私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾捌話 私だって、好きなんだから

 

――その日の夜

 

私と椿、そして美亜は今日散々弄ばれた事を忘れようと、湯船に顔近くまで浸かってブクブクと泡を立てている。

 

まぁ、頭まで色々熱くなってきて逆上せそうになってしまったのだが。

 

「ブホァ!あークソ恥ずかしい!うぐぅ、ブクブク・・・」

 

「何なの、あの学校の生徒達は!う〜ブクブク・・・」

 

「ぼ、僕はあまり気にしてないからね、綾ちゃん。それと・・・見事な乱れっぷりでしたよ、美亜ちゃん」

 

「「言わないで!」」

 

美亜と声を合わせて椿に真っ赤な顔を向ける。一瞬だけだったとはいえ、私の情けない心が大切な人である椿に読まれた事が恥ずかしくてならない。

 

「まぁまぁ、皆さんがいい人で良かったでしょ?生徒の人達が言ってきてくれたから、椿ちゃんも綾ちゃんも学校から去らずに済んだんだし」

 

里子が自身の身体を洗いながら、頭だけ振り向いてニッコリ笑う。

 

確かに彼女の言う事に間違いはなく、校長先生も皆が怖がっていないならと私達に特別に学校へ通う事を許されたのだ。ついでといわんばかりに、美亜も来週転入してくるという事になっていた。

 

ちなみに、これは美亜を気に入った生徒達からの要望によるもので、彼女の意思は一切入っておりません!ナンテコッタイ・・・。

 

とはいえ、美亜もそれ程イヤではないらしくやる気満々な目で私達を見てくる。

 

「ねぇ、学校って勉強する所よね?何を勉強するの?何を持っていけば良いの?」

 

「い、意外と興味津々なのな、美亜・・・」

 

「ちょっと待って、美亜ちゃん。確かもうすぐ期末テストだし、その後は夏休みだからね。夏休み終わってからの方が良いんじゃないかな?」

 

「うげ、そういえばもうそんな時期だっけ。やばい、私全然勉強してないよ〜」

 

「綾ちゃんは何時もの事でしょ、全く!」

 

そうして椿と夫婦漫才のような会話をしていると、美亜は納得した様子で「人間って大変なのね」としみじみしながら頷いていた。

 

私だって、勉強しなくても良い将来の生活が送れたら送りたいですよ。でも、人の社会っていうのはそんな簡単にラクをさせてはくれないのがねぇ・・・本当に面倒臭いよ、うん。

 

「ところで椿ちゃんも難しい事を考えるのは良いけれど、勉強の方はどうなの?テスト近いんでしょ?」

 

「最近なんか忙しくて、僕も勉強してないや・・・」

 

すると湯船に入ってきながらそう質問する里子に、椿もすっかり忘れていた様子で苦笑いをしながら答えた。

 

「おぅおぅ、人の事言えないじゃんかよ〜椿〜!」

 

「綾ちゃんみたいに、授業中に居眠りしてたり完全に宿題すっぽかしてるのと、ノートに取ったり宿題をやったりしてる僕じゃ大違いだよ!」

 

「過程なんかよりも結果が全てだから、私は」

 

「綾ちゃん、それはちゃんと成績表に響かせてから言おうよ・・・」

 

また漫才っぽい会話になっていく私と椿を見て、美亜も好奇心が限界なのか、いよいよソワソワしてくる。

 

「あら、ちょうど良いわね。その勉強というの、ちょっと見せてくれる?」

 

「うぐっ、別に良いけども・・・」

 

「僕達の勉強の様子を見たら、美亜ちゃん絶対学校行かないでしょ?」

 

「あら、私はどんな事からも逃げないわよ」

 

「ほ〜う、言ったな?ちゃんと私は聞きましたからね、美亜!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

――風呂から上がって

 

私達は自室にある机で期末テストに向けての勉強を開始する。オジサンの家に居た時には、手作り感満載のゴテゴテした勉強机や丸太の椅子で使い慣れてはいたのだが、此方の足が低くて正座や足を伸ばしながらでも使える机も結構便利なものだ。

 

『ふむ・・・人間とは、こういう事から学ばないといけないのか。なんと不便な・・・。しかし椿よ、お主はもう勉強などする必要はないぞ』

 

「その様ですね、白狐さん・・・」

 

「えっ、嘘でしょ椿?パラパラ捲るだけで分かるの?う〜ん、椿が凄い妖怪だからなのかな〜・・・?」

 

