私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「「「「おかえり〜!椿ちゃ〜ん!綾ちゃ〜ん!」」」」
「あっ、ただいま〜」
「おいっす、お疲れ様〜」
「「「「お、驚かない!?」」」」
学校から帰ってすぐに椿の祖父の家に住んでいる妖怪達が"盛大に"出迎えてくれたが、学校であんな大変な目にあった私達からすれば、悪さをしないと知っている彼らの驚かしはちっとも怖く感じない。むしろ、元気に出迎えてくれてホッと安心する感覚すらある。・・・多分、私の常識が毒されてきてるのかもしれないが。
「おかえり〜2人とも!時間掛かったみたいだね。もうすぐご飯だから、部屋で着替えたら広間に来てね」
「うん、分かった〜」
「もうお腹ペコペコだよ〜」
部屋に行く途中の台所で里子と話す。気になってチラと作っている料理を拝見しようとしたが、台所に他の妖怪が出入りしたり料理を手伝っているのもあって皿1つ見る事すら叶わなかった。
「それにしても、今日は疲れたな〜・・・お風呂に入ったら、もうすぐに寝よっか」
「さんせ〜い・・・うへぇ、身体のあちこちがまだ痺れてる感じするよ・・・」
そんな会話をしつつ部屋で着替えていると、ふと椿が自身の鏡に映った姿をじっと眺めている。
若干とはいえ彼女のTシャツの上からでも分かるくらいの胸の膨らみに、私は同性の女性にも関わらず、ついドキッとさせられてしまう。
「うぅ、やっぱり誰がどう見ても女の子になっちゃったんだよね・・・僕。ううん、元から女の子だっけ・・・」
「あんまり難しく考える事は無いんじゃない?結局は男の心で身体は女の子な訳なんだし、それに私は今更椿が女の子だからって、ねぇ・・・」
「なんで僕の胸をジロジロ見るのさ」
「いや、私よりはあるな〜と。気になるなら半分寄越せ」
「やめてよ綾ちゃ〜ん!でも最近ちょっと気になるし・・・」
「やっぱり気にしてるじゃん!も〜!」
椿の胸に嫉妬して、揉みしだいてやろうかと彼女を後ろから捕まえようとした瞬間――
【へぇ、自分の身体に興味津々だね〜椿。まだまだ男の子の心が残ってるんだね〜】
「ひぇ!妲己さん!?」
「あ、アンタ寝てたんじゃないんですか!?」
【ん〜?楽しそうだから出てきちゃった。それに少し寝た事でだいぶ力が安定してきたんだよね〜・・・だから、今なら椿の身体を乗っ取れそう】
突然聞こえてきた妲己の言葉に、私は危機的な状況と判断して身構える。とはいえ、椿の身体だ。小次郎を呼び出したところで彼女ごと斬る訳には・・・
「ぼ、僕の身体を乗っ取らないで!」
「妲己さん、それをやったら私はアンタを絶対に許さない!」
【ふふ、2人とも必死で抵抗しちゃって〜。それだったら、椿の身体を乗っ取らない代わりに1つ"ある事"をしてもらおうかな〜?】
「"ある事"だって?」
【あっ、そうだ。もちろんこの事を誰かに言った瞬間、すぐに椿の身体を乗っ取るからね】
警戒する私の言葉に、妲己はわざとらしく思い出したかのように言う。完全に逃げ場のない椿は私の腕にしがみついてビクビクと怯えていた。
「な、何をすれば良いの?」
【んふふ、そうねぇ。あの狛犬の子が、この部屋にこっそりと用意してる服があるじゃない?それを着て――】
「えぇぇ!?な、何で僕達がそんな事を!!」
「つ、椿はともかく私がやったら多分笑いものにされると思うんだけど!?」
「いやそれ酷いよ、綾ちゃん!?」
妲己の提案に、私達は断固として拒否しようとするものの、それを塞ぐかのように再び脅しをかけてくる。
【良いんだ、身体を使われても。私はどっちでも良いよ〜?】
「ああもう!分かったよ!やればいいんでしょ、やれば!!」
私は椿の手を握りながら、半ばヤケクソ気味に怒鳴り散らしてやった。果たして、これをやって私達は大丈夫なんだろうか・・・。
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――夕飯直前。
