私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――京都の四条にある先斗町にて
今回、私と椿は美亜と共に事件の解決に赴く事となった。椿が言うに、ヘビスチャンから別な依頼を受けた狐2人はレイちゃんを貸してもらってそれぞれの任務に向かったそうだ。
依頼の内容は、1週間程前に2人の人物が別々な日に木屋町通りと先斗町を繋ぐ通路の1つで行方不明になっており、それの調査を行って状況次第では直接行動に及んで欲しいというものだ。早い話が妖怪が原因だったら退治してこい、という至極分かりやすい仕事内容である。
木屋町通りについては、きっと椿の方が詳しいので案内は任せるが、それにしてもやはり鴨川に並ぶ店の景色"は"綺麗で良いものだ。・・・かつて、オジサンにせがんで連れて行って貰った時にバカ高い店で泣きを見た事を思い出す。
「なんか、大変だったけど楽しかったの思い出しちゃったなぁ」
「何よ綾、ひょっとして昔ここら辺でぼったくられでもした訳?」
「ま、まぁそんな感じだよ。料理は美味しかったけどさ」
そして、たどり着いた件の通路は道が細く並んでいる店もボロボロで、妖界程ではないにしろ別な時代に迷い込んだかと思う雰囲気をしていた。
「うわぁ・・・こんな古臭い所、妖怪が潜むのにはうってつけかもしれないな」
「ふふん、まさに京都ならではの場所ね。こんな大勢の観光客がいる中で、妖怪が好き勝手暴れているかもしれないのね」
「なんにせよ、下手に騒ぎになる前にとっとと調べて何とかしちゃおう」
美亜が腕を組んで先頭を歩き、私が最後方となって椿を守るように歩く。一応、変化の妖術の応用とやらで椿や美亜の姿は傍からは普通の中学生に見えているらしい。私は人間だからいつもの少し着崩したような制服姿に上から灰色のパーカーを羽織っただけだが。
そして、残念な事に感じる妖気があちこちにへばりつく形で漂っている事から妖怪の仕業である可能性が高くなってきた。
椿がスマホで取り込んだ妖気について調べる。
「どう、椿?ここの妖気は」
「ん〜と・・・出た。Bランクの妖怪「影法師」だね」
「人の影が感情を持った妖怪で道行く人に悪意を植え付けている、か。陰湿で嫌な奴だな」
「ふ〜ん。それなら、行方不明になった人達の命は大丈夫そうね」
美亜も私と同じようにして椿のスマホを覗き込む。椿は心が男の子なのもあってか、顔が真っ赤になってしまう。
「み、美亜ちゃん、綾ちゃん・・・自分の携帯は?」
「うっ、な、無いわよ・・・悪い?」
「すいません、今回忘れてきましたぁ!許して!」
私は椿に土下座する。
はい、実は今回スマホをうっかり学校の机に入れたままにしてしまいまして持ってくるのを忘れてしまいました。
これには、何らかの事情で言いにくそうにしていた美亜にも苦笑いされた。後で「五級ライセンス持ってるくらいなんだから、もっとしっかりしなさいよ!」と叱られたが。たまにはこんな事だってあるのさ〜、と。
「いや、本当にすいません椿サマ。私がこんなアホ過ぎるばっかりに」
「う、ううん・・・でも今度からは気をつけてよね、綾ちゃん」
「あ〜もう。2人ともちょっと強いからっていい気になっていると、いつか足元を掬われるわよ!」
「はい、痛い程身に沁みました」
「いや、僕は別にいい気になってはいないよ」
これでは、どっちが上のライセンスを持っているのかまるで分からない。・・・主に私のせいなのだが。
「それで、この妖気の持ち主は何処にいるの?」
美亜が私の醜態に呆れつつ、椿に問いかけた瞬間――路地の壁から出てきて彼女に向かっていく影のような腕を見つけて私と椿はそれぞれ、その手に向かって攻撃をした!
