私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜 作:SimonRIO
――その日の夜。
雪からの頼み事を引き受けた私達は学校の校門前へとやって来た。
ところで今回、椿が家で着ているミニスカートの巫女服で此処に来ているのには理由がある。
実は少し前にクラスの皆から家でどんな姿をして暮らしているのかと聞かれたのだが、椿が面倒臭がってしまったのか普通にその格好の事を答えてしまった結果、"肝試しの時には、その格好で来てくれ"と男子達が涙ながらに懇願してきたからなのだ。椿にベタベタなあの狐2人並みにひどすぎるだろ、このクラスの男子共は・・・。
ちなみに私はというと、特に知られてマズい格好をしている訳でもないので正直に答えたのにも関わらず、男子達からは何の頼みも無しである。問いただしても"まな板なゴリラのおしゃれを見てもな〜"と返してきたので、脳天にチョップを見舞ってやった。おい、なんだこの扱いの差は。
まぁ詰まる所、雪の頼み事というのは彼女のクラスと私達のクラスの人の一部が"夏休み突入なので「肝試し」をしよう"という話なのだ。それも、とびきりに危ない場所というフラグの乱立ぶり。
勿論厄介極まりない話であるものの、カナと雪はクラスメイトと距離を取っていたのもあり、更には半妖という正体がバレたくない為に口頭でしか注意をするしか出来なかったらしい。
バレても体育館の時のようにまた一部の記憶を消せば良いと思われるかもしれないが、どうやらあまりやり過ぎると現実と記憶の齟齬が発生して障害が残ってしまうのだとか。まるで何処かで聞いた都市伝説の話みたいで恐ろしい。
そして肝試しをする場所へ向かう途中で、またもや最近馴れ馴れしい亜里砂が椿に寄り添ってきた。彼女の格好は今どきの女子らしい、男受けを狙ったような露出の高い服装だ。グレーのポロシャツにややダボッとしたジーンズを着てくる私とは大違いである。
――まぁ、何にせよミニスカな巫女さん姿の椿に男子共は視線が釘付けのようだが。
「でもさ、椿ちゃんと綾ちゃんが一緒に来てくれるなんて嬉しいよ。何せ椿ちゃんは妖狐で、綾ちゃんは使い魔が居て変身まで出来るんだもんね!百人力を通り越して千人力だよ!」
「煽てても何も出ないからね、亜里砂。ったく、どうして人っていうのは怖い物に自分から近づきたがるのやら・・・」
「そりゃあ、スリルやら雰囲気やらを味わって涼しくなりたいからに決まってるじゃんね〜!」
「はぁ・・・怖いのなんて、心霊番組とか怪談話で十分なのになぁ」
亜里砂の何処かフワフワした様子にため息をついていると、ネックレスの形で付けていた勾玉から白狐さんの声が聞こえてくる。
『椿に綾よ。良いか、今回は一般人もいる。もし何かあった場合、戦うよりも逃げる事を優先するんじゃ』
「最初からそのつもりだよ、私と椿は」
どうして狐2人の勾玉を持ってきているのか。
それは今回の肝試しについて狐2人へ話した際、彼らは血相を変えて"自分達も見えない所でフォローするから連れて行け"と言ってきたからなのだ。
そして更に、人手が多い方が良いという事で美亜やカナ、そして雪までもが私達のフォローへ回る事になったのである。その時に雪は少し申し訳なさそうな顔を浮かべていたが、今回ばかりは雪は知らなかっただけで非は無いので、私と椿で「慣れた事だから」と彼女を宥めた。
ああ・・・絶対嫌な予感しかしない。
「流石に全員は無理だったけど、10人も集まれば十分よね〜ふふ」
亜里砂がウッキウキなのは良いが、その10人の男女比率というのも私と椿、そして亜里砂の3人だけで他は男子共であるのが辛い所だ。・・・まぁ、亜里砂は同性から好かれるタイプではないので他に来ないのも仕方ないとは思うが。
お陰で歩いている途中、通行人からは何事かといった様子でチラチラと視線が集まってしまう。
念の為に、と未成年だけでの行動にしない為に亜里砂のクラスの担任も一緒に来てくれてはいるものの、どうも彼女に妙な視線を向けているので怪しい。
「あの担任、若干ロリコンなのよね。しかも私にメロメロで、何でも言う事を聞いてくれるのよ」
「と、とんでもない奴だな・・・」
「あの、亜里砂ちゃん。一応大人だから気を付けた方が良いよ?あんまり調子に乗ると、勘違いされるからね」
「大丈夫よ。その時は2人の力で痛めつけてね♪」
やはりというか、どうも亜里砂は底が読めない奴だ。彼女のニヤニヤとしたイタズラな笑みは、私達2人に不信感を募らせるには十分だった。
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――稲荷山近くの小さい山。麓のとある一軒家の廃墟前にて
私と椿は件の家を見て、周辺に家が無い異様さから一目でヤバいと認識出来た。まるで住宅街から村八分にされているかのように建っているそれは、木造である事も相まって夏の生温い風が吹く度キィキィと軋む音を立てている。
