私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――学校にて
「ふ〜ん。それで、その雪女のお母さんのお願いでその子と会いたいのね」
「話が早くて助かるよ、カナ。何とかなりそう?」
「ごめんね、カナちゃん。早く何とかしないと、その内氷漬けにされそうなので」
夏休み前の終業式も終わって、教室へ戻る途中の廊下でカナに相談を持ちかける私達。学校の半妖の事を知ってから色々あったとはいえ、未だに此処の半妖の人については知らない為どうしてもカナに頼らざるを得ない。
「う〜ん・・・半妖の子達は私も含めて他の人とは距離を置いているからね、色々と悩みもあるよ。でも、その子はまだ幸せな方かもしれないね」
カナの顔が少し寂しそうなものへ変わる。それを見た椿は、実は人間から嫌われているのではと心配そうに声をかけた。
「カナちゃん、大丈夫?やっぱり、半妖の人達って――」
「あっ、ごめんごめん!大丈夫、大丈夫だから。ほら、あそこだよ。あの子が雪女の半妖、"如月 雪(きさらぎ ゆき)"。私達と同じ2年生だけど、クラスが違うから分からなかった?」
「あー・・・まだちょっと、ね」
カナが自身の事についてはぐらかすのは気になるが、今は氷雨さんから頼まれた事を何とかするのが優先だ。カナの事情については、後々彼女が大丈夫な時に聞いてみるとしよう。
カナが指さす教室の方を見やると、1人だけそのクラスの中で浮いている人物を見つける。
氷雨さんと似た顔立ちをしていて新雪のように肌も白いが、髪はショートヘアにしていて更には黒く染めているようだ。髪の襟足が少し白くなっているのを見るに、校則に引っかかると思っているらしい。
「あの人、真っ白な髪だったら校則に引っかかると思っているのかな?でもカナちゃんは毛先が赤いのに平気だよね?」
「うん、私の場合はね。ちょっと校長先生に頼んで、特例にしてもらっているの」
椿もそれに気づいたのか、同じく髪の色が変わっているカナに質問する。なるほど、それなら納得がいく話ではあるが・・・流石に半妖の人皆がカナのようにはいかないだろうと思うけれど。
「ほら、私の事は良いから。あの子行っちゃうよ?」
自身の事になりそうだと直感でもしたのだろうか、カナは私達の背中を押して頭の動きで催促する。何なのだろうか、彼女のこの少し異様とまでに感じられる程の過去に触れられたくない雰囲気は・・・。
それよりも今は目の前の子に話しかけないといけない訳なのだが。
「えっと、ちょっと良いかな如月・・・さん」
「あ、あの・・・体育館の時は、どうもありがとう。お礼を中々言えなかったから、見かけてつい・・・」
「そうそう!」
椿の言う通り、実は彼女はあの時に半妖の人達の中で見かけた事があったのだ。椿が上手く話を切り出してくれたおかげで、かなり話しやすくなるはず。
「あぁ、別に・・・皆に引きずられただけ」
しかし雪は私達に視線をチラと向けただけで、すぐにそこから立ち去って行ってしまった。
参ったな・・・こういうタイプの人はしつこく構うのは逆効果だったのだろうか。とりあえず、すぐに諦める訳にもいかないので何とか引き止められないか頑張ってみる。
「あっ、ちょっと待ってよ。私達あまりこの学校の半妖の人について知らないから、校長先生から守って欲しいって約束を守る為にも少しは知っておかないとって・・・」
それでも雪は私の言葉に耳を貸す事なく歩いていく。すると椿が予め考えていたのか、別な話題を持ち出してきた。
「あのさ・・・この後カナちゃんと3人で駅前の美味しいかき氷屋さんに行くんだけど、如月さんも一緒に来ない?僕達、如月さんと色々お話したいんだけど」
やはりというか、それにも雪は反応せずスタスタと無視して歩いて行ってしまった。
「椿・・・流石に食べ物で釣るのは無理があったって」
「うるさいです、綾ちゃん。これ、本当はカナちゃんが考案した策だったんだから・・・。僕だって、今考えたら綾ちゃんぐらいしか引っかからないって思っているよ・・・」
「いやいや、私でもそんなのに釣られ――るな、うん。とはいえ、本当に参ったなぁ」
