私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第伍章 街角怪異前線
第壱話 意外と現実的な役割


 

――それから1週間程して

 

期末テストもギリギリ赤点回避で切り抜け、一息ついたクラスの人達に揉みくちゃにされる前に椿を助けつつ、私達は生徒会室へと向かった。

 

あれから、騒ぎを起こした張本人である湯口先輩の方は休学届けまで出して学校に来なくなった。非常識的な事絡みだったとはいえ、居なくなってしまうと寂しく感じる。

 

だが、そんなのお構い無しと言わんばかりに私達へ着いて来た亜里砂は楽しそうな顔をしていた。

 

「ねぇ、椿ちゃんに綾ちゃん!生徒会に呼ばれるって事は、2人って生徒会役員なんだね〜」

 

「まかり間違っても、それはないからな?」

 

「亜里砂ちゃん。綾ちゃんの言う通り、違いますからね。あんな所に入りたくはないです。ただ、僕達に頼み事があるだけなんです」

 

体育館での事件後、私と椿はすっかりクラスの人気者になってしまったらしく、休み時間になる度に私達の周りに人が集まってくるようになったのだ。

 

特に此方の亜里砂という女子生徒は、ふとした時でも私や椿に絡んだり、トイレにまで着いてくるという有様だ。

 

「2人って、ほんとに色々とやってくれているんだね。もう〜言ってくれれば良いのに〜」

 

「言っても信じないでしょう、普通?」

 

「あはっ、そうだね。あっ、それじゃあ邪魔しちゃ悪いから、また明日ね〜」

 

亜里砂が普段の高いテンションのまま、私達へ手を振って途中で学校から帰っていった。ここまで人からベタベタされたのは、男子共にモテていた頃の今や黒歴史な小学生の時以来の気がする。

 

はぁ、と生徒会室の扉の前で椿と同時にため息をつくと、ずっと私達の後ろから着いて来ていたカナが声を掛けてくる。

 

「人気者ね、2人とも」

 

「向こうが話しかけまくってくるから、結構大変だったんだけど?カナ・・・」

 

「カナちゃん・・・後ろでずっと見てるより、ちょっとくらいは助けて欲しかったですよ」

 

「ごめんごめん。だけど私、あの子苦手なのよね」

 

「まぁ、私もああいう奴は苦手だよ」

 

「2人の気持ちも分かるけどね・・・」

 

3人で顔を見合わせてから、それぞれ苦笑いをする。カナは椿の次に一緒に居ると落ち着くような、そんな謎の安心感があるのが不思議だ。どちらも椿にベッタリな気はするのだが、どうしてここまで違く感じるのだろう。

 

兎にも角にも、生徒会室に入らない事には今回の用件について分からない。

 

ひとまず、その扉を開いた――瞬間にヤバい奴の顔が見えたので拳を振りかぶっておく。

 

「待っていたよ〜椿く〜ん!綾く〜ん!ナメナメ――は、止めておこうか」

 

「素直でよろしい」

 

カナも火車輪を取り出してくれていたお陰で変態会長はすぐに真面目なモードに戻ったが、そこへ椿の言葉による追い討ちもかかる。

 

「それで、変態会長さん。何か御用でしょうか?」

 

「おいおい〜変態はないよ〜僕にはちゃんと、赤木って名前が――」

 

「1週間前に、綾ちゃんからラリアットされて気を失ったまま、体育館の事件が解決するまでずっと保健室で寝コケていた役立たず会長――の方が良いですか?」

 

「むしろ名前から取って『ダメギ』でも良くない?」

 

「ぐ、うっ、し、辛辣な・・・」

 

ダメギで役立たずな会長がガックリと机に突っ伏して完全に動かなくなった。まぁ良いか、と思っていると、彼の横に居た牛元先輩が代わりに私達へ話しかけてくる。

 

「すみません。会長は再起不能になっているようなので、私から用件を」

 

すると、ずっと感じていた違和感の正体に気づいたカナが食い気味に発言する。

 

「あれ?ねぇ、もう1人の猫の子は?」

 

「そういえば・・・凛、だったっけ。一体何処に?」

 

「あっ、本当だ。確かにここに居ないですね」

 

そこで私は、ふと美亜も学校に到着してから何処かへ行ったっきりなのを思い出す。

 

「あぁ、凛なら美亜さんと一緒に魚を捕りに行きましたよ」

 

「ズコーっ!」

 

あまりの予想外な先輩の答えに思わず声でずっこけてしまった。完全に猫やんけ!っていうか、結構あの2人は仲が良いんだな。前に会った美亜のクソ家族の中にも、1人だけ彼女を心配するような素振りをしていた美弥子という子が居たが、そっちとの姉妹としての仲は果たしてどうなんだろうか。少なくとも、彼女は美亜の事を嫌ったりしている様子は無いが・・・

 

そんな事を考えていると、牛元先輩がようやく話の本題を持ち出した。

 

「さて――それでは、会長に代わり用件を言いますね。これは校長にも話を通したのですが、あなた達にやって欲しいと言われたので此方にあなた達を呼んだのです」

 

「ふーん。そんな回りくどい事しなくても、直接校長先生から私達に言えば良いのに」

 

「あの人も忙しいですからね。これからは校長からの依頼も此方に回ってくるので、そのつもりでお願いします」

 

「マジでか・・・」

 

ため息が出そうになる。どう足掻いても、私と椿はこの人達とは関わっていくしかなさそうだ。

生徒会に入って欲しいと言ってきたのも、連絡をするのに一々呼び出す面倒を考えての事があったからなのかもしれない。

 

