私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾弐話 台風一過みたいだ

雫との短い再会から少しして、私達は杉野さん達が意識を取り戻した犯人の男から事情聴取をして分かった事を伝えられた。

 

曰く、死体を操っていた札はインターネットの個人掲示板に連絡をして手に入れたとの事。その掲示板というのも"書き込むだけでヒーローになれる!"とかそういった胡散臭い触れ込みで、立てたアカウントの名前も"亰嗟"と書かれていたそうだ。

 

まさか、こんな所で半妖による犯罪集団の名前が出てくるとは。

私は椿と顔を見合わせて、後の事は警察に任せるしかなく、自分達がこれに首を突っ込める事ではないと判断した。

 

それから警察から聞かれたりする事も全て終わり帰ろうとすると、いつも椿に寄り添っている聞きなれた2人の声が聞こえてくる。

 

『おぉ、椿と綾ではないか。なるほど・・・亰嗟から怪しい札を買った人物を鴨川の方で捕らえたというのは、お主達の事か』

 

「あっ、白狐さん。黒狐さんまでいるんですね」

 

『なんだ椿、そのオマケのような言い方は。まぁ俺もこいつと一緒なのは不本意だが、任務の中身が中身だからな』

 

「ふーん・・・ところで、さっき前に椿のお爺さんの家で襲撃された時に助けてくれた雫さんと久しぶりに会ったよ」

 

不貞腐れている黒狐さんを尻目に、私は白狐さんにも雫と会った事を話す。その名前を聞いて彼は「あぁ、そういえばそんな人居たな」といった顔で思い出した様子を見せた。

 

『あの女か、綾よ。其奴は此処に来た目的とか、何か言っておったのか?』

 

「あの人は"妖怪リサーチ"って仕事をしていて、今回も妖怪関係だと思って調査しに来てたんだって。それで私達に今後の事も考えてだと思うけど、SNSの連絡先をくれたんだよ」

 

『ふむ・・・そいつは我らの亰嗟を調べる任務にも協力してもらえるのか?』

 

「それはちょっと分からないかな。雫さん、なんか忙しそうな様子だったし・・・でも、悪い人じゃないと思うよ」

 

そう白狐さんは私に質問しつつも、サラッと椿の頭を撫でている黒狐さんに向けてギロリとした目を向けている。なんというか、頭と身体がキレイなぐらいに分かれているな。これは2人が後で大変そうだぞ、椿・・・私も出来るだけ守れるよう努力するけど。

 

ひとまず今度は私が狐2人に詳しい話を聞くと、亰嗟は様々なヤバい札を多種多様な人に売っているようで、特に取引相手として多いのがヤのつく職業な組織の人間なのだという。狐2人は彼らについて調べている内に亰嗟の存在へ辿り着いたのだが、残念な事に組織の方も簡単に人員を切り捨てる為にハッキリとした事は解っていないそうだ。

 

しかし、以前居酒屋を手伝っていた際に襲撃してきた連中は亰嗟の者であると判明したのだとか。あの時に居た3人組を襲ったのも、亰嗟との取引を断った事で向こうが自分達の詳細が明らかになる前に口封じをしていたらしい。

 

――とはいえ、捕まえた連中も下っ端も下っ端で、亰嗟については本当に名前だけしか知らないような鉄砲玉の扱いだったようだ。

 

これでは向こうの正体に辿り着くのは何時になるのやら・・・

 

『だがしかし、居酒屋の店長の珠恵から3人組と話した内容を教えてくれてな。そいつらが札を売る時の謳い文句に"滅幻宗"の名前が出てきたらしい』

 

「えっ!?」

 

「なんだって!?」

 

白狐さんの言葉に私と椿は驚きの声をあげる。

 

「まさか、その札は・・・」

 

「滅幻宗は、亰嗟から・・・?」

 

『綾と椿も同じ考えに至ったか。しかし、亰嗟の奴らが滅幻宗に札を売りつけているとはな』

 