椿がため息をつき、私は苦笑いしながらポリポリと頭をかいた。
━━━━━━━━━━━━━━━
――かき氷屋にて
「まぁ、あの子は難しいわ・・・でも大丈夫よ。ゆっくりといきましょう」
「うぅ、冷たい・・・」
「流石にクール過ぎるね・・・氷のようにサラッとした人だよ・・・」
雪の態度の冷たさに私と椿はため息をつく。
結局、あの後どうしようもなかったので私達はカナと3人で駅前のかき氷屋に行って、積もりたての雪のようにフワフワな方のかき氷を食べていた。
私はあのキーンと頭に響いてくる方のオーソドックスなかき氷も好きなのだが、こういったふんわりとした舌触りのかき氷も良いものだ。
「うーん・・・でもさ、カナちゃんだって僕達に昔の事を話してくれないじゃん」
「うっ、それは・・・」
「さっきからずっとカナがそういう話になりそうな時にはぐらかすから、いい加減私達も気になるんだよ。椿の親友だって言ってくれるんなら、椿と私もあなたの事を知っておきたいからさ、だから今すぐで無くても良いから教えて欲しいの」
私の言葉に合わせるようにして、椿もカナへ上目遣いな視線で訴える。
「うぅ、ちょっと・・・2人とも。それは、結構卑怯だよ」
「これでも、私だってカナの事は心配しているんだからね?だから、お願い」
「ほら、早く白状してください。そうしないと、もっと近寄るよ」
そう言ってジリジリとにじり寄ってくる私達に観念したのか、カナはため息をついて額に手を当てた。
「嫌われたくないの・・・」
「えっ?」
「だから・・・昔の事を話して、そのせいで2人に嫌われたくないの」
正直な話をすると、カナの心に何か黒い影のようなものがある事は、最初に覚から力を貸し与えられた時に薄々ながら感じていた。
「うっ、椿ちゃんもさ・・・そうやって、目で訴えないでくれるかな?可愛いから」
それでもジーッと見つめてくる椿にカナも困った顔になる。
「もう、しょうがないなぁ・・・話すつもりはあったんだけどね。でも、心の準備がいるの・・・だから、もうちょっとだけ時間頂戴」
「んっ、分かったよカナちゃん」
「ごめん、カナ。なんか無理やり聞き出そうとしちゃって」
これ以上は無理強いしてもカナ自身の心に負担がかかってしまいそうだと判断して、私達は彼女に謝り質問を中断した。とはいえ、本人が話してくれる気があるのなら、気になっている答えはその時に聞けるのかもしれない。
そして私達は気まずくなってしまった空気を元に戻そうと、かき氷の方へ話題を変える為に視線を移すが――
「やっべ、時間そんなに経ってたっけ」
「・・・」
「あっ、ごめん2人とも。ちょっと溶けちゃったね」
「どうしようか・・・って、椿?」
「そうだ、良い事思いついたよ綾ちゃん」
すると椿は自身の持っているかき氷と私やカナのかき氷を確認し、それぞれに自身のかき氷を放り込んできた。
「おわぁ!?何のつもりなの、椿!」
「あ〜!何してんの!?椿ちゃん!」
椿の練乳入り宇治抹茶なかき氷が、私のメロンシロップのかき氷やカナのイチゴシロップのかき氷と混ざり合う。これは・・・まさか、小さい時に私もよくオジサンと家でやっていたアレ?
「新しい味に挑戦!ってやつだよ!」
「なるほどね!バイキングで色んな飲み物を混ぜるみたく、かき氷に複数の味を混ぜてみようって事!面白そうじゃん!」
「新しい味というか、凄い味になってそうなんだけど!?」
確かに見た目だけでいえばモザイク処理がかけられるのではないかという程悲惨だが、それで味まで悪くなるとは限らないはずだ。
「んっ・・・一緒に食べよう、2人とも」
「もう、尻尾を嬉しそうに振っちゃって。それが目的で私と綾さんのに入れたの?」
「ま、椿の事なんだから大目に見てあげてよ。原因の妖怪を捕まえてイジメが解決するまでは、私くらいしか友達が居なかったんだし」
カナにそう言って笑いかけ、さぁ食べようかと思った瞬間に意外な人物から声をかけられた。
「何、やってんの?・・・かき氷に失礼」
「あっ・・・如月さん!?」
驚いて振り返ると、なんとそこには雪が此方を見ているのであった。