あっという間もなく問題集のほとんどを書き終えた椿を横目に、私はいまだ数学の問題集の1ページ目と睨めっこをしている。

 

ううむ・・・最初に椿や美亜の勉強の様子を見た時には、妖気が高いから頭にも影響が出てるのかと思っていたのだが、残念ながら人間である私にはその影響が出なかったという事なのだろうか。

 

ちなみに、美亜はといえば――

 

「大丈夫?美亜ちゃん?」

 

「うわー、私より頭から煙出てる感じするよ・・・」

 

私の隣で文字通りプシューといった煙を頭から出して項垂れている。これには頭の弱い私も少し安心、椿は不安げな顔である。

 

「ふ、ふふ、ふふふふ・・・こ、これで勝ったと思わないでよね」

 

「私とはどんぐりの背比べだがな〜」

 

「み、美亜ちゃん・・・別にそうは思っていないけれど、本当に大丈夫?綾ちゃんも全然進んでいないみたいだし・・・」

 

「今に見てなさいよ!魚を使った妖怪食を食べまくって、絶対にあんた達を越えてやるんだから〜!」

 

美亜はそう言って部屋を飛び出していってしまった。なるほど・・・その手があったか!なら、私も彼女に倣って――

 

「綾ちゃん、何か変な事考えてないよね?」

 

「な、ナンノコトカナー?」

 

前言撤回、椿がジト〜とした目で私を見てきたのでこの考えは無し。というか、魚を食べて頭を良く出来るんならとっくにやっているかもな・・・アホか私は。

 

「ふぅ・・・とりあえず、テスト勉強はいっか。綾ちゃんに白狐さん黒狐さん、もう寝――ないです、やっぱりテスト勉強します」

 

「おい駄狐2人、ステイ!」

 

椿が布団に潜ろうと振り返った瞬間に狐2人の目の色が変わったのを私は見逃さなかった。

 

『こらこら、白狐がさっき勉強はする必要がないと言っただろうが』

 

「い〜や〜!離してぇ!目が肉食獣の目になっていたんだよ〜!食べられるぅ!」

 

「つか私も勉強もう面倒くさい〜!」

 

椿が黒狐さんに布団へ引き摺り込まれるのに合わせて私もスポーンといった具合に狐2人からある程度椿を守れるポジションへ滑り込む。

 

毎回椿が寝る度にこれでは、彼女がすぐに女子女子した性格になってしまうし、私もまだそんな椿を受け入れる心の余裕が持てていない。そもそもの話、狐2人による寵愛で椿の身体が持たないという意味で心配でもあった。

 

「ちょっと、黒狐さん!匂い嗅がないで〜それと白狐さん、首筋舐めないでぇ!」

 

「だぁ〜もう!踏んでも蹴っても離れないなんて、狐というよりナメクジじゃないのか!?」

 

いつもの如く、身悶えしながら耐える椿から狐2人を離そうとしていると、徐々に彼女に伸ばされたその魔の手がどんどん下へと下がっていく。

 

「待って!白狐さん黒狐さん、それ以上は――」

 

『そういえば椿よ、昨日綾に言いかけていた事は一体何だったのだ?』

 

「え?ちょっと君ら、まさかあの場に居た訳ですか!?」

 

突然、白狐さんがそんな事を言い出したので私と椿は一瞬硬直してしまう。私はまだ椿と2人きりの添い寝でドキドキしてたから良いとして、どうして寝ぼけていた椿まで恥ずかしそうな顔をしているのかが分からない。

 

「えっと、その・・・僕、何か言ってた?」

 

『誤魔化しても駄目だぞ』

 

「いっ・・・ひゃう!?」

 

「ちょ、ちょちょいちょい!?私、椿が何を言おうとしていたのか結構気になるんですけれど!?」

 

白狐さんが椿の耳を舐めつつ囁く横で私は必死に両手をジタバタさせて彼女を助けようとする。

 

『覚の能力が限定的で助かったな、白狐』

 

『確かにの。奴には申し訳ないとはいえ、覚の能力で読まれていたら我らの寵愛から逃げまくっていただろうな。さぁ言え、椿。昨日は綾に何を言おうとしていた』

 

狐2人がずずいと椿に詰め寄る。心做しか2人が嫉妬している様にも見える。そして2人は彼女への責めを再開した。

 

『さぁ、吐け。椿よ』

 

