私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
第壱話 椿の受難体質
――翌朝。
私達はレイちゃんに乗って学校へ飛行していた。
前までと違うのは、そこに猫の姿に変身した美亜が加わった事だろうか。自在に姿を変えられる彼女や狐2人が少し羨ましく思う。
「へぇ、あんた達レアなものをペットにしてるのね。これは便利だわ〜」
「ふっふっふ、可愛いでしょ?」
「うん、それは良いけれどね・・・何で美亜ちゃんまでついて来てるの?」
「別に良いでしょ?あんた達ばっかり特別扱いされて卑怯よ。何よ、学校で半妖の子達を守る為に手配書の妖怪が来たら退治するですって。あんた達ばっかり有利じゃない!」
「ほぼ押し付けられたようなもんだけどねー」
「僕は別に、妖怪退治をしたくてしているんじゃないんだけどなぁ・・・」
椿の不用意な言葉に、美亜が「じゃあ何で妖怪退治なんかするのか」といった不機嫌そうな目をする。
私だって、やりたくてやっている訳ではないのだが一応クラスの当番みたいなものだと半ば諦めてやっているようなものだから気にされても仕方ないけれど。
「あっ、えっと・・・白狐さんと黒狐さんに守られてばかりじゃ情けないと思って、こうやって妖怪退治をしていけば強くなれるかなと思ってやってるんだよ」
「私はまぁ、何となくかな・・・」
「ふ〜ん、綾はともかくとして椿はそんなにそいつらの事が好きなのね」
「うん・・・えっ?あっ!ち、違う違う!そういう"好き"じゃなくて、あの、その・・・」
「椿、あいつらはマジで止めとけ。流石にレベルが高すぎる」
「やっぱ面白いわねぇ、あんた"達"。しばらく楽しめそうだわ」
「うぅ・・・お手柔らかにね」
「サラッと私まで込みにされてる!?」
そんな事になっても狐2人が何の反応を示さないのは、きっと昨日椿が新しく分かった記憶に関する事を伝えたせいもあるかもしれない。
その夜の、屋根の上で呆然と月を眺めていた彼らの顔を思い出す。・・・それに気を取られたせいで、椿が美亜と里子に色んな意味で襲われていたのに気づけなかったが。
「んふふ、このまま2体が復活しなければ、また今夜も弄れるわね〜」
「美亜ちゃん、不吉な事を言わないで・・・」
「黒猫だけにって?椿の受難体質の方が黒猫よりもよっぽど不吉っぽく感じるけどね」
「もう!綾ちゃんも変な事言わないでよ!」
「っていうか、黒猫って私の事!?私の事よねぇ、綾!?幾ら"貧しい"仲間でも許さないわよ!!」
「じょ、冗談だって・・・2人とも怖いな、おい」
「「そっちの癇癪の方が怖いよ!!」」
洒落た冗談を言った事を2人から責められ、私は申し訳なさに身体を縮こまらせた。いや、悪気は一切なかったんですよ本当に。
すると、狐2人がそれと入れ替わりに元気を取り戻したような声をあげる。
『いか〜ん!!このままでは、椿が同性愛者になってしまうわ!』
『それだけは阻止する!!それに記憶が戻って何かマズい事が起こっても、俺達が守れば良いだけの話だ!』
「うわっ!・・・良かった、2人共普通に元気そうだわ」
キーホルダー化している狐2人が騒がしくする。どうやら、椿が同性愛に目覚めるのは彼らにとっても好ましくないようだ。
「ビックリしたぁ・・・いきなり復活しないでください。それに今の状況で2人を好きになったら、それこそ同性愛者でしょうが」
『何処がじゃ?』
白狐さんがキョトンとした声をあげる。
・・・ちなみに私は違うからね?そういうのは、もっとこう互いの事をよく知ってから――と、どうでもいい事を一瞬考えてしまい顔が熱くなる。
