私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
私の訴えも虚しく翼共々黒狐さんに空き教室へ連れられ入った瞬間、今まで感じた事がなかったエゲツないまでの視線や雰囲気、気持ち悪さが身体中へ走り全身に鳥肌が立った。翼も耳と尻尾を逆立てている。
『おぉ、どうした?尻尾も耳の毛も逆立っているぞ』
「い、いる・・・」
「ま、窓際の机の下に・・・」
『ん?おい白狐、机の下に何かあるぞ!』
私と翼が指差した先の机を黒狐さんがその場で確認し、人型の白狐さんが前に出て机の下を確認しようとした。
だが次の瞬間、なんか筆箱並みに小さい四角いものが家で見たゴ〇ブリのような速さで机の下から飛び出し、そのまま教室の外へ逃げてしまった!
「なに今の!?」
「新種のゴキ!?・・・いや、あれは」
いや、一瞬とはいえ私は確かに間近でソレの姿を見た。そう、それは――
「「スマホ!?」」
『お主ら、今のが見えたのか?!』
白狐さんが叫ぶ。
「あれが妖怪?スマホが立っていて、そこに細い脚みたいなものと腕みたいなものが――」
「いやいやいや!?あれが妖怪ってかなりスマホだよ、どう見てもスマホだったよ?!立って歩くゴキ〇リとか聞いた事無いもん!」
『おい黒狐!ボケっとしてる場合ではない!追うぞ!』
「あいたっ!!」
「ぬぇん!!!」
『おぉ、すまん!2人共大丈夫か?』
敵の姿をやっと見つけた事で張り切るのは分かるけど、もっと周りを見てよ黒狐さん!翼は出入口の扉の上に頭ぶつけるし、私は顔面を思いっきり黒板にぶつけたからね!?痛いぞ!
『黒狐、お主はもう少し落ち着かんか。椿、綾、今度はどちらから感じる?』
「えっと、こっち・・・いたた」
「あ、あっちです・・・ぐぇ」
もうお2人の翼への呼び方にツッコミつづけるのもキツくなってきた・・・今は敵の居場所を突き止めるのに集中しないと!
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辿り着いた先は現在準備室として使われている教室だった。机や椅子が乱雑に片付けられているこの場所は確かに今の「電磁鬼」が隠れるにはうってつけだろう。
『よし、挟み撃ちにする。黒狐、お主も準備せい』
『分かっとるわ!』
私達を降ろし、黒狐さんも人型へ変身した。そして翼と分かれ、それぞれ別方向から見られているような感覚を辿っていく。さっきの空き教室の時と同じくらいにハッキリ視線が感じられ、敵がここに逃げ込んだという確信を持った。
「多分あそこ。机の上、物が散乱している所。」
「同じく。絶対逃がさないでね」
『よし白狐、反対側に・・・』
『分かっとると言うに!今度は逃がすなよ黒狐』
せめていがみ合うのは事が終わってからにしてくれないかな〜・・・それにしても移動している途中で何人かすれ違っていたのだが、どうにも私達の姿が見えていない様子だった。まあ見つかってとやかく言われるのも嫌なので助かるんだけど。
あ、いっけね妖怪は!?
急いで視線を机の上へと向けると既に2人がかなり接近し、静かに捕まえようと手を伸ばしていた。
しかし、その手をすり抜けて「電磁鬼」が私の方めがけて飛び出す!
ヤバい、私の後ろには窓がある!このまま窓を突き破って逃げるつもり!?でもあんなに速く突っ込んでくるのをどうやって受け止めれば――
『やれやれ、全く見ていられんな』
そう思った瞬間――知らない男の声が耳元で聞こえたかと思うと、鼻先まで迫った「電磁鬼」がヒュンッと縄跳びを振るったみたいな音と同時に弾かれ、大きく空中を舞った。
『逃がさんっ!』
そこへ黒狐さんが片手を影絵の狐の形にしたかと思えば、宙を舞う「電磁鬼」が地面に叩きつけられて動かなくなった。まるで叩かれたゴ〇ブリみたくピクピクしている。
「うわ!あっ、やっぱりスマホだ・・・何これ?っていうか、綾ちゃん大丈夫!?顔で弾いたように見えたけど!」
「え、あ〜・・・平気。うん、平気だよ」
まさか今目の前で起こった謎の出来事を話す訳にもいかなかったので、とりあえず顔で弾いたという事にしておいた。
『そいつが電磁鬼、クラスの皆を操っていた張本人じゃ!』
私はまじまじとその妖怪へ視線を向ける。なんていうか・・・一言で言い表すと某夢の国の作品で出てきた一つ目のキャラクターに似ているような気がした。
『しまった!椿、気をつけろ!』
突然白狐さんが叫んだ。すると妖怪の目の下が開いてヤツメウナギみたいな口を露わにした。
『ギィィイイイ!!!』
「うわぁぁぁ?!」
なんと「電磁鬼」は電波みたいな怪光線を翼目掛けて放ってきたのだ!運が良い事に驚いた彼がその場で腰を抜かした事で当たらなかったものの・・・最後の最後まで油断出来ない奴だな!
『おのれ!我の嫁に向かって攻撃するとは何事だ!』
白狐さんが爪を長く伸ばして、妖怪を切りつける。それが決め手になったらしく、「電磁鬼」は小さく鳴いて完全に動かなくなった。
『ギィウゥ・・・』
『黒狐!封印の巻物を早く!』
『今出したわ!それ!』
黒狐さんが懐から巻物を投げ、それを受け取った白狐さんはヒラッと流れるようにして広げた。そして巻物に描かれた丸い円へ指を押し当てると、そこからミョ〜とした感じの光が出て「電磁鬼」の姿がただのスマホへと変わっていく。
これでやっと終わった・・・私はそう感じると全身にドッと疲れが湧いて壁にもたれかかった。