私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐拾話 逸般人TUEEEE!?

 

なんとか坊主の杖をへし折り、妖怪である椿や美亜を苦しめていた鈴を無力化出来たものの、依然として拳や蹴りで私と椿を激しく攻め立ててくる。その攻撃は妖怪や妖魔を殺してきただけあってか、その一撃一撃が重く確実に私達の体力を奪っていく。

 

「だぁっ!いぎっ!!」

 

「くっ、あぅっ!」

 

結構な図体をしている割りに機敏な動きをする坊主に、私達はほとんど避けては喰らいを繰り返し全然攻撃する余裕もない。

 

せめて、椿の勾玉から通じて白狐さんと黒狐さんが助けに来るまで、誰も死なないように頑張るしかない!

 

「が、あ・・・え・・・!」

 

「ぐっ、うぅ・・・!」

 

傷だらけになってもなお、気力で立ち上がり続ける私達に坊主が一瞥する。

 

「ふん、まだ立つか。肋骨にヒビくらいは入っているだろうに、それでも立ち向かうか」

 

確かに坊主の言う通りに身体のあちこちは非常に痛いし、片足は折れていて全く歩ける気がしない。けれど、ここで諦めれば私は絶対に自分自身を許せなくなるし、誰も守れなかったと後悔するだろう。

 

「お、らァ!!」

 

「妖異顕現、影の操!」

 

私が坊主へ足元の砂を煙幕のようにぶちまけた後に、椿が影を操る妖術で路地全体の影が動かせるようになった時――妲己の声が聞こえてきた。

 

【ふふ、苦戦しているわね。というか、私も痛覚とか共有してるんだからさ〜ケガとかはあんまりしないでくれる?痛みで眠れないじゃない】

 

「だ・・・妲己さんか、今更何の用?」

 

「う、うるさいです・・・よ。そして出てこないでください。ここは、僕達が頑張らないとダメなんだよ」

 

【分かってるわよ、そんな事ぐらい。でも、私だって死にたくはないし、あんな奴らには捕まりたくないからね。危なくなったら代わりなさい】

 

妲己はそう言って黙り、私と椿はそれぞれ坊主に向かって大きめの石を投げつけたり、影を槍のようにして突き出したりしたが戦闘経験の差がありすぎるからか簡単に避けられてしまう。

 

「うぐっ!うぁぁあ!!」

 

「ぐっ・・・!あぅっ!?」

 

そして、私達は隙をつかれて拳や蹴りでそれぞれ吹き飛ばされて、壁や地面にぶつかって店の壁や地面にヒビが入る勢いで叩きつけられてしまった。

 

ふと、か細く小さな声で美亜が話しかけてくるのが聞こえてくる。

 

「・・・げ・・・さい」

 

「み、美亜?」

 

「・・・たしの・・・とは・・・ら・・・さい」

 

「美亜ちゃん、一体何を言ってるの?」

 

「私の、事はいいから・・・逃げなさい」

 

自身も辛いはずなのに、それでも私達の事を案じて逃がそうとする美亜に私は彼女なりのプライドを感じた。でも、今はそんなもので彼女の命を、初めて自身と真っ向から対立して向かってくれる友人を見捨てる事など出来る訳はない。

 

「悪いけど美亜、私は頭が悪いんでね。ハナからアンタを見捨てるって考えは無いんだよ!」

 

「美亜ちゃんは、その数珠から抜け出す事だけを考えて。そんなプライドばかり優先して死ぬのは、絶対ダメ!」

 

「・・・だとよ。絶対に皆で生き――」

 

立ち上がって戦おうとした瞬間、いつの間にか坊主が私達の懐に飛び込んでいた。

 

「は?いぐっ・・・!」

 

「え?あがっ・・・!」

 

気がついた時には、私も椿も首を掴まれて持ち上げられてしまっていた。強く締め付けてくる手に意識が薄れかけていく。

 

「このまま意識を奪い、連れていく」

 

【全く・・・こうなると思ったわよ。約束よ、ここからは私が――】

 

妲己が私達にそう言って椿と意識を交代しようとした時、誰か2人の大声が突然耳に響いてきた。

 

「その子達から手を離しなさい!」

 

「おい!このクソ坊主!何してやがる!」

 

「な――にぃっ!?」

 

そして坊主が振り向くより早いスピードで、横から拳と蹴りが炸裂し、地面に数回弾んでから転がったのだ。

 

「かはっ、おぇ・・・ふぅ、ふ。あ、アンタは!?」

 

「げほっ、げほっ・・・はぁ、はぁ。えっ?」

 

「大丈夫か?一体何が――って君達、その尻尾と耳は・・・」

 

「今は襲っていた人を何とかする事を優先しましょう!」

 

顔を上げて私達を助けてくれた人物を見ると、それはさっき椿が助けた男の人と、偶然通りがかったのか白いワイシャツにタイトスカートの格好をした茶髪のポニーテールの女性の姿であった。

あの女の人、なんか前にも見た記憶があるような気がする・・・きっと私の記憶違いなのだろう。

 

「避難してたんじゃ・・・ないんですか?」

 

「な、何で・・・ここに?」

 

「いやぁ、君達何も言わずに去っていくからさ・・・せめてお礼をと思って探していたんだよ。そしたらさ、君達の声が路地から聞こえたもんだから、こっちにやって来たんだけど・・・」

 

「休暇中とはいえ、旅行先でこういうのを見つけてしまったら助けない訳にはいかなかったものね」

 

ふと、その2人が椿の姿をマジマジと見つめる。

やはり普通の人間にはない狐の耳と尻尾の存在が気になっているのだろうか。彼女も少し恥ずかしそうに耳を押さえて尻尾を隠す。

 

「そうか・・・君達も、さっきのあの化け物と同じ存在なのか?」

 

「とはいえ、悪そうな子達ではなさそうよ」

 

私達はその質問に黙って頷いていると、坊主が起き上がったのか苛立たしげな顔で歩いてくる。

 

「貴様ら、愚かな事をしたな。化け物共を助けて何になる?さぁ、そこをどけ」

 

「危ないから、そこから逃げて!」

 

椿がそう叫ぶが、2人は逃げる事をせず私達をチラと見て坊主へ話しかける。

 

「おい、坊さんよ。アンタは"悪い"化け物を退治する人なのか?」

 

「如何にも」

 

「それなら、彼女達も悪い事をしたのかしら?」

 

「否。だがこいつらは、存在するだけで人に害をなす。そう、存在そのものが"悪"なのだ」

 

すると、坊主の言葉に2人から怒りのオーラのようなものを感じ始め、椿が焦りを含んだ声をあげた。

 

「待って、お兄さん達・・・そのお坊さんは普通じゃないから」

 

その言葉で心が決まったのか、2人は私達に振り返って笑みを浮かべ坊主の前に立った。

 

「決まったぜ、どっちが"悪"か。そんなの一目瞭然だったな」

 

「ええ、そうね――」

 

2人は坊主に向かって構えてもいない状態から、そいつの顔面にそれぞれ右ストレートと上段蹴りを突き入れたのだ!

 

「「てめぇ(あなた)の方が、明らかに"悪者"だ!!」」

 

彼らが叫びながら放った怒りの攻撃が坊主の体勢を大きく崩させ、そのまま再び地面へと叩きつける。相手の歯のようなものが落ちた様子から、2人の攻撃がいかにヤバいかというのも伝わってきた。

 

「なっ、なっ・・・!」

 

その予想外の行動に、私達も坊主も呆然としていた。多分、どちらも妖怪の味方をするとは考えてなかったんだと思う。

 

「ぐっ、貴様・・・何をする!化け物を庇うなど、正気か!?」

 

「そりゃこっちのセリフだ。こんな幼気(いたいけ)な可愛い少女達を、偉そうにいたぶって殺そうとして、そっちの方が正気か疑うな」

 

「たとえどんな理由であれ、何の罪も犯してない子達を攻撃するなんて、あなたそれでも一介の法師なの!?」

 

それぞれお互いに引くことなく、自身の主張を押し出して相手を睨みつける。きっと好機なんだろうけど、その凄みに私達の身体は硬直して動けなくなっていた。

 

「少女だと?そいつらは妖怪・・・そう、化け物!滅すべき――敵だ!」

 

坊主が拳を握りしめて、2人へと殴り掛かろうとする。私達は彼らにすぐに逃げるように叫んだ。

 

「危ない!すぐに逃げて!!」

 

「ダメ、そのお坊さんは滅茶苦茶つよ――」

 

瞬間――私達の視界から2人が消えて、坊主が避けられたと気づいた時には男の人は顎へ右アッパーを、女の人は腹部へ正拳突きを打ち込んで吹っ飛ばしたのだ。なんと彼ら、どうやら一瞬の内にして坊主の攻撃を見切って避けていたらしい。

 

「悪いね。俺は昔ボクシングをやっていてね、化け物以外なら負けた事は無いのさ。――来いよ、腐れ坊主」

 

「警察学校に入っても続けていた空手がこんな時に役に立つなんてね。――覚悟しなさい。貴方には悪い事をしていない人を裁く権利なんて無い事を、その身体に直接叩きこんであげるわ」

 

男の人がネクタイを外し、女の人は胸元のボタンを開けて自身の身体を動きやすくする。

 

シャツの隙間から、彼女の大きな胸が視界に入る。普段では嫉妬心しか抱かないはずなのに、どういう訳か今は異性的な魅力を強く感じていた。

 

とりあえず、一般人TUEEEE!!とだけ言っておこう。

 

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