「B7Rって、知っているか」
俺は記者にそう問いた。
「知っています。ベルカ戦争でも屈指の航空戦が行われた空域。ベルカの国境に位置するここは、『絶対防衛戦略空域』とも呼ばれていましたね。空軍でもトップエースが配置され、連合軍の腕利きを屠ってきた。貴方がたの記録にもありました、1995年4月20日。”鬼神”と初めてそこを飛んだ日ですね」
そこまで知っているのか。なら長い前置きも必要ないというわけだ。説明する手間が省けると思えば、すぐに本題に入れて良い。俺はその方が好きだ。
「ベルカ絶対防衛戦略空域、B7R。通称、『円卓』。俺たち戦闘機乗りに与えられた舞台。そこには上座も下座もない。条件は皆同じ。所属も階級も関係ない。制空権を巡って、各国のエースが飛び交う場所」
あいつと揃って、俺たちにはお似合いだと言ったものだ。あそこ以上の舞台はない。戦う為に、飛ぶだけの為に、純粋にそれだけが俺たちの存在意義だった。
「『生き残れ』。それが唯一の交戦規定だった」
記者も時折目を閉じて、物語へ再び入り込むようだった。
出鼻を挫き、ついでに侵攻拠点の補給路を丸ごといただいたのを良いことに、ヴァレー空軍基地は勝気なムードが漂っている。
あれから傭兵パイロットの損失は無く、死に難く生き残ってきている。弾んだ報酬は酒とか、ポルノとか。オーシアからの嗜好品が中心だった。たまにこれで戦闘機は買えないかと司令部に言う馬鹿もいた。とにかく今はベルカを叩ける日が待ち遠しいそうだ。その繋ぎとして、各々が趣味を見せ始めている。
ガルム1、サイファーはと言うと、もう既に次のことを考えているようだ。哨戒任務とか些細な内容でも、マメに司令部に赴いては全体がどう動いているのか知ろうとしている。熱心なことだが、そこまで知って俺たちに何か出来るわけじゃないのに、どうしてそこまでと首を傾げたくなる。
ウスティオ産のラム酒の飲みかけが散らばる頃、一人空を見上げる。
この空には一体、どれだけの意志が詰まっているのだろう。戦う意味、戦争の意味。地上にある感情を空に解き放つから、こんな戦争が始まるのかもしれない。少なくともあそこは、戦闘機乗りにとっては天国でなければならない。
ほら、また一人天国から帰ってきた。
目を地上に戻して、部屋に帰る事にする。
「ラリー、お前死ぬなよ」
朝食時になんとも縁起の悪いことを言われた。あいつらはまだ酔っているんじゃないか。遅れて来たサイファーが向かいに座る。
「朝に早々、死ぬな。だとさ」
話題ついでに言ってみる。
「死なないさ」
「どうして分かる?」
「お前が一番良く知っているだろ、ピクシー」
「俺には分からん。今日を生き残ることで精一杯だからな」
「なら神頼みか」
「神なんか信じちゃいない」
「じゃあ赤い翼に託してみれば良い」
「神よりそっちの方が良さそうだ」
朝食にしては濃くて量が少ないメニューを平らげる。先に行ってる。と伝えて司令部に向かった。
死ぬな。という意味が分かった。
俺たちはどうやらあの『円卓』に行くらしい。
「敵航空戦力とのコンタクトを認めた際の交戦は許可する。諸君らの実力が試される時だ」
強行偵察に敵戦闘機との交戦。実質これは、『落とすまで帰ってくるな。』ということ。
単純明快で酷い作戦だが、俺たちが貧乏くじを引いてしまったのなら仕方ない。任務ならするまで。
支度をしてハンガーに向かうと、傭兵仲間が数人ついてきた。愛機の前で俺たちを見送るつもりらしい。
いつものように機体のプリチェックを済ませて、タクシーウェイを走らせる。整備兵も揃って見送るのが見えた。
「ガルム隊、離陸を許可する」
向かうは死地か、天国か。
『円卓』という天秤にかけられた空に、翼をはためかせる。
あなたの好きなエーススタイルは?
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マーセナリー (ただひたすらに強く。)
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ソルジャー (戦場を変える力。)
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ナイト (強きを挫き、弱きを鼓舞する)