『ふふ、椿の尻尾の匂いは最高だな』

 

「ひぁっ?あぅ・・・うぅ。言う、言いますから、尻尾と耳だけは止めてぇ!」

 

「うぐぐ・・・椿〜・・・むぎゅう」

 

あまりに狐2人が椿に詰め寄るせいで、私はプレス機に挟まれたカエルかと思われるくらいに押しつぶされそうになってしまう。それでも手足をジタバタさせてはいるのだが、それ程までにこの2人の勢いがヤバいのだ。

 

椿の言葉で狐2人の手が止まり、やっと私も前後のプレスから解放される。

 

「ぜ、ぜぇ・・・ぜぇ・・・し、死ぬかと思った」

 

「あの・・・えと、ね?綾ちゃんに・・・女の子になれたら、綾ちゃんとその、白狐さん黒狐さんに・・・ぼ、僕の――ふ、ファーストキスを上げるって言いたかったの・・・!」

 

――瞬間、私の頭は理解が追いつかず、なんか吹っ飛んだ。

 

え、ちょっと・・・あの?え?そ、それは"そういう感情"が椿にもあったという事で間違いないでしょうか?

 

うん、待って待って。その前に狐2人の事も入っていたので、2人が凄く微笑ましい顔をしていらっしゃる。椿もその告白が恥ずかしくなって、頭から布団を被ってしまっているし。

 

『ふっ・・・椿よ、甘いな。そんなものは、今貰ってやる』

 

すると、布団を跳ね除けて白狐さんは驚く椿の手を引いてそのままキスをした。

 

「へっ?んぅ・・・!?――っ、白狐さん。な、なんで、なん・・・うぅ?」

 

椿がいきなりのキスに白狐さんへ問い詰めようとするが、彼が浮かべる優しい笑みの前に口ごもってしまう。流石に私も今の出来事には口をポカンと開けている状況だ。

 

もちろん、それを見て黙っている黒狐さんではなかった。

 

『ぬ、ぬぬぬ・・・白狐め!椿のファーストキスは、俺が貰おうとしていたのに。それなら、俺はこっちを貰ってやる!』

 

「へっ?えっ、待っ!んぅっ!?」

 

今度は黒狐さんが椿を抱き寄せ、彼女の唇にがっつくようにキスをした。これにも私は妨害する余裕すらない。

 

「ん〜ん〜!?んぅぅうっ!!」

 

しかもどうやら、椿は黒狐さんに舌を入れる方のキス・・・ディープキスをされていた。彼女がポコポコと黒狐さんの胸元を叩く程に抱きしめる力が強くなっていく。

 

『ぷはっ、ふふ。どうだ、こっちのキスは俺が貰ってやったぞ』

 

『ぬぬぬ、黒狐よ。やってくれたな・・・』

 

そんな2人にキスされたお陰で、椿は完全に骨抜きにされて放心状態だ。というか、そのどちらも未然に防げなかった自分が色んな意味で恥ずかしい。

 

『――と。ところで綾、お主はまだ椿にキスをしていないのではないか?』

 

「あいっ!?」

 

そんな所に突然、白狐さんがふと我に返って私の方を見る。この狐2人、椿の事ばかり考えてるクセに変な所で他人思いなのが困る。

 

『ほら、どうせなら綾も椿にキスをしてやれ。まぁ、その、初めてを奪ったのは悪かったが・・・』

 

黒狐さんも椿を腕から解放して私の方へ突き出してきた。

 

「え、えぇ、えぇ〜・・・?」

 

「ちょっ、あの・・・綾ちゃん、もキス・・・するの?」

 

恥ずかしげながらも受け入れるつもりな椿の目と未だ困惑しまくって状況に頭が追いついていない私の目が合う。大切な人に正面から真っ直ぐ見つめられている事を認識してカーッと心の底から羞恥心が込み上げる。

 

けれども、このまま何もしないっていうのも何だか・・・後で狐2人からバカにされたりしそうで嫌だと感じたし、何より――

 

椿の事は私だって、好きなんだから。

 

「・・・んっ。それじゃ」

 

勇気を振り絞って、私は椿の頬に恐る恐るながらそっとキスをして布団へすぐさま潜った。

 

その日はこれ以上狐2人は椿に手を出す事もなく、彼女もそれに安心して眠ったが、2人に見られながら椿にキスをした私は悶々としたものが晴れないまま寝るに寝付けなくなってしまったのだった。

 

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