そうなると湯口先輩が騙されているのは、やはり間違いない。いや、それ以上に滅幻宗の人間も皆騙されているのかもしれないだろう。あいつらが使ってきた札から椿達妖怪と同じ妖気を感じた理由も、これでようやくハッキリした。

 

『全ての闇の裏に、亰嗟有りじゃな・・・』

 

「そいつらの目的は何なの?」

 

「そうだよ!一体亰嗟は何の理由で人間にそんなヤバい物を売りつけたりしているんだ!?」

 

『落ち着け、椿に綾。今、俺達はそれを調べているんだ』

 

「あぁ、そっか・・・ごめん、黒狐さん」

 

つい慌てて頭に血が登ってしまった。

 

確かに亰嗟の目的が解ってさえいれば、より大きな行動をセンターの方で起こしているはずだ。

 

そして一通り話を聞いたが、やはりというか今回の事件の犯人からも何の情報も得られそうにない為、再び狐2人は捜査に戻るのだとか。ついでに今日の帰りも遅くなる、と椿に本当の嫁へ言っているような雰囲気で話してきた。

 

・・・いつもの椿なら、ここでホッと胸を撫で下ろしているはずなのだが、何故か今回は何処か面白くなさそうな表情をしている。彼女が狐2人に恋心を抱き始めたからなのだろうか、あの2人が少し羨ましく感じた。

 

すると黒狐さんは私達の後ろで呆然としている楓に気づいて、覗き込むようにして彼女へ話しかける。

 

『ところで。その狸の小娘は、まだ椿と綾に引っ付いているのか』

 

「あっ、はい!姉さん達は自分の憧れなんで!」

 

「「あ、憧れ・・・」」

 

『2人とも、感動で打ち震えている場合ではないぞ。いい加減に何とかしないと、お主らの任務にも支障が出る』

 

「う〜ん・・・確かに」

 

「はい、白狐さんの言う通りですよね」

 

そういえば忘れかけていた。椿の祖父からも言われていたというのに、つい慕われる事が嬉しくて説得の事が頭から抜けてしまっていたよ。

 

だが、楓は当然の如く自分の意見を曲げない。

 

「ぬぬ、自分は帰らないっすよ!この身も心も、もう姉さん達のものなんですから!」

 

「楓ちゃん!使う場面が間違ってる!」

 

「変な誤解を招く言い方するな楓ぇぇえ!?」

 

やだもうこの子、絶対意味間違えて使ってるよ〜!衝撃発言のせいで私も椿も恥ずかしくて顔が熱くなってしまうじゃんか!

 

もちろん狐2人はギョロリと鬼の形相で彼女を睨んだ。まぁ、たかが1日でそこまで関係が進む事はないのは分かっているのだろうが、私に加えて楓まで椿に張り付かれていては更に彼女へアプローチが出来なくてヤキモチを焼いてしまっているのだろう。

 

仕方なく私達はしゃがみこんで楓と目線を合わせて、今度こそ何故駄目なのかについて話をする。

 

「楓、さっきまでの事を真面目に見てたのか?」

 

「今回は何とかなったけれど、このまま楓ちゃんを連れて任務を続けていくとなると、綾ちゃんと2人でも君を守りきれるかどうか分からないんだ。僕達だって、まだライセンスを取得したばかりの初心者なんだよ」

 

「ぬ・・・しかし――」

 

それでも腑に落ちない楓に、私は心を鬼にして言い放った。

 

「あのな!正直な話、足手まといになってるんだよ!楓がもう少し戦えたりするんだったら話は別なんだ。それこそ頼れる仲間として一緒に戦いたいよ。今は・・・ハッキリ言って無理だ」

 

「・・・」

 

私の言葉に楓が押し黙る。

 

これは嘘ではない、本心からの言葉だ。

 

こうして誰かに怒鳴りつける事なんて、椿が学校でいじめられていた時は何度もあったというのに・・・どうして楓へそんな言葉を放った瞬間、私の心は壁に頭を打ち付けたように痛むのだろう。

 

途端に激しい自己嫌悪で吐きそうになるのを必死でこらえる。

 

