私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
受けていた注文を片付けた後、私と椿は要件のある刑事さんの所に向かう。
「すみません、お待たせしました」
「あらかた仕事を片付けてきました!」
「凄い人気だね、2人とも。珠恵さんから聞いたけれど、今日が初日だって?」
「あっ、はい、そうなんですけれど・・・皆何故か僕と綾ちゃんばっかりに注文をしてくるんです」
「結構大変そうね〜」
「たはは・・・」
座っている刑事さん3人の隣に立って答える私達。杉野さんと犬吠崎さんはそんな私達の姿をじっくりと眺めてから、こう言った。
「それは、君達が相当可愛いからだ。今のその姿も何処か幼さがあって、それがまた堪らないんだろう。好みはあるだろうけど、この居酒屋に来るお客さんは何故かそういう人が多いからね」
「要するに"ロリータ・コンプレックス"って奴よね〜。杉野君の言う通り、貴方達なかなか好かれそうな見た目してるもの」
すると杉野さん、犬吠崎さんと年配の方から彼自身の趣好をからかわれる。
「杉野〜そういうおめぇもロリコンだろうが〜手は出すなよ〜」
「こう見えて意外と好きだものね〜杉野君」
「なっ、ちょ!違いますよ!止めてくださいよ、三間坂さんに犬吠崎さん〜」
「えっと・・・それで、話って何ですか?」
話が脱線しそうなのを見かねた椿が刑事さん達に質問をすると、杉野さんがそれに答える。
「あぁ、そうそう。この前のお礼とね、君達にちょっとお願いしたい事があるんだ」
「お願い?あっ、でも、お礼の方なら僕達もしないといけないし・・・」
椿の言葉に杉野さんは「君達がお礼をする必要はないよ」と言いたげに笑顔を向けてくる。恥ずかしさからか、その顔を見て彼女は視線を逸らした。
「うん。やっぱり可愛いな、君達は」
「ふへぁ?えっ、あう・・・あ、いや、ありがとうございます」
「えっと、あー・・・ありがとうございます」
私と椿は突然の褒め言葉にドキッとさせられてしまう。だけれども、これ以上は後ろからヤバい怒りのオーラが約2人程感じるので止めてもらいたい所である。・・・おい狐2人。
「へぇ・・・2人とも、そういう奴が好みなんだ〜」
「げっ!美亜!?これはちょっと油断したってだけで・・・!」
「み、美亜ちゃん!違うったら!!」
「顔真っ赤にして言われてもねぇ〜」
「「えぇっ!?」」
私達は美亜の方に振り向いて必死に否定するけれど、彼女はニヤニヤと楽しそな顔をしており狐2人は杉野さんに嫉妬するような眼差しをしていた。やだもうコイツら・・・オジサン、私家に帰りたいです。
年配の方がそんな光景に苦笑いしながらも私達に話しかけてくる。
「大変だね、君達も。そんな君達に是非頼みたい事があるんだよ。池中とそこの犬吠崎から、感知能力がずば抜けていると話を聞いている。そこで、君達のその能力を見込んで調べて欲しい事があるんだ」
「調べて欲しい事、ですか?」
私が首を傾げると、年配の方と杉野さんはハッとした感じで自身が何の半妖なのかを自己紹介した。
「あぁ、失礼した。自己紹介が遅れたな。私は三間坂良悟、"煙羅煙羅"の半妖さ」
「あ、ごめんごめん。実は俺も半妖でな"獬豸(かいち)"という妖怪の半妖なのさ」
「じゃあ私も改めて・・・"人狼"の半妖の犬吠崎涼子よ。三間坂さんは、昔私の父と一緒に働いてきた頃から知ってる大先輩なの」
妖気で薄々感じてはいたものの、縦社会そうな警察にも色んな人が居るものだと思った。すると白狐さんが3人から頼まれた煮物をカウンターに置いたのだが、明らかに嫉妬しているようにゴン!という音を立てて器にヒビまで入ってしまっていた。おい、幾ら何でも怒りすぎだぞ。
『そちらの皆さん。任務の事に関しては、センターを通してくださいな』
「椿ちゃ〜ん、綾ちゃ〜ん。修羅場になる前に、そこ離れた方が良いわよ〜」
「はっ、は〜い・・・」
「りょ、了解でーす・・・」
珠恵さんに言われて椿とカウンターから離れようとすると、白狐さんと黒狐さんがニコニコしたまま怒気を含んだ感じで彼女に声をかける。
『椿、帰ったら覚悟しておいてね』
『椿、私からも言っとくね。覚悟しとけよ』
「おい駄狐共嫉妬し過ぎだろ」
「ふん。チヤホヤされていい気になっているからよ」
こんな狐2人の嫉妬からくる椿の受難を見て楽しそうに洗い物出来るとは、美亜も中々にヤバい奴だな〜と思う。
