私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――翌朝
私達はレイちゃんの背中に乗って学校へ向かっているけれど、昨日の事があってつい寝過ぎてしまったせいで今日は遅刻してしまった。試験が近いというのに、これはとんでもない一大事である。
一応カナや校長先生に遅刻する旨は伝えてあるので、何とかなるとは思うが「それじゃあ、今度私が行った時に君達を指名しようかな〜」などと言っていたので些か不安ではある。
というよりも――
「白狐さん黒狐さん。起こしてくれたって良いじゃん!」
「完全に遅刻だよコレ!どうしてくれんの!?」
『いや、すまん。椿の隣に綾が寝ていたものだから、寝顔が可愛いのもあってつい、な・・・』
『まぁ、俺もだがな』
「「・・・」」
『ぬぉぉお!回すなぁ!』
『目が回る!』
最低だコイツら。人の事情も知らないで嫉妬心でなんて事をしてくれやがったのでしょうか。キーホルダーな狐2人を指でグルングルンと回しつつ、膝の上で眠る猫の姿の美亜に視線を移す。
「はぁ・・・美亜ちゃんの方は、僕達の膝の上で2度寝ですか。羨ましいなぁ」
「ほんとほんと。お化けにゃ学校も試験も何にもない〜とは良く言うよ」
ふと椿がまた変な事を気にしたのか、黒狐さんから心配される。きっと妖怪が何処で知識を得てくるのか、それが気になったのだろうか。私からしたら新聞やら適当なもので知恵を付けているような気がする。あの狐2人の変な趣味が良い例だ。
『椿、お主また難しい事を考えているな・・・』
「もう、頭パンクしても知らないからね〜?」
「うぅ、だって・・・」
それでも椿はすぐにいつも通りに戻り、私達が急いでいた事を思い出したようにレイちゃんに声をかけた。
「――うん。2人の言う通り、気にしていても仕方ないや。よし、レイちゃん。これ以上遅れたらマズいから、一気に飛ばして!」
「ムキュゥゥ!!」
レイちゃんはやる気マックスになって飛行速度をグンと上げる。すると、その勢いで膝に乗っていた美亜が落ちそうに――
「ミギャァァァア!!」
「あっぶね!落としちゃう所だった〜」
なった瞬間に彼女の尻尾をギュッと掴んで何とか引き上げる事ができた。
「フギャァアッ!ちょっとあんた、何してんの!?どこ掴んでるのよ!?」
「はいはい、落ち着いて落ち着いて」
「もう、美亜ちゃん。しっかりと僕達の膝に乗っててよ」
いきなり尻尾を掴まれて引っ張りあげた事に怒る美亜だったが、私達に助けられた立場である事を認識したのかすぐに大人しくなった。まぁ、普段から椿の尻尾を弄って遊んでいるのだから、これくらいは許してもらわないと困る。
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――学校にて
1時限目が終わるまでに到着できた私達は急いで自分の教室へと入るものの、そこに広がる光景に眉をひそませた。
「あれ?誰も居ない・・・」
「おっかし〜なぁ、もうとっくに1時限目終わってるくらいかと思ってたのに・・・どういう事?」
『椿に綾よ、隣のクラスも誰もいなかったぞ』
狐状態の白狐さんが隣のクラスも確認して戻って来る。妙な話だ・・・来る際にグラウンドに誰もいなかったのは見たし、体育の時間でもないのは間違いないはずだ。
すると、廊下の向こうから誰かが全力で駆け寄って来る姿が見えた。ホッと一安心し、とりあえず私達はその人に事情を聞いてみようとする。
「すいません!クラスの皆は――」
そこまで言って私は声も動きも止まる。
理由?だって、その人凄くヤバい奴だったもの。
「つ・ば・き・く〜ん、あ・や・く〜ん!やっと来たね〜!さっそく、君達をナメナ――」
「出たぁ!変態〜!!」
「ぬぅん!!」
「ちょべりぐっ!」