「それでは本題ですが、この学校の通学路に幾つかお地蔵さんが置いてあるのは御存知ですよね?」

 

「えぇ、確かにチラホラ見かけるね」

 

「あっ、はい。交通安全のでしたっけ?」

 

幼い頃から見慣れていたので余り気にならなかったのだが、京都には道端でお地蔵さんが立っている場所が結構ある気がする。

 

「厳密に言うとあれは、交通安全の祈願で置いてあるのではないのです。あれは"辻の神"と呼ばれているもので、昔は村と村の境界線の役割をしていたのですよ」

 

「えっ?」

 

「なんだって?意外と現実的な役割があったんだな・・・」

 

あのお地蔵さんが、村同士を繋ぐなんてそんな重要な役割を果たしていたとは知らなかった。狐2人ならばひょっとしたら知っていたのかもしれないだろうが・・・

 

「あれ?そういえば椿さんと綾さん、白狐さんと黒狐さんは?」

 

「牛元先輩、今気づいたんですか?」

 

「あいにく、あの2人は任務なんですと」

 

――そうなのだ。実は1週間前の事件の一部始終を知った椿の祖父が、それならばと狐2人無しでやってみろという事になってしまったのだ。

 

結構なスパルタ教育な気もするが、椿は案外乗り気らしく狐2人に頼らなくても戦えるようになりたいといった様子を見せていた。それに、あれから椿も私も互いの顔を直視出来ない状態になってしまったので、とりあえず近くに居てくれればといった具合にまで距離感をつけてしまっている。

 

今回の依頼を機に、少しでも気持ちが落ち着けば良いのだけれど。

 

「そうですか。だけどあの事件の後、あなた達の顔つきがまた少し変わっていますからね。今なら、安心して任せられそうです」

 

「は、はぁ・・・」

 

「褒めないでください・・・慣れてないので」

 

照れくさく顔を赤らめる椿の頭をカナが後ろから撫でる。今の2人を見ていると、なるほど。カナのこの妙な安心感は歳上の姉のような感じがするからだ。

 

「話を続けますよ。そのお地蔵さんなんですが、通学路に設置してある1体が少し異様でして。今は何も起きていませんが、そのうち何か起こるのではないかと半妖の何名かが此方に不安を訴えているのです。ですからお2人には、その通学路にあるお地蔵さんをしっかりと調べて欲しいのです」

 

「えっと・・・それだけでいいんですか?」

 

「なんだか、偉く簡単そうな仕事だね」

 

意外にあっさりとした内容を聞いて、私と椿は強ばっていた肩の力が抜ける。

 

「えぇ、そうですよ。ただし、気を付けてくださいね。"辻の神"とは村の境界線に置く事で、他の村からやって来る"良くないもの"を受け止めたり、そこで亡くなった子供の霊を鎮める為に置かれている場合もありますからね」

 

「ん〜・・・まぁ、覚えておきます」

 

最後の最後にサラッと怖い話のように締めくくった牛元先輩に私は苦笑いを向けた。牛元先輩がそんな事を言うから、椿もそれを聞いて再び肩に力が入って緊張してしまったではないか。

 

「それでは、頑張ってくださいね」

 

牛元先輩はどういうつもりで言ったのか分からないような、ニコニコとした笑みを浮かべる。頼まれたからには仕方ないのだが・・・

 

「大丈夫だよ、椿ちゃん。綾さんだけじゃなくて、私も一緒に行くから」

 

「ありがとう、カナちゃん。だけど、危なそうならすぐ逃げてね」

 

「人数さえ居れば、怖いものなんて怖くなくなるもんね」

 

大変だったテスト期間を越えたと思いきや、夏休みまで気を抜くヒマすら与えてくれないのは辛い。今から身体に負担ばかりかかるこんな状況じゃあ、今年も夏休みになったら宿題に追われそうだな・・・

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

椿と二人して足取りが重いまま校舎の外に出た途端、いきなり私の頭に何かがぶつかってくる衝撃が走った。

 

「あばぁっ!?」

 

「うわっ、綾ちゃん大丈夫!?」

 

頭に何が当たったのかと見てみると、なんと巨大な魚だ。すぐ上の木の枝から、美亜と凛が私達に声をかけてきた。

 

「あ〜ごめんにゃ、綾先輩」

 

「全く・・・だから口で咥えずに、ちゃんと持っておきなさいって言ったでしょ、凛」

 

「うにゃ〜美亜ちゃんもちょっとくらいは持ってよね。両手にもいっぱいなんだってば〜」

 

すると椿が落ちてきた魚を見て、見た事もない魚だからか訝しげな顔で美亜に質問した。

 

「ねぇ、これ日本に居ない魚だけど・・・何処から捕って来たの?」

 

「あら、ちょっと行った所の建物の中に居たわよ」

 

「は?」

 

「美亜ちゃん、それってもしかして・・・カラフルな魚とか、綺麗な尻尾とか、綺麗な背びれを持つ魚の居る所?」

 

なんだろう、凄く嫌な予感がする。椿の説明から想像出来るものといえば、きっと――

 

「あら、よく知ってるじゃない。その辺りの魚は小さくて、何だか美味しくなさそうだったから捕らなかったわ」

 

「良い魚屋さんを見つけたニャ」

 

「それ熱帯魚のお店なんですけどぉぉおお!?」

 

「そこはお魚屋さんじゃないから、2人とも今すぐ返して来てぇ!」

 

なんてこった・・・美亜がついているから凛は大丈夫だと思っていた私がとんでもなくバカだったよ!まさか人間界でそこまで常識が無いなんて、思いもよらなかったわ!!

 

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