鬼狩り? 私は一向に構わん!!   作:神心会

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またしてもの遅延、誠に申し訳ございませんでした。
今後も不安定な投稿が続くかもしれませんが、投げ出しだけは絶対にしないと宣言いたします。
どうか、今後ともよろしくお願いいたします。



今回はタイトル通り、烈さん達vsチートオブチート血鬼術になります。


40 結晶ノ御子

 

 

 

手数か、威力か。

 

 

 

 

それは古くより、あらゆる闘争の場において問われる選択である。

 

 

 

 

まずは手数。

速力を乗せた連撃を絶え間なく仕掛け、相手に反撃をさせる暇を与えず制する。

 

近代格闘技で言えば、ボクシングやムエタイが最たる例だろう。

ジャブの速射砲、左右打ち分けのコンビネーション、コーナー際でのラッシュ。

熟練格闘士のそれともなれば、もはや点ではなく面での制圧だ。

 

反撃を一切許さず、ダメージを蓄積させる事で崩壊に追い込む。

それが手数重視の闘い方だが……当然ながら、避けられぬ欠点がある。

 

速度重視の連撃を放つ場合、どうしても一撃当たりの威力を落とさざるを得ない。

素早い攻撃を連続で繰り出すに当たり、力を溜める所作―――拳を全力で固める、強く踏ん張る等―――を最低限に留める必要がある為だ。

 

故に、強固な防御力を持つ相手と対峙した場合は不利となるケース―――天性のタフネスを持つ花山薫が、愚地克巳やスペックの連撃を受けても怯まなかった時のように―――も多くある。

 

 

 

 

 

 

では、その逆―――威力を求めれば、どうなるか?

 

当然ながら力を溜める必要上、連続で放つのは困難になる。

スピードが売りの対戦相手ならば、捉えるのも難しくなるだろう。

 

 

だが、当たればでかい。

たった一度の命中で、状況を大きくひっくり返せる可能性―――範馬刃牙が、剛体術で鎬紅葉を打ち破った時のように―――が出てくる。

 

固められた防御を容易く粉砕する、圧倒的な威。

その極致が、俗にいう一撃必殺―――これを理想とする武術も多く存在している―――だろう。

 

 

 

 

 

 

 

手数と威力。

 

相反する性質を持つ以上、どうあっても同時に選ぶ事は難しいと言わざるをえない。

 

 

 

 

 

だが……極稀に、両立させる手段を持つ者が現れる。

 

 

 

 

 

 

その一人こそが、上弦の弐―――童磨―――武術を用いぬ身故に、上記の例に当てはまらないのはある意味当然かもしれないが―――だ。

 

 

 

威力は微塵も落とさぬままに、手数を倍加させる。

 

 

 

これが、童磨の真骨頂―――結晶ノ御子。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ッッ……こんの野郎ォォォッッ!!!」

 

 

 

空を覆わんばかりに展開された、大量の氷槍―――血鬼術『冬ざれ氷柱』。

 

 

上空より飛来してくるそれらに対し、玄弥は九節鞭―――烈海王が咄嗟に投げ渡した―――で対処。

頭上にて大きく円を描く軌道で振り回し、氷柱を寸でのところで撃ち落としていく。

 

 

 

 

「墳ッッ!!!」

 

 

並び立つ烈海王もまた、その妙技を以て氷柱の豪雨を凌ぎ切っていた。

 

 

両腕に拐を握り、迫りくる氷柱を冷静に見据える。

逃げ場を許さぬ広範囲攻撃……ならば、下手に回避行動をとって傷つくリスクを負うよりも、脚を止めてダメージを最小限に抑える事こそが最適解―――故にこそ、玄弥には九節鞭を投げ渡した―――だ。 

 

 

氷柱の軌道は、シンプルな直線。

ならば、叩くべきは正面ではなく側面。

 

求められるのは、打つではなく払う……円運動ッッ!!

 

 

 

再度の廻し受けッ……拐バージョンッッ!!!

 

 

 

拐の側面を滑らせる様に、氷柱を横へと流しッ!!

 

 

それでも尚命中の可能性があるものは、強く薙ぎ払い弾き飛ばすッッ!!

 

 

 

 

(冗談じゃねぇ……なんなんだよ、この反則術ッッ!!!)

 

 

 

辛うじて攻撃を防ぎつつ、玄弥は内心毒づいていた。

無理もないことだろう……何せ、数が桁違いなのだ。

 

 

 

 

「玄弥、来るぞッ!!」

 

「ッッッ……!!」

 

 

次の瞬間。

烈海王が叫び警戒を促すと同時に、それらは襲い掛かって来た。

 

宛ら大蛇の如く。

地に突き刺さる氷柱の隙間を、一切のロスなく最短距離で縫って迫る氷の茨。

 

 

 

 

 

――――――血鬼術『蔓蓮華』!!

 

 

 

 

 

(前面一帯に氷の茨……周りは氷柱だらけで身動きがとり辛ぇ!!)

 

 

 

前方から襲い来る、夥しい量の茨。

加えて、先の攻撃によって行動範囲が制限――――恐らく、この状態を作り出す為に狙ってやったのだろう―――されている。

 

左右及び後方への回避は困難。

ならば、最適解はッ……!!

 

 

 

「前だ、玄弥ッ!!」

 

「はいッッ!!」

 

 

 

前へと突き進む……!!

 

 

 

 

――――――ドンッッッ!!!!

 

 

 

 

二人揃っての震脚ッ!!

 

 

その勢いに乗せ、前面に立つ一本の氷柱目掛けッ……全力の拳打ッッ!!!!

