夜廻、深夜廻のキャラが知り合っている謎時空です。
トトロのサツキとメイは姉妹で、作中では姉のサツキが妹のメイを探すのに対して、夜廻のともことこともも姉妹で、妹のこともが姉のともこを探すストーリー。
千と千尋の神隠しの千尋はポニーテールで、年相応に怖がりな一方で勇気出すと強く、深夜廻のユイとハルはちょうど千尋の髪型と性格を分けた感じになっている。
実は夜廻シリーズにはジブリもイメージにあるんじゃないかと思う、作者の関係無い持論でした。
それは、居るだけで汗が流れ落ちる暑い夏の日。
ひょんな事から、とある神社に足を運び、お参りをしたことも、ともこ、ハル、ユイの少女四人。
長居する用も無く、さて帰ろうと踵を返し歩き出したところでふと気付いた。ただ一人、こともだけは神社の前で立ち尽くしているのを。
「ことも?どうしたの?」
彼女の姉であるともこが、訝しそうにして声を掛ける。
が、返事は無い。代わりにゆっくりと振り返る。けれども、こちらに向けられた少女の顔は、明らかに様子が違うように感じられた。
こともは、妖しく微笑みながらハル達を指差して言った。
「さあ遊びましょ、あなた達の宝物は預かっているわ」
訳の分からぬ言葉──けれど、決して意味が無いものではないと、三人の少女は一様に感じ取る。目の前にいる"ことも"は、自分達の知ることもではない。彼女の体を借りているナニかが、宝物……つまるところのこともを人質に、勝負を持ち掛けてきたのだ。
正気の沙汰などない、大切な友達を懸けた遊びを。
「私が鬼ね」
そう言って、"ことも"は神社の横にある注連縄が巻かれた御神木へと歩いていき、背を見せる。その体勢で、何をして遊ぶか察せられた。
袋小路だ。出口がすぐ後ろにあるはずのハル達は、しかれど逃げ出すなんて事はできない。こともの身柄を奪われている以上、この
ハルはもちろん、ともこも、ユイも理解する。そして近くて遠い位置にいる鬼の少女が、始まりの合図とばかりに声を上げた。
だ
る
ま
さ
ん
が
『だるまさんがころんだ』──ずっと昔からある、実にシンプルな子供の遊び。鬼の声に応じて、少女らは恐る恐る鬼のいる場所に近付いていく。
しかしともこは、ただ一人足をすくませる。ハルはそれにそれとなく理由を察した。大事な妹がナニかに人質とされている現状、ミスは許されないプレッシャーと不安が実の姉として一際苛んでいるのだ。
──彼女を餌に、先んじようか?
不意に浮かんだ策謀に、ハルは自分に「待て」をかける。仲間を手に掛けるなんて、どう言う了見だろう。
何処かに、打開策があるはず。思考を巡らせろ。
こ
ろ
ん
だ
勿体ぶるように、"ことも"が決まりの言葉を締めると同時に、狩りを楽しむかの如く振り返った。
つられて、ハルが転ぶ。慌てたため、境内の砂利が膝や肘を擦って痛みが差す。それを堪えてそのまま伏せる。名前は、呼ばれなかった。
すると視界の端で、すぐ横にいたともこが微かによろけた気配。
「お姉ちゃん、うごいた」
不運にもともこは呼ばれ、捕まる。
指を差されたともこは、まるで心を失ったかのようにふらりふらりと妹の元に歩み寄り、抵抗無く抱き締められた。そして、そっと宝物を扱うように、傍らへと座らせられる。
ハルとユイ、特に仲の良い二人はどちらからでもなくほぼ同じタイミングで息を呑む。ともこも奪われた。救えるのは、残り二人。
だー
るー
まー
さー
んー
がー
今度はもっと勿体ぶって、後ろ向きに妖しげにすら聞こえる声を出す"ことも"。一人減った少女らは、また探り探り接近する。
正気の沙汰無し。暑さと不安に汗が頬を伝い、垂れ落ちた。が、そんな雑念に囚われていては、袋小路だ。とにかく進み、助けるしかない。
──ユイを囮にして裏かけば……?
また、ハルの中に思いもよらない考えが過った。一瞬だけぎゅっと目を瞑る。友達を手に掛けるだなんて、絶対間違ってる。何となく、眼前の"ことも"からはその思考を読まれ、称賛されている錯覚を覚えた。
他に、何かあるはずだ。思考を巡らせ。
こー
ろー
んー
だ
鬼が振り向く。つられてハルも転んだ。そのまま地面に伏せると、名前は呼ばれなかった。
だが、タイミングを図れなかったらしいユイが微かにふらつく。
"ことも"が、ゆらりそちらを見やった。
「ユイ、うごいた」
名前を呼ばれ、先のともこと同じくユイも捕まってしまう。
いよいよ追い詰められた。残るはハル一人。鬼の左右には、新たな宝物として意識の遠い様子のともことユイが並べられている。
もし、自分もまた捕まってしまえば、一体どうなるのか。こともの体を借りるナニかが、それで何もかも元通りにするとは思えない。捕まれば最後、自分達は何処かに連れていかれてしまうような気がした。
はやくしないと、連れてっちゃうよ
はやくしないと、指切っちゃうよ
はやくしないと、冷めきっちゃうよ
さっきの良からぬ考えと同じ声が、ハルの頭に響く。見れば、"ことも"がこちらを見詰めてきている。
捕まって奪われるか、近付いて懐に飛び込むか、どちらかしかない選択肢。真剣勝負と呼ぶには不条理な状況に、ハルは沸き上がる恐怖を必死に抑え、前を見た。
まずは、この直線距離をどうにか縮めたい。目に見える距離は、心の距離だ。近くなれば怖い反面、安心が見えてくるはずである。
酸いも甘いも飲み込んで、次に懸けて思考を巡らせるしかない!
だ
る
ま
さ
ん
が
こともの口から紡がれる、遂に歪んだ声を合図に、ハルは全速力で駆けた。
先の傷は、最早痛くなかった。痛みすら思考の外に追いやった、決死の特攻。
こ
ろ
ん
「だ」を言うか否か、その勝敗の分かれ目と言える瞬間にハルは手を伸ばし、"ことも"の背中に触れた。
途端、傍らのともことユイが意識を取り戻す。奪われた二人を取り返した。さあ、一斉に折り返しだ。三人の少女は鬼の元から離脱する──
「止まって」
その言葉を背に掛けられ、ハルは身体が動かなくなった。
ともこもユイも、同様に止まっている。
手を挙げて三人を引き留めた"ことも"は、真っ直ぐ近付いてハルの前で停止。何を考えているのか掴めない笑みを見せられ、ハルは心臓の鼓動を高鳴らせる。
"ことも"が、そこから満足げにニヤリと笑い、言った。
「日が暮れるからもう帰ろ」
言うや否や、フッと彼女の雰囲気が変わる。そこにいたのは、いつものこともだった。若干申し訳無さそうに苦笑いするのは、先までの自分の不可解な行動を省みての事だろう。迷惑を掛けた。もう大丈夫だ、と。
それでもう良かった。安堵した少女達は、また何かに巻き込まれる前に、足早に神社を後にする。そうして人気の無くなった神社に、風に乗って微かに声が響いたのは誰も聞き取れなかった──
──だるまさんがころんだ──
他にもピッタリな楽曲見付けたら、ちょいちょい書いていきたい。