私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第伍話 なんという事をしてくれたのでしょう

 

あの後――私達は生徒会に報告し、この件についてはこっちに任せて欲しいと伝えて帰ってきた。

今は椿の祖父の家で、部屋の布団に椿とうつ伏せに眠っていた。あれだけ泣きはらしたというのに、未だに悲しい気持ちは晴れないままだ。

 

「ふぅ・・・」

 

「はぁ・・・」

 

落ち着こうとして私達が枕に顔を押し付けていると、狐2人がペロペロと私達の頬を舐めてくる。

 

『何じゃ、2人ともまだ泣いとるのか?』

 

『白狐と一緒に、あれだけ慰めてやったのに』

 

「う、うるさいな」

 

「涙はもう出ないし、泣いてもいません」

 

学校の帰りに椿と共に、2人から散々目の周りを舐められたのを思い出す。人型になって涙を拭ってくれれば良いのに、どうしてレイちゃんみたいな事をするのだろうか。

 

『おぉ、そうだ。あの変態垢舐め半妖に椿の垢を舐められるより、我らが先に垢を舐めとってしまおう』

 

『なるほど、良い考えだな白狐。よし、身体中隅々まで垢を舐めとって――』

 

「うわぁぁあ!こんな所にも垢舐めがいるぅ!!」

 

「椿に触ろうとすんなや、この垢舐め駄狐共がぁ!!」

 

『『ぎゃふん!』』

 

布団越しから狐2人の又座に素早い蹴りを見舞い、椿を抱えて布団から脱出する。もうやだ、この駄狐共。慰める気があるのかすら妖しく感じる。

 

「「――って、ふぎゃあっ!?」」

 

「何やってるのよあんた達は・・・」

 

椿を抱えたまま部屋の入り口まで逃げようとした時、私の片足と椿の尻尾が何者かに掴まれて宙ぶらりんの格好にさせられてしまう。あまりの勢いに危うく私は額を激しく床に打ちつけかけたのだが・・・。

 

私達を吊るしているのは誰かと思ってよく見てみると、そこに居たのはなんと普段の様子とは違い胸も身長も大きくなった――大人の姿になった美亜だったのだ。

 

「え?み、美亜・・・だよね?」

 

「み、美亜ちゃん。何でそんな格好を?」

 

「あら、これから任務よ」

 

「任務?ぐはっ・・・!」

 

「でっ!おいおい、もっと優しく降ろしてよ」

 

美亜がパッと手を離したせいで椿は顔面から、私は尻餅をついてしまう。痛む尻を撫でつつ立ち上がって改めて彼女を見ると、顔立ちから幼さを抜いてしっかりした雰囲気を醸し出していた。

 

「そうそう。椿に綾、あんた達も用意しなさい。とにかく人数が要るんだから、しかも女性限定」

 

「へっ?ど、どういう事?」

 

「その姿と何か関係があるの?」

 

「センター長に言われたのよ。あんた達と、そこの狐2体と一緒に"ある居酒屋"の手伝いをして欲しいってね」

 

「なんだって?そりゃ一体――」

 

「あ〜もう・・・妖怪が経営してる、ある居酒屋が人手不足なのよ。その人員募集の為に、たまにセンターへ依頼する時があるの。妖怪退治ばかりが任務じゃないのよ。ほら、ボサッとしてないであんた達も変化しなさい!」

 

「なるほど、大人の姿をしているのはそういう訳ですか・・・」

 

それはそれで問題があるような気がするのだが、私は。美亜も、よくそんな依頼の話を受けようと考えたものだ。

 

『またあそこの居酒屋ね』

 

『まぁ、良い金稼ぎにはなるな』

 

「・・・えっ?」

 

ふと後ろから女性2人の声が聞こえてきた。私達の後ろに居る人物といえば、今はあの狐2人しかいないはずだが。

 

――そう思って振り向くと私達は仰天する。

 

「え、ちょっと・・・どういう事!?」

 

「白狐さん、黒狐さん・・・そ、その姿は!?」

 

まさかとは思っていたが、私達の後ろにいたのはスレンダーな女性に変身した狐2人の姿だったのだ。以前に性別がないとは話していたものの、こんな形で見る事になるとは思わなかった。

 

「ふ〜ん、中々ね。ほら、椿も綾も早くしなさいよ!」

 

「いや、でも・・・年齢は未成年だからさ、やっぱり居酒屋で働くとか、そんなの良くないよ」

 

「あんた何言ってんの?私は既に30年は生きてるわよ。それに白狐や黒狐から聞いたけど、あんたもとっくに60年は生きてるらしいじゃないの!」

 

「・・・マジか、私この中で最年少だぞオイ」

 

とんでもない事実を再認識してしまい、1人10代な私は気まずくなって苦笑いを浮かべる。

 

「本当にそこの2体から何も教えてもらってないの!?綾は人間だからどうだか知らないけど、妖怪の容姿は妖気に比例しているのよ!妖気が高ければより歳を取った姿になって、妖気が低ければ子供みたいな姿のままなのよ。私・・・みたいに、ね・・・」