「っ!妖異顕現、黒焔狐火!」
「小次郎!あの黒い手を斬って!」
「――御意!」
呼び出した小次郎の一閃と椿の妖術による黒い炎を受けて、それはすぐに何処かへと引っ込んでしまう。
「あっぶな!!ちょっと2人とも、何するの!危うく私ケガする所だったじゃない!」
「あっ、ごめん。火力がまだ上手く調整出来なくて・・・」
「美亜、今あんた影の手みたいなのに襲われかかってたよ!」
背後でいきなり起こった事に、美亜はビックリして私と椿に怒ってきた。確かに事前に声をかけなかったのは悪かったが、敵が影の妖怪である以上はいつ何処から不意打ちされても――
「影の手って、綾の後ろから伸びてきているそれの事?」
「えっ?わぁ!綾ちゃん!!」
「のっばぁあ!!小次郎!」
「避けろ、綾!」
と思った瞬間に、今度は私の足元に影の手が迫ってきていた。すんでの所で突然の物音に驚く猫のような動きをして避けられたが、続けて小次郎が放った攻撃はすり抜けているらしく、やはり効いているようには見えない。妖気も私の影から手が伸びてきていたからか、全く感知出来なかった。
「さっきのが「影法師」の妖術かしらね?」
「そうみたいだけど、どうやらこっちの世界には居ないみたいだよ。この路地に溢れる妖気の元を辿っていっても、何処にも辿りつかないもん」
「なるほど、これなら気づかれる事なく悪事だって働ける訳だよ。いやらしい仕組みしやがって」
しかし、私達にそんな考える余裕を与えてくれる程、影法師の攻撃は手ぬるくないようだ。
「美亜ちゃん。妖怪の事を考えるよりも、先に後ろの腕から逃げる事を考えようよ!」
「へっ?みゃぁぁあ!?」
「小次郎!「燕払い」を!!」
「承知!ぬぅん!!」
美亜を狙う幾つもの影の手に小次郎の大技で何とか追い払えないかと指示してみたが、通常の攻撃自体がそもそも通っていないのではないかという程に諦めが悪い。
「妖異顕現、影の操!」
椿も影を操る妖術で対抗しているものの、相手の方が一枚上手なのか効果が全く見られない。
美亜が必死に逃げ惑いながら駄目駄目な私達に向かって叫ぶ。
「ちょっと!何とかしなさいよぉ!!」
「だァ!今やってるって!何なんだアイツ!インチキ能力も大概にしろ!!」
「それなら・・・目には目を、歯には歯を。影には影をだ!」
「そうか!椿の影からも同じ手を使えば――」
そう言って椿が自身の影から影の手を出すも、2本しか出てこなかった。あ、あっるぇ〜!?
「ってこれじゃ焼け石に水ゥ!!」
「あっ、全然足りないです・・・」
「この役立たず共〜!!」
「「美亜(ちゃん)もでしょうがぁ!!」」
どんな手を使っても影の手を撃退出来ない私達は、いよいよ万策尽きて逃げる事にした。正直、一般の人からかなり怪しまれているようだけれど、ここは一時戦略的撤退だ!!
「くっ!マズいわ、人間に見られるわよ!」
「分かってるって、美亜!あ〜もう、何か良い方法は無いの!?」
「あっ、そうだ!」
するとタイミング良く、何かを思いついた表情で椿がある提案を出してくる。
「何か良い手が見つかったって顔だね、椿!」
「うん!綾ちゃん、美亜ちゃん!2人はここで待ってて!僕が影から妖界に行って、向こうで影法師をこっちに追い込むから。出てきた所を捕まえて!」
「OK!絶対変に無理しないでよ!」
「へっ?ちょっ!」
私の了解を得た椿は地面の影へと向かって、水にダイブするかのように飛び込んでいった。
「もう!自分勝手なんだから!こっちもとっとと逃げるわよ、綾!」
「そんなの、あたり前田のクラッカーだ!」
そして美亜は壁を走るように上へ上がっていき、私も小次郎に背負われて影の手から逃げるべく走った。