深い暗黒がその冷徹の惑星を支配していた。この広大なサイバトロン星に棲む機械生命体たちは悠久の時を戦争に費やし、破壊し再生されそして造られていた。彼らは恒星の光が届かないこの母星に人工的な光を持ち込んだ。かつて、ティターンの一柱プロメテウスが人類に戦争の方法を教えたのと同じように。……
トランスフォーマーたちは、文化を、生命を、傲慢な平和によって冒涜し続けていた。その一端を担うメガトロンは偽りの同胞に指示を与えていた。
『アー、オホン……諸君、ダークサイドで落ち合うぞ』
通信機から奸智の声が響いた。これから師を出し抜く男の声を聴覚回路に納めた一人の戦士は、マクシマルの残骸に目もくれず、帰路を捜索した。
「クソッ、随分落っこちて来ちまった」
治安部隊に所属する三体のトランスフォーマーを数ナノクリックの間に斃した彼は、翠のビームウェポンを収めるとやがて走り出した。自分の遂げた行為が英雄的であると信じて止まなかった。
「!」
しかしその足運びは、白い生き物をスキャンしたトランスフォーマーによって阻まれた。熟練の戦士は、その目前の相手が敵であると判断するのに時間を要さなかった。
「死にたくなければ退くんだな」
「? オマエ、誰だ」
「名乗る必要はねえ! ダァアッ!」
右腕の凶悪なシャベルを、愚鈍な相手に叩きつける。
「ウウ! オレグリムロック、痛い!」
「……ハァ? オマエが『グリムロック』だとォ?」
戦いの場において、英雄の名を挙げるのは特別な事ではないが、彼のような愚劣な戦士がそう宣うので戦意を喪失したというわけである。
「オマエのようなアホがグリムロックなワケねえだろうがあ! 脳ミソ入ってんのかアァン!?」
剛腕を持った彼は、その武器を下げると今度はその口で嘲罵する。
「確かにグリムロックはテメエと同じ生物を模したトランスフォーマーだ。だがな、それで同一人物にはならねえんだよ! バーカ」
語気を強くして戦士は知能の低い彼を責める。
「ウウ、オレグリムロック、間違いない! 色んな惑星で、戦う!! オレさっき、ここに帰ってきた」
「ケッ、いいか? グリムロックってのはな、天才的な知能と奇跡的な戦闘力を持つ、グレートウォーを戦い抜いた武骨なヒーローなんだよ! あのユニクロンのケツを蹴っ飛ばしたって逸話もあるんだ」
「だから、オレそれだって言ってる! ダイノボッツのリーダー、グリムロック!」
「オマエみたいなバカと話してたらバカが伝染るぜ……こんなところで油売ってるヒマはねえんだ、あばよポンコツ!」
彼──ダイノボットは、呆然とするグリムロックを一瞥すると再び走り出した。
「これだから原始的な生き物はよオ」
歴史を識る者は、真実に騙されるのであった。しかしながら、その史実の当人に自覚がないのも手伝っていたように考えても差し支えない。
今作はビーストウォーズ勃発寸前を描いた『Theft of the Golden Disk』パート2内でダイノボットが9Kを破壊した直後の限定的な部分の妄想です。
グリムロックはマクシマルにリフォーマットされたという玩具設定を引用しているので色が白かったりします。ダイノボットの腕がアレなのもセイバートロンモードだから。
また(扱いは正史とは言いづらいけど)サイモンファーマン氏の執筆したマーベル版G-2後を描く『Alignment』の出来事については本二次創作は組み込んでおりません。あしからず。。。
なお、今回は名前の表記を言語版基準にしています。
参考資料
Theft of the Golden Disk PT2:https://www.nicovideo.jp/watch/sm1998799
BW期グリムロック:http://bwcomplex.html.xdomain.jp/galleries/grimlock.html
Alignmentについて:https://tfwiki.net/wiki/Alignment