そこへ更に黒狐さんが衝撃的な台詞を放つ。
『言わなかったか?俺達にはハッキリとした性別はないぞ。一応男の素振りの方が楽だからそうしているが、別に女性になろうとしてもなれるぞ?』
「ほぇ?」
「はぁ!?何じゃそりゃあ!」
困惑する椿と私の所に、今度は妲己まで加わってくる。
【ふふふふ、良いわね〜その調子よ。ちゃんとした女の子に早くなってね☆】
「あぁぁ、妲己さんまで話しかけないでください!僕の頭はもうパニックだよぉ!!」
「もういっそ全員、1人用のポッドに詰めてぶん投げてやろうか!?」
――といった感じに椿へとんだ集中砲火がなされているのだが、不思議な事にそれへ以前のようなイジメの時に感じた吐き気を催す程の嫌悪感はなかった。
「そういえば神格化した妖怪の中には、たまに性別が無くなる奴もいるわね。つまりこの2人があんたを気に入って味方しているだけでも、物凄いアドバンテージなのよ」
「なんだって?そこまであの狐2人の実力が高いなんて思ってもみなかった・・・でも、あの時の2人を見たら確かに納得出来る気がするよ。あの強さ、きっと普通の妖怪じゃ絶対に辿り着けない」
美亜の話に耳を傾けている内に、学校の近くへ到着する。そして着地地点から歩いて学校へ向かおうとすると、なんと木の陰からひょっこりとカナが姿を現した。
「おっはよう!椿ちゃん!綾さん!」
「あっ、おはよう。カナちゃん」
「おーっす、カナ!私達が降りてくる所、よく分かったね〜」
「だって、空を飛んでるのが見えたんだもん!先回りして一緒に行こうと思ってね!・・・ん?その子は?」
カナが初めて見る美亜の姿に首を傾げた。すると珍しい事に、美亜は自分から彼女に自己紹介を始めたのだ。
「あら、この子半妖なのね。良いわ、それだったら自己紹介しないとね。私は"金華猫"の美亜よ。椿や綾と同じように、妖怪ライセンスを持っているのよ。そして、2人と一緒に仕事をした仲でもあるわね。うん・・・まぁ、友達よ」
「でも"金華猫"の割りには黒いけどね、色々と」
「ふざけないでちょうだい、綾?」
「はい、すんません」
茶々を入れた事で、もはや私と美亜の漫才と化した自己紹介にカナが何故か対抗心を燃やしたように自己紹介をする。
「あら、そうなのね。あっ、私は辻中香苗。カナちゃんって皆からは呼ばれているわ。綾さんを除いて椿ちゃんの"最初の"友達よ」
そういえば、カナも"炎"に関連する妖怪だから二重の意味もありそうだ・・・失礼、冗談が過ぎた。
「え、カナちょっと待ち。私なんでハブられたん?」
「だって"幼馴染感"があって勝てる気がしないし・・・」
つまり私は周囲からは椿の"幼馴染"であって"友達"には見えないらしい。ううむ、距離感が近すぎたのが原因なのだろうか。
「ふっ、なるほど・・・まぁまぁやるわね。良いわ、それじゃあ私は"2番手"に甘んじてあげる」
「ふ〜ん、案外聞き分け良いんだね。私達、仲良くなれそうね。美亜ちゃん」
そう言って握手する2人。私はつい昨日見た絵面によく似ているな、と思いつつ彼女達が椿に向ける怪しげな笑みを眺めていた。
「・・・ねぇ、綾ちゃんに白狐さん黒狐さん。僕の安息の地って何処?たまには1人でノンビリしたいって思った時は、一体どうしたら良いの?」
「う〜ん・・・笑えば良いと思うよ?」
『何じゃ、人気者なのに何処が不満だ?』
『安息の地か。まぁ、たまには屋根に上ってこい。俺が癒してやるわ』
「駄狐2人は黙れ」
『『ぬぅん!』』
とりあえず、キーホルダーなままの2人にデコピンをお見舞いしてやった。