私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

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第拾参話 話し合えるようになれると

 

――ミーン、ミーンと蝉が鳴く。

 

気がつけば既に夏が到来しクソ暑いはずの日々の中、ようやく待ちに待った夏休み寸前で今日は終業式・・・なのだが。

 

「ぶぇっくしょん!あばばば・・・さっっぶ!!」

 

「な、なんで真冬みたいな寒さなんですか〜!」

 

椿と共に布団で丸まって互いに身体をくっつけて寒さを和らげようとするが、布団が夏用で薄いせいか全然暖まっている感覚がしない。

 

今朝から何故かこんな氷点下の寒さで目が覚め、ずっと冷凍庫に閉じ込められたかのような状況なのだ。ど、どういう事なんだってばよ・・・

 

今回ばかりは、椿に対する狐2人の密着も許して私も彼らの尻尾へ抱きついている。

 

『つ、椿よ・・・も、もももっと引っ付け、寒かろう』

 

『いやいや、白狐よりも黒い毛の俺の方が太陽の熱を取り込みやすいから・・・って、綾じゃない!』

 

「だだだって、寒いんだもののの・・・」

 

そう言いつつも、私はふと窓から差し込む光が強いのを見つける。椿にもそれを伝え、狐2人に引っ付いてもらいながら窓の方を確かめると、窓から夏のモワモワとした熱気が寒かった部屋に入ってきた。

 

「なんか妙だな。なんで外は普通に夏なんだ?」

 

「ねぇ、これってもしかして・・・」

 

「椿、ひょっとしてこれ家の中だけが冷えているって事なの?一体何が――」

 

すると、夏の暑さで部屋の寒さが打ち消されプラマイゼロとなった白狐さんがため息をついた。

 

『やれやれ、また奴か。悩み事がある度に、家の中を冷凍庫にしおってからに』

 

「奴?こんな事が毎回あるって、それが出来る人はまさか・・・」

 

私が椿の祖父の家に住まう妖怪で知っている"冷やす能力"を持っているのは2人だけだ。そのどちらかが何らかの理由で悩んで、こうして家中が冷える程の力を起こしてしまっているのだろうか。

 

「椿ちゃ〜ん、綾ちゃ〜ん!おっはよう!今日はちょっと冷えるね!」

 

「ど、どこがだぁ!?」

 

「ちょっとじゃないよ!凄く寒い!」

 

こんな寒さの中でも里子はいつも通りに・・・どころか普段よりもハイテンションな様子で部屋へ起こしにやって来た。

 

「そんなにかな?でもこんな日にこそ、走り回ってもバテないし丁度いいよね!それじゃあ、朝ごはんは温かいの用意するね!」

 

そのままステテテー!と里子は部屋を後にしていった。

 

「な、なんか元気だったね里子ちゃん・・・」

 

「アレか、"雪やこんこんあられやこんこん"な歌の犬かっての。じゃあ、コタツで丸くなってる猫は――」

 

そんなバカみたいな話と思っていると、隣から美亜と里子が騒ぐ声が聞こえてくる。

 

「ほら美亜ちゃん!早く布団から出てよ!」

 

「イヤよ!寒すぎるわよ!」

 

まぁ、そうだろうなとは思ってた。

 

私が苦笑いを浮かべる横で、椿はため息をついて事態の解決へ乗り出そうとしていた。

 

「はぁ・・・とにかくその妖怪さんの悩みを解決しないと、この寒さが続くんだよね?」

 

『そうじゃな・・・』

 

「それって白狐さん、どっちの雪女さんなんだろう?」

 

『歳がいってる方じゃ』

 

「あー、うん。そっちですか・・・」

 

この家に住んでいる雪女さんは2人居る。

 

1人は私と椿が初めて此処へやって来た時に元気な挨拶をしてくれた、雪女の幼体である"氷魚(ひお)"という子だ。ところでその名前は確か鮎の幼魚の名前なはずなのだが、本人はあまり気にしている様子はない。

 

そして白狐さんが示しているのは、もう1人の雪女さんの方でなんと100年も生きているというベテラン雪女かつ里子達の上司でもある給仕係長の"氷雨(ひさめ)"さんの事だ。立場的な問題からなのかは判らないが、どうして皆強く言えないのだろう。・・・十中八九、言うとその人は更に凹んで寒くなるからなのは間違いないが。

 

私と椿はタンスからなるべく厚手の長袖などを引っ張り出してきて、モコモコに着込んだ状態で氷雨さんを探すべく1階へ降りる。

 

すると、そこで丁度彼女と出くわした。

 

「あっ、いた!氷雨さん!」

 

「すいません!ちょっと良いですか!」

 

氷雨さんは毎度100年生きているとは思えない若い見た目で、白いロングヘアーを1つに束ね白い給仕服を纏って憂鬱そうな顔をしている。とても整って凛とした彼女の顔つきは、同性である私でも思わず見とれてしまいそうに美しく感じた。

 

「あら・・・椿ちゃんに綾ちゃん、おはよう。今、里子に朝ごはんを用意させていますからね・・・はぁ」

 

「「う、寒っ!」」

 

氷雨さんが大きくため息をつくのと同時に、彼女の妖気も冷気として家中を冷やす。ここまで寒くなるなんて・・・彼女は一体今日何回ため息をついていたんだろうか?

