私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
「わぁっ?!」
「あひゃいっ!」
翼が叫びながら飛び起きたのに反応して、私も飛び起きた。
また昨日みたいな夢を見たとかではなく、ただ意識だけが沈んでいたガチな眠りだったのでかなりビックリしたよ。
「・・・って、翼か〜。いきなりビックリしたじゃん、大丈夫?」
「はぁ、はぁ・・・何だろう?嫌な夢を見たような、でも思い出したいような夢で・・・」
「はいはい、私が居るから安心しなって。それにしても、此処は翼の家じゃないみたいだけど・・・」
翼の背中を優しくさすりながら周囲を見渡す。
起きてから視界がハッキリしてくると、私が家で使っているものよりもよっぽど上質そうな布団に寝かされていた上に、どうやら一晩寝てしまったのかかなり日の光が眩しく感じる。
「えっ?ここどこぉ〜!?」
翼が困惑で叫んだ。
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それからしばらくして此処が翼のおじいちゃんの家であると判り、2人して腹の虫を鳴らしたと同時に姿を現した白狐さんと黒狐さんに連れられて翼のおじいちゃんの元へ向かった。
「おぉ、2人とも起きたか」
襖を開けると、やっぱり天狗の姿だったので翼が小さく悲鳴を上げて私へしがみつく。
「ひっ!?」
「ぶぇ!しがみつかないで翼〜」
「あ・・・ごめんね綾ちゃん!」
翼が慌てて、すぐに私から離れる。
と、ここである異変に気づいた。
「翼、その格好・・・」
「えっ?な、何で僕、スカートなんか履いているの〜!?」
そう、いつの間にか翼は巫女さんが着るような赤と白の着物を着せられており、狐の耳や尻尾が丸出しなのも相まって非常に可愛らしい姿になっていたのだ。
ちなみに私も着替えさせられていたのか、肌触りの良い生地で出来た青い千鳥柄の甚平の姿だった。結構動きやすくて着心地が良いね。
「なんで僕がこんな格好をしなくちゃならないの?僕、男の子だよ?」
「何を言うとるんじゃ、お前さんは今は女の子だろう。いや、元々女の子だったがな」
「え?それって、どういう・・・」
翼が元は女の子だった?よく分からない事を言い出したかと思えば、私の発言を無視し今度は手招きして此方を別な部屋に案内しようとしている。
「お、おじいちゃん。その格好怖い・・・元に戻して?」
「む?小さい頃に散々見とったろうが。しょうがない奴じゃ」
そう言うと翼のおじいちゃんは、さっき天狗に変身した時と同じ様にして元の人間の姿へ戻った。
「変身は自由自在なんですね。すごいというかなんと言うか・・・」
「ほぅ、お前さん妖怪は初めてなようじゃな。まあ、じきに慣れると思うが」
「はあ」
廊下に出ると、そこから長い廊下がずっと続いていて夢の中で見た私の家程ではないにしろ此処が大きな家であると簡単に認識出来た。
翼の話によると、この人の家は京都の山間の村にあるそうで、地主もやっているからお金も権力もそれなり以上にあるらしい。高級車が停まっている事もあったのだとか。正直お金持ちな人の暮らしってスケールが大きすぎてイマイチよく分からない。
外をチラと見ると田んぼや畑が広がっており、茅葺き屋根の家がチラホラと見えた。家の天井へ視線を向けると、此方も同じように茅葺き屋根なようだ。
「っ・・・!?」
翼が突然頭を抱えて呻きだす。
「あっ、うぅ・・・!」
「翼!?」
『椿!大丈夫か!?』
『おい、椿!翁、何とかせぇ!』
頭痛で立っている事すらままならなくなってきたのか、フラフラと白狐さんに寄り添うようにしてへたりこんでしまった。突然の出来事に黒狐さんが翼のおじいちゃんへ怒鳴っている。
「ふむ、記憶の封が思った以上に強力なようだな。どれ」
翼のおじいちゃんが苦しそうにする彼の額へ手を置くと、先程まで荒かった息が徐々に落ち着いていく。
「はぁ、はぁ・・・あ、ありがとう、おじいちゃん」
「なに、気にするな。此処での出来事まで封をしているからの。あの事に繋がる記憶は、全てな」
翼が落ち着いた事で私はさっきから気になっていた疑問を投げかけた。
「記憶に封?どうしてそんな人の記憶を弄るような事を?」
『翁よ、過去に椿の身に何があったんじゃ?元々女子だというのも、我らは気づかんかったぞ』
「白狐、そして綾よ。それほどまでに格上の存在が、椿の記憶に封をしているからじゃ」
つまり、それは翼だけに限らず周囲の関連する人物への記憶も封じているからって事?
『なん、じゃと・・・!?』
「あ、あのぉ・・・僕、記憶を封じられるくらい悪い事をしちゃったの?」
驚く白狐さんを他所に翼が申し訳無さそうな顔で質問をする。当たり前だろう、普通記憶を操作されるなんて事は一般的に考えれば過去に何かあったからされるものであると認識してしまうからだ。
しかし、それに答える事は無いまま大きな部屋へと案内される。その部屋はよくある和室らしく2つの部屋が襖を隔てられていて、片方の部屋はしっかりと閉じられていた。何となくその奥に何か居るような気配を感じるのだが、そこは君子危うきに近寄らず。決して凄い数の妖気を感じてても気にしちゃいけないね。
翼のおじいちゃんが私達が全員座ったのを確認して話し始める。
「さて、何から話そうかと言いたいが。残念ながら儂からは何も話せんのじゃ」
『何故じゃ!翁!』
「誰かに口止めされてるって事ですか?」
「左様、センターから箝口令(かんこうれい)が敷かれとるからじゃ」
まさかそこまで重い事態が翼の過去にあったなんて・・・私は息を飲む。
「今儂から言えるのは・・・翼よ、いや椿か?う〜む、小さい頃と同じ名前を付けられるとは思わんかったがな」
椿って名前が翼の昔の名前だったなんて、白狐さんと黒狐さんは変な所で単純なセンスをしていると思う。
「とりあえず椿よ。お主はもう、あの家に帰らんで良いぞ」
「なっ、なんで!?」
「いや、つば・・・椿?虐待されてるんだったら親戚の人が心配してくれてるんだし普通に考えて帰らなくてもいいからね?」
もう皆が椿、椿って呼び続けるから彼には悪いけど私も翼から呼び方を変える事にした。彼らの中でただ一人全く別な名前を呼んでたら、気にならないハズがないもの。
「そもそも父と言っていたあの人物はの、妖怪なんじゃ。此方の世界で粗相をした奴での、犯罪とまではいかないが少し折檻が必要だった」
「なんだって!?椿のお父さんが妖怪?」
「そこでの、人間界での生活を厳命したのじゃ。そして、お主の世話役をやらせ、しっかりと成人へ育てられたら妖怪の世界に帰れる様にしたのじゃが・・・人間界で相当汚されたのか、あんな変な女を嫁にしおってからに」
その先は私でもよく分かる。あの人でなし達が椿を人として扱ってこなかった事へ怒りがフツフツと湧いてきた。
「まあ安心しろ、椿よ。妖怪など、早々人間界に行く事はないからの」
「あの〜、すいません。それについてなんですけど・・・」
「やっぱり綾ちゃんも分かるよね?この家に居るよね?いっぱい居るよね!?」
私と椿のビクビクした様子に椿のおじいちゃんが訝しげに眉をひそめた。
「何じゃ2人とも、分かるのか?」
『翁よ、言っておらんかったが2人は感知能力が高いらしくての。綾の方はとにかく、椿はもう妖気を感知出来るようじゃ』
「なんと、やはり素質かの・・・いや、しかしそれならば何故その人間の子が・・・」
やはり私も椿も普通じゃないような反応をされている。椿は凄い妖怪の子だからって事で説明が付きそうなものだけど、私はどうして人間なのに妖気を・・・って感じだ。
「それなら、隠れて貰っていてもしょうがないの。皆、出て来い」
椿のおじいちゃんが固く閉じられた襖の向こうへそう言い放つと、閉められていた襖やら出入口やら全部の戸口が開いて――
そこからたくさんの奇怪愉快な見た目をした妖怪達がわんさか出てきちゃったよ!イヤイヤイヤイヤ!予想の10倍くらい隠れてましたっけ!?
「「ぎゃああああ!!!」」
『久しぶりぃ椿ちゃん!』
そして皆椿の事を知ってるっぽい!?やばい、本で見た事がある妖怪だからって大丈夫だと思ってたけど大丈夫じゃないわコレ。普通にめっちゃ怖い!!