 

 

 

 

――――――バキィィッッ!!!!

 

 

 

 

氷柱を砕き、殴り飛ばすッ!!

 

迫りくる氷の茨は、その氷柱に真正面から粉砕されるッッ!!

 

 

 

「やるねぇ……攻撃は最大の防御とは、よくいったものだよ」

 

 

 

二人が射出した氷柱は、そのまま行く手を遮る他の氷柱も複数本砕き……童磨まで後少しというところで、強度を失い砕け散った。

 

 

本命には届かず……しかし、おかげで足場と視界は開けた。

 

 

 

 

真正面から、互いの表情―――烈海王と玄弥は厳しい面持ちで、対する童磨は変わらず笑顔である―――を認識できる程には。

 

 

 

(くそッ……どうすりゃいい。

 攻めに出られねぇッ……!!)

 

 

 

童磨が発動した奥の手―――結晶ノ御子は、戦況の全てを一変させた。

 

氷で出来た分身体を生み出し、そしてその分身体は童磨本体と遜色ないレベルの血鬼術を扱える。

 

 

 

 

 

そして今現在、童磨が生み出した分身体の数は三体―――術式の総量は、実に四倍ッ!!

 

 

 

これが童磨の本領―――斬撃拳打はおろか、棒や九節鞭ですら絶対に届かぬ距離からの、圧倒的過ぎる制圧……数の暴力ッッ!!!

 

 

 

 

 

瞬く間に、烈海王と玄弥は防戦一方に立たされたのであったッ……!!

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

鬼殺隊『隠』 後藤。

 

 

 

彼は引き続き、この戦いの顛末を多くの隊士達へと語った。

 

 

 

 

 

 

 

―――分身体を発生させてからの上弦の弐は、徹底して烈さん達から距離を取っていた。

 

 

 

―――日輪刀の届かない間合いからの波状攻撃こそ、奴の本領ってわけだ。

 

 

 

―――分身体を生み出す前までは、烈さん達も接近できてたんだがなぁ……

 

 

 

 

 

 

―――え、じゃあなんで最初から分身を出さなかったんだって?

 

 

 

―――それは俺も疑問だったから、烈さんに聞いたらさ……こう言われたよ。

 

 

 

 

 

 

―――「上弦の弐は、出来る限り烈さん達の技を引き出したかったんじゃないか」って……ほら、鬼が見たり聞いたりした事柄って全部、鬼舞辻無惨に伝わるんだろ?

 

 

 

―――後は、あの上弦の弐自体に観察癖みたいなものがあったらしいんだが……まあ兎に角、烈さん達はあっという間に劣勢に立たされた訳だ。

 

 

 

 

 

 

―――そんな、有利な状況だからこそ……奴は、予想だにしてなかっただろうな。

 

 

 

 

 

 

―――距離を詰めるのではなく……まさか、同じ土俵に乗っかってくるなんて……な。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

(結晶ノ御子三体で、まだ耐えきってるかぁ……今まで闘ってきた中でも、相当の上澄みだね)

 

 

童磨は、素直に感心していた。

これまで数多くの戦いを経験してきたが、結晶ノ御子を発動する事自体がそう滅多になかった。

 

大抵の相手は、術式発動前に倒せるからだ。

そして発動させたとしても、一体のみ……二体以上生み出す事態というのは、極めて稀であった。

 

 

 

それをこうして、生き延びれているのだから……やはり、この師弟は強い。

 

 

 

 

(鬼喰いの効力も、簡単には切れそうにないか)

 

 

 

拮抗が崩れるならば、玄弥のマックシング―――鬼喰いの効力が切れる瞬間。

最初は、そう思っていた。

 

だが、そうはならなかった……玄弥は、鬼喰いを切らさなかったのだ。

 

 

 

それは、二体目の御子を生み出してすぐの時。

 

 

童磨は距離を詰めようとしてきた両者に対して、蓮葉氷―――蓮華の花を模した氷を生み出し、その花弁を敵へと飛ばす術である―――を打ち出した。

二人はすぐさま、その攻撃を迎撃して防ぎ切ったのだが……その最中であった。

 

 

玄弥が、自らの顔面に飛来してきた氷を歯で受け止め、そのまま噛み砕いたのだ。

 

 

当然そうなれば、鬼喰いが起こる。

燃料の補充完了という訳だ。

 

 

 

 

(猗窩座殿や黒死牟殿なら、こうはならないんだろうけど……やはり俺とこの鬼喰いは、相性が良くないな)

 

 

 

粉凍りを封じられた時点でも感じたが、実に厄介な相手と言わざるを得なかった。

 

自身の血鬼術はその性質上、どうしても発動後に氷という形でその場に残ってしまう。

現代風に例えるなら、長距離マラソンの給水ボトルが乱立しているようなものなのだ。

 

鬼喰いの効力が切れる前に氷を摂取することで、そのパフォーマンスを維持できる……この戦闘中、玄弥のスタミナ切れはまず起こらないとみていい。

 

 

 

(うん、やっぱり物量で潰すのが一番そうだな)

 

 

故に、童磨は戦法を定めた。

 

如何にこの師弟が優れていようとも、防げる攻撃数には必ず限界がある。

 

 

 

ならば、更なる結晶ノ御子の上乗せ―――シンプルな力押しで、決壊まで押し込めばいい。

 

 

 

 

すぐさま、童磨は新たな分身体を生み出すべく術式を発動……

 

 

 

 

「ッッ!!??」

 

 

 

 

 

するよりも、速くッ……!!

 

烈海王が動いていたッッ!!!

 

 

 

(手裏剣ッ……!!)

