私、霊能力者になっちゃいました 〜≒僕、妖狐になっちゃいました〜   作:SimonRIO

99 / 390
第拾捌話 思い通りになんてさせない

 

「亜里砂ちゃん、此処は駄目だよ!先生にもそう言って、今すぐ帰ろう!」

 

「何かあってからじゃ、きっと大変な事になるって!おい!」

 

「え〜?そんなに?でも、2人が居るから大丈夫だよね?だって、妖狐と霊能力者なんでしょ?」

 

「それでも限界ってもんが――」

 

モフモフと椿の尻尾を触りながら、悪びれる様子すら無く嫌らしい笑みを浮かべる亜里砂に私が怒鳴りかけた瞬間――男子の1人が此方へ向かって何かを大声で呼びかけてきた。

 

「お〜い皆!外壁の一部が剥がれかけてて、そこから入れそうだ〜!!」

 

「マジですか・・・」

 

「勘弁してくれよ・・・」

 

椿と2人で深く肩を落としてため息をついた。

 

家の外壁も扉や窓のようにガッチリと補強されたりしているものだと思っていたのだが、こんな有様では肝心な所で手を抜いている工事でしかない。

 

「ふふ、大丈夫よ〜!何かあっても、2人が何とか――」

 

「だから、こちとら出来ないって言ってんだよ!」

 

「うん、綾ちゃんの言う通りだよ。此処は僕と綾ちゃんの力ではどうにも出来ないよ。僕達の仲間の妖怪達でも此処は無理だって言っているんだから、それくらい危険な場所なのを分かってよ!」

 

私達は亜里砂を何としてでも止めようとするが、彼女は呆れた顔をして私達に挑発を浴びせる。

 

「ふ〜ん・・・その程度なんだ。残念ね〜、あなた達はそんなに弱いんだ」

 

「は?」

 

一瞬、頭に血が登りかけた。

 

しかし、すぐに椿が私の手を引いて止めた事で、向こうがそうやって私達を引き込もうとしているのだと気づき、作りかけた拳から力を抜いた。

その後にさっき男子が叫んだ方向から木の板を外す音が聞こえて、男子共がワイワイしだす。

 

しまった、嵌められた・・・と思っていると、そこから家に入ろうとした男子共がまるでいきなり重い物を持たされたかのように足を踏ん張って立ち止まる。

 

「あ、あれ!?な、なんだこれ、身体が重・・・」

 

「う、ぐぐぐぐ!足が、地面に引っ付いているみたいだ!」

 

その光景に見覚えがある私と椿は、それがすぐに黒狐さんが妖術を発動し足止めしているのだと分かった。

 

『やれやれ、人間の好奇心という物は本当に恐ろしいものだな。この異様さと恐ろしい程の邪気が分からんのか』

 

しかし、勾玉から黒狐さんがそう言った途端に亜里砂は以前に何処かで見たような笑みを浮かべて指をパチリと鳴らし、それと同時に足が止まっていた男子共が黒狐さんの妖術から解放されてしまったのだ。

 

『な、何だと!?』

 

彼女は一体、何をしたのだろう・・・?

 

黒狐さんが狼狽えて叫ぶのを他所に考えていると、亜里砂と男子共が既にこじ開けた裏手から家の中へ入っていこうとしていた。

 

「皆!そこの2人がさっきの異変を何とかしてくれたから、もう大丈夫だよ!何かあっても、今みたく守ってくれるって!さっ、中に入って探検しよ!」

 

「ちょっ――!」

 

「くっ・・・待って!」

 

私と椿はすぐに中へ入って行く皆を止めるべく走り出すが、その目の前に亜里砂が通さないと言わんばかりに立ち塞がってくる。

 

「そこを退いて、亜里砂」

 

「だ〜め、邪魔しないで」

 

すると、椿が訝しげな顔をして亜里砂の目をジッと見る。私も先程黒狐さんの妖術が解除された際に亜里砂から感じた妖気が、妲己さんのものとほとんど同じであった事に眉をひそめた。

 

きっと椿も私と同じく亜里砂から感じた違和感に気づいたのだろう。

 

「亜里砂ちゃん、君の中から妖気を感じたよ。君は一体何者なの?」

 

「うふふふふ・・・」

 

椿が亜里砂に問いかけ、向こうが不敵な笑みを浮かべた瞬間――私達の後ろにフォローしようと隠れていた皆が姿を現して、私と椿同様に亜里砂を睨みつける。

 

『椿よ、お主の中の妲己は寝とるのか?』

 

「白狐さん、ちょっと待って。今呼んでみるから」

 

椿が同じ妖気であるならと心の中で妲己を呼んでいると、私達の隣に美亜が腕を組みながら前に出てきて話しかけてくる。

 

「椿に綾、これは有名な伝説として残ってるわ。あんた達も調べてたんじゃないの?それと綾、美弥子の事・・・とりあえず礼を言うわね」

 

「今それを言うの、美亜・・・。んで、その伝説ってどういう事なんだ?」

 

「えっ、あっ、ごめん美亜ちゃん。いっぱい色んなのを頭に詰め込み過ぎてて、えっと・・・」

 

どうやら皆は既に亜里砂の正体について、ある程度予想が付いている様子だった。そんな時にようやく妲己さんが椿の呼びかけに反応して、美亜の言葉に困惑する私達へ声をかけてきた。

 

【ふわぁ〜うるさいわね〜・・・あんたから呼ぶなんて珍し――と思ったら、あらあら・・・面白い事になってるわね〜!私の"片割れ"に会ってるなんて】

 

「なんだって?」

 

