私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――開店してから暫くして
「椿ちゃん〜これお願い〜」
「は~い!」
「お〜い、綾ちゃん〜こっち注文お願い〜」
「はい!ただ今参ります!」
私達はほぼほぼ満席となった居酒屋で、あちらこちらを往復しながら次々と来る注文やら何やらの対応に追われていた。
どういう訳か、他の従業員の人や美亜もいるのに私と椿にばかり声がかかって忙しいったらありゃしない!
「何で、何で椿と綾ばっかり・・・何で私がこんな」
その為、美亜は現在厨房で洗い物をする係になっている。ブツブツと文句を言っているが、何でこんな事になったのかは私達だって知りたい話だ。
特に失敗と呼べる失敗はしていないつもりなんだが・・・注文取り間違えたりとかはしたけれど。
「はぁ、はぁ・・・て、店長。何で、こんな事に?お客さんが、皆僕と綾ちゃんに・・・」
「しょ、正直2人なのにキツく感じます・・・ふぅ、ふぅ・・・」
流れが収まってきた頃を見計らって、私達はカウンターに居る珠恵さんに聞いてみた。
「う〜ん、予想以上だったわね〜」
「えっ?な、何がですか?」
すると、椿のその疑問に白狐さんが料理を幾つか作りながら答える。
『椿に綾。ここは気に入った店員に注文をお願い出来るシステムがあってな、キャバクラとまではいかないが・・・人気のある店員の出勤日を狙ったり、こうやって只管お気に入りの店員に注文を取らせたりしている』
「ま、マジですか・・・」
そう言われてみれば、確かに店に入ってくる人の感じからして白狐さんや黒狐さんにも声をかける人が居るようだ。
「ありゃ?白狐さん〜今日は厨房かい?残念だな〜」
因みに普段は人間に姿すら見えない彼らではあるが、今は"人間に見える妖具"をそれぞれ身につけている事で姿がちゃんと見えている状態らしい。
『ふふ、ごめんなさいね。だけど今日は私達の自慢の子達を連れているから、その子達を宜しくね』
「ん?ほぉ・・・ぉぉお。な、なるほど。いや、しかしこれは・・・」
白狐さんの言葉のせいで、また私と椿にお客さんの目が向く。正直、開店してからずっとこんな感じで私と椿にばかりお客さんから人気が集まっている。それでも仕事なので、嫌だとは言えないし言わないが。
椿と手分けしてお客さんに席の案内をする。
「あの、何名様でいらっしゃいますか?」
「2人だよ。カウンターの方で大丈夫だからね」
「わかりました!こちらの席へどうぞ」
私がそうして案内しようと振り向くと――
「可愛いな・・・」
「なぁお前、この子チェックしといた方が良くないか?初めて見るけどめっちゃ良いし」
「いやいや、ここはもうちょっと様子を見てからの方が・・・でもロシア系か〜新鮮だな」
うーむ・・・どうやら日本的な居酒屋で外人というギャップもあってか、別な理由でチェックされている椿と同じくらいに受けが良いようだ。
近くで美亜が未だにボヤいているのが聞こえる。
「何で、何でよ・・・」
美亜も美亜で、中々女性としては良い雰囲気で受けもそれなりにありそうなものだと思うが。
そして私はお客さんから注文を受けて、料理を運ぶ為に1度その場から離れようとした瞬間――厨房から白狐さんが私と椿をそれぞれ睨んでいるのが見えた。
怒られるような事は何もしていないはずなのだが、と少し慌てて周りをキョロキョロすると偶然今のお客さんと目が合ってしまう。
「えっ・・・?」
「あ、いやゴメン!君の尻尾がどういう作りをしてるのかって気になっちゃってね・・・」
あー・・・なるほど、そういう訳か。その人の手の角度が尻尾側に移ったのを見て、私は苦笑いを浮かべる。なんというか、まぁそうなるんではないかとは薄々思っていた。白狐さんの様子からして、椿もそんな感じに触られそうになっていたから警戒されていただけらしい。
