私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第弐話 出血大サービス

 

――午後、問題のお地蔵さんがある交差点にて

 

私と椿は、着いて来たカナと魚を返してきた美亜と共にようやく例のお地蔵さんがある場所まで辿り着いた。場所としてはお地蔵さんが立つ場所から交差点を見渡すような位置で、結構人目につきやすいようにも見える。

 

「えっと・・・このお地蔵さん、内側に布が被せてあって中が全く見えないんですけど?」

 

「ご丁寧に扉に鍵まで付けちゃってくれて、まぁ」

 

ガッチガチに封じられたお地蔵さんに私達が怪しげな目を向けていると、美亜が交差点のあちこちにある看板を眺めて訝しげに目を細めた。

 

「しっかしねぇ・・・ここって、本当によく事故が起きる場所な訳?」

 

「言われてみると、確かに事故防止の為の看板とか目撃者募集の看板とか、他の所じゃ早々見ないな」

 

カナが思い出したように口を開く。

 

「あ〜、ここって・・・確か2ヶ月前に、自転車と自動車の衝突事故があったんだっけ。1人亡くなってるよね」

 

「うん。対面にも花があったのを見て全て分かりましたよ、カナちゃん。子供の玩具もありますからね」

 

「嫌な事故現場だな・・・」

 

もし霊的なものが原因だとすると、私達には分からない。そこでレイちゃんを連れて来ていた訳なのだが・・・先程から交差点の中心を見たまま、ジッと動かないのだ。

 

うっわぁ、これ絶対何か居るよ。やだな〜、怖いな〜・・・

 

「ちょっと、開いたわよ。この扉」

 

「って、えぇぇぇ!?」

 

「美亜ちゃん!勝手に何やってるんですか!?」

 

なんと美亜は扉を無理やりこじ開けたのか、私達が目を話している内に、いつの間にやらお地蔵さんがレッツオープンしてしまっていた。

 

「一番怪しい所を調べりゃ良いでしょうが。何よ2人とも。あんた達まさか、お化けが怖いって言うんじゃないでしょうね?」

 

「だだっ、誰が?こ、ここ怖いっててて?」

 

「そ、そそそ、そんな事は、な、ないであります」

 

色んな意味でビビりまくって口調までおかしくなっている私達に美亜は見透かしたようにニヤついている。カナは真面目にやっているというのに・・・なんでこう、美亜は怖いもの知らずな奴なんだろうか。

 

「全身ガタガタさせて、言葉まで震えながら言っても一切説得力――フギャァァアア!?」

 

私達を小馬鹿にした調子で美亜がお地蔵さんの祠に掛けられている布をめくった途端、恐怖で顔を引き攣らせて絶叫しながら私達の後ろへと隠れた。因みにこの間、僅か3秒です。

 

相手に言う前に自分がこれでは話にならないな、と私と椿で美亜に冷えた視線を送ると、全身の毛を逆立てガチガチと震えながら彼女が首を全力で横に振って否定する。

 

「ち、違う違う!あのお地蔵さん、ヤバいのよ!」

 

「お、おいおい!私達にまで見せようとするなぁ!」

 

「ちょっと待って!押さないで美亜ちゃん!」

 

普段強気な美亜ですら絶叫するものを、私達なんかが見たら絶対心臓が口から飛び出てしまいそうだ。此方も全力で足を踏ん張らせて美亜に抵抗する。

 

「これ、嘘でしょう・・・ちょっと椿ちゃんと綾さん、頑張ってこっち来て見てくれる?」

 

すると、カナがお地蔵さんの中身を見て不思議そうな声を上げた。

 

「え、だ・・・大丈夫なのか、カナ?」

 

「大丈夫だよ、綾さん。これ、いきなり見せられたらビックリするけれど、ゆっくりと覗いたら何とかなるから。それに、私も2人の傍に居るからね」

 

カナの言葉で私と椿は勇気を出して、そのお地蔵さんの中身を覗いてみる。

 

「なっ、目から・・・出てるの、これは?」

 

「うぁ・・・えっ?これって、血?」

 

お地蔵さんは一見すると赤い前掛けをしているように見えたが、よくよく見るとそれはお地蔵さんの目から大量に流れている赤い液体で濡れていた。

 

「文字通り随分と出血大サービスしてるな、おい・・・」

 

「椿ちゃん、綾さん。このお地蔵さんからは妖気を感じる?」

 

「ううん、全く感じない」

 

「うーん、こっちも全然だね・・・」

 

更に不気味なのは、このお地蔵さんからだけでなく交差点一帯に一切の妖気も感じない所だ。ひとまず私は椿と考えて、妖怪ではなくお化けの仕業によるものだと想定する事にした。