「思い出したよ、綾ちゃん。妲己さんの本来の姿は"白面金毛九尾の狐"って名前の妖狐で、古代の中国で悪さをしていた所を太公望という人に退治されて身体を3つに分けられた話を。そして、その1体は日本に来ていて"玉藻前"という名前で昔悪さをしていたんだ」

 

「そうなのか、椿?じゃあ、まさか・・・その残り2体っていうのは――」

 

【そっ、私達って事よ】

 

妲己の言葉に私と椿は絶句する。

 

担任と男子共はもう家の中へ入って行ってしまった上に、私達に立ち塞がっている亜里砂の正体が妲己さんと同じ"九尾の狐"である事まで判明したのは間違いなくマズい状況だろう。

担任が肝試しに対して乗り気になっていたのも、恐らくは彼女が妖術で誘惑をかけて操っていたからに違いない。

 

「大丈夫、2人とも?その妲己さんって妖狐から聞けた?」

 

「まぁね・・・ヤバい相手だって事はよく分かったかな」

 

「うん・・・僕もちょっと、この事態をどうしようかって考えてるよ」

 

黙っていた私達にカナが心配そうに声をかけてくれた。狐2人はというと椿の前で身構え、すぐにでも亜里砂に飛びかかっていきそうな気配だ。そして雪も表情を変えていないとはいえ、カナの隣で相手を睨むように見ている。

 

「ふふ、さ〜て。それじゃあ私も、そろそろあの家に入ろうかな〜」

 

だが亜里砂は、そんな私達の様子には興味ないと言わんばかりに背中を向けて家へ入って行こうとしていた。

 

「待って!君の目的は一体何なの!」

 

「亜里砂・・・お前、何をするつもりだ!?」

 

私達はこれ以上彼女の好きにさせる訳にはいかないと思い、声をかけて少しでも足を止めさせ時間を稼ごうとする。

 

「――探し物♪」

 

亜里砂は一切立ち止まる事なく、首だけ少し振り向かせて一言そう言って家の中に消えてしまった。すると、妲己さんがただ事ではないような、焦りのこもった声を上げる。

 

【マズいわね。椿に綾、アイツを止めなさい】

 

「妲己さん、どういう事?」

 

【アイツの目的は破壊された"殺生石"の復元。――つまり、倒された九尾の復活よ。そして私達3体を1つにする事で、元の完全な九尾に戻ろうとしているわ】

 

「マジでか・・・ん?ちょっと待て、妲己さん。それだと妲己さんにとってはマズいどころか、逆に美味い話なんじゃないのか?」

 

首を傾げてキョトンとする椿と、怪しむ私の訝しげな様子に妲己さんは大きくため息をついた。

 

【良い?完全なる"白面金毛九尾の狐"の復活はね、この世界の滅亡に直結するのよ。それに人格だって私が私じゃなくなるし、下手したら椿まで九尾の栄養源として取り込まれるわよ!なんせあんたは――とと、危ない危ない・・・危うく話しちゃう所だったわ。】

 

「おいおい、肝心な所は全部箝口令かよ。とにかく、妲己さんにとってもあまり良い話じゃないっていうのは理解出来た。・・・まだ信用はしてないけれどね」

 

【はぁ・・・話し過ぎたわ。もう眠気が・・・良い?何としても、アイツを止めるのよ!】

 

そう言って妲己さんは再び椿の中で眠りについた。他の人には聞こえない妲己さんの声と会話をしていた私と椿が喋らなくなった事で皆が心配そうな顔を向けてくる。

うーむ・・・向こうから話しかけてくる事もあるとはいえ、今後は椿とも相談して予め皆に言っておくのも考えなくては。

 

「ごめん、お待たせ皆。とりあえず、ここで妲己さんは限界らしいです。そしてあの子の目的は"白面金毛九尾の狐"の完全復活みたいです」

 

「言っているのが元々の張本人な存在だから、多分信憑性は高いと思うよ」

 

私達が妲己さんから伝え聞いた事を話すと、狐2人はそれに納得した様子を見せ、カナと雪は顔を真っ青にしていた。美亜だけは不思議そうに首を捻っているのが気になるが・・・。

 

『椿、綾。ひとまず、この家に入ってしまった者達の救出と、あの亜里砂という奴を捕まえんといかんぞ』

 

「そんな事、言われなくても分かってるよ白狐さん。あの家に住み着いてる変なのが悪さしてくる前に早いとこ何とかしないとね。少なくとも、亜里砂の思い通りになんてさせない」

 

ところで私が気になっていた美亜の方はというと、実は九尾の事以外はまるで理解出来ていなかったらしくカナから説明を受けてようやく状況を飲み込めたようだった。す、凄い所で間が抜けているな美亜は・・・。

 

だがしかし、土地の神を怒らせた事で"土地自体に"強力な祟り神がかけられてしまっている以上、今すぐに此処から脱出する手段は存在しない。

何故なら狐2人が祟りの除去を専門とする妖怪を手配してくれたが、すぐには到着出来ない上に祟りの性質で土地の外からしかフォローする事が出来ないからだ。

 

「ねぇ、白狐さん黒狐さん・・・これってさ、着いて来ただけで終わってました?」

 

『そのようじゃな』

 

『まぁ、安心しろ。センターの方で策は用意してあるだろう』

 

今思い出したのだが、椿はレイちゃんが最近霊魂だけではなく祟りのようなものまで多少は浄化出来る事を知って、今回その子を家に置いて来ている。

 

実は私達が祟り神に捕まってしまった時の事を想定してなのか、その場合にセンターから椿の祖父へと連絡が行き届きレイちゃんを向かわせる事になっているのだ。

 

・・・レイちゃんを連れて来た方が早かったような気も――してはいないが気にしたらレイちゃんを置いてきた椿が可哀想なので黙っておく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。