「そう・・・す、よね。確かに、自分邪魔でしかないですね。だけど、あの狸オヤジの下にだけは・・・」

 

楓は私の言葉にショックを受けて目が泳ぐ。やはり、薄々ではあるが気がついていた様子だったらしい。

 

だが、そこへ椿も言葉を続ける。

 

「そもそもさ、婿養子の話も勘違いかもしれないでしょ?僕達の所に来る前にちゃんと話し合ったの?」

 

その質問に、楓は首を横に振った。それを見て椿は呆れた顔でため息をつき、更に話を続けた。

 

「楓ちゃん。君はちょっと、決めつけが過ぎるよ。どういう事なのかをちゃんとお父さんに聞いてからでも、遅くはなかったでしょ?」

 

「そ、そうっすけど・・・あの狸オヤジ、人の言う事を聞いてくれないし。それに姉さん達だって、父親と言い合う事もあるでしょう?」

 

しまった、すっかり忘れていた。

 

そういえば、まだ楓には私と椿の家庭事情についての話はしていなかった事を思い出した。私も椿も首を横に振ってから楓の質問に答える。

 

「ごめんね、楓ちゃん。僕は今両親は居ないし、居た時の記憶も封じられているから・・・家族との思い出も、今はないんだよ」

 

「私も物心がついた時から、血の繋がっていないオジサンが親の代わりだったんだけど・・・楓みたく話を詳しく聞かずに家出なんてした事すらないからね。本当の両親については、私を育ててくれたオジサンでも全く分からないんだよ」

 

椿と私の話を聞いた楓が目を見開いて絶句する。

そして、聞いてはいけない事を聞いてしまったのかと思ったらしく、そのまま顔を俯かせてしまった。

 

「楓ちゃん、僕と綾ちゃんなら大丈夫だよ。別に辛いとかはないからね。そりゃ寂しく思う時だってあるけれども、綾ちゃんやおじいちゃんの家に居る妖怪さん達が放っとかないからね。それに、僕の両親も何処かで生きているかもしれないし・・・って思うんだ」

 

「私も椿と同じように、そんなもんだよ。たとえ親が居ないからって一々気にしていたら、毎日を過ごす事すら嫌になってきちゃうからさ。だから何時かは私も両親に会えるって信じて、前だけを向いて生きていこうと決めてるんだよ、楓」

 

すると楓はバッと顔を上げ、先程までの尊敬の眼差しから何かを決心したような、しっかりとした眼差しを私達に向けてきた。

 

「椿姉さん、綾姉さん・・・自分は甘かったっすね。辛い事から逃げるのは、くノ一ではないっす。姉さん達のように苦しい事を乗り越えてこそ、立派なくノ一になれるんっすよね!」

 

なんだか楓がよく分からない納得の仕方をしてしまったようだが、私達の気持ちは十分に伝わったのだという事だけはハッキリと理解出来た。

 

「あ、えっと・・・まぁ、そうだな。とりあえず、まずは楓のお父さんとちゃんと話をする所からだな」

 

「そうっすね、綾姉さん!あの狸オヤジから逃げるんじゃなく、しっかり説得して今度こそ2人の弟子になるっす!」

 

「えっ・・・!いや、ちょっ――」

 

「椿姉さんに綾姉さん!ちゃんと許可を取ってからまた来ます〜!それまではサヨナラっす!!」

 

椿が慌てて止めようとするのも聞かずに楓は颯爽と駆け出していってしまった。なんというか・・・あの子の一喜一憂っぷりは、まるで台風一過みたいだ。

 

『2人とも、尊敬される事は良い事だ。あれならば、部下として置いておくのも悪くないのではないか?もちろん、しっかりと戦えるようになってからだがな』

 

「部下って、白狐さんも・・・言い方ってものがあるでしょうに」

 

「う〜ん・・・おじいちゃんに連絡してもらって、そういう条件を付けさせようかな?」

 

本当に、ああいう子はどうしてか心に残りやすい。楓に負けず、これから私達も頑張っていかないと・・・ね。

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