 

 

 

術式発動のモーション―――発動の際には、鉄扇を何らかの形で振る―――に合わせ、懐より飛鏢を抜き放っていたッ……!!

 

 

真っすぐに、童磨の首筋目掛けてッッ……!!!

 

 

 

 

 

 

―――――――カキンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……残念だったね」

 

 

 

 

だが、その刃は届かなかった。

 

 

 

 

 

 

――――――血鬼術『蔓蓮華』。

 

 

 

 

 

 

命中する寸前、分身体が血鬼術を素早く発動させていたのだ。

 

結果、飛鏢は肉薄直前で氷の蔓に弾かれた……童磨を傷つけるには、至らなかった。

 

 

 

 

「本当、油断も隙も……」

 

 

 

 

 

しかし。

 

 

 

 

烈海王の攻撃は、それだけではなかった。

 

 

 

 

寧ろ、本番はこの直後。

 

 

 

 

 

 

「……は……?」

 

 

 

 

 

 

飛鏢へと僅かに移っていた意識を、烈海王へと戻したその刹那。

 

 

童磨の視界に飛び込んできたのは。

 

 

 

 

 

 

「黒ッ……!?」

 

 

 

 

 

 

視界一面を覆う、大量の『黒』であった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

―――烈さんの日課って、覚えてるか?

 

 

 

―――そうそう……猩々緋砂鉄を壺やら箱やらに詰め込んでそこに手刀の打ち込みをする、あの鍛錬。

 

 

 

―――烈さんはな、任務で遠出になっても欠かさぬようにって、ある程度の猩々緋砂鉄を袋に入れて持ち歩いてんだわ。

 

 

 

 

 

 

―――それを……投げたんだよ。

 

 

 

 

―――砂鉄を鷲掴みにして、上弦の弐目掛けて……物凄い勢いで。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

環境利用闘法と呼ばれる闘法がある。

自衛隊最高戦力と称される漢―――ガイアが生み出し、用いる闘法だ。

 

 

その名が示す通り、彼は自らが置かれる環境をあらゆる形で利用して闘う。

 

 

笹の葉をまるで刃物かのように操り繰り出す斬撃、植物の葛を使っての捕縛技、土を身に纏っての迷彩。

 

技のバリエーションは豊富で、熟練のグラップラーをしても驚嘆に値するものが多い。

 

 

 

 

その中でも、特に有名な―――多くの観客達の前で披露したが為に―――技が一つある。

 

 

 

 

 

最凶死刑囚の一人であるシコルスキーを、これでもかという程に痛めつけた攻撃。

 

地下闘技場の地面に広がる砂をすくい上げ、そして全力で敵へと叩きつける―――砂弾である。

 

 

猛烈な勢いで叩きつけられた砂―――しかも、格闘士達の折れた歯や爪といった強固な物体までも混ざっている―――は、もはや凶器。

 

ショットガンさながらの広範囲攻撃には防御も意味を成さず……シコルスキーは、瞬く間に全身を血まみれにされてしまったのだった。

 

 

 

 

 

では……これを、鬼相手に実行すればどうなるか?

 

 

 

 

しかも投げ放つのは、ただの砂にあらず……日輪刀の材料である猩々緋砂鉄ッッ……!!!

 

 

 

 

 

 

――――――パアアァァァァンッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「ガァッッ……!!??」

 

 

 

効果は抜群ッッ!!!

 

放たれた猩々緋砂鉄は、童磨を真正面から直撃ッッ!!!!

 

 

 

藤の花の毒とは全く異なる……それでいて恐るべき激痛が、その全身を駆け巡っていくッッッ!!!!

 

 

 

 

(体中が熱いッッ……これは、刀の材料の砂ッ……!?

 あんなものを投げてくるなんてッッ……!!)

 

 

 

 

実にえげつない。

 

強烈な勢いで叩きつけられた砂鉄は、皮膚を突き破り肉に食い込んでいる……それが、徐々に肉体を焼き蝕んでいるのだ。

これが藤の花の毒ならば、体内で分解吸収もできよう。

しかし、陽光を含んだ猩々緋砂鉄とあってはそうもいかない。

 

 

(急いで体を再生させて、体外に排出するしかない……このままだと、内側から徐々にやられる……!)

 

 

 

 

 

――――――何故、童磨が砂弾をまともに受けたのか。

 

 

――――――それは偏に油断……慢心が招いた結果であった。

 

 

 

――――――分身体を生み出し、射程外から術を仕掛ける……彼は、自身にとって完全に優位な状況を作り上げていた。

 

 

 

――――――それが、彼の必勝パターンであったが故に……その状況下から食い下がられる、追い詰められるという経験が致命的に無かったのだ。

 

 

 

――――――鬼殺隊士は刀による近接戦闘が主―――岩の呼吸の使い手をはじめ中距離の間合いを持つ者もいるが、童磨も流石にそこは計算に入れて距離を測っていた―――であるが故に。

 

 

 

――――――分身体を展開しても尚、一切の距離を詰める事なく自身の間合いでそのまま挑んでくる……そんな相手がいるなど、思ってもみなかったのだ。

 

 

 

 

(あの手裏剣は、距離を詰めるための隙作りと思っていた……それなら、仮に棒や鎖を出されたとしても、迎撃は十分に間に合っていた……)

 

 

 

童磨も、ようやくその事実……自身が犯したミスに気が付いた。

 

相手は鬼殺隊士―――まして拳法家なのだから、必ず距離を詰めてくる……そう無意識下で思い込んでいたのだ。

だから、飛鏢は接近の為の牽制かと判断してしまった……だが、事実はこの通りだ。

砂鉄を袋から出し、打ち放つ隙を与えてしまった。

 

そして、この距離からそんなに大きい攻撃はないだろうという思い込みを、突かれてしまったッ……!!

