私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾陸話 私はお前を許さない

 

私と椿は読心能力を駆使し、叫んだ瞬間に先輩の身体を押し倒してあっさり取り押さえる。生徒の人達は今の行動で激戦が繰り広げられると思っていたからか、目を丸くして驚いている。

 

「うっ、くっ・・・くそ!」

 

「お願いです。これ以上、ここで暴れないでください・・・先輩」

 

「それにさ先輩、もうこれ以上戦っても意味はないよ」

 

だが、私達にはまだ戦わなければいけない相手がもう1人いるのは忘れていない。玄空が錫杖で後ろから私達に奇襲をかけようとすると――

 

『椿には、指1本触れさせんわ!!』

 

「ちっ!」

 

白狐さんがその攻撃を弾いて止めてくれた。いつの間にか居なくなったと思いきや、これまたいつの間にかやって来ているのだから私としては驚きである。

 

「はぁ、はぁ・・・ひ、卑怯だぞ。覚に力を貸してもらうなんて」

 

「卑怯もラッキョウも、本当はあまり好きじゃないんだけどね。それにこうでもしなきゃ、お前らとはマトモに戦えないし」

 

「僕は、先輩とは戦いたくなかったもん」

 

そして私と椿はいよいよずっと疑問に感じていた事への本題に移る。

 

「ねぇ・・・先輩達は、椿と私を捕まえてどうするつもりだったの?」

 

読心能力で聞こえていたのは、椿と私の居場所を無くして、連れ去られても誰からも心配されず警察にも連絡がいかないようにする。そんな事を実行する為、私達へ今回の作戦を仕掛けてきた事だ。

 

「・・・」

 

しかし、そこまで読まれているのにも関わらず先輩は無言を貫いている。すると、椿は突然"ある事"に気づいて自身の耳をピコピコと動かした。

 

「ねぇ、"靖先輩"。それとも・・・"靖さん"の方が良いかな?」

 

「――っ!?つ、翼・・・お、おま――」

 

「僕は"椿"だよ。ねぇ・・・さっきからずっと僕の事を"翼"って呼び続けるのは、コレのせい?」

 

「な、ちょ・・・つ、椿。それ、私にも結構効くんだけど・・・」

 

椿の湯口先輩への名前呼びにジェラシーやら何やらを必死に抑え込みつつ、彼から読めた心の声で察するに――湯口先輩は、椿を"女の子"として意識し始めているようだ。

これまでは"いじめられやすい後輩の男子"という、同性としても庇護欲を掻き立てられる存在だったのが、女子へと変わってしまった事へずっと困惑している。

 

なにせピコピコ、フリフリと耳や尻尾を動かす椿の様子を見る度に先輩の心からは「萌えてたまるか!」という言葉が聞こえてくるのだ。正直、私もそろそろ彼女を抱きしめたい衝動に駆られてきそう。

 

まぁ、要するに――先輩はケモ耳が趣味なのかもしれないという事だ。ちなみに私は、それに加えて"庇護欲そそられる系女子"の雰囲気も感じてしまっているので、今の椿の行動はかーなーりヤバい。可愛すぎて文章に出来ないくらい本当にヤバいのである。ずっと親友として接してきた私でこれなのだから、いくら欲を断絶してきた先輩でもキツいだろう。

 

なお、そんな私達の後ろでは狐2人とクソ坊主による激しい戦闘と心の声が展開されております。多分、あまり時間の余裕はないかもしれなさそう。

 

「退け!翼に綾!」

 

「嫌です。それに、僕は"椿"だって言ったでしょう?」

 

「今はそういう訳にもいかないんだけど、先輩?」

 

私が周囲を警戒している横で、椿は先輩に馬乗りとなった状態のまま、両手で顔を包んで自身の方へ向かせる。

 

時と場合が違ったなら、私は先輩にめちゃくちゃ嫉妬しているだろう。・・・というか、私も椿にそれされたい!普段は臆病で引っ込み思案な幼馴染に、イケメンムーヴされながら顔と顔を向かい合わされたい!!