ようやく帰ってきた狐2人を玄関で観察しながら、タイミングを伺う私達。そこに妲己が発破をかけるように言う。
ほぼ強制的に着せられたとはいえ、椿とこの格好で彼らの前に出るのは恥ずかしい。
【モジモジしてないで、早く行きなさいよ!】
「・・・くそ、こうなったら出たもん勝ち!行くよ、椿」
廊下を歩いてくる2人に見つかる前に、私達は意を決して彼らの前に出た。
「お、お帰りなさい。白狐さん、黒狐さん」
「べ、別に寂しくなんか無かったんだからね?」
『おぉ、出迎えか椿に綾・・・よ?ど、どうした・・・2人とも、その格好は』
『何の心境の変化だ、2人とも。その可愛らしい格好はどうした?悪いが俺は椿一筋だぞ』
私達の今の格好――里子が隠していた衣装を使って、椿は淡いピンクのミニなワンピース、私は髪をツインテールにしてミント色のキャミソールワンピースの姿をしているのである。
正直、椿も私も羞恥心がフル回転して今にも熱で倒れてしまいそうなのを必死で堪えている。
そして私達は、互いに深呼吸しながら妲己さんの指示に従って"ある言葉"を発した。
「あっ、えっと・・・つ、疲れている2人に、ぼ、僕達からサ、サービスだよ」
「こっ、これからご飯にしますか?お風呂にし、しますか?」
はい、皆さんご存知のアレです。
ただし、妲己さんから指示されたのはそれを言うだけでなく更にもう1つ・・・私達は見た目が既に危ないワンピースの裾を持ち上げながら――
「「そ、それとも・・・わ、た、し?」」
『――っ!?』
私達が羞恥心の限界を越えてまで、その言葉を言うと白狐さんが噴水のような鼻血を出してぶっ倒れる。意外な事に黒狐さんはなんと鼻血を出さず、ただ私達を苦笑いして見ていた。
そんな反応をされて、色々と気まずい空気のまま棒立ちしている私達に黒狐さんは頭を撫でてくる。
『無理するな。おおかた妲己にでも言われたんだろ?』
「えっ?」
「き、気づいてたの黒狐さん!?」
そうして彼が通り過ぎ、奥の広間へ歩いていく。
その直後にバタン!と倒れる音が聞こえたのは気のせいだと思いたいが、それでも普段の駄目駄目な様子と比べたら不思議に感じた。
そう考えると、狐2人と出会って1週間くらいは経っただろうか。
2人の性格はなんとか掴めてきたのだが・・・彼らと椿の過去については未だ謎だらけだ。
妲己という大妖怪が関わっている事もあるんだろうか。私は自分1人取り残された感じがして気になってしまうのだ。
「つ、椿ちゃん、綾ちゃん。そ、それ・・・私が用意した服。き、着てくれたの!?やっと女の子のオシャレに!?」
とても嫌な予感がする声が聞こえて、ギギギギと首を軋ませるようにして振り返ると、里子が私達の横で感激しながらハッハッと息を荒らげていた。
「げぇっ!里子ぉ!?み、見るなぁ!こんな姿を見ないでくださいお願いします!!」
「い、いや里子ちゃん!?ち、ちが・・・!これは!!」
【あははは!やっぱり椿と綾は可愛いわね〜!充分可愛い姿も見られたし、私は寝るとしますか〜zzz】
「ちょ、妲己さんん!?」
【あぁ、そうそう。椿の身体を乗っ取れるって嘘だからね。そんな事出来る訳ないし、する気もないって言ったでしょ?ホント信じやすいんだから、2人は。それじゃ、今度こそオヤスミ〜・・・zzz】
「完全にハメられた・・・」
「ちょっと待ってください妲己さん?妲己さ〜ん?」
私達の声にこれ以上反応する事もなく寝てしまった妲己。ずっと遊ばれていた事に悔しさと恥ずかしさと悲しさが頂点に達して涙が自然に出てきてしまう。
「ふ、2人とも?えっと・・・泣かないで?大丈夫、すっごく似合ってるよ!」
「こんな姿、末代までの恥でしかないよ〜!うわ〜ん!!」
「里子ちゃん、励ましになってないですそれ」
里子のとても良い笑顔から放たれたフォローにすらなっていない言葉で、更に私は涙が止まらなくなってしまった。
彼女が悪くない事は分かっているけれど、それでも妲己に一杯食わされたのが私は悔しくて悔しくて堪らなかったのだ。