 

そこに白狐さんも文句を言う為に現れた。

 

『こりゃ、氷雨よ。何か悩みがあるんだろう!我らが困った事になるんだ、お前さんは悩みを抱え込むなと常に言っているだろう!』

 

「あら、ごめんなさい白狐さん・・・だけどこれは私達の問題ですから、どうしても私がと・・・ふぅ」

 

そう言って氷雨さんはまたため息をつく。悩んでいる本人がこんな調子のままでは、悩みが解決する以前にこっちが凍え死んでしまいそうだ。

 

しかし、この前狐2人から聞いた話だと雪女の人は怒らせた方が冷やす力がヤバくなるようで、2人も昔に癇癪を起こした氷雨さんに氷像へされてしまったトラウマがあって強く言えないのだとか。2人は妖怪だったから良かったが、これでは人間である私は強く意見出来る訳がない。死にたくないんだもの。

 

すると、氷雨さんはハッとした様子で私と椿を見た。

 

「あっ、そうだわ。椿ちゃんと綾ちゃんになら頼めるかしら」

 

「うぅ・・・また僕達ですか。はい、別に大丈夫ですよ」

 

「あばば・・・どんな事で悩んでいるのか、私達に出来る事があれば何でもやりますよ」

 

なんであれ、氷雨さんがこうして悩み事を解決させてもらえるように頼んできてくれた事は不幸中の幸いだ。このままでは私どころか他の妖怪さん達まで凍死しかねないし、外に出たっきりになるというのも根本的な解決にはならないと思っていたからだ。

 

「えぇ、ありがとう2人とも。実はね・・・娘の事なのよ」

 

「娘?氷雨さんって、子供が居たのですか?」

 

「そうよ。でも、相手は一般の男性だから、その子は半妖なのよ」

 

「なるほど・・・じゃあ、その娘さんが何かあったって事なんですか」

 

「その子、2人と同じ学校に通わせているのだけどもね、友達が1人も居なくて何時も独りなの。それに最近は母親である私とも全く口を聞いてくれなくなって・・・まるで何かあったように思い悩んでいる様子なのよ」

 

「そうなんですか・・・ってすると、僕達は何をすれば良いんでしょうか?」

 

「出来たら2人にはその子と友達になってもらって、色々と悩みを聞いてあげて欲しいの」

 

「それを氷雨さんに教えるの?う〜ん・・・でも思春期の子なんだから、自分の気持ちを親には知られたくないはずでしょうし、教えたり出来ないかもしれませんよ」

 

「あっ!綾ちゃんのバカ!」

 

私の不用意な言葉で氷雨さんは「それもそうだった」と落ち込んだ表情で深くため息をついてしまう。や、やらかした・・・

 

「すすすすいません氷雨さん!頑張りますから!教えられる範囲の中で出来るだけ頑張ります!!」

 

「ぼ、僕も可能な限り教えますから・・・!」

 

「本当に?ありがとう〜2人とも!」

 

氷雨さんが私達の手をとって喜びの笑顔を見せる。もちろん雪女なのでその手は氷を素手で触っているくらいに冷たいです、はい。

 

話から想定するに、氷雨さんの娘さんとやらはきっと反抗期なので難しいとは思うのだが、寒いままというのも厳しいので何とかするしかないね。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

そうして一旦それぞれの身支度を整える為に椿と離れて廊下を歩いていると、美亜が自身の部屋の戸を開けて私に声をかけてきた。

 

「あ、ちょっと良いかしら綾?」

 

「うぅ、寒い・・・ん?美亜、どうしたのさ?」

 

「実は少しあなたに頼みたい事があってね・・・。もし見かけたらで良いんだけど、私の妹の美弥子と話をして私が無事である事を伝えて欲しいの」

 

美亜から自身の家族だった人物に対して心配そうにしている言葉から、私はかつて彼女が絶縁する切っ掛けとなった事件の際に私へ「守れなくて、ごめんなさい」と謝りに来ていた子を思い出す。

 

「その子って・・・あの金髪でオドオドしてた方の?」

 

「えぇ、そうよ。あの子、私なんかよりもよっぽど素質はあるクセして、いつも誰かに気を遣っているから心配でならないのよ。頼めるかしら?」

 

「う〜ん・・・分かった。もし会ったら、美亜の事はちゃんと伝えておくよ」

 

「ありがとう、綾。今私があの子に会ったりなんかしたら、きっと向こうの方から何か言ってきて面倒な事になりそうだったから助かるわ」

 

そう言って、寒さから再び部屋に篭ろうとする美亜の背中へ私は去り際に一言だけ投げかけた。

 

「・・・美亜も、心配してくれている家族が居るんだ。何時か普通に話し合えるようになれると良いね」

 

「そうね。あの子の事は本当に・・・私も家族だと思えるわ」

 

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