私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾壱話 流石は私の親友

 

その後、捜査零科の人達による後片付けが行われ、たくさんあった死体もようやく全て運ばれていった。椿が杉野さんに渡した札も、多少の妖気を感じる旨を伝え今後の捜査における証拠としてそのまま預ける。

 

「椿姉さん、これで終了っすか?」

 

「それだったら楽だけどね・・・残念ながら解決にはなっていないんだよ。解決するまで調べないと」

 

「えぇ・・・?思った以上に大変っすね・・・」

 

「これくらいで音を上げるなんて、そんなんじゃ手配書の妖怪を捕まえるのは無理だぞ、楓」

 

楓にとっては想像以上に面倒な様子に見えたのか戸惑いを隠せないようだ。もし本気でくノ一なんて目指しているのならば、こういった世間の厳しさも体験するのは当然だと思うのだが。

 

そこへ杉野さんと犬吠崎さんが現場に居た人達から聞き込みをして"当時に不審な人物が居たかどうか"についての結果を伝える。

 

「椿ちゃん、綾ちゃん。残念ながら、不審な人物を見たという人はいなかったよ」

 

「そうですか・・・」

 

「お2人とも、本当にありがとうございます。周囲に妖気を感じないので、きっと真犯人はもう逃げてしまったのかもしれませんね・・・」

 

「それなら仕方ないわね。少し残念ではあるけれども、根気よく調査を続けていけば何時かは真犯人にたどり着けると思うわ。だから2人も落ち込まないで」

 

私と椿が落ち込んでいるように見えていたのか、不意に2人から励ましの言葉を送られて一瞬だけ困惑してしまった。怒りこそあるとはいえ、別にすぐ真犯人を捕まえられるという気は起きていなかったのだが。

 

楓もそんな私達の姿を見て「厳しい世界っすね・・・しかし、修行をしていればいつかは・・・」とブツブツ独り言を呟いていた。やる気だけなら1人前に感じられる。

 

すると、突然椿が訝しげな表情をして耳を動かしだした。

 

「椿、どうしたの?」

 

「ごめん綾ちゃん、ちょっとだけ静かにして」

 

そこから椿は視線を上に向けて、キョロキョロと木の上を探るように見始める。まさか・・・何者かがこの辺りの木の上に潜んでいたのを聞き取ったとでも言うのだろうか。

 

「杉野さん、犬吠崎さん・・・零科の人達で、この場所を包囲して。木の上に誰か居る」

 

流石は私の親友、可愛くて強い。

 

何はともあれ、彼女がこうして見つけたというのならば今回の事件に関わっている可能性は高い。そもそも、こんな場所でこんな事態の時に木の上へ登っている奴なんて、どう考えても普通じゃないだろう。

 

「あっ、椿。私は・・・」

 

「うん、綾ちゃんと楓ちゃんは少しジッとしていてね。僕が影の妖術で不意をついて捕まえてみるから」

 

「分かった。零科の人達も居るんだから落ち着いて探ってね、椿」

 

その私の言葉に椿が頷き、彼女は地面に伸びる木陰から自分の影を移動させる。そうしてしばらく静かにしていると――

 

「なっ!うわぁ!?」

 

椿の影が何者かを捕まえたと思われる声と同時に如何にも怪しげな痩せこけて目にクマが出来た青年が木の上から引きずり降ろされてきた。

 

「な、ななな・・・何だこれ!」

 

「何だって言われても、自分の影を操ってあなたを捕まえただけだよ。それよりも、あの死体を動かしていたのはあなたなんですか?」

 

椿はそいつを影で掴んだまま、自身の正面に連れてきて問いただす。

 

「ひっ、ひぃぃ!ば、化け物!何だお前ら!」

 

「テメッ・・・この野郎!」

 

「待って、綾ちゃん!」

 

そいつが椿へ向けた心無い叫びに私はつい激昴して拳を振りかぶるが、彼女が制止する声で我を取り戻し、振りかぶった拳を戻した。

 

「とにかくさ、僕の質問に答えてよ。さっき死体を操っていたのは君?」

 

「はぁ、はぁ・・・そうだ、そうだよ!俺は選ばれたんだ・・・あの人達に選ばれたんだ、そして――」

 

だが、穏便に説得しようとする椿の言葉もあまり耳に入っていないそいつは目の焦点が震えたまま私達へ殺気の篭もった顔を向ける。

 

「――そして、腐った奴らを更生する為に・・・この力を貰ったんだ!!」

 

男は椿に掴まれていない、動く方の腕で胸ポケットから何かを取り出す。それを見た椿は叫んだ。

 

「あれは!?滅幻宗が使っていたお札だ!」

 

「なんだって!?ちっ・・・くそ!間に合わない!」

 

すぐにそいつが行動を起こす前に今度こそ殴って黙らせようとするが、向こうが札で妖術を発動する方が早かった。

 

「"死霊蘇生"!"屍肉復元"!」

 

男が取り出した2枚の札から妖気が流れ出し、川へ流れ込んでいく。そして、案の定というべきか川から再び死体が這い出ようとしていた。

 

そこへ椿が手を狐の形にしながら妖術を発動する。

 

「妖異顕現、"動水の儀"!」

 

「あれは・・・死体の動きが止まった!?」

 

「新しく覚えた妖術だよ、綾ちゃん。動きがある水の力を操って、重さや水圧を変えてあんな風に動きを止めたり出来るんだ」

 

「な、なるほど〜・・・」

 

確かに、川から出て来ていた死体を封じるにはこれ以上ない妖術だ。椿の妖術も炎や影だけでなく、着実と広い範囲の力が使えるようになってきている事へ素直に凄いと思ってしまう。

 

「な、なんだ?何故出てこない!」

 

「それは僕が川の水を操って、彼らを動けないようにしているからです」

 

椿が男に分かりやすく見えるよう、川の水の一部を蛇のように変化させてウネウネとそいつの目の前で動かす。

 

「あ、あぁぁ・・・お、お前。よ、妖怪!?」

 

「なんだ、妖怪の事は聞いていましたか。そう、僕は妖狐の椿だよ。・・・さっ、次はあなたの番。そのお札、誰に貰ったの?」

 

椿が耳と尻尾をわざとらしく立てて見せると、男は「ひっ・・・!」と小さく悲鳴を上げてから後ろへバッタリと倒れて気絶してしまった。

 

「流石っす、椿姉さん!相手への恐怖心を煽り、尋問しやすくするとは!」

 

「いやいやいや、楓?これ気絶しちゃってるから。こんなんじゃ尋問なんて出来ないよ」

 

「ご、ごめん2人とも・・・」

 

「別に気にしなくても良いよ、椿。こいつの肝っ玉がやたら小さいのが悪いんだからさ。・・・ったく、こいつ男のクセに情けない奴だな」

 

倒れたままの男を見てため息をつく。そこへ杉野さんがそいつへ近づいて、手錠を掛けてから肩に背負った。

 

「こいつは犬吠崎さんと一緒にパトカーの方で聞き取りをする。君達は川から出ようとしている、あの死体の方を何とかしてくれ」

 

「あ、そういえばまだ動いたままでしたっけ」

 

「でも動きを封じているから、後はそのまま影の妖術も使ってかな・・・妖異顕現、"影の操"」

 

椿が右手で水を操っている状態のまま、左手も狐の形にして妖術を発動させる。彼女が上手くいったといわんばかりに喜んだ所を見ると、こういう同時発動は初めてのようだ。

 

「やった、成功した!これなら!」

 

「おぉ〜、同時に発動出来るのねソレ」

 

そうして先程までの死体と同様に、椿は実体化させた影で首の後ろから札を抜き取った。さっきまでは逃げ回っていたからあまり気にはしていなかったものの、この光景をまじまじと見るとグチャリとやら何やらと結構色々エグい。

 

「うひょぉ、姉さん達これは・・・今晩は、お肉が食べられないですね。首の後ろだけとはいえ、生身の・・・うわぁ」

 

「楓ちゃん、ちょっと黙っててくれる?」

 

「まぁ、その気持ちも分からない訳じゃないけどさ・・・」

 

抜き取った札も椿が2人が乗っているパトカーへ持っていき、やっと本当に騒動が終わったと一息ついていると――

 

「あら、久しぶりね綾。あなた達の目まぐるしい活躍は聞いているわ。こんな所で会うなんて奇遇か、それとも運命かしら」

 

「あ・・・雫さん!まさか、またあなたに会えるとはこっちも思っていませんでした」

 

「えっと・・・椿姉さん、あの人は誰っすか?綾姉さんと知り合いみたいっすけど」

 

「うん。あの人は、以前に僕と綾ちゃんを助けてくれた天女雫さんだよ。綾ちゃんと同じく、使い魔を呼び出したり出来るみたい」

 

首を傾げる楓に椿が簡単に雫の事を説明する。

 

「あれから姿を見ていなかったんで、少し心配していたんですよ?」

 

「ごめんなさいね、綾。私にもやるべき仕事が多くあるものだから」

 

「仕事?それって、私達みたくセンターの依頼を?」

 

すると、雫は首を横に振ってそれを否定する。

 

「そういう危ない仕事じゃないわよ。そうね、例えるとするなら"妖怪リサーチ"といった所かしら」

 

「妖怪リサーチ?」

 

「ええ。手配書に記されている妖怪の現在の状態や、それが周囲にどんな影響を及ぼしているか・・・そういったものを調べて、センターへ報告しているのよ。今回も妖怪が関わっている可能性を考えて調べに来たのだけど、まさか人間があんなものを使って起こしていただなんてね」

 

そう言って雫は再び踵を返して何処かへ行こうとする。色々とまだ気になる事がある私は慌ててそれを引き止めた。

 

「ま、待ってください雫さん!まだ話したい事が――」

 

「悪いけれど綾、今日私にはまだ済ませなければいけない仕事があるの。私もあなたと話したい事は山ほどあるけど、今はこれで精一杯なのよ」

 

そして、雫は苦笑いして私にSNSの連絡先が書かれた紙を手渡してきた。どうやら、他に聞きたい事があればこれを通して連絡して欲しいという事だろう。

 

「それじゃ、また会えるのを楽しみにしているわ」

 

「そっちも、仕事頑張ってくださいね」

 

私は人混みの中に消えていった雫へ向け、彼女が見えなくなるまで手を振った。

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