 

 

 

結果、反応が遅れてしまったッッ……!!

 

 

 

 

 

 

 

「墳ッッッ!!!」

 

 

 

 

 

その機を逃す烈海王ではないッ!!!

 

 

 

 

間髪入れず……第二投ッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「ッ……!!」

 

 

 

 

続けざまに喰らうわけにはいかない。

 

咄嗟に分身体と共に血鬼術を発動させ、氷の防壁を張ろうとする。

 

 

 

 

 

しかしッ……!!

 

 

 

 

(御子の動きが鈍いッッ……!?)

 

 

 

 

分身体の反応が遅いッ……!!

 

 

 

広範囲にぶちまかれた砂鉄攻撃を、分身体も喰らっていたのだッッ……!!!

 

 

 

 

(そうか……それも狙いか……!!)

 

 

 

自身への痛打、そして分身体の破壊……烈海王は両方を狙っていたのだ。

 

 

 

分身体は、童磨と同レベルの術式を放てる……しかし、本体と同じポテンシャルを持つわけではない。

全身を構成するのは、血鬼術による氷……そしてサイズは、精々童磨の膝元程度まで。

 

耐久力でいえば、本体の肉体と比して大きく劣る。

当然、損傷の再生能力など持ちうる訳がない……猩々緋砂鉄は総身に食い込んだまま、継戦せざるを得ない。

 

一度痛打を受けてしまえば、本体以上に致命的なのだ。

 

 

 

 

 

現に今……分身体は、砂鉄を受けた個所から徐々に融解し始めているッ……!!

 

万全に術式を放てるだけの状態に無いッ……!!

 

 

 

 

 

(けれど、俺自身は間に合う……!!)

 

 

 

 

 

――――――血鬼術『冬ざれ氷柱』ッッ!!!

 

 

 

 

 

 

それでも。

流石に、二度目は喰らわない……不意打ちが通じるのは一度まで。

 

迫りくる砂鉄の弾丸に対し、童磨は眼前へと広範囲に氷柱を落として防壁を展開。

その全てを、無事に受けきる。

 

 

 

だがッ……!!

 

 

 

(まただ……氷が溶けるッ……!!

 受けた砂鉄は、大半が氷の中に留まるからッ……!!)

 

 

 

分身体と同様、氷柱が融解し始めているッ……!!

 

まるで砂鉄から、高熱が放たれているかのようにッッ……!!

 

 

 

(今までも、氷に刀が食い込んで身動きが取れなくなった剣士は何人もいた……そこから溶けるなんて事は、一度もなかった。

 だけどこの砂鉄は……純度が高すぎるッ……!!)

 

 

 

これが凡百の砂鉄であったならば、ここまでの殺傷力は生まなかっただろう。

 

だが、烈海王の持ち歩いている砂鉄は特級品。

陽光手会得の為、担当の刀鍛冶に融通してもらった選りすぐり……超高純度の猩々緋砂鉄だ。

 

例え上弦の弐の術式であろうとも、貫通できるッ……!!

 

 

 

 

「オオオオオオォォォォッッッ!!!」

 

 

 

 

 

そして。

分身体が機能不全を起こした今こそが、童磨に接近する最大のチャンス。

 

 

師が作ってくれた千載一遇の機を、彼は見逃さなかったッッ……!!

 

 

 

 

――――――バキャアァァッッ!!!

 

 

 

 

玄弥の飛び蹴りッッ……!!

 

 

脆くなった氷柱の壁を勢いよく蹴破り、そのまま童磨の喉笛に迫るッ……!!!

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

―――阿吽の呼吸ってのは、ああいうのを言うんだろうな……烈さんが砂鉄を投げた直後に、すぐ玄弥は上弦の弐に走り出してた。

 

 

 

―――戦闘素人の俺でも分かる……西洋風に言うなら、完璧なタイミングってやつだ。

 

 

 

―――飛び蹴りで氷をぶち破った瞬間、これは決まったなって思ったよ。

 

 

 

 

 

 

―――けれど……やっぱ恐ろしいわ、上弦の鬼は。

 

 

 

 

 

 

―――烈さんが砂鉄って鬼札を隠していたように……あいつも、技術を出し切ってなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「ッッッ!!??」

 

 

 

 

玄弥の一撃は、完璧なタイミングで童磨の急所―――首元に叩き込まれていた。

 

 

 

 

 

――――――ブシュゥッッ!!!

 

 

 

 

 

喉笛から、鮮血が一気に噴き出した。

蹴りの威力が、皮膚を裂き動脈までも損傷せしめたのだ。

 

致命傷と言っても差し支えない、最大級のダメージだ。

 

 

 

 

しかし。

 

 

 

 

(だめだ……浅いッ!!)

 

 

 

 

それは通常の生物が相手ならばの話。

 

相手は鬼―――それも高い再生力を誇る上弦―――だ。

例えどれだけの傷を与えようとも、首を断てなかったのならば致命には至らない。

 

 

 

(氷の壁がなけりゃ、首をぶち砕けたかッ……!!)

