二作品に関わられ今年四月に旅立たれた藤原啓治さんを個人的に偲ばせていただきます。
2ヶ月かけたわりに中身は薄いかもしれませんが、お茶請けにでも楽しんでいただければさいわいです。
『おらは野原しんのすけ、かすかべに住んでる5歳児だぞ。春休みの日曜日、母ちゃんがひまとお友だちに会いに行ったから、おらは父ちゃんとおっきなショッピングモールへ遊びにいったぞ。』
『皆!声援ありがとーー!!』
ショッピングモール横広場の特設ステージでは子供たちに大人気のヒーローアクション仮面ショーが開かれておりその熱気は最高潮に達していた。春休み特別企画として主催されたショーに集まる子供たちの中、しんのすけは力の限り声を張り上げており、隣に座るひろしはコーヒー片手に満足そうに息子の笑顔に釣られて笑っていた。
「よかったなしんのすけ、アクション仮面は強いな。」
「おらたちの力でアクション仮面は勝ったんだぞ!」
「はっはっはっ、そうだな。父ちゃんも昔、仮面ライダーに声援送って握手してもらったっけ。」
ヒーローショーを楽しんだ2人はそんな風に語り合いながらショッピングモールへと入る。
「すごい人混みだな。しんのすけ、手を離すなよ。」
と言いつつ右隣にいるはずのしんのすけの手を取ろうとするひろしだがその手は宙を掴む。
「あれ?」
右下へ視線を下げると横にいたはずのしんのすけがいない。
「おい、しんのすけ?どこいった?しんのすけ?」
辺りをキョロキョロ見回し…
「あっ!」
「ねぇねぇお姉さん、パルメザンチーズ好き?」
「うーん、私はチーズ苦手かな。」
近くのテナントの販売員の美人お姉さんにお約束の質問してる姿を見つけ出した。
「こらっしんのすけ!お前またフラフラと。すいませんでした。」
「バイバーイ」
すぐに謝罪してしんのすけを抱えて立ち去るひろし。当人は抱えられながら販売員さんに手を振っていた。
「まったく、油断も隙もない!」
「父ちゃん、あのお姉さん美人だったね。」
「あのな、ナンパなんざ10年以上早いわ!誰に似たんだか。」
「たぶん母ちゃんは父ちゃんだって言うぞ。」
「うるさい!」
とりあえず今日はヒーローショーも目当てだがひろしはスポーツ用品店にゴルフ道具を見に行きたかったので案内板へと向かう。
「広いんだから迷ったりはぐれたりしたらえらいこった。」
ぶつぶつ言うひろしにしんのすけは告げる。
「父ちゃん、おらトイレ行きたいぞ。」
「え、トイレか、ええっと…あそこだ」
すぐにトイレマークの表示を見つけて連れていき入り口で降ろす。
「ここで待ってるからな、ちゃんと手を洗ってこいよ。」
「オッケー!時間かかったらゴメンだぞ。」
そう言うなりしんのすけはトイレへと入っていく。
「おっきいほうか…」
呟いて壁に背を預けるひろしだった。
大きいショッピングモールとあって明るく清潔感があるトイレ。小用に人は立っておらず悠々しんのすけは個室の前に立つ。
「お?」
しかしあいにく一番手前の個室は使用中の赤印が出ており隣へとスライドしていくが残る全ての扉が閉まっていた。
「ううーん…困ったぞ。」
早く済ませたい気もしてきた所で横に顔を向けると…
「あれ?」
入ってきた時に壁だと思ってた突き当たりの場所に扉があった。
「?」
不思議そうに扉を見上げるしんのすけ。その扉は綺麗なショッピングモールのトイレには少々不釣り合いな所々が薄汚れたものであった。
「ここもおトイレ?」
そう言って背伸びしてノブを回して開いてみると今では少し珍しくなった和式のトイレがあった。
「やっぱりトイレだぞ!」
天の助けとばかりに飛び込んで用を足すしんのすけ、キチンと少し質の悪いトイレットペーパーも使い事を終えた。
「ふぅースッキリしたぞ!」
身なりを調え扉を開く。しかし…
「お?」
不思議なことにそこは先ほどのショッピングモールの綺麗なトイレとは似ても似つかない暗いトイレ…と言うより日本語の便所と言うべきな空間だった。
「おかしいぞ~出る扉間違えたかな。」