 

「顔を逸らさないで!」

 

「ぐぐぐ・・・く、くそ。白狐の力は"体術"か!」

 

「そうですよ。それより、ちゃんと僕の目を見てください!」

 

それでも顔を逸らそうとする先輩に、椿は一喝する。その瞬間、狐2人と戦闘していたにも関わらず玄空が椿に向かってロープ状にした数珠を投げて捕まえようとしてきた。

 

『いかん!椿、避けろ!』

 

「はん!私がいる事を忘れるなっての!!」

 

私は先輩の持っていた錫杖を使ってそれを弾き飛ばしたが、椿がそれに動揺した一瞬のスキをついて先輩は抜け出して距離を開いてしまう。

 

「ちっ、疾いなぁ・・・!」

 

「白狐さんに黒狐さん。さっきは何処に行っていたの?しっかりと玄空って人を止めてくれないと、僕達落ち着いて先輩の説得が出来ないよ・・・」

 

椿が先程まで姿を見せなかった狐2人へそう文句をつける。ぶっちゃけ、今回は彼らが何処かに行ってたのが悪いと私も思うよ。

 

『いや、すまんな。外にも滅幻宗の奴らがいたから、対処しておったのだ』

 

「結界は?」

 

『そんなものは、俺達の力でとっくに壊した。香苗だったか?今はそいつに頼んで、センターに連絡をしてもらっている。ここに増援を寄越すようにとな。美亜もいるから大丈夫だろう』

 

「なるほど・・・どうりでね」

 

周囲を見渡してみれば、他の半妖の人達が生徒を避難させる為に安全な場所へと誘導しているのが見えた。これなら、下手に周囲を気にしすぎる必要も少なくなったといえるだろう。

 

後は、あの2人をどうにかするだけだ。

 

「ちっ、くそ・・・」

 

「ぬぅ・・・以前はこんな強さ、無かったはずだが」

 

私と椿は悔しそうに膝を着く先輩と玄空へ、何故私達を襲うのか・・・その理由を問いただす。

 

「ねぇ、答えてよ。僕達を攫おうとする理由はなに?」

 

「つっても、今日は殺しにかかってきたよね。それは一体どういう事か説明してもらおうか?ついでに滅幻宗の事についてもさ」

 

「答える義務など――」

 

「はぁ・・・任務内容が少し変わったから、ねぇ。"捕獲出来そうなら捕獲。しかし、生死は問わない"と」

 

「・・・」

 

読心能力が使える私達に2人は押し黙ってしまう。

 

「それじゃあ、何で僕達を捕獲しようとするの?」

 

「ぬっ、ぐぅ・・・」

 

「考えないようにしても、こっちは読める物は読めちゃうんだっての。記憶に焼き付いた事までとかすらね。そんで、椿については"椿の記憶"が必要だから攫おうとしたと。でもその椿しか知りえない情報は教えてもらってないみたいだな。私は・・・あのクソ女が単に自分で殺したがってるからって理由か」

 

なるほど、それならあの女が椿よりも私を狙う理由は納得出来る。そんな所まで読めた辺りで、先輩がとんでもない反撃をしてきた。

 

「あれ・・・先輩、何か別な事――って、ちょ、おま!?」

 

「や・・・嘘でしょう!何を考えているんですか!?先輩は!」

 

『どうした!?2人とも!』

 

へたり込む私達に黒狐さんは心配する声をかけた。な、なんというか・・・先程から、この駄狐にとても説明しずらい"精神的な攻撃"をされている。

 

「だ、大丈夫だけど、そ、その・・・湯口先輩が、心の中で僕達を・・・うぅ」

 

「や、やだ・・・なんて事を考えんだよ、この変態!!」

 

「ふふふふ・・・心を読まれているのなら、その能力を逆手に取るまでだ!既にお前らは、俺の脳内で犯されまくっているのさ!」

 

おう自慢げにそんな事大声で語るのやめーや、湯口先輩!!

 

顔真っ赤にするくらいに純情なんだろうけど、下手すると自身の趣味までバレたりして後々大変な目にあうぞ!っていうか、既に私達があってる!!

