私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
霊狐であるレイちゃんは霊を感知したり、その姿を見る事が出来ると過去に狐2人から聞いてはいたものの・・・まさか交差点にいる霊をこうして引っ張り出せる力があるとは驚きだ。
今はそれどころじゃないけれどね!
「レイちゃん、出来たら戻して欲しかったのですが・・・」
「今引っ張り出されても、もし強い奴とかだったら私達何も出来ないよレイちゃ〜ん?」
「ムキュゥ、ムキュキュウ!」
そんな私と椿の言葉にも耳を貸す事なく、レイちゃんは依然としてその髪の毛的なヤバいものを引っ張るのに夢中だ。美亜はいつの間にか逃げているし、カナも不安げに私達を見る。
「つ、椿ちゃんに綾さん・・・レイちゃん止められないの?なんだか引きずり出したらいけないものを、一気に引きずり出してそうなんだけど」
「無理です。興奮しちゃって聞いてくれません・・・」
「というよりも、既にこれ手遅れじゃ・・・」
頭まで出てきたそれの目玉が無く真っ黒い眼孔が私達の目と合う。もうやだ、なんでまだ暗くない時間にこんなホラー体験しなくちゃいけないんだ?
「むぅ・・・あれは。この場所で亡くなった霊ではないか。負の感情が募りに募って、とんでもない事になっとるな」
「やっぱり悪霊系なのかよ・・・まるで妖怪みたい」
「しかし、あの霊狐はお前さん達のか?」
「えっ、はい。そうですよ」
地主神さんがレイちゃんの事について尋ねてきたので答えると、それを聞いた彼はとても驚いた様子を見せる。
「あやつは確か・・・何処かの神に仕えている、特別な霊狐だったはずだぞ。持ち主の下を離れる事も異常だが、別の者に仕えるなど有り得ん。それに、そこの人間の小娘が従えている使い魔も、まるで自分の意思があるように動いている。使い魔には基本意思など存在しないと聞いているがな」
「なんだって?でも・・・」
「そう言われても・・・現に僕達に懐いちゃっているし、離れてくれないんですけど」
うーん・・・地主神さんの話が正しければ、小次郎は使い魔としては変わった存在なのだろうか?地主神さんは不思議そうにそんな私達をジロジロと見ていると、カナが私と椿の袖を引っ張る。
「ねぇ、椿ちゃんと綾さん・・・。それよりさ、レイちゃん止めた方が良いよ。さっきの黒いの全部出たけれど、その足にまた髪の毛が絡まっていて2体目がそのまま出て来るよ!」
「うぇぇえええっ!?めっちゃ交差点から出てきたぁ!!」
「わぁ!?何ですか、あれ!レイちゃん待って!流石にストップだよ!」
カナに言われてレイちゃんの方を見ると、なんという事でしょう・・・いかにも悪霊みたいな全身真っ黒な奴が交差点の穴から引きずり出されて、その足に絡まっている髪の毛によって芋づる式にもう1体も引っ張り出されているではないですか!
私と椿も一応は霊の存在を感知する事は出来るが、あくまでもそれは姿が隠れていない場合だけだ。そういう意味ではレイちゃんを連れて来た事は正解だったのだが、まさかこんな事態になるなんて予想もしていなかったよ!