しかし出入りする扉はひとつしかない。ともかく一旦個室内に戻り一通り確認してから再び扉を開くがやはり同じ暗い便所だ。入り口の軽くくすんだ鏡の前で背伸びをして手動の蛇口と個体石鹸で手を洗いつつ口走る。
「うーん…なんか変だぞ。」
洗い終えて外へ出るとやはりそこはひろしがいるはずのショッピングモールではなかった。
「父ちゃんどこいった?ここどこ?」
明るいモールではなくいくぶん暗めの建物内の廊下、窓から外を見れば…。
「おお~かすかべじゃないぞ。」
そこから見えるのは日本の風景とは似つかない町並みだった。高層建築と呼べそうなほど高い建物はなく道もキチンと舗装されているように見えない。遠くに山も見られないことからかなり広々とした場所に築かれた街だろうか。
「と、とにかくここはどこなんだろう。」
少し不安そうにしんのすけは廊下の左右を見てみる。右はどうやら倉庫か何かがあるようでいたるところに木箱が積まれ左は角の先に明るさが感じられる。左へと歩き角を曲がった先に数名の人間がいた。人がいたことに安堵しそちらへ向かうとそこにはいたるところに絵画が飾られていた。
「何だ~?ここは絵を売るところなのかな?」
いくつかの絵を見ていくがしんのすけがあまり見たことのない描かれ方をした絵ばかりであまり興味をそそらない。
「何だか古くさい絵ばっかりだぞ。」
幼稚園の遠足やデパートの企画で絵の展示会などは見たこともあるのだが並べられた作品はいずれもあまり見たことのない雰囲気でまるで博物館か骨董屋が似合いそうなものばかりだった。しかし、キョロキョロとしながら歩くなかでしんのすけはそれを見つけ出した。
「おおっ!」
それは女性を描いた絵画だった。スタイルのいいロングヘアーの女性がビキニのような胸当て一枚で両腕を頭の上で組んでセクシーポーズを決めている。
「あはぁ~こういうのはおらでもわかるぞ!」
鼻の下を伸ばして幸せそうに眺めるしんのすけ。すると…
「ぼうや、その絵に興味あるの?」
後ろから声をかけられた。振り返ったしんのすけは一瞬言葉を発することがなかった。
「ふふふ。」
しんのすけに笑いかけるその人は間違いなく美人の部類に入る女性だった。ブラウンのロングヘアーにゴーグルを頭に装着し服装は奇抜、豊満なバストのすぐ下までしかない白シャツには襟元に青いリボンを装着、二の腕辺りまでの黄色いジャケット、ヘソ出しどころではない範囲の肌をさらけ出しジャケットと同じ黄色のミニスカートでポーチを腰に巻き付けロングブーツといういでたち。そしてその笑顔に引き込まれたしんのすけは彼女のチャームポイントに気づいた。
「あ、お姉さん!」
そう言って再び絵を見る。そして絵になっている人物の左目下にあるホクロが彼女にもあることを確認して…
「絵の中のお姉さん!」
「そうよ。この絵は私がモデルなの。」
少し小首を傾げるような仕草で返す彼女。しんのすけは瞳を輝かせた。
「第一印象で決めてました!お姉さん納豆好き?ネギとカラシは入れる?」
「納豆は食べるわよ。ネギは健康にもいいし。」
「ホント?おらもだぞ。じゃあハンバーグとカレーは?どっちが好き?」
その質問に左手の人差し指を顎にあてて少し考える素振りをする彼女。動作のひとつひとつがなんとも色香を振り撒いているではないか。
「うーん…どっちも美味しいけどお姉さんはビールに合うからハンバーグかな。」
「おおっ!おらもハンバーグ大好きだぞ!おらたち気が合うかも~運命感じちゃいますな~」
「あらあら、子供のくせにいっぱしの口説き文句とは面白いぼうやねぇ。」
そう言うとしんのすけに目線を合わせるように少し前屈みになる。自然と強調されてしまう立派なバストがしんのすけの脳を強く刺激する。
「私はザラ、ここで受付してるのよ。」
「お、おらは野原しんのすけ、しんちゃんて呼んでほしいぞ。」
「うん、よろしくねしんちゃん。」
そう言って右手を差し出すザラ。しんのすけは赤くなりながら同じように右手を差し出して握手する。
