砦の来訪者
そう。あの雪の日が始まりだった。
最初の印象は・・・そうだな。筋は良かった。
1機の戦闘機が着陸する。
新入りがやってくるらしいと耳にして、俺は愛機の側で彼を出迎えた。
機体は青いパターンが入ったイーグル。俺と同じか。ということは他の奴らよりは死に難い奴であることには違いない。
一体どんな奴なんだろうか。こんなところに進んでくるなんて。金に困ったか、傭兵のくせに国を救おうと見上げた正義心を掲げて来たのか。口には出さないがここの傭兵パイロットは、いけいけなベルカを叩きのめしてやりたい気持ちに溢れている。国が負けたら食いぶちがないから、なんて裂けても言えない。
キャノピーが開いて顔が出てきた。何にも気移りしなさそうな顔だった。機体から降りても無言で指令室に向かっていく姿に先人たちはあまり面白くない。
「なあ、あいつどう思うよ」仲間の傭兵パイロットが声をかけてきた。
「飛んでみなきゃ分からん。行こうぜ」
仲間の肩をぽんと叩いて、新入りに付いて行く。
ヴァレー空軍基地所属、ウスティオ空軍第6航空師団は言わずと知れた傭兵パイロットで構成する部隊だ。辺境の基地に癖のある面子、初めて来たときは思わず高待遇だと皮肉を言ってしまった。だがここに来てもう1年と少し立つのだと思うと、それは新入りの一人も来るか。
軽い自己紹介がなされた。新入りはサイファーと言うらしい。もちろん本名じゃなく、彼がずっと使ってきたTACネームだ。
「早速だが、諸君らに緊急出撃命令だ」
俺と新入りを含めて8人がブリーフィングルームに集う。手狭な部屋が蒸し暑い。
いつの間にか俺たちは最後の砦なんていう大役を掴まされてしまったようだ。戦争が始まって1週間、この国はほぼ9割がベルカで埋め尽されている。ここが最後まで狙われなかったのは運が良かったのかベルカが間抜けなだけか。とにかくベルカはヴァレー空軍基地を落としてチェックメイトといきたいらしい。
「敵爆撃機編隊を撃破し、基地を守り抜け。断固として、ここでベルカの侵攻を食い止めるのだ」
司令官からはもう一つ発表があった。部隊編成だ。
3機編隊の小隊を2部隊、そして2機編隊の小隊を1部隊として組み分けることにしたらしい。計3個飛行小隊が臨時編成として飛び立つ。
「ラリー。お前はあの新入りとだ。コールサインはガルム。あいつがガルム1、お前がガルム2だ。良いな?」
「いきなり新入りと?」
「なんだ。何か不満か?」
「いや。その判断が正しいことを信じる」
トンネルのような独特な縦長のハンガーに俺たちの機体が揃っている。武装はフル装備。短距離と中距離。整備兵が駆けまわってミサイルを取りつけている。
一言よろしくと挨拶でもしようと思ったが、新入りは既に機体に乗り込んでいるらしかった。
「ちゃんと
「このミサイルがただの棒きれじゃなければだ」
「安心しろ。最高の状態だ」
そんな会話をして、俺も愛機に乗り込む。
牽引車でハンガー手前に機体を並べてから、エンジン始動。
右手の人差し指を上げて合図。エンジンマスタースイッチをオン。
コックピットコンソールの右側、赤いトグルスイッチを引っ張って
エンジン回転計のスタートアップを確認。ウーと唸り声を上げてイーグルが目覚めていく。メインエンジンスタート。
中指も立てて指2本で合図。右エンジンのスイッチを上げる。右エンジン点火。イーグルのエアインテークが下向きに下がるのを確認。
同様の手順で左。JFSをオフ。イーグルの声が聞き慣れたターボファンエンジンの音に変わる。
テストスイッチで機体システムのチェック、全装備異常なし。ヘルメットを被る。
「ガルム隊は最後に離陸せよ」
正規軍たちが余らせていた戦闘機に跨る傭兵仲間が先に離陸して行く。俺たちの番だ。
「滑走路クリアだ。ガルム隊、離陸を許可する」
「ガルム1了解。クリアード・フォー・テイクオフ」
「ガルム2了解。テイクオフ」
スロットルレバーを前へ。アフターバーナー最大発進、地響きと空気を震わせて飛び立つ。
空は今にも雪が降り出しそうだった。
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ソルジャー (戦場を変える力。)
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ナイト (強きを挫き、弱きを鼓舞する)