 

 

 

惜しむらくは、玄弥の蹴りの威力が殺されていた事。

氷の防壁を蹴破った際に、その勢いが僅かながらに落ちていたのだ。

 

 

もっとも……あの氷壁があったからこそ、玄弥はその裏に姿を隠すことが出来た。

こうして飛び蹴りの奇襲を成功させられた事を思えば、この結果は皮肉以外の何物でもないだろう。

 

 

 

 

「だけどッ……!!」

 

 

 

だが、成果がゼロという訳でもない……防戦一方だった流れを、確実に変えることが出来た。

 

おかげで、厄介だった間合いを詰められた。

接近戦に持ち込みさえすれば、分身体発生の術式も発動前のタイミングで潰せる。

 

 

そして何より、今の童磨は首を大きく損傷している……防御力が確実に落ちている。

今こそ、断ち切る絶好のチャンスだ。

 

 

 

 

(再生しきる前に、一気に畳みかけて……首を落とすッッ!!!)

 

 

 

 

着地と同時に、仕掛け―――

 

 

 

 

 

(ッッ!!??)

 

 

 

 

 

―――られないッ……!!

 

 

 

 

 

 

(着地が出来ない……足が動かねぇッッ!!??

 しまった、この野郎ッ……血を凍結させやがったッッ!!!)

 

 

 

 

 

首元から噴き出した血液は、当然ながら蹴り込んだ脚へと真っ先に付着する。

童磨はその状況を利用した……己が血液を凍結させて、玄弥の脚と己が首元をがっつり固定。

 

そのまま宙づりにもっていったのだッ……!!

 

 

 

 

 

「あはっ……こういう戦い方は、猗窩座殿の分野なんだけどね」

 

 

 

 

そして。

 

童磨は、そのまま首を大きく振り上げたッ……!!

 

 

 

「俺も、使わせてもらうよ……!!」

 

 

 

 

一見は力技の似合わぬ伊達男なれど、その本質は鬼。

当然、膂力は常人とは比べ物にならない域にある。

 

首の筋力のみで人を一人支え持ち上げられる事すら、可能なのだ。

 

 

 

 

その怪力を以て、振り上げた首を全力で振り下ろすッッ!!

 

 

高角度からの、脳天及び背面叩きつけ―――童磨式変形型パワーボムッッ!!!

 

 

 

 

 

――――――ドゴオォッッ!!!

 

 

 

 

 

 

「ガハァッ!?」

 

 

 

 

襲い来る強烈な痛みと衝撃によって、玄弥の表情は苦悶に歪んだ。

 

まともに直撃してしまった。

こんな荒業を仕掛けてくるとは思ってもみなかったが故に、受け身を取り損ねたのだ。

 

 

 

 

 

だが、童磨の攻撃はこれで終わりではない。

 

この好機を、彼程の猛者が見逃すわけがなかった。

 

 

 

 

この状況下で最も効果的……即ち、最も殺傷力の高い一撃を選び、繰り出してきたのだ。

 

 

 

 

その手の鉄扇を、玄弥の固定化された右足首目掛けて、勢いよく振り下ろし。

 

 

 

 

 

――――――ざしゅっ。

 

 

 

 

 

切断したのだ。

 

 

 

 

 

「ッッ……アアアァァァァァァァッッッッ!!!???」

 

 

 

 

 

切断面から、大量の鮮血が噴き出す。

併せて迸っていく、激痛と焦熱感……叫ばずにはいられなかった。

 

 

 

片足切断ッ……ダメージが大きすぎるッ……!!

 

 

 

 

「玄弥ッッ!!」

 

 

 

すかさず、烈海王が飛び出した。

すぐに彼の救助と手当てを行わなければと、一直線に玄弥の元へ。

 

 

だが……当然、童磨がそれを黙ってみている訳がない。

こうして烈海王が動き出すことは、織り込み済みなのだからッ……!!

 

 

 

 

 

 

――――――血鬼術『凍て曇』ッ!!!

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

童磨が両の鉄扇を振り広げると同時に、烈海王の視界が真っ白に覆われた。

 

 

凍て曇。

童磨を中心に、文字通り空気すらも凍てつかせるほどの強烈な冷気―――言うなれば極寒の煙幕だ―――を発生させる血鬼術。

 

性質は粉凍りに似ているが、あちらが目に見えない微粒子状の霧氷を散布するのに対し、こちらは視認可能な代わりに威力と物量が桁違いとなっている。

まともに煙の中に飛び込めば、皮膚感覚は大いに麻痺してしまい、眼球はたちまち凍りつき使い物にならなくなるだろう。

 

 

故に、烈海王も咄嗟にブレーキをかけざるを得なかった。

ギリギリ、氷煙に入る寸前で静止……その中に、呑まれずに済んだ。

 

 

 

しかし、中心部にいた童磨は勿論の事、その傍らにいた玄弥はそうはいかない。

 

たちまち、二人の身は覆われ……完全に、見えなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

―――後で聞いてみたんだが……烈さん、あの煙幕は流石に予想してなかったみたいなんだよな。

 

 

 

 

―――いや、奴がそういう術を使えると思ってなかった、って事じゃなくてな……それを今使うのかって意味だよ。

 

 

 

―――接近を防ぐためなら、また氷柱を落とすなりするだろうって予想していた、だから即座に砕くつもりでいたんだと……ほら、考えてみろよ。

 

 

 

 

 

―――せっかく玄弥に大きな傷を負わせたってのに、その状況で血鬼術の煙幕なんか撒いたらさ……すぐに、吸って回復するじゃないか。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ッッッ~~~~~!!!!」

 

 

 

 

童磨が発生させた、大量の氷煙……それを見た途端、玄弥は大きく息を吸い込んだ。

 

粉凍りの時よりも更に濃密な、上弦の弐の血……それを一気に体内へと取り込めばッ……!!!

 

 

 

 

「墳ッッッ!!!」

 

 

 

 

 

右足、再生ッッ!!!