「て、照れるな~。」
「ねぇしんちゃんてどこから入ってきたの?私朝から受付にいたけどしんちゃんみたいな子供が通った気がしないの。」
握手を解きながらザラが質問する。今日はこのウキヲエ展覧会を手伝うために来ており受付兼ガードマンを拝命していたのだが何気なく見回していてしんのすけの姿が目に入った。ザラにはこの子のような小さな人物が入り口を通ったおぼえがなく、またウキヲエを展示してるフロアは入り口がひとつしかないので他の出入口から入ったとも考えられず、またここは3階であるため窓からの侵入も考えられなかった。
「う~ん…おらにもよくわからないぞ。父ちゃんとおっきなお店にお買い物に来てトイレ行って、いつのまにかここに来ていたんだぞ。」
なんと荒唐無稽な話だろうか。普通に考えてトイレに行ったら知らない街に来たなんて与太話もいいところだ。しかし…
「へぇ~不思議なこともあるものねぇ。」
ザラは感心したように言う。彼女は人を見る目は確かでありとてもしんのすけが嘘を言っているようには思えなかったのだ。何より彼女の所属するコトブキ飛行隊は度々異世界ユーハングとをつなぐ門に関わる事件に遭遇していることもあり、しんのすけが異世界から来たとしても驚きはしなかったのだ。かたやしんのすけもしんのすけで今まで異世界への旅(アクション仮面対ハイグレ魔王)や異世界の魔女との戦いに(ヘンダーランドの大冒険)戦国時代へのタイムスリップ(雲黒斎の野望、嵐を呼ぶアッパレ戦国大合戦)、時には未来人の襲来(3分ポッキリ大進撃)、果ては映画の中の世界(嵐を呼ぶ夕陽のカスカベボーイズ)など数々の出来事に遭遇してきたことから今度も似たようなものかと思っていた。
「ねぇねぇ、ザラお姉さんはモデルさんなの?」
ここでしんのすけは質問してみる。こんな美人のモデルとお近づきになる機会などそうそうあるものではないがしんのすけの質問にザラは否定で応えるのだった。
「私?ううん。あの絵はたまたまモデルにされたものなの。本来は飛行機の塔乗員をしているわ。」
「とうじょういん?じゃあ飛行機でお空を飛ぶの?」
「そうよ、私はコトブキ飛行隊ってチームで飛行機の操縦をしてるの。」
そう言ってしんのすけをザラは1枚の絵画の前に連れていく。そこには今とおなじかっこうのザラと濃緑色の戦闘機が描かれていた。
「おお~綺麗なうえにカッコいいぞ!」
「うふふ、ありがとう。」
「ねぇねぇ、この飛行機は何て言うの?」
「隼よ、私たちコトブキ飛行隊の象徴、ユーハングからもたらされたすごく強い戦闘機、隼。」
するとザラは少し離れたところにいる数名の男性と話をしている少女を右手で示す。
「あの子がここの絵を皆描いたのよ。」
ゴスロリ気味のファッションにピンクの髪を黒リボンでまとめた少女、エリート興業の姐さんであった。
「ほぉほぉ、あのお姉ちゃんが絵描きさんなのか。」
「あの子がたまたま出会った私に絵のモデルを頼んできてね。しんちゃんがさっき見てた絵がそのとき描いてもらったものなのよ。」
ザラは周囲を見渡しながら嬉しそうに続ける。
「やっと絵が色んな人に認められてね。私の雇い主の協力もあってこの個展が開かれたってわけなの。」
「ふ~ん、そうなんだ。」
「しんちゃんも絵を描いてみる?」
そう言うとザラはしんのすけを受付スペースへと連れていき机から紙と鉛筆を渡した。
「絵を描いてみたいって思った人のための用意をしてるの」
「うん、おらはお絵かき好きだぞ!」
紙と鉛筆を渡されたしんのすけは嬉々としてザラの用意してくれた板敷きを置いた木箱で絵を描き始めた。素性の分からぬ自称異世界の子供を目の届く範囲に置きながらザラは仕事を続ける。
そしてしばらくした頃…
「出来たぞ!」
嬉しそうに出来上がりを宣言する。ザラが見てみるとなるほどよく描けている。2人の大人に2人の子供、そして犬と思われる生き物だ。子供のひとりはしんのすけだろうか。
「あら、家族の絵かしら?」