「う〜わ、これは1人じゃ来られないわね」
そう呟く亜里砂の言う通り、こんな所に1人で行けと言われたら幾らホラーに耐性がある私でも半泣きになって全力拒否をするだろう。しかも夏虫の鳴く声すら一切しないという嫌な演出のオマケ付きだ。
すると、亜里砂は担任の先生に寄りかかって上目遣いで甘えたような声を出した。
「ねぇ〜亜里砂怖いから、先生の傍に居ていい?それと・・・大人の男の人らしく、頼もしい姿も近くで見たいなぁ〜」
「分かった。良いかお前ら、団体行動を乱すなよ。常に俺の後に着いて来るように」
なんというか、男って生き物は単純だ。
まさか担任までもが肝試しへ乗り気になるなんて、生徒を守る立場としては私からしたらどうなのかと思う。
そして私は、ふと少し前に熱帯夜で暑くて眠れない時に椿と怪談話をして――この家に纏わる話を聞いていた事を思い出した。
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「・・・戦後に住んでいた父親が戦地のトラウマで家族を皆殺しにしたって?」
既に眠っている狐2人に挟まれた状態で、横のまま首を傾げる私に椿がそうなってしまった理由を答える。
「うん。あの家、昭和の始めに建てられたらしいんだけど、最初に住んでた家族のお父さんが戦争で戦った時の事を毎晩思い出してはうなされていたんだって。授業でも、実際に戦地へ行った人からそういう話をされた事を覚えてない?」
「うーん・・・さっぱり覚えてない。多分、居眠りしてたかもしれないね」
「もう、綾ちゃんったら。それで、家族を殺してしまったお父さんはその後に自分も首を吊って自殺してしまったんだけど、それからというものは家に住んだ家族のお父さんは人が変わったように暴力的になっちゃうようになったんだって」
目をギョッとさせて私は椿に質問した。
「それで、まさかその人達も・・・?」
「そんな心配しなくても大丈夫だよ、綾ちゃん。その人達が異変に耐えかねて引っ越すと元に戻っているって話らしいから」
「なるほどね、安心した。おかげで少し涼しくなったような気がするよ・・・」
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「有名な話よね〜ただの思い込みで、そんな風になっちゃうだけなのにね〜」
「うん・・・だけどね、亜里砂ちゃん。この家の玄関だったと思われる部分、コンクリートで塗り固められてますよ?しかも、窓も全部塗り固められていて完全に中へ入れないようにされてるし」
亜里砂はそんな有名な怪談話にため息をつきながら、担任や男子共と出入りが出来ないようにされている家へ入る方法を探す。
確か・・・思い出した椿の話では、この家で起こっている怪奇現象の原因は最初に住んでいた家族の父親が、自ら家族を手にかけてしまったショックで取り憑いているのではないかと言い伝えられているそうだ。
実際、寺の坊さんが除霊を何度も失敗し、家を取り壊そうとする毎に不可思議な事故やら事件やらで関係者が亡くなっている。
――では、こうしてコンクリートで頑丈に封鎖してしまう理由は何なのだろうか?私は単にその父親の怨霊という話だけにしては、やけに厳重だと思うのだ。狐2人が血相を変えてフォローすると言い出したのも、妙に気になる。
とにかく、その家の2階から感じ取る事が出来たのは
――幽霊ではないという事だけだ。
妖怪とも違う、感じた事のないような気持ち悪い空気。例え狐2人や半妖の皆がついていても、そんなヤバい雰囲気を出している奴相手に私と椿で何とか出来るのだろうか。
椿が亜里砂に引き返すよう提案する。
「ねぇ、亜里砂ちゃん・・・此処へ来るまでに何回も暗い道を通ったし、怖い雰囲気も味わったし肝試しにしては十分だと思うよ?もう帰ろう?例え担任の先生が居ても、未成年の僕達がこんな夜中に彷徨いていたら駄目でしょ?」
「私も、椿に1票だよ。だいたい、こんな場所に無理やり立ち入って怪我なんてしたら、それこそ警察や病院の人に説明出来ないって」
しかし、そんな私達の言葉を亜里砂は聞こうとはしない。それどころか、逆に私達を挑発するように睨みつけてくる。
「ふ〜ん、2人とも怖いんだ?」
「悪いけど、そういう挑発の言葉は効かないよ」
「お願い亜里砂ちゃん、僕達の言う事を聞いて。此処は本当に駄目だから・・・!」
彼女達は何としてでも家の中に入るつもりらしい。
亜里砂達は知らないかもしれないが、狐2人に肝試しの話をした時――この家が建っている場所は"神域"と呼ばれる、土地の神様の所有地みたいな場所にある事を教えられたのだ。
恐らく神様からの許可無く家を建て、そして土地にある"何か"を壊してしまったせいで、最初の家族の父親は死んでもなお家に魂を囚われてしまったのだと白狐さんから説明された。
そういう事から、ひょっとしたら私達だけでなく狐2人でも何も出来ないかもしれないと警告されているというのに・・・どうなっても知らないぞ!?