 

「美亜、無茶しやがって・・・」

 

美亜の自分で地雷を踏んだような発言にツッコミを入れる。つまり妖気が高まっていくにつれ、見た目は歳を取っていく訳で――なるほど、さっぱり分からん。

 

『そうそう。そこの金華猫の娘は、歳の割に妖気が高くないから未だに若い姿をしておる。ちなみに椿は記憶が封じられているから、妖気のバランスが悪くなっていてそんな幼い姿になっている。記憶を取り戻したら、もしかしたら・・・って感じかな?』

 

「嘘だろ・・・」

 

つまり椿が記憶を取り戻した日には、私なんか目じゃないくらいナイスバデーな美女になってしまうのだろうか。考えると、少しゾッとする。

 

そんな私に黒狐さんが話しかけてくる。

 

『どうしたの?綾』

 

「あと気になる事がもう1つあるんだけどさ、何で黒狐さんはそんな喋り方しているの?」

 

『ふふ。そらそうじゃ、性別を男にも女にも変えられるというのは性格すら女のそれになるという事。ただ女というのは色々と面倒くさくてね、常に男性の性別にしている』

 

『だけど任務とかではこうやって、女性になった方が有利な場合もあるの。――どう、椿?心は男だって言い張るなら、椿は私達のこういう姿の方が興奮する?』

 

そう言って狐2人が椿に近づいていくと、彼女はしばらく固まった後にハッとしたかのように叫んで逃げ出した。

 

「う――うわぁぁあん!!」

 

『あっ、逃げた』

 

『うん、逃げたね』

 

「え、え・・・えぇ〜」

 

程なくして下の階から椿の声が聞こえてくるが、突然の出来事過ぎて私まで今の彼女のように固まってしまう。まあ・・・心が男の子なのだから、あんな風に迫られれば混乱しても不思議はないんだと思う。私から見ても、今の狐2人は美人に感じるのだから。

 

「・・・やっべぇ、私どうすればいいのコレ。すっかり大人の姿になる方法聞きそびれたよ」

 

――と、頭から抜けていたものが戻ってきて私は途端に焦りそうになる。すると白狐さんがさも当然かのように"ある提案"を言ってきた。

 

『ん?それなら使い魔に頼めば、簡単に変化出来るのではないかの?綾よ』

 

「いや、そんな簡単にはいかないでしょ」

 

『使い魔を使う者は、自身の苦手とする妖術等を補強する為に呼ぶ場合もあるからね。あながちおかしな話でもないと思うわよ?』

 

黒狐さんからもそう言われてしまうと、何だか出来るのではという気持ちになってくる。こうなったら例え無理でも呼んでみるとしよう。

 

「とりあえず、やるだけやってみますか。小次郎、出てきて!」

 

「はっはっは、コレは面白いな・・・って、主殿!?」

 

「え?何くつろいで漫画読んでんのお前」

 

呼び出した瞬間――私の目の前に現れた小次郎はいつもの感じとは違い、なんとオッサンみたいな寝方で頭に手を置いて週刊少年誌を読みふけっていた。

 

『ま、まぁ・・・使い魔だからの。こういう時もあろう』

 

「妖気散らばってるの集めてどうたらって言ってませんでしたっけ?コレ一体なんなのさ」

 

『さ、さあ?き、きっと使い魔が消える直前に持ってた欲望も実体化したんじゃない?』

 

「えぇ・・・」

 

もし黒狐さんの話が本当だとすれば、小次郎は湯口先輩に決意を表明する為に呼ばれたあの時、よりにもよって"週刊少年誌が読みたい"と思いながら消えた事になるのだが・・・なんか凄く気まずくなってきた。

 

漫画を読み終えた小次郎が立ち上がって私の前に立つ。今の光景のせいで、かつて夢で見た時のあの恐怖感は完全に感じられない。

 

「あ〜・・・で?主殿よ、今回は私何をすれば良いかな?」

 

「え、えっと・・・わ、私を大人の姿に出来る妖術とか使えないかなって、おお思ってさ・・・」

 

「ほーん、それならお安い御用ぞ。ほれ」

 

小次郎がそう言って指パッチンを鳴らす。

 

すると私の視界がグン!と見下ろすように伸び、胸元も多少ではあるが膨らんで服がキツくなった感覚がした。

 

『あら、随分と綺麗になったじゃない。これ見てごらんなさいよ』

 

「あ、ありがと黒狐さん・・・って、私かコレ!?」

 

黒狐さんから手鏡を渡されて自身の姿を見ると、そこには顔の幼さはそのままシャッとした目付きにスラッとした細い鼻のロシア系ハーフ美女の顔がそこに映っていた。一見本当に自分の顔か疑うくらいに別人過ぎる。

 

小次郎はなんということをしてくれたのでしょう。胸だけ除けば完璧な美人にしてくれたのがとても嬉しい。

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