「うん、おらと父ちゃん、母ちゃん、妹のひまわりに犬のシロだぞ!」
「よく描けてるわね。」
しんのすけの家族を描かれた絵をじっくりとみつめるザラ。しんのすけは彼女に質問してみた。
「ザラお姉さんの家族は?」
「…血の繋がった家族はいないわ。」
「血?」
「そう…。でもね、私には家族みたいな大事な仲間たちがいるの。空の相棒のレオナに飛行隊の仲間キリエ、エンマにケイト、チカに雇い主のマダム。ドードー船長にしっかりもののリリコさんとちょっと気弱なジョニー、しっかり整備してくれるナツオ班長にオペレーターの皆…それからちょっと頼りないサネアツ副船長ね。」
「うちの父ちゃんもよく母ちゃんから頼りないって言われるぞ。」
なぜかしんのすけはそのサネアツ副船長に父親のひろしを重ねたようだ。ザラは笑顔で絵を返しながら発言する。
「へぇ~しんちゃんところは女房の天下なのね。」
「母ちゃんは怒ると怖いぞ。父ちゃんいつも最後に謝ってるんだ『勘弁してくれ~俺が悪かったよ~』って。それにいつも休みはゴロゴロしてて若いお姉さんにすぐ鼻の下をのばしてるぞ。」
どうやらしんのすけの性格は父親似であるようだとこの短い時間の付き合いで結論付けるザラだった。
「でもおらは父ちゃん大好きだぞ!たまには今日みたいに遊びに連れてってくれるし、おらに何かあったらすぐ駆けつけてくれるんだぞ。おらはアクション仮面やカンタムロボが大好きなヒーローだけど、父ちゃんもおらのヒーローだぞ!」
真剣そのものの表情で言ってのけるしんのすけだった。
「ふふっしんちゃんにそう言ってもらえたら、お父さんはきっと嬉しく思うわね。帰ったらそう言ってあげるのよ。」
そう返しながらザラはサネアツ副船長を思い浮かべる。確かに少し頼りないところはあるが時には彼もガッツを見せてくれる人物である。羽衣丸がジャックされた時には敵の情報を届け、コトブキのメンバーを手引きしてくれたしイサオとの最終決戦では彼がいなければ門を破壊できなかったかもしれない。普段はチカやキリエに散々言われるが彼がいるからコトブキはのびのび仕事ができるのである。
「今回はホントにありがとうございます!先方も悦ばれることで…」
などと考えていると階段の方から声がしてきた。噂をすればなんとやらでザラはサネアツの声だと思いそちらに顔を向ける。すると…
「父ちゃんの声だ!」
しんのすけが突然立ち上がってそちらへと駆け出した。
「あ、しんちゃん…えっ!」
止めようとしたザラだったが彼女の目の前で突然しんのすけの姿が歪み始めて掻き消えてしまった。そのあまりにもな現象に呆然と立ち尽くしていると階段を昇ってきたサネアツに声をかけられた。
「おおザラ、お疲れ様、結構人が入ってるねぇ。」
「サ、サネアツ副船長。あの…今この階段を小さい子が降りて行きませんでした?」
まさかと思いながら自分の見間違いだったかと問うてみるがサネアツはキョトンと返してきた。
「えっ?誰ともすれ違わなかったけれど…。」
「しんちゃん…じゃあやっぱりあれは…」
そして思い出した。あの歪みはまるでラハマやイケスカの空に現れた門に似ていたのだ。つまりしんのすけは元の世界に帰ったということかもしれないとザラは思いだした。
「あのー?」
サネアツが連れてきた客人が声をあげたことでザラは思考を中断した。
「あっ!すいません、失礼いたしました。」
「いやいや、何も無ければ結構です。」
「こちらは今回絵を買い付けにわざわざカスガタウンからいらっしゃったマタベエさんだ。うちの会社の塔乗員です、画家さんと個人的に付き合いがありまして…」
「おお、何処かで見たように思いましたよ!コトブキ飛行隊のザラさんですね!ご活躍を新聞で度々拝見いたしました。」
「光栄ですわ、よろしくお願いします。どうぞこちらへ。」
会釈してマタベエとサネアツを案内しようとするザラ。入り口へと向き直ると
「ザラ、この絵は?」
ちょうど来客と話をしていた姐さんが受付に来ており、先ほどしんのすけが描いた絵を見て質問してきた。
