雪は降らないが、寒い日だった。
戦場に吹く風はいつも寒い。あの大空に比べたら、だが。
季節は過ぎて、手に握るものが操縦桿から銃に代わり、放たれるミサイルは小銃弾に変わった。
馬鹿でかい大陸戦争があった後、この国は自分の境目を見失っていた。かつて自分がいた小国を思い出してしまったものだから、やってきてしまったのだと思う。けれど今まさに引かれようとしている「境目」こそが、自分が今ここにいる意味なのだと実感している。あの頃から自分の意志は変わっちゃいない。自分の目で確かめたい。確かめるまで、この手に握るものを置くことはできないだろう。
機関銃の連射音が静まった頃、同じ義勇兵から声をかけられた。こんな埃だらけな戦場に、お客様なのだという。
「ラリー。お客だぞ」
「俺に?」
「お前を名指ししてきたぞ。オーシア放送局のなんとかっていう記者だそうだ。お前ってそんなに有名人か?」
オーシア。また懐かしい響きを持つ単語が駆け抜けた。
「さあね。そのお客様っていうのはどこに?」
「あっちだ。あの割れた家だよ。何を話すのか知らないが、せいぜい弾が飛んでこないことを祈るんだな」
砂で汚れたユークトバニア製の
「オーシア放送局のブレッド・トンプソンです。貴方とは一度お会いしてみたかった」
戦場には綺麗すぎるピカピカのヘルメットと戦闘服、”記者”と書かれたテープを腕に巻いたトンプソンという記者は、これまた綺麗な手を差しだしてきた。
「義勇兵に会いたいなんて物好きもいるんだな」
素直に手を取った。
先ほどの仲間がパイプ椅子を持って来てくれたので、腰を降ろして話す余裕ができた。AKを左に抱えて、浅く座った。
「それで、何を話す?戦場で弾が顔を掠めた話とか」
向かいに座る記者、トンプソンは前のめりになって答えた。
「貴方がエースパイロットだった頃の話を」
思わず顔を歪めてしまった。この記者はエースパイロットの話を聞きたいのだと言う。
「悪いが俺はそんな―――」
「貴方のことは知っています。『片羽の妖精』と呼ばれ、翼を赤く塗ったパイロット。傭兵揃いのウスティオ空軍第6航空師団所属。そしてなりより、あの”鬼神”に最も近いところで飛んだ戦友であり、敵であった男。彼と飛んだ空で何を見て来たのか、それを貴方の口から聞きたいのです」
参った。よりによってあいつの事まで出てくるとは。思い出さずにはいられなくなった。いや、忘れたかったわけじゃない。俺の中の出来事として物語は完結している。その続きが無いだけだ。そう、あいつ。誰もが魅せられた、エースの生き様という物語。
「あいつか。ああ、知ってる」
遠くで銃声が鳴り始めた。
「話せば長い」
記者も、もう物語の世界に入り込んでしまっている。
「知ってるか?エースは3つに分けられる。強さを求める奴。プライドに生きる奴。戦況を読める奴。この3つだ。あいつは、確かにエースだった」
このエースの生き様。さて、どこから話してくれようか。
噛んだガムから、徐々に染み付いた燃料の香りがしてきた。
なら、ぴったりな幕開けの空からにしようじゃないか。
目を閉じれば現れる戦闘機。そして、大気を焦がすジェット音。
「あれは、雪の降る寒い日だった」
あなたの好きなエーススタイルは?
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マーセナリー (ただひたすらに強く。)
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ソルジャー (戦場を変える力。)
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ナイト (強きを挫き、弱きを鼓舞する)