 

血肉と骨が瞬時に再構築され、寸分たがわぬ形で復活を遂げるッッッ!!!

 

 

 

 

「よしッ……!!」

 

 

 

全身に力が漲ってくる。

ここまでで受けたダメージの全ても、完全に元通りとなっていた。

流石に体力の消耗までは、完全とは言わないが……十分すぎる回復量だ。

 

すぐさま身を起こし、構えを取り直す。

 

 

 

(けれど……この状況は、あまりよくはねぇッ……!!)

 

 

 

だが、玄弥はそれを手放しに喜べなかった。

あの童磨が、自身を回復させるであろう事を失念している訳がないからだ。

 

即ち、切断した右足を元通りにさせるリスクを負ってでも、この術を発動させる必要があったという事。

 

 

 

(そんなん、考えられるのは一つしかねぇ……烈さんの足止めだッ!!!)

 

 

なるほど、確かに接近する烈海王を止めるには煙幕が一番効果的だ。

仮に、氷柱を落として物理的に阻止しようとしても……烈海王なら、速度を落とすことなくぶち破り接近という事も大いにあり得る。

ましてや、今まさにそれに近いこと―――砂鉄で氷を融解させるという搦め手込みではあるものの―――を自分達がやったのだ。

 

警戒されるのは至極当然。

だからこそ、無策で飛び込めば重傷必至の煙幕を張ったのだ。

実体を持たぬ煙ならば、破壊は出来ない……否応でも足を止めざるを得なくなる。

 

 

 

「くそッ……やられたッッ!!」

 

 

自身の身に追撃が来ない―――追撃したところで、氷煙を吸い込んで即回復できるとはいえ―――時点で、童磨が距離を離したのは明白。

 

ならば、彼の狙いは間違いなくあの術式―――結晶ノ御子を、邪魔される事無く安全に使う事だ。

それだけは、何としても防がなければならない。

全ての流れを持っていかれてしまうッ……!!

 

 

 

「どこだッ……奴はどこにッ……!?」

 

 

 

だが、そうしようにも童磨の位置が分からない。

鬼喰いの効果で、眼球の凍結や皮膚感覚の喪失こそないものの……視界は真っ白に覆われている。

 

完全に見失ってしまった。

どうにかしてこの煙を除去しない限り、童磨を見つけ出すことはッ……!

 

 

 

「玄弥、伏せろッッ!!」

 

 

「ッッ!!」

 

 

 

そう思案していた矢先。

煙の向こうより、烈海王の指示する声が聞こえてきた。

 

言葉に従い、咄嗟に玄弥はその場に伏せる。

 

 

 

 

 

その直後。

 

 

 

 

 

 

――――――ゴウッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

(熱ッ……炎ッ!?)

 

 

 

 

 

紅蓮の炎が勢いよく彼の頭上を吹き抜け、瞬く間に霧を吹き飛ばしたのだった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

(見誤ったッ……一度封じられた技を連続で使うまいという意識の外を、見事に突かれたッッ……!!)

 

 

氷の煙幕を展開する血鬼術。

開戦直後の玄弥の反応―――粉凍りを吸い込んでのマックシング―――から、その類の術があるであろう事自体は烈海王にも予測できていた。

 

だが、まさかこのタイミングで切ってくるとは思ってもみなかった。

 

 

折角玄弥に深手を負わせたというのに、鬼喰いが発動してしまえば全てが帳消し―――それは皮肉にも、鬼と戦う隊士達が厄介と感じている事柄そのもの―――になりかねない。

実際、玄弥の回復と強化を恐れてか、童磨は粉凍りを以降発動させなかった。

 

 

 

故にこそ、このタイミングでの術式発動は効果的であった。

 

 

くる筈がない、使うとは思わない。

そんな意識の外を突く、見事なカウンターッ……!!

 

 

 

 

(奴に時間を与えてはならない……一刻も早く、この氷煙を晴らさねば。

 どうするッ……!!)

 

 

実体がない以上、破壊は不可能。

ならば、廻し受けの要領で掻き消すか?

 

否……この強烈な冷気が相手となれば、凍傷は必至だ。

直接触れるのは危険すぎる。

 

 

ならば……煙に触れる事無く、吹き飛ばす他ないッ……!!

 

 

 

「ッ……!!」

 

 

その時。

烈海王の目に、あるものが飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

倒壊した女郎屋。

 

燃える―――行灯か竈かが破壊された事により、中の火が移ったのだろう―――木材。

 

 

そして、転がる一升瓶。

 

 

 

 

(幸運ッ……!!)

 

 

 

 

女郎屋に勤める者達には気の毒この上ないが、存分に利用させてもらおうッッ……!!

 

 

 

 

「玄弥、伏せろッッ!!」

 

 

 

 

即座に玄弥へと指示を出し、行動に移る。

 

 

 

 

一升瓶を拾い上げ、中の酒―――ありがたい事に、度数が高い焼酎―――を口に含む。

 

松明が如く片側に炎を灯した木材を、その口の前へ。

 

 

 

そして、勢いよく……噴射ッッ!!!!

 

 

 

 

 

「墳ッッ!!!」

 

 

 

 

 

――――――ゴウッッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

火炎放射ッッッ!!!!

 

目の前に広がる氷煙を、その熱と勢いを以て一気に噴き飛ばすッッ!!!

 

 

 

(よしッ……!!)

 

 

 

効果は覿面であった。

炎熱と風圧とにより、瞬く間に氷煙は霧散。

 

 

視界が一気にクリアになっていく……中にいた玄弥と、そして童磨の視認が十分可能な程に。

 

 

 

「ッ……野郎ッッ!!」

 

 

 

だが、そこにあったのは最も恐れていた光景であった。

 

玄弥は毒づき、烈海王も表情を一層厳しくする。

 

 

 

 

 

 

「凄いな……火を噴く人間なんて、流石に初めて見たよ。

 凍て曇をこんな方法で破られるなんて、思ってもみなかったなぁ……けれど。

 俺の方が、ちょっとだけ早かったみたいだね」

 

 

 

 

 

そう……童磨は既に、戦陣の再構築を終えていた。

 

結晶ノ御子を再発動させていたのだ。

 

 

 

分身体の総数―――砂鉄を喰らった分身体は、既に崩壊済みなので除外した上で―――は……実に、四体ッッ!!!

 

 

 

「墳ッッッ!!!」

 

 

すかさず、烈海王は二発目の火炎放射を放った。

 

分身体が氷で出来ている以上、炎熱に弱いのは自明の理。

どうにか溶かせないかと狙っての一撃であった。

 

 

 

「無駄だよ……粉凍りや凍て曇なら兎も角、そんな炎程度じゃ溶けないよ」

 

 

 

――――――血鬼術『枯園垂り』!!

 

 

 

 

分身体が素早く扇を振るうと共に、その軌道に沿って氷の斬撃が出現。

 

烈海王の火炎を真正面より受け止め……溶ける事無く、防ぎ切った。

 

 

 

 

 

「そんなッ……!?」

 

 

 

炎を受けても大丈夫な氷を前にして、玄弥は信じられないと言わんばかりに驚愕した。

 

 

 

だが……ある意味これは、当然の結果ともいえた。

 

氷や積雪の対策に火炎放射器をという発想は、現代社会においても度々見受けられるものである。

しかし、実際に試してみたところ……その殆どが、残念としか言いようがない結果に終わっている。

 

 

氷や雪自体の表面温度との差、内部にある空気層による熱伝導の問題、気化熱による周辺温度の低下。

様々な要因が絡む為だ。

 

童磨自身も口にしたように、霧や煙程度のものに対しては十分効果的だが……彼の血鬼術に対しては、力不足もいいところなのだ。

 

 

 

 

「怖いのは、さっきの砂鉄だけど……アレって、もうそんなに使えないんじゃないかな?」

 

「……見抜かれていたか」

 

 

 

そして、童磨の氷に対して効果的な猩々緋砂鉄による砂弾だが……童磨は、それがそう何度も使える手段ではない事を見抜いていた。

 

 

理由は至極簡単……重いのだ。

一般的な砂が1立方センチメートルあたり1.5g程度に対し、砂鉄は4.5g……その差は実に三倍。

流石の烈海王といえども、持ち歩ける量には限りがあったのだ。

 

 

故に、日課用兼切り札の砂弾用として、戦闘に差支えのないギリギリの量を備えていた……精々、後三発分といったところか。

 

 

 

「アハハ……物凄い熱かったし、痛かったよ。

 今まで闘ってきた鬼狩りの中でも、一番じゃないかなぁ……けど、もう喰らわないからね」

 

 

 

しかし……ここからはその三発も、当てられるかどうかすら怪しい。

如何に強力といえど、既に種が割れてしまった札だ……童磨も最大限に警戒している。

彼我の距離は今まで以上に離されるだろうし、術による防護もより堅固―――砂弾を受け止めても大丈夫な様に、何層にも重なった氷壁を展開するなど―――になりえる。

 

 

既に童磨も、受けたダメージが回復しつつある……ハッキリ言って、戦況は最悪だ。

 

 

 

 

 

 

(どうすりゃいいッ!?

 なんとか、なんとかあの分身体を片付けねぇとッ……!!)

 

 

 

 

 

 

童磨攻略の為には、やはり分身体をどうにか撃破する必要がある。

 

しかし、それにはどうあっても手数が足りない。

分身体の数を増やされた今、敵の攻撃を防ぐだけで手一杯になりうる……打って出るのはより困難になる。

 

 

 

 

(どうする……烈さん、どうすればッ……!!)

 

 

 

 

何か、何かないのか。

 

分身体を封じ込め、童磨本体に専念することが出来る特効薬的手段は。

 

 

 

 

 

そう、玄弥が必死に考えていた……その瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

「ッッ!!」

 

 

 

 

 

 

その音―――何者かの駆け寄る足音が、彼等の耳に届いたのは。

 

 

 

 

 

 

「これは……!!」

 

 

 

 

 

そう……まだこの場には、戦える人間が残っていたのだ。

 

 

 

玄弥と同じく―――継子である彼程の密度ではないにしても―――烈海王に師事し、闘法を磨いた格闘士が。

 

 

 

 

 

 

「ムウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!」

 

 

 

 

竈門禰豆子がッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「あれは……」

 

 

 

烈海王と玄弥の後方より疾走してくる影―――禰豆子の姿が、童磨の視界に入った。

 

 

麻の葉模様の着物に、市松模様の帯……間違いない。

己が主より始末を命じられた、裏切り者の鬼だ。

 

 

鬼狩り達の元にいるのは知っていたが、まさかこの場に現れる―――童磨は炭治郎が禰豆子を休ませた後に現れたため、知らなかった―――とは。

 

 

 

「へぇ……これは都合がいいや。

 ここで纏めて殺せるね」

 

 

 

しかし、どうという事はない。

彼女が現れたのには少々驚かされたが、鬼殺隊が増援を寄越すであろう展開そのものは予測できている。

 

何も問題はない。

一人増えたなら、その分だけこちらも数を増やすまでだ。

 

 

 

 

――――――血鬼術『結晶ノ御子』。

 

 

 

 

 

禰豆子の登場で烈海王達が僅かに硬直した隙を突き、新たな分身体をすぐさま生み出す。

これで盤石。

後は三人纏めて、物量で潰すのみ。

 

 

分身体と併せて、総勢六人分の血鬼術を発動。

 

 

一気に勝負をかけにッ……!!

 

 

 

 

 

 

――――――ゴウッッッ!!!!

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

しようとした、その刹那。

 

それよりも早く、禰豆子が腕を大きく振りかぶり……直後、爆炎が目の前に立ち上った。

 

 

 

分身体が、瞬く間に炎に包まれ……そして。

 

 

 

 

「溶けッ……!?」

 

 

 

 

一気に、崩れ落ちたッ……!!

 

炎にその身を焼かれ、一気に溶け落ちたのだッッ!!!

 

 

 

 

 

(どういう事だ……この炎は、あの娘の血鬼術……?

 だとしたら、ただの炎じゃないッ……!!)

 

 

 

先程も烈海王が実践した通り、単なる炎では己の氷を溶かすなど到底不可能。

 

だが、結果は御覧の通りだ……たった数秒浴びただけで、結晶ノ御子が融解した。

 

 

 

(確かめないと……!!)

 

 

 

――――――血鬼術『蔓蓮華』ッッ!!!

 

 

 

 

すぐさま血鬼術を発動し、禰豆子にその矛先を向ける。

 

氷の茨が彼女を刺し貫かんと、勢いよく迫っていくが……

 

 

 

 

「ムンッッ!!!」

 

 

 

再び、彼女は炎を放つ。

茨はその身を穿つこと叶わず……またしても、融解……!!

 

 

 

 

(……やっぱり、そうか。

 彼女は裏切りの鬼……だからこの術……!!)

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

何たる皮肉だろうか。

 

鬼舞辻無惨は、烈海王を倒すには童磨こそが最適と判断した。

互いの相性からして、彼程の適役はいないだろうと。

 

 

しかし、実際には玄弥というダークホースを見落としていたが為に、戦いは長引いた。

童磨の十八番にして、隊士にとって最悪の攻撃手段である粉凍りを、封じられたが故に。

 

 

だが、それだけではなかった。

童磨の天敵は、玄弥だけではなかった。

 

 

 

 

彼の冷気を操る血鬼術に対し……彼女の術は、鬼を焼く事に特化した炎ッッ……!!

 

 

 

 

「ムゥゥッッ!!!」

 

 

 

竈門禰豆子は、童磨最大の天敵なのだッッッ!!!

 

 

 

 

「禰豆子さん……よく来てくれましたッ……!!」

 

 

 

 

 

烈海王、玄弥、禰豆子。

 

 

今ここに……一門が、揃い踏みを果たしたッッ……!!!

 

 

 

 




Q:結晶ノ御子ってチートすぎない?
A:童磨の観察癖がなかったら詰みの可能性がありました。

童磨は原作でも語られたように、相手の動きを出来る限り観察しようとする癖があります。
そのおかげで、結晶ノ御子もいきなり複数体出現させるのではなく、一体目・二体目と段階を置いて生み出し様子見をしていました。
ただし三体目を出したあたりで、そろそろ仕留めようかモードに入り、そこから冒頭の展開に至りました。


Q:玄弥のマックシングって途中で切れないの?
A:合間合間で氷を齧って継続してます。


Q:烈さん、砂弾を知っていたの?
A:19話でもガイアの事は耳にしたことがあると記載した通りですが、烈さんは徳川の御老公より最凶死刑囚達の結末について聞いています。
 その為、かねてから砂鉄による砂弾は対鬼戦用の切り札として考えており、今回遂に初披露しました。 


Q:結構遠くから砂弾打ち込んでるみたいだけど、烈さんの肩凄くない?
A:烈さんの膂力なら遠投も十分出来ます。


Q:童磨式変形型パワーボムとは?
A:足首を己が首ごと固定して背中を叩きつける技なので、分類としてはパワーボムになります。


Q:烈さん、凍て曇の発動は読めなかった?
A:格闘士として、一度相手に致命打を与えたならその隙を逃さずトドメを刺すだろうという思い込みがありました。
 しかも、一度は打ち破られた術です。
 その為、そんなタイミングで玄弥をわざわざ回復させるリスクを負ってまで使うという発想には思い至らず、童磨が距離を離す事を許してしまいました。


Q:戦力差的には結局どんな具合?
A:結晶ノ御子二体までならまだどうにか出来たけれど、三体目になると流石に防戦に回らざるを得なくなります。
 四体目以降ともなれば、如何に烈さん達とてムリゲーです。



術をフル稼働させた童磨は、烈さんとマックシング玄弥でも相当厳しい強敵です。
分身体を展開し、ひたすらに遠距離から術を放つというシューティングゲームに入られた場合、打つ手がなくなるからです。
そして童磨は猗窩座とは違い、闘いに美学も何ももっていないので遠慮なくそれをします。

その為、このまま烈さん達の敗北もありえましたが。




Q:前話の後書きにあった、対童磨戦用の『ある要素』とは?
A:血鬼術キラーの禰豆子がここにはいます。

烈さんから武を学んだ格闘士が、まだもう一人いました。
ある程度休息を取り身体の傷が塞がったタイミングで、烈さん達の苦戦をちょうど目撃。
参戦せねばと飛び出しました。
原作では相対する事なく終わりましたが、禰豆子の術は童磨にとって一番相性が悪いのではないかと思っています。


ここからは、タッグマッチから更に状況変化。
烈さん一門によるチーム戦となります。
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