「ああ…それは…」
ザラはそれを手に取りながら少し考え…
「私の宝物よ。」
そう言うと彼女はサネアツに向き直って笑顔を見せた。
「副船長、いつもありがとう。」
「な、何ですか急に?」
唐突な出来事に少したじろぐサネアツにさらに言葉をかける。
「何って、日頃のお礼♪」
そう言ってさっき出会った小さな友達からもらった絵をザラは大事そうに受付台に備え付けられた引き出しへと仕舞うのだった。
「おっ、しんのすけ。思ったより早かったな。」
スマホをいじりながら待っていたひろしはトイレから出てきたしんのすけにそう声をかけた。
「と、父ちゃん、ここは…?」
「?どした?」
階段を降りたと思ったしんのすけだったががそこはひろしの待つショッピングモールのトイレ前だった。慌ててトイレの中に引き返し奥の壁を見るが…。
「扉が無くなってるぞ。」
さっき通ったあの古いトイレに繋がっていた扉が消えてただの壁になっていたのだ。
「しんのすけ、大丈夫か?何かあったのか?」
トイレの中に戻ったしんのすけを怪訝に思いながらひろしも入ってきた。
「父ちゃん!おらおもちゃ売り場に行きたいぞ!」
振り返ってひろしにそう言うとしんのすけは突然駆け出す。
「おい、しんのすけ!」
「えっと…」
「まったく何だってんだよ。ここは模型飛行機のコーナーだぞ」
縁のあまりない場所に来た息子を追ってきたひろしにしんのすけが質問する。
「父ちゃん…はやぶさってどれ?」
「ん?隼…ええっと…これだ。」
積まれたプラモの中から『一式戦闘機隼』を見つけてしんのすけに差し出すが…
「これじゃないぞ!このプロペラが2枚のやつがはやぶさだぞ!」
「2枚?しかしこれも隼だぞ。ちゃんと書いてある。」
「それは隼一型でありますね!」
しんのすけとひろしの会話を近くでたまたま聴いていた癖っ毛のある髪型の少女が横から声をかける。
「ぼうやはわかっていますな!えっと隼の一型はこのシリーズの…これであります!塗装せずとも大まかな色分けがされてるので初心者でも作れる人気者です!」
少女が手渡した箱に描かれた姿を見たしんのすけは両手でそれを頭上に掲げた。
「おお!これだぞ!」
「ああ、すいません、ありがとうございます。」
思いがけないアドバイスを受けてひろしは頭を下げる。少女は笑顔を返して…
「いえいえ、お役に立てたなら幸いであります!それではっ!」
そう言うと敬礼をして去っていったのだった。
「父ちゃん、おらこれ欲しいぞ!」
「ええっ?アクション仮面やカンタムロボとは違うぞ!それにこれは組み立てたりしないとダメで…」
「おら欲しいぞ!父ちゃん作ってよ!」
「うーん…」
いつになく真剣な息子にひろしは少し考えたがまぁたまには良いだろうと思うのだった。
「わかった。そこまで言うなら作ってやろう。」
「やったぞ!わーいわーい!」
『ぐぅぅ~』
そのタイミングで2人の腹が鳴った。
「腹へったな…、よしっ!じゃあこれを買ったら昼飯に行こう。フードコートの鉄板ハンバーグでどうだ?」
「ほんと!父ちゃん太もも!愛してるぞ!」
「はっはっはっ、それを言うなら太っ腹だろ?」
これもまたいつものやり取りだったがしんのすけは改めてひろしの顔をしっかりと見ながら続けた。
「父ちゃん、父ちゃんがおらの父ちゃんでいてくれてありがとう!おらはおらが父ちゃんの子供で嬉しいぞ!」
「何だ?急に改まって?」
「友達に言われたんだ。父ちゃんに日頃のお礼を言ってあげなさいって。」
「ふーん、なかなか出来た友達だな。誰なんだ?」
「それは秘密だぞ!」
さっき出会ったザラのことは自分だけの秘密にしてしんのすけはひろしの手をとる。
「父ちゃん、早く行こ!」
「ああ、ちょっと待て。接着剤も買わないとだな。」
そう言いながら2人は自然と手を繋ぎ目的のコーナーへと向かって行くのだった。
終わり
連載を放置するなと言われるかもですが御容赦ください。
改めて藤原啓治さんありがとうございました。劇場版コトブキ飛行隊必ず観に行きます。