若干掘り下げた話をすると、
このお話の頃、炭治郎一家は平穏に暮らし、鬼のおの字もありません。
6人兄弟ってなかなかだと思いました笑
では、よろしくお願いします。
虫のせせらぎが耳へと響く
心地よい子守唄のように、
荒んだ自分の心を優しく包み込む
何気無い毎日
何気無い日常
当たり前だと思っていた事が
ある日突然無くなった時、人は心に深い深い穴が空いてしまう
その穴は何をやっても埋めることはできず、
それどころか、埋めようとすればするほど
その穴は深く広くなっていく…
負の連鎖だ
父さん、母さん
姉さん…
大切な人の顔が浮かぶ
3人は優しく自分に向かって微笑み掛けてきた
その時、目の前にいた両親と姉が、
突然飛んできた、無数の刃によって切り刻まれてしまう
やめろ
やめてくれ。
俺から、俺から…!
大切な人を「これ以上」奪わないでくれ…!
俺を、一人に…しないでくれ……
その時、ぱっと目が開き士竜は飛び起きた
汗が滴る
心臓が恐ろしい程早く鼓動を打っている
士「はあっ、はあっ…」
必死に胸を抑え、心を落ち着かせようとした
落ち着け…!
呼吸を使って、身体の熱を下げるんだ
身体が熱い…骨が焼けてるみたいだ…
何とか胸の鼓動は治まり、いつも通りの脈が戻る
額の汗を拭き、大きくため息を着いた
士「何ていう夢だ…」
ふと、自分の身体に目を送る
綺麗に敷かれた布団
清潔に洗われた着物
おまけに身体の怪我を負っている部分に、
包帯まで巻いてあった
士「これは…一体どういう…」
俺は崖から落ち
何とか一命を取り留めることができて、
それから…
駄目だ、思い出せない
だが、その場で倒れたのは間違いないだろう
という事は、ここは藤の花の家紋の家か?
しかし、それにしては藤の花の匂いがしない
どこだ?ここは?
?「お気づきになられましたか?」
声がした方に目をやると、
そこには丹精な顔立ちをした女性が立っていた
士「あなたは…?ここは何処ですか?」
立ち上がろうとした時、女性は慌てて士竜の身体を止めた
?「動いてはなりません、貴方は大怪我を負っているのですよ?」
士「という事は、この包帯はあなたが?」
女性は静かに頷き、
士竜の横に座り直した
善「私は善美と申します、この大江村に住む、しがない女です」
彼女は人が良さそうにはにかみ、砕けた笑顔を作った
士「善美さん、ありがとうございます、あなたが助けてくれなければ俺は恐らく死んでいる所でした」
善「人として当然のことをした迄です、私がたまたま小川に山菜を摘みに行った時に貴方を見つけただけですから」
いくら崖から落ちたからと言って、
体力消耗で失神とは情けない
が、
やっぱり俺はつくづく運が良い
善「それにしても、御侍様がどうしてこの様な田舎町に?」
士「いえ、俺は侍なんかじゃなくて…」
そう言えば、日輪刀が見当たらない
士竜は飛び起きようとしたが、善美に止められた
士「あの、俺の傍らに刀は無かったでしょうか?」
善「あ、それならあそこに…」
善美が玄関前を指さした時、
ニヤニヤと笑いながら此方を見る2,3人の子供がいた
「善美姉ちゃん!これ借りてくぜ!」
善「あっ!こら!」
善美は玄関前までかけたが、既に子供達は何処かへと行ってしまったようだ
まったく…
後であの子達お説教だわ
そんな事を考えていると、背後より禍々しい気配を感じる
振り返ると、士竜が鬼の形相で仁王立ちをしていた
士「俺の刀をおもちゃのように…許せん!」
善「士竜さんお待ちください!あの子達も悪気は無いのです!どうか…どうかお許しを!刀は必ず私が取り戻してきますので…」
士竜は身体を震わせながらも怒りを噛み殺し
善美の指示に従った
彼女は再び士竜の横に座り直すと、深々と頭を下げる
善「申し訳ありません、私の不注意で…御侍様の刀は、その方の魂だと聞いております故…お気持ちお察し致します」
士「魂…なんて軽いものじゃありませんよ」
思いがけない返答に少しびっくりしたのか、
善美は驚きの表情になった
善「どうでもいいと、仰るのですか?」
強ばった表情になる
士竜は少し微笑み、自分の胸を押さえた
士「あの刀は、俺の全てなんです、俺の家は代々火仕事をしている家系で…それで、この刀は鍛冶師だった俺の父が打った物なんです、だから、命よりも大切な物なんです」
善美は士竜の言葉を飲み込み、静かに俯いた
善「私の両親も、私が幼い頃に無くなってしまいました…」
士竜は驚きの表情になり、善美の顔を二度見する
彼女はほくそ笑んだ
善「私はとても幼かったですし、よく覚えていないのですが、忘れもしません…あの人殺しの顔は」