その後に今度は集団のお客さんが入ってきたが、そこに見覚えのある2人を見かけて私と椿は一瞬言葉を失う。
「「いらっしゃいま――っ!?」」
私達が見た、その人の片方はかつて妖怪に連れ去られて椿に助けられた人。そして、私達があの坊主――玄空に殺されかけていた時に助けてくれた時に見た2人だった。
その時の礼をいいかけて、ふと私達は今は大人の姿である事を思い出して口をつぐむ。
その人達と一緒に来ていた年配の方が不思議そうな顔で椿に声をかける。すぐに彼女はハッとして案内に戻った。
「君?」
「あっ、すみません。えっと、3名様ですか?」
「あぁ、カウンター席をお願い出来るかな?出来たら、端の方が良いけれどね」
そう言われて椿がカウンターの方へ案内するまでの間、そのホスト風の男の人とポニーテールの女の人は私と椿をチラチラと見ていた。
バレたのだろうか・・・そう思っていると席に着いたホスト風の男性は椿に、ポニーテールの女性は私に耳元へ話しかけてきた。
「ねぇ、もしかして貴方は・・・あの時の?」
傍から見たらコスプレで付けている耳に向かって話しているので目立っている気もするが、向こうがやはり私達の事を勘づいていた事を知った私は口元に人差し指で"この事は秘密にして"というジェスチャーをする。
けれども、年配の方がそれに気づいた事で結局上手くいかなかった。
「ん?杉野に"犬吠崎"、そいつらと知り合いか?」
「え・・・?」
「ええ、そうですよ。この前に学校で起きた事件や木屋町で起こった事件を解決してくれた子達なんです」
私は一瞬耳を疑った。今の年配の方が言った言葉が間違えていなければ、確かに"犬吠崎"という名前が――というよりも、事件とは一体?
「あっ、ごめんなさい。あの時は私達が自己紹介する間すらなく、貴方達が何処かへ行っちゃったからね。実は私とそっちの男の人は、こういう者なの」
なるほど、髪を結わえていただけなのにまるで別人と私が勘違いしていたようだ。改めて犬吠崎さんから警察手帳を見せられると、そこには「捜査零科」という文字があった。
「ん?・・・あ、え?」
私の頭の中は完全にパニック状態だ。
正直、学校の件やら木屋町での件なども全部知っていた?etc・・・色々と訳が分からなくなってくる。
駄目押しと言わんばかりに警察の部署名では聞いた事もない「捜査零科」という名前だ。
「あら〜刑事さん、お疲れ様です。また事件の調査ですか?」
困惑してフリーズしてしまった私と椿の様子に気がついた珠恵さんのお陰で、何とかその場を収める事は出来たのだが・・・謎だ。
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――厨房にて
3人で洗い物をしながら、私と椿は美亜から今の事について問い詰められていた。
「ねぇ、さっきの男と女・・・あの時あんた達を助けに入った奴よね?」
「女の人の方は、学校の時にも会った事がある人だったよ・・・ポニーテールにしてたから、全然分かんなかった」
「えっ!?そうなの綾ちゃん?・・・というか美亜ちゃん、あの時意識あったんだね」
「あの時は朦朧としてたからあんまり分からなかったけれど、あの男の方も多少妖気を発しているわよ」
「あ〜・・・なるほど。戦いに夢中で気づかなかったけど、確かに2人とも半妖みたいだね」
色々と考えたい事は山ほどあるが、今はまだ仕事の途中だ。刑事さんの方は機密とか多いだろうと思うので、内容をあまり意識しないようにしようと思う。
「椿ちゃ〜ん、綾ちゃ〜ん。それが終わったら、ちょっとこっちに来てくれる?杉野さんと犬吠崎さんのお2人から、お話があるんですって」
「なんだって?・・・すいません、今行きます!」
「えっ、あっ、はい!」
捜査零科という名前に、半妖の刑事が所属しているとくれば、もう妖怪関連の事件を調査している部署なのは簡単に想像がつく。
しかし、そんなカッコイイ部署名の人が私達なんかに一体何の用事があるのだろうか?