 

――なお、狐2人はというと

 

『おのれ!つ、椿を・・・椿をよくもぉ!』

 

『許さんぞ、貴様!』

 

「2人とも、落ち着いてよ!先輩の脳内だけだから」

 

「いや、それもどうなのよ椿・・・」

 

『『それでも許さん!!』』

 

まーはい、知ってましたよこうなるのは。

 

一瞬で狐2人の逆鱗に触れてしまった先輩は、玄空諸共黒狐さんの雷で痺れさせられてしまい、そこから白狐さんが爪から放った真空刃で武器を破壊されて押さえつけられてしまった。

 

わ〜お、なんと鮮やかな手際でしょう・・・これで普段がアレじゃなければ、椿も私も惚れてしまいそうなものなのだが。

 

「ぐぅ・・・くそ!余計な事をしてしまった。父上、申し訳ない」

 

「うぐ、ぬぅぅぅ・・・このような痴態、末代までの恥!」

 

そうして2人を取り押さえた狐2人に安心するまでもなく、私と椿は次の瞬間に読心能力で上から誰かがやって来たのを認識した。

 

しかも、この心の声からして――敵の増援か!

 

「まずい、敵の増援が来た!!」

 

「白狐さん黒狐さん!避けて!!」

 

『なっ、ぬっ!?』

 

『うぉ!っと・・・こ、これは!?』

 

狐2人が先輩から飛び退いて避けた後に、先輩の両脇を掠めるようにして光の矢が突立つ。そして体育館2階の踊り場通路から声が聞こえてきた。

 

「やれやれ・・・お2人とも、情けないですね。"処刑人"が我々を呼びに来ていなかったらどうなっていた事か」

 

それに続いて、現れた坊さんの横から更に2人の人間が姿を現した。

 

「よっ・・・と。いやぁ、ねぇねぇ、靖君。君、このまま好きな女の子に懐柔されちゃうんですか?」

 

「うるさい、黙れ"閃空"」

 

上から先輩の近くへ飛び降りて来たのは、私達と差程変わらない・・・いや、それよりも幼い雰囲気をしたパーカーの少年だ。着ているパーカーのフードを目深に被っているせいか、顔立ちがよく分からない。

 

そして、続いて残る2人もそちらに飛び降りてくる。

 

「2人とも、今回は退くわよ。・・・はぁ、あなた達の未熟さに少し呆れたわね」

 

「くっ、しかし峰空――」

 

「悪いが、奈多姫直々の指示だ。私も従っているんだし、そっちもちゃんと従ってもらおうか」

 

玄空に撤退を促す、キャバ嬢のような女性に続いて私と戦った"処刑人"も再び瞬間移動で姿を現す。先程、狐2人へ矢を放ったと思われる男は、かつて椿の祖父の家で戦った栄空という坊主のようだった。

 

「ターゲットの2人が読心能力を使うのでは、我々が不利です。我々の情報を片っ端から引き出されては、奈多姫の計画が狂います。退きますよ玄空、靖君」

 

「くそっ、逃がす――っ!?」

 

私が逃走を妨害しようと彼らの心の声を読んだ瞬間、とんでもない殺気を直感で感じ取って足が止まる。

 

感じた気からしてコイツら・・・先輩どころか、玄空よりも強い。閃空と呼ばれた少年もあの中では一番"練気"が少なく感じられるが、それでも相当の強さだ。

 

狐2人もそれを感じ取ったのか、戦闘態勢の状態から私達を助けて逃げる為に構えている。ここで、もし連中にまとめて襲って来られれば、私達に勝ち目などないのは一目瞭然だからだ。

 

だから、今は逃げてくれるだけ幸運と言えるだろう。

 

「いいか、椿に綾。どんな説得も、もはや俺には通じないからな!」

 

そう言って先輩が私達を睨んできたので、こちらは一応とはいえ"練気"への警告の言葉をかける。

 

「最後に一つだけ、先輩・・・あんた達が使っている"練気"って奴はあまり使わない方が身の為だよ」

 

「ふん、負け惜しみを」

 

「僕達・・・忠告は、したからね。湯口先輩」

 

先輩すら説得出来なかったのは彼の事を想う私達にとって辛い所だったが、それでも滅幻宗についてある程度の情報を手に入れる事は出来た。

 

「覚えておけ、"烏森 綾"。私は"お前"を許さない、"私自身"も含めてその存在自体をな」

 

先輩達を瞬間移動の力で転送していった、あの女が最後に何故か私を哀れむような目でそう言った。

 

――少なくとも奴らが妖怪退治と銘打って、何かロクでもない事を企むヤバい連中という事だけは確かだろう。

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