哀牙の龍   作:黒死牟

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はい、第1話です。
後書きで呼吸の解説をしたいなと考えているので、興味がある方は是非読まれて下さい。

それでは、よろしくお願いします。


第1話 月明かりの下

時は大正の時代

 

社会は新たな知識や技術、文化を受け入れ

日本の歴史が大きく動きつつある

 

人々は輝かしい発展を遂げる社会に希望を持ち

夜の風潮に酔いしれながら生活を送り、人の心も近代化の一途を辿っていた

 

 

しかし…

光があれば闇がある

太陽が指す所あれば、陰になる場がある

 

発展という太陽の下、路地という陰にその姿を隠しながら

裏の世界より人々を脅かさんとする、異形の存在も、またあった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主食、人間

人間を殺して食べる

 

いつ何処から現れたのかは不明

 

身体能力が高く、傷等も立ち所に治る

切り落とされた肉をも繋ぎ、手足を新たに生やすことも可能

 

形を変えたり、異能をもつ鬼もいる

太陽の光か、特別な刀で頸を切り落とさなければ死なない

 

 

人喰い鬼は、人ならざるにして人を蹂躙するモノ

人の天敵である

 

鬼は文字通り人外の力を振るう上に陽光を浴びる以外には不死であり、たとえ頭を砕かれようとも瞬く間に治癒して生者を喰らう

 

人間は宵闇に怯えて暮らし、降りかかった血の災厄に悲嘆と怨嗟の声を上げる以外、出来ることなど無い

 

しかし…人は弱くとも心在るが故に、智慧ある者は智慧を、業ある者は業を、力ある者は力を出し合い寄り集め、鬼を退治する術を編み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼殺隊…

その数、およそ数百名

政府から正式に認められていない組織

 

だが、古より存在していて今日も鬼を狩る

 

人間であるから

傷の治りも遅く、失った手足が元に戻ることも無い

 

 

それでも鬼に立ち向かう

 

人を…守る為に

 

 

彼らは決して幻想に消えることなく

今宵もまた闇の中で悪鬼を滅殺する

 

災厄を祓う、その時まで

 

 

ここに、齢二十になろうかと云う若者がある

 

両親と姉を鬼に殺され、地獄の沙汰を味わった

それ故に、鬼に対する憎悪は凄まじく

深く 憎しみの炎に燃えていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柊 士竜 (ひいらぎ しりゅう)

鬼殺隊員であり、その階級は最高位「柱」

 

両親と姉を鬼に殺され、その怨みに燃え鬼殺隊士となる

 

辛く、苦しみに満ちた生涯…

それでも彼は刃を振るう

絶望の淵に立たされようとも

血反吐を吐く思いをしても

 

生命を、落としかけようとも…

 

彼は命懸けで日々を生き抜く

この世から鬼を滅するために…

 

 

そんな彼が扱う呼吸は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全集中 …

龍の呼吸 壱ノ型 轟龍斬

 

灼熱に燃え、龍が如く唸る刃

 

龍の尾ような弧を描き

振り抜かれた太刀筋は鬼の頸を真一文字に切る

 

頸は地面に転がり、鬼は焼け付くように消え去った

 

士竜は「日輪刀」を大きく振り、血を振り払って鞘に収める

チン と軽い音が響き、辺りには再び鈴虫の鳴き声が戻った

 

 

士「また、雑魚鬼か」

頭上にはいまにも堕ちてきそうな月

その月を見あげ、士竜は深く目を閉じる

 

鬼殺隊に入隊し、早二年が経つ

血反吐を吐くような鍛錬を積み、柱にまで登り詰めた

 

だが、上弦の鬼とは一度も遭遇したことが無い…

 

俺の家族を殺し、今この瞬間も人間を喰らっているであろう

 

 

忘れもしない、あの鬼の面だけは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六つもある目を持った異形

戦国の武士のような立ち振る舞い、

おまけに懐には刀を刺して持ち歩いていた

 

そして、顔に浮かび上がる奇妙な痣…

 

夜中だった

そう、今晩のような月が堕ちてきそうな夜だった

 

家が真一文字に斬られたかと思えば

無数に散らばる刃によって両親が切り刻まれる

 

俺もこの時、左目に傷を負う

 

姉は俺を襖の中に隠し、自分が身代わりになる事で俺を守ってくれた

俺は急の事に整理がつかず、白紙になった頭を抱える

 

気づけば音も無くなり、血の匂いが鼻を突いた

 

 

 

 

あの鬼は、俺があの時、押し入れに隠れている事を知っていた

見つかった訳では無いが、何故かそう思った

間違いない

 

あの鬼には、「何か」が見えている

 

透視、でも出来るのか?

何故か、あの鬼には全てを見透かされている気がしてならない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「弱き者…あの方は全てを斬れと言っていたが、お前は私が斬るに値しない、これから先、お前は私と云う恐怖に怯えながら暮らしていくことになるだろう」

 

 

腹の底に響くような声

手足の震えが止まらなかった

 

怖気の頂点、とでも言えばよいのか

それくらい自分の体が自分の物でないように思えたのだ…

 

 

自身の左目を触る

 

傷を負ったのがまるで昨日の事のように思い出された

瞼の裏に姉の屍、そして鉛のような血の匂い…

 

それと同時に、腸が煮えくり返るような怒りが込み上げる

 

どんな理由があれど、

俺の家族を切り刻み

世の中の多くの人間を喰いものにしている悪鬼共…

善人も悪人も関係ない

 

この命有る限り、目の前の鬼頸を斬り続ける

腕を無くそうが、身体を切り刻まれようが

 

 

それが俺の使命…運命だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の闇夜に隠れ、士竜に忍び寄る影

 

?「腹が減ったのぉ…血、血が欲しい、若い女の血が…」

 

口を半開き、長い舌をダラりと垂らす

とても人間とは思えない容姿

 

 

?「みいつけたあ」

影は片方の腕を強く振る

 

するとどうだろう

腕の一部が取れてブーメランのように滑空し、

真っ直ぐに士竜の背中に迫った

 

 

士「わかり易い匂いだな」

間一髪の所で士竜は背中を逸らし、飛んできたモノを避ける

 

振り向くとそこには

昆虫の様に大きな眼

手足にノコギリの様な歯が付いた大柄の鎌

 

その異形は長い舌をダラりと垂らしながら士竜に近づく

 

?「俺の攻撃を見ずに避けた?こいつは喰い甲斐が有りそうだなあ」

 

士「その姿、まるで蟷螂(かまきり)だな、なんと醜い容姿だ、気の毒にすら思える」

 

鬼「ごちゃごちゃうるさいぞお前ぇ、それにその刀…鬼狩りだなぁ?」

語尾を震わせながら声を出す鬼

震えた声がより一層気味が悪く感じる

 

士「貴様、喰って40人という所か」

 

?「あぁ?だったらどうした?この俺が怖いのかぁ?」

自らの鎌を舐め、その歯を愛おしそうに眺めている

 

士「雑魚だと言っているんだ、その様なことも分からんとは何とも哀れな奴、血鬼術の匂いも薄すぎる」

 

 

士竜の言葉に鬼は血相を変え、

大きな目を更に見開く

鬼「俺が哀れだとぅ?それは貴様ら人間の方だぁ!」

 

次の瞬間、鬼は両腕の鎌を飛ばした

鎌は複雑な弧を描きながら士竜に近づく

 

士「…遅い、実に遅い」

静かに日輪刀を抜く

同時に、自分に向かって滑空して来る鎌を瞬きの間に打ち落とした

 

 

?「おのれぇ…」

自慢の鎌を落とされた

憎い鬼狩りめ…万死に値する…!

 

鬼は目をカッと見開き、腕を大きく開く

 

血鬼術…

血狩り鎌

 

声とともに振り抜かれた鎌は

血のように赤く染まり、途中から5本に分裂して士竜を狙う

 

士竜は身体を捻り、

全ての鎌を一度避けた後、全てを日輪刀で撃ち落としてしまった

 

士「貴様からは、淀んだ油の様な匂いがする、酷い匂いだ、同時に…死ぬ程わかり易い気配だ」

 

 

音も無く、

更に高速で此方に近づいてくる鬼狩り

 

なんなんだこいつは…

今まで見てきた鬼狩りとは桁違いの威圧を感じる

 

 

士「潔く、あの世に還るのだ」

力強く日輪刀を握る

身体中に血が巡り、全身が熱くなる

 

月明かりに照らされた深紅の日輪刀が

更に燃えるように赤く染った

 

 

 

全集中…

龍の呼吸 壱ノ型 轟龍斬

 

深紅の豪龍が宿る

地響きが起こるような唸り声を挙げながら、

その尾のような弧を描く太刀筋

 

竜が如く唸る日輪刀が鬼の頸を真一文字に斬り裂いた

 

 

鬼は一言も発する事が出来ず、燃え上がる様に焼けつき

やがて塵と化した

 

 

士竜は日輪刀を終い、鬼が消えた空間をじっと見つめる

絵に書いた様な雑魚鬼だった

 

頸を斬る瞬間、奴の眼を見たが

爬虫類の様な切り目には何も描いていなかった

 

やっと血鬼術を使える様になった鬼、という所か

粗が目立つ血鬼術だった…

 

 

感慨に浸っている暇など無い

今この瞬間にも、

鬼による被害を受けている人が居るのだ

 

 

進まなければならない

 

 

自分の使命を心に刻み込み

この世から、血の匂いが消えるまで




誤字、脱字等ありましたらよろしくお願いいたします。

呼吸解説
龍の呼吸 壱ノ型 轟龍斬(ごうたつざん)
龍の呼吸の1番基本的な技。下半身を力強く踏ん張り、上半身を激しく拗じることで鋭い懺悔を繰り出す。その威力は、雑魚鬼であれば一瞬で焼け爛れる程。


大正コソコソ噂話 (ちゃんとやります)
士「全く、柱に昇進してから上弦とも会わないってのはどういう巡り合わせなんだ…
ここで大正コソコソ噂話、今回倒した蟷螂鬼は人間の頃、箸が使えなかったらしい」

次回もお願いします。
つづく
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