「レイちゃんストップ!!レイちゃんは妖怪の魂しか取り込めないんでしょ?人間の魂や悪霊は取り込めないから、それを引きずり出しても何も出来ないよね!?センターに連絡して対処して貰うから、それ一旦戻してぇ!!」
「お願いだから、椿の言う通りにしてレイちゃ〜ん!!」
「ム〜キュゥゥウ!!」
やっぱり私達の言葉が聞こえていないどころか、まるでそれをしないといけないみたいな目付きでレイちゃんは遂に2体目すら引きずり出して、そこから3体目まで出てきてしまっている。
だが、そこまで来て私と椿は霊が出てきている黒い穴から妖気を感じ取り、すぐにそちらへ意識を向けた。先程までは確かに何も感じなかったのに、今はあの穴から微かに妖気が洩れ出てきているのを感じる。まさか・・・
「これは・・・妖気?嘘でしょう、あの黒い穴の中に――妖怪が居る!?」
「やっぱり椿もそう思う!?こりゃ面倒臭い事になりそう!!」
「えっ?嘘でしょう!?」
「んむ?妖怪じゃと、まさかそんな・・・」
カナだけでなく地主神さんまで驚いているが、ここはひとまずレイちゃんに全部引きずり出してもらって、そこから現れた妖怪を何とかする方が良さそうだ。
椿も私と顔を見合わせ、同じ考えに行き着いて互いに頷く。
「――分かったよ、レイちゃん。うん、そのまま引っ張って!一番底に居る妖怪を逃がさないようにしながら引きずり出して!!」
「フレ〜!フレ〜!レイちゃん!!」
「2人とも、それは良いんだけど・・・野次馬さん来てますよ?盛大な事故が起きたんだもん、警察とか呼ばれているのに気がつかなかった?」
「「あっ・・・」」
完全にそんな事忘れてましたよ、私達。
というよりも、どうせ普通の人間には見えない霊なのだから大丈夫かと思っていたら、集まった人は皆スマホで撮影したりしている。
これはレイちゃんが触っているからなのか、霊に妖怪が関わっているから見えているのか・・・全く分からん。
「ムキュゥゥ!!」
「しかし、それにしてもどれだけ沢山出てくるんだ!?4、5、6、7・・・ええい、7体以上も居るんだから沢山って事にしとくか!」
「どれだけ出て来るの〜・・・?」
「2人とも、もう止めるの諦めてるよね?」
野次馬達がレイちゃんによって数珠繋がりのように引きずり出されていく霊に集中して上ばかり見ているが、それよりも穴の方がヤバい気がするのに誰もそっちへ意識が向いていないのはどうなんだ。
「ちょっと失礼!そこの交差点の・・・中央の辺り、危ないから近づかないで!」
「ごめん!ちょっと交差点の中央の方には近づかないでください!」
椿と一緒に野次馬達へ叫ぶも、好奇心で話が耳に入っていない数人が交差点の中央まで近づいて凄いだの何だの言って写真を撮り続けている。
これだから近頃の若者は・・・って、私も若者の1人だよボケ!
するとレイちゃんが見えないくらいの高さまで随分と出てきた後、突如さっきまでよりも大きな妖気が穴から吹き出してきて、最後尾の霊の足を掴む巨大で白い手が中から姿を現した。
レイちゃんがずっと引きずり出し続けてくれたお陰で、その手は疲労からあっさり霊を手離すと同時に穴の周囲に居た人を長い腕で振り払う。どうやらレイちゃんに霊を引きずり出された事で相当頭にきている様子だ。
椿は吹き飛ばされた人を心配して、すぐに助けるべくカナへ声をかける。
「カナちゃん、吹き飛ばされた人達の手当てをお願い。僕と綾ちゃんはこいつを何とかするから!」
「分かったよ!でも、たった2人で大丈夫なの?」
「大丈夫さ、カナ。今妖怪フォンで照合したらCランクの"手魔根木"って奴だと分かったから!」
――自分から事故を起こす妖怪ではないが、そこに"不幸"を集めて居着く場所で事故を起こさせる。そして、その事故で亡くなった人の魂を捕まえて隠れ蓑としてはそれを続けるという、ある意味妖怪らしく悪趣味なクソ迷惑な妖怪だ。
「そこまで心配する事ないよ、カナちゃん。Cランクの妖怪なんだから」
「Cランクだからって、2人とも油断はしないでよね。こっちは怪我人とか見ておくけれど、レイちゃんはどうするの?」
「そういえば――」
カナに言われて上を見ると、レイちゃんは引きずり出してもらった霊を空中で一箇所に集めてその周囲をグルグルと回っている。
「安心しろ。ありゃぁ、悪霊となったあの霊魂達を浄化しとるんじゃ。それよりも、お前さん達はあの妖怪に集中した方が良いのではないか?ただのCランクと侮るな」
「なんだって?――くっ!?」
穴から生えている手が握っていた掌を開くと、凄い妖気と共に掌へ埋め込まれている目玉をギョロリと覗かせた。
この妖気の強さ・・・Bランクくらいの妖怪並みにあるのではないだろうか?