 

なお、ここまで美亜はずっと椿の尻尾を強く握ったまま離していない状態である。

 

「み、美亜ちゃん・・・とりあえず大丈夫だから、尻尾離してくれる?」

 

「えっ・・・あっ!ご、ごめん。強すぎたわよね?」

 

「全く、美亜も人様の事どうたら言えないビビりっぷりじゃん」

 

美亜が尻尾を離し、我慢していた椿がその場にへたり込む。そこへ交差点の向こうから近所に住む爺さんなのか、私達のやっている事を見て血相を変えて早歩きで近づいてくる。

 

「お主ら!何をやっとるか!!」

 

「「わぁっ!?ご、ごめんなさい!」」

 

私と椿はいきなり怒鳴られた事に、つい声を合わせて謝ってしまった。しかし、その人からは妖気とかそういうものではない、別な何かを感じる。

 

「何だ。あんた、この辺りの地主神じゃない」

 

「ふん・・・なんじゃ、妖共か。一般の奴らも居るから静かにせぇ、金華猫の小娘」

 

「えっ?知り合いなのか?」

 

人間ではない事を示唆するような美亜の一言にキョトンとしていると、その地主神さんが話を続ける。

 

「お前達、それを迂闊に弄らん方が良いぞ。その地蔵はな、この辺りの子供達を事故から守ったり、事故で亡くなった子供の霊を鎮める為に立っておるんじゃ。だがな・・・あの血の涙を見たじゃろ?それは、その地蔵がもう限界にきているという事なんじゃ。しかし人間共はそれに気づかず、このまま放置しておる」

 

「そうなんですか・・・って、ちょっと待って。それってつまり、ここに居るのはマズいんじゃ――」

 

私は同じくヤバいものを感じ取った椿と顔を見合わせた。

 

「どうやら、そっちの狐の小娘と人間の小娘は理解したようじゃな」

 

地主神さんが言った途端、なんと私達の後ろにある交差点からトラックが赤信号を無視したまま此方へ突っ込んできているではないか!

 

「フニャッ!?ちょっと!!」

 

「うっわマジか!!」

 

「嘘っ!!」

 

「ひえっ!!」

 

浮遊出来るレイちゃんに一瞬だけでも助けてもらおうとしたが、とっくに自分だけ宙に浮いている。

 

「あっ!レイちゃんの卑怯者〜!」

 

「って、そんな事言ってる場合じゃないよ椿!!こうなったら、お願い小次郎!椿と一緒にトラックを止めて!」

 

「拙者に突然力仕事を頼むか主殿よ!?」

 

「くっ・・・!!」

 

白狐さんの力を使った椿と共に小次郎がトラックの前に出て両手でトラックを受け止める。しかし、トラックは随分と速度を出しているせいか中々止まってくれる気配が無い。

 

「さ、流石に使い魔の私とはいえ・・・これはキツいぞ!」

 

「うぐぐぐ・・・止まってぇ!」

 

2人で踏ん張っている所へ私も体育館の時のように変身してみようとするが、どういう訳か何度強く意識しても変身する事が出来ない。や、ヤバい!これじゃ後ろで火車輪を構えているカナがトラックをぶっ壊してでも止めようとしてしまう・・・!

 

――と思っていたら、やっとトラックの方も止まってくれた。カナが心配してすぐさま椿へ駆け寄る。

 

「椿ちゃん!なに無茶してんのよ、もう!綾さんの使い魔が居たからっていっても、怪我は?」

 

「ごめん、体が勝手に動いちゃった。あ、腕は折れるかと思ったけれど、とりあえず大丈夫そうかな」

 

「ふむ、しかし・・・これの運転手、どうやら気絶しているようだぞ」

 

「突然意識を失った事による暴走運転、ねぇ。なんかここと関係あるのかな?」

 

一安心したのもつかの間、今度は戻ってきたレイちゃんが交差点の中心で激しく鳴きだす。

 

「ムキュゥゥ!!キュゥゥゥウ!」

 

「レイちゃん、どうしたの!?何かあっ――」

 

椿がレイちゃんの方を向いて言葉を失う。私もそれに気がついて振り向くが、そこでとんでもない光景が目に入ってくる。

 

「な、なんか黒い物が交差点から出てきてるんですけど・・・?」

 

「ちょっと待ってレイちゃん。それ・・・何を引きずり出そうとしているんですか?」

 

「ムキュゥゥ!!」

 

呆然とする私達の様子もお構い無しに、レイちゃんは一心不乱にその交差点の地面から出てきてる髪の毛のようなものを引っ張り続ける。

 

ひょっとしたら・・・アレがここの交差点で悪さをしていたのか!?

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