「あ、綾ちゃん。た、助けては――くれないよね」
「正直守れる所は守りたいけど私も死にたくないよ・・・」
あんな状態の狐2人を相手にしたら、きっと私まで椿とまとめてお仕置きされるのではないか。そう思うと少しゾッとした。いや、椿の事は本当に守りたいんですけどね・・・私も自分の命が大切なので、許せ椿。
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その後しばらく、刑事さん達は狐2人や珠恵さんと談笑した後に店を後にしていった。その際に私は犬吠崎さんから、椿は杉野さんからそれぞれ貰った名刺の裏を見るように促すジェスチャーをされたので見てみると、そこには私も椿も使っている個人グループで会話可能なSNSのIDが書いてあった。
なるほど、これで逐一必要な情報とかあれば聞いて欲しいという事だろう。
とりあえず私達はそれを美亜や狐2人に見つからないようにしまって仕事へ戻った。性格やら趣味趣好はイマイチよく分からないが、刑事さん達は悪い人という訳でも無さそうだ。
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――日付を跨ぐかというくらいの深夜頃
「ふぅ・・・1番忙しい時間は越えたわね」
「そうだね、美亜。ぶっちゃけ滅茶苦茶疲れたよ〜!」
「私だって手がもう・・・何でずっと洗い物か、盛り付けの手伝いなのよ!」
「み、美亜ちゃん・・・絶対そっちの方が楽だってば。ぼ、僕と綾ちゃんなんか、足を止めた記憶があんまり無いんだけど」
休憩中にぐったりと3人で背中合わせに座り込む私達を見て、珠恵さんも流石に厳しいかと言わんばかりの思案顔を浮かべる。
確かに黒狐さんからも扱き使ってくれとは言われていたものの、ここまで厳しい仕事だとは思ってもみなかった。
「ん〜そうね・・・もう1回波があるから、それまでは頑張ってくれるかしら?思っていた以上に、あなた達3人がよく働いてくれるから、こっちとしても助かってるのよね。もちろん、お給金の方もタップリとね」
「もう、しょうがないわね〜」
「さて、もうひと頑張りしますか〜!」
珠恵さんの褒め言葉に元気を貰った美亜は立ち上がって持ち場に戻る。私も椿の手を優しく引いてあげながら、再び接客の準備をする為にホールへと歩いた。
仕事の忙しさであの時の怒りは何処に行ったのやら、狐2人が真剣そうに私達を心配する。
『大丈夫?2人とも。キツそうなら代わるわよ』
「平気平気!まだまだいけますっての!人間の火事場のクソ力は伊達じゃないですよ!」
「うん。僕も大丈夫だよ、白狐さん。人間じゃなくなったからなのか、こんな事でも倒れる程に疲れたりはしていないよ」
『そう・・・だけど、あんまり無理をしない。何せ、帰ったらタップリと――』
「「さ〜て、仕事仕事〜」」
白狐さんの言葉を途中から無視して私達はそそくさと準備に戻る。この駄狐、結構執念深いようである。
「あっ、いらっしゃ――いっ、ませぇ」
「はいは〜い、いら――っ!?しゃ、いませ・・・」
そして、直後に入ってきたお客さん3人の姿に私と椿は思わずギョッとしてしまった。
えっとですね、端的に言い表しますと・・・そのお客さん達、どう見ても「その筋」な893さん的なアレな格好をしていた。
あかん、急に緊張で胃が痛くなってきた。まだ東京湾・・・というよりも京都なので若狭湾には浮かびたくないんですけど!!
「2人とも、ごめん。この人達は私がやるから、あなた達は――」
「ん?おい、待てや。そいつらが対応したんなら、そいつらに最後までやらせるのが筋とちゃうんけ?・・・あ?儂らの顔見て慌てるたぁ、どういう了見じゃ?」
珠恵さんが慌てて私達のフォローに入ろうとするが、スキンヘッドな人の脅しが効いた感じで私達から珠恵さんに視線を移しながら言った。
改めて心から"オジサン、私家に帰りたいです"と思った。ああ、今夜はきっと犬肉なんだろうなぁ・・・怖くて泣きたい。
珠恵さんに何とか出来ないかと視線をチラと向けてみるも、彼女はこういうお客さんが来るのが初めてなのか僅かに曇った表情をしていた。
「は、はい。分かりました・・・」
「か、かしこまりましたぁ・・・」
とりあえず、お客さんも怒らせなければ結構良い人かもしれないと自分自身に言い聞かせて私と椿はその人達の接客へと取り掛かる事にした。
ふ、フレー!フレー!わ・た・し!!