私は変態会長の突進を躱しつつ、容赦なく右腕でラリアットをかましてその場にダウンさせる。結構な猛ダッシュで来ていたから、きっとしばらくは目が覚める事はないだろう。後ろで椿がその変態に対して恐れおののいている。コイツはもう会長という称号ですら呼びたくなくなってきたぞ、おい。
すると変態に続いて、カナが私達の前に駆け寄って来るのが見えた。
「椿ちゃん、綾さん、おはよう。やっと来たね」
「ん、おはよう・・・これは一体?」
「あっ、カナちゃん!良かったぁ・・・クラスの皆が居なくて、何かあったのかと。でも、なんでこの人と一緒にいるの?」
「これは緊急だったのよ。ごめん、半妖の私達じゃ止められなかった・・・」
「何の事?」
「すみません。彼女は彼女なりに、あなた達の力になろうとしたのです」
椿が落ち込むカナに質問すると、今度は私達の後ろから牛元先輩の声が聞こえてくる。振り返るとやはりその大きな胸が1番最初に目に入る。
「牛元先輩、半妖の人達は無事なんですね?」
「えぇ・・・。ですが、恐ろしい交換条件を付けられました」
「「だから、一体何があったの!?」」
つい私と椿は焦れったくなって声を合わせて叫んでしまう。その言葉に2人が言いにくそうな顔をしていると、いつの間にか来ていたのか凛が答えた。
「湯口先輩が、謀反だニャ」
「・・・なんだって!?」
「あっ、凛ちゃん。待って・・・それはどういう事なの?」
私達が質問を投げかけると、更にカナの後ろから校長先生も現れて答える。
「だから・・・湯口靖君が生徒を体育館に閉じ込め、君達を学校で再び孤立させる気で、生徒達に事実を伝えているのさ。槻本君や烏森君の正体、僕達の正体も・・・ね」
「ちょっと待って。それだったら、何で私達なんかを待っているの?」
「そうだよ。僕は妖怪だから、別にこの学校を追い出されても何とかなるけれど、綾ちゃんやカナちゃん達は――」
「2人とも優しいね。私達の心配をしてくれるなんて。でも2人とも、ハッキリ言ってね・・・今は私達以外の全生徒の命が危ないの。もし2人を待たずに体育館に殴り込みなんかかけたら、全生徒を殺すって・・・だから大人しく、あなた達を連れて来いって、そう言われたのよ。しかも、それはものの10分の出来事だったの」
湯口先輩がそんな一瞬の内に素早く事を起こすなんて・・・。きっとカナ達の悔しさは私が想像出来ないくらいに大きいのだろう。
けれども、これで私達も覚悟が出来た。椿も私も決心した今は、彼と正面からぶつかって堂々と話し合えるはずだ。
「皆、ごめん。こんな日に遅刻なんかしちゃって。でも僕達はもう、ある程度の"答え"を見つけたよ。だから湯口先輩は、僕達が説得してみせる」
「きっと私達の"想い"だって、話せば先輩も分かってくれるはず。今はここで立ち止まる訳にはいかない!」
椿と私の決心の言葉に、美亜と白狐さん黒狐さんも賛同してくれる。
「面白そうね。私も微力ながら、多少は力添えしてあげる」
『椿に綾よ。辛い選択になるだろうが、後悔だけは無いようにな』
『俺達も、全力で2人を助けるぞ』
私達はもう、あの時のようにたった2人じゃない。今は信頼出来る仲間が・・・心を許し合える"友達"が居る。だから湯口先輩、私達はあなたに対して全力を尽くすつもりだ。
「ところで椿ちゃんに綾ちゃん・・・あなた、何だか目の輝きが変わってる?」
「えっ?」
「そ、そう?」
「うん。今の2人、すっごく頼りに思うよ」
こんな時に歯がゆいセリフは止めて欲しい。恥ずかしくて、どう反応したら良いのか分からなくなる。
まずは早い所体育館に突入して、湯口先輩の思い通りにならないという事を示すのが先だ。
他の生徒達が話を信じるか信じないかは分からない・・・けれど、自分に自信を持ち続けていれば胸を張っていられる。だから、それを示す為に私達は湯口先輩に立ち向かう。