私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――翌日
私達は学校の帰りに妖怪センターへ立ち寄って、昨日捕まえる事が出来た妖怪「器」を引き渡しにやって来た。狐2人も同じく私達ではライセンスの都合で捕まえられなかったAランクの妖魔を引き渡しに一緒に来ている。
彼らの話によると、どうやら妖怪や妖魔を捕まえる事でそれに対する報奨金が支払われるらしく、その国での通貨が適用されるのだとか。なんと世界各国にも妖怪センターがあるという。
受付でヘビスチャンからそれぞれ分厚い報奨金の袋を渡されて、一瞬驚きで目が丸くなる。
「椿様、綾様、お待たせしました。手続きが終わりましたので、3番窓口へどうぞ」
「あっはい!――ありがとうございますヘビスチャンさん!」
「いやぁ、流石はお2人。たった数日の内に、もうBランク妖怪を捕まえるとは。本当に先が楽しみです」
「あ、はは・・・」
「あ、ありがとうございます」
ヘビスチャンのあの反応を見る限り、ライセンスを取って1週間もせずに妖怪を捕まえてくるなんて事は珍しいし喜ばしい事なのだろう。褒められる事に慣れていない私は、嬉しくなってつい顔が綻んでしまう。
『おっ、椿に綾よ。ちゃんと受け取ったか?』
「うん、だ、大丈夫。ちゃんと受け取った――けど、ちょっと分厚いような・・・」
「中身見て、実は今後の書類とか広告でした〜なんてね」
『そりゃそうだ、椿。Bランク妖怪から額が跳ね上がるから、最低でも50万は貰えるはずだぞ。2人で捕まえたから半分になっているが、それでも25万くらいか』
「にじゅ――!?」
「んぶぇっ!?」
まさかの封筒内全額現金であった事に冗談を言って笑おうとした私は噴き出す。椿もあまりの額の多さに身体をピーン!とさせて硬直した。
『その分危険度が増しとるから、本来ではいきなり狙えるレベルではないのだ。椿は我らの力を、綾は使い魔の力を持っているから、割と簡単に倒せているだけで他の妖怪達は苦戦必至の妖怪だぞ』
「マジですか!?なんか意外に思う・・・」
「んっ?あっ!そうだ、これ学費に――」
『そんな心配はするな、椿よ。金銭的な事は、全て翁がやってくれとるわ。綾も叔父が何とかすると言うそうだから、心配の必要はないぞ』
「はぁ、そうなんだ」
使い道を見つけた椿が声をあげるが、白狐さんから私共々心配ないと言われてしまった。最近、オジサンとの距離が遠い事に少し物寂しい感じがする。
「あ〜ら!何か辛気臭い妖気がすると思ったら、ダメ妖狐の椿とダメ人間の綾じゃない!」
「げっ、その声は・・・」
後ろから今一番聞きたくない、あの甲高い声が聞こえてきてゆっくりと振り返る。そこには、やはりというか黒猫の妖怪少女、美亜が私達へズンズンと歩いてきていた。
「あら?あなた達まさか・・・手配書の妖怪を倒して、報奨金でももらったの?」
「まあ、そんな所」
「ふふん、どうせDランクの小物でも捕まえて、それで意気揚々としているんでしょう?私なんてCランクよ!報奨金の額もあなた達より上!」
なるほど、封筒の厚みを見て判断したのか。確かに僅かばかりではあるが、私達よりも美亜の持つ封筒は厚く見えなくもない。
「へーそりゃ凄いな。私達で捕まえた奴と比べたら、そっちはさぞ大物だったんだろうね」
「んっ、2人?ちょっと待って、じゃあ・・・。ふ、ふふ・・・こ、これで勝ったと思わない事ね!どうせ、1番倒しやすい妖怪を狙ったんでしょ!」
ようやく金額の違いに気づいた美亜が、負け惜しみ気味にプルプルと足を震えさせながら言った。やめとけやめとけ、それ以上は自分が惨めになってくるだけだぞ。
「いえ、椿様と綾様はBランクでも上位に入る厄介者「器」を捕獲されました」
「はぁ!?」
「ぶっふぉ!へ、ヘビスチャンさん!」
なんて思っていたら、受付から出てきたヘビスチャンが美亜に追い討ちかのような一言を放つ。正直、私としてはあんまり個人を馬鹿にする発言はしたくないので、少しばかり彼女が可哀想になってくる。
「美亜"さん"。そんなに椿様に負けたくないのですか?」
「呼び方まで変化付けてきたよ・・・」
「あ、当たり前じゃない!わ、私は常に、トップじゃなければ、そ、そうじゃなければ・・・あ、あの家から」
何やら美亜の様子がおかしい。震えているのは悔しさからではなく、まるで家の何かを怖がっているかのように見える。
それを見て察したのか、ヘビスチャンがある提案を出した。
「ふむ、それでしたら。名誉挽回の為に、今から椿様と綾様と共にBランクの任務を受けてみますか?」
「何だ何だ、どういう風の吹き回しだこりゃ?」
「えっと、美亜ちゃんと・・・?」
チラと美亜に目をやる。だが、彼女は此方を本気で怪しんでいるのか、思わず視線を逸らしたくなる程に睨んできていた。
「な、何よ。どうせあんた達の方が強いし、私なんか足手まといで邪魔だって・・・そう思っているんでしょう!?」
「え、えぇ!?そ、そんな事ないよ!」
「ぶっちゃけ私としては今回巻き込まれた側なんですが、それは」
何かフォロー出来る言葉はないのか、とヘビスチャンに視線を向ける。
「本来これは椿様達にと思い持ってきたものですが、実力のバランスから見て美亜さんでも問題ないかと思いまして。如何でしょう?」
すると、彼は巧みな話術で説得をしてくれたのだ。美亜の闘争心に火を点ける感じで言う事が上手い。
「ふ、ふん!しょうがないわね。そこまで言うのなら、この子達と一緒にその任務――やってあげるわよ!」
「あ〜もう、こっちもしょうがないな!せいぜい美亜の顔を立てられるように負けじと頑張りますか!」
何やかんやとはいえ、こういう形で美亜と共同戦線を張るのも悪くはないと私は思う。
「これを成功させれば、お父様やお母様も私を・・・」
「ん?何か言った?」
「い、いえ!あなた達が私の足を引っ張らないようにって心配していただけよ!」
美亜が何かを呟いていたようだが、私は彼女の事情にいちいち付き合っていくつもりはない気でいる。
言ってしまえば、多分美亜は家の人から鼻つまみ者のように扱われているのだろう。試験の時に彼女から感じ取れた妖気の低さと、その時に一緒に来ていたと思われる人物からの『一族の恥さらし』という言葉から、それは容易に想像出来た。
改めて美亜の姿を見ると、それでも家族に認めて貰いたい"想い"からか随分と無茶したような傷があちらこちらに見受けられる。
・・・家族から突き放された経験すらない私には、全く理解も出来ないものだと感じた。ある意味では、そこまで酷く言う親に対して何でそこまで頑張ろうと思えるのか、とすら。