生。ここにあったぬいぐるみ達も、あの妖魔に囚われていた子供達の魂だったんですよ。何時からあの妖魔があそこに居たかは分からないけれど、あれだけ沢山の子供達が犠牲になっているなんておかしいですよね?」
納得のいかない表情で椿が校長先生へ詰め寄った。すると校長先生は旧校舎に関する"真実"を話し始める。
その"真実"に私は耳を疑う。
「君は優しいんだね。・・・お察しの通りだよ。あの校舎は――学舎として使われた事は一度もない」
「・・・なんだって?じゃあ、一体何の為にあの場所は使われていたんですか?」
「烏森君。あそこはね、この学校が出来た当初に出来の悪い生徒達を再教育する為の"更正校舎"と言われていた場所さ。でも、それは名ばかりであの場に缶詰状態にし、徹底的に人格更正させようとしていたのさ」
「ひどい・・・教育の場である学校として、それはいくら何でも気が狂ってるよ」
「もちろん、その当時から行方不明になる子が居たと日誌等には残されていた。それでも、更正の辛さから逃げ出したとされ、ろくな調査はされなかったみたいだよ。戦後すぐ、それがバレるのを恐れた国が校舎を取り壊そうとしたけれど・・・後は分かるよね?」
校長先生の言葉に椿がゆっくり頷く。
「何故か工事関係者の人達がケガをしたり、死んだりしたのですね」
「まるで校舎自体が呪われてるみたいだね。事情が事情なだけに嫌な話・・・」
瞬間、校長先生がまた扇子を広げようとして――
「妖異顕現、黒焔狐火!」
「うわちゃちゃちゃ!何するんだい!?」
――椿に妖術でそれを燃やされる。いや、今は本当に普段通りにおちゃらけようとするのは止めた方がいいと思う。
「校長先生。今は真面目な話をしているので、おちゃらけは禁止です」
「本当に、校長先生は良く分かんないなぁ」
私も呆れてため息をつく。特に威圧したつもりはないのだが、校長先生は申し訳なさそうに縮こまってしまった。
「つ、椿ちゃん。向こうで何があったの?なんだか、雰囲気が・・・」
『つ、椿よ。まさか、また妲己が?』
普段では有り得なかった椿の様子にカナと狐2人が不安げに彼女を見ていた。彼らを安心させるべく私は椿にフォローを入れる。
「いや・・・アレはどう見ても、ふざけようとした校長先生にツッコミ入れただけだから」
「うんうん、大丈夫だよ。そんな簡単には自分の身体を乗っ取られたりはしないから――」
【へぇ、それなら試してみる?】
「うわぁ!」
「ゲェッ、妲己!!」
椿がそう答えた瞬間に"妲己の想い"が直で頭に聞こえてきた。どうやら、あの校舎で色々あった結果、妲己の魂による声も聞こえる様になってしまったらしい。
『どうした!?椿、綾!』
『なんだ?妲己の声でも聞こえたか?』
「おい妲己さん!姿を隠してないで出てこい!」
白狐さんと黒狐さんに心配されながら椿と私は周辺をキョロキョロ見渡す。
【ふふ、見えないってば。今私は、椿の中にいるんだからね】
「な、何で声だけが聞こえるの?」
「ちょっと私にまで聞こえてくるんですけどぉ!?」
【分かっているんでしょ?成熟した妖魔を取り込んで私の力が増したから、こうやって話が出来るようになったのよ】
「そのうち椿の身体を乗っ取るつもりでいるのか?それは冗談キツすぎるよ」
【そう思うでしょうけど・・・椿の身体を乗っ取るまではいかないだろうし、そのつもりもないから安心しなさいよ。それに、話すといってもほんの少ししか出来ないわね。すごく無理してる状態だからか、すぐに眠くなるわ・・・という訳で、オヤスミ〜ノシ】
「ええ!?とりあえず安心は出来たけど、最後何となくネット用語みたいなの使っていきませんでした、ちょっと!」
色々とおちゃらけている部分が校長先生に似ているような妲己は、そう言って再び静かになった。あの短時間でも、最後の私のツッコミにすら反応出来ないくらい消耗したようだ。
『椿、大丈夫か?身体を乗っ取られたりは!?』
「白狐さん、ありがとう。大丈夫、身体を乗っ取る気はないって。信じられるかは分からないけど、今はちょっと話しただけで疲れて寝ちゃってるから、しばらくは僕の身体が乗っ取られる心配はないと思うよ」
椿の言葉に狐2人は安心した様子を見せ、校長先生やカナは意味が分からないような顔をしていた。
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あの後、校長先生達へ多くの事を説明した私達はカナと一緒に下校しながら、これからの事について等を話していた。
「椿ちゃん・・・どんどん厄介な事が増えていくね」
「あ、はは・・・ほんとにね。女の子にもなっちゃうし、神様って居るとしたらどんだけ僕に試練を与えるつもりなんだろう」
「もし居たとしたら、私は沢山文句を言ってやりたいよ。主に椿の事で!」
「それにしてもさ〜何かおかしいと思わない?」
「えっ!?カナちゃんも黒狐さんの様子がおかしいの気づいてたの?」
いきなりのカナの脈絡の無い質問に、これまた突拍子もない返事をした椿に私は苦笑いしてカナの質問についてフォローを入れる。
「椿・・・多分、それ旧校舎の件だと思うんだけど」
「そうだよ綾さん!でも椿ちゃんてば、そういう所ホントに可愛いね〜。私が今言ったおかしいっていうのは、綾さんの言う通り"旧校舎に結界が張られていた事"だよ」
「えっ!?あっ!!あぁぁぁぁ・・・」
「うわ、どんだけ恥ずかしかったの」
「悶えている椿ちゃんも可愛い〜」
カナが調子に乗って、そろそろ話が脱線してきそうなので一旦話を戻す事にしよう。
「とりあえず、その話は置いといて。確かに、後でよく考えてみたら子供達は見つけて欲しがってたのにも関わらず、どうして校舎には結界が張られていたのか。それが謎だね。そしたら誰も入ってこれないじゃん」
「ふ〜ん、無理やり話戻すんだ。まっ、良いけどね」
「カナ、こっちは真面目に考えてるんだよ」
「そ、そうだね綾ちゃん。僕は、誰かが20年前にあの妖魔を封じ込める為に張っていたとしても、あの結界はもっと古くから張られていた感じがするよ」
「でも幾ら考えても、こればかりは私達では分からないし、後は校長先生の調査次第だよね」
ひとまず椿と黒狐さんの話題からカナの意識を逸らす事は出来たようだ。
今回はあまりのイレギュラーが重なった結果だったが、これからはとりあえず椿と一緒に悪い妖怪を退治していく事を専念するべきだと思っている。妖魔やら何やらに関しては、なるべくならもう出くわしたくはないと願うばかりだ。
「それじゃあ、私の家こっちだから。あっ、そうだ!今度そのレイちゃんに乗せてもらって、椿ちゃんと綾さんの家に行ってみたいな〜」
「えっ?う、うん。良いよ」
「そっちさえ良ければ、私達はいつでも歓迎するからね」
すると椿もカナの事が気になったのか、家に遊びに行けるかの質問をする。
「あっ、ぼ、僕も・・・カナちゃんの家に遊びに行ってみたいな」
「そうだね。機会があるなら、折角だから美味しいお菓子とか作って持って行くよ?」
だが、その後に彼女から返ってきたのは意外な言葉であった。
「ん?良いけど、私1人暮らしだからあんまり――あっ!何でもない!じゃ、また明日ね!」
「あ、ちょ!・・・行っちゃったよ。足早いな〜カナは」
「ぼ、僕、何か不味い事言っちゃったかな?綾ちゃん」
「まあ、女の子には事情ってもんがあるのよ多分。私はメシとかトイレとかだけど・・・。それにしても、中学で1人暮らし・・・ねぇ」
私はカナが走り去る間際に残した言葉について、訝しげに眉をひそめていた。彼女は父親が妖怪だと言っていたので、半妖ならば恐らく母親は人間なのだろうが・・・それで1人暮らしなのは些か不自然に感じるのだ。
きっとカナには、まだ私達に隠している事があるのかもしれない。