士「人殺し?」
善「はい…真っ暗な夜でした、月も出ていないような、その人はどこからとも無くすり抜けるように家に入って来て、私の両親をさらってしまいました、私と弟は両親に守られ、何とか事なきを得たのです」
士「弟が居るのですか?」
だが、部屋の中には人が2人以上住んでいるような気配は無い
彼女はまたはにかんだ
善「はい、身寄りが無くなってしまったので、私と弟はそれぞれの引き取り先で離れて暮らすようになったのです、まだ名前も決まっていない、小さな子でした…」
名前も決まっていない、か
今は亡き姉の顔が頭をよぎる
士「俺も同じですよ、両親と姉を殺され、1人だけ生き残った」
善「そうなのですね…今でも夢に出てくるのです、頭に歪な角を持ったあの人殺しの顔が…」
角、という単語に士竜は激しく反応する
善「まるで人とは思えないような力、私は憎い…家族を奪った者が憎いです」
士龍は俯き、やがて決心したかのように頭を上げた
本来…鬼殺隊の事は口外禁止だ
しかし…
士「善美さん、本当の事を話します」
深く息を吸い、真っ直ぐに善美の顔を見つめる
士「俺は…鬼殺隊という組織の一員です、非公認の組織なのですがその名の通り、人を襲う鬼を狩っています、恐らく、善美さんの両親を殺した異形も鬼でしょう」
善「鬼殺隊…じゃあ、本当に…!」
言葉を出すやいなや、善美は士竜の肩を掴んだ
額からは汗が滴り落ちる
急な事に、士竜は驚きを隠せない
今度は畳に頭を擦り付けながら、必死に頭を下げた
善「お願いします、この村を助けてくださいませんか…?」
善「この村は、ここ数十年の間平和で長閑な所でした…所がある日、太陽が沈むと大柄で頭に二本角を持った異形が村を襲ったのです、村人をさらい、大江山に連れて行ってしまう、連れていかれた人達がどうなったのかは…」
この村の祭司達は、それを神の怒りだと感じ、村全体でお祓いをしました
ですが、効果は全く持ってなく…
元々、この村には古く平安の世から化物の伝説がありました
しかし、その化物は人間によって討伐され、
封印されていると言われています…
気づけば、太陽が沈みかかっており
強い西陽が窓から差し込んできた
善「もうこんな時間、長く話し過ぎたみたいですね」
士「まぁ、こんな日があってもいいじゃないですか」
士竜は座ったまま背伸びをすると、
そのまますくっと立ち上がる
善美は驚いた顔で、士竜の裾を掴んだ
士「大丈夫です、俺は特別な呼吸を使ってるから、傷の治りも早いんです」
善「そうなんですね…どうりで、士竜さんからは不思議な音がすると感じていました」
士「音?」
善美は恥ずかしいのか、下を俯いた
善「私、小さい頃から耳が良くて、不思議なんですけど、人の中から音が聞こえるのです」
士「音…か、生きてる証みたいなものですね」
士竜の微笑みに、
善美は満開の笑顔を返した
太陽は完全に沈み、
辺りは闇と肌寒さに包まれた
人気は殆どない
だが、本当にこの村に鬼が居るとして、万が一遭遇した場合
今は、日輪刀無しで戦わなければならない…
全く、最近の子供は…
そう思っていた矢先だった
路地裏から、
昼間に士竜の日輪刀を持っていった少年が顔を出した
士「あ、お前!」
少年は小さくやばいと唱え、路地裏へと引っ込む
士竜は逃がすまいと少年を追った
士「君!待て!其れは子供が持つようなものじゃない!」
くそっ!道が狭くて上手く追えない
子供に撒かれるなんて事があれば、柱失格だ
士竜は手前にあった樽を踏み台にし、
屋根へと上がると、そのまま大通りへと降り立つ
そのまま少年の前に立ち塞がり、その手を捕まえた
少「はなせっ!はなせよ!」
士「これは子供が持つような物じゃない!」
その時…
?「うるさい、実に耳障りだ」
しゃがれた老人のような声だ
背後から、鬼の匂い…
振り向くと、
そこには痩せこけた老人のような「生き物」が佇んでいる
人間では無い
頭には二本の歪な角、手には鋭利な爪がある
士「少年、脇目も降らずに走れ、君は逃げるんだ」
士龍は少年を庇うように後退る
少「嫌だ!俺は戦うんだ、父ちゃんの…父ちゃんの仇をとるんだ!」
少年は日輪刀を懐に抱き留め、静かに涙を流した
読んでいただき、ありがとうございます。
少年よ、日本刀って結構重いんやで
大正コソコソ噂話
士「刀を取られるとは何たる屈辱…腹を切りたい
ここで、大正コソコソ噂話、善美は俺を最初に見た時、一瞬熊が寝ているように見えたそうな」
誤字、脱字等ありましたらご指摘お願